ImgCell-Automaton。 ここはimgにおけるいわゆる「僕鯖wiki」です。 オランダ&ネバダの座と並行して数多の泥鯖を、そして泥鱒をも記録し続けます。

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//[[←Prev>Invitation_6『混沌の世は一区切り、されど泥濘に限りなく』]]
//
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//''綺羅星潜入中の我ちゃん''
//
//
//
//
//「ねぇねぇ聞いた?」
//「何の話?」
//「特別な招待状の噂!」
//「白魔女のお茶会じゃなくて?」
//「そこに行けば願いが叶うとかなんとか!」
//「招待されても、ここからまず出るのが大変じゃない?」
//「あー、そういえばそうかもね」
//
//姦しくも華やかな雑談が紡がれ続ける。その様子はまさしく、思春期の乙女たちの花園と言って相違ないだろう。
//ここは綺羅星の園。魔女術を中心とした薬学や黒魔術全般を学ぶことができる、スウェーデン僻地にある学舎だよ。
//所属する魔術師たちは、見ての通り全員女性だ。普通に入学してきたもの、スネに傷のあるもの、まぁその裏にある事情はいろいろだな。
//だが基本的に塾長はそんな彼女たちを分け隔てなく受け入れている。入ってはならぬのは男性のみだ。何故って? そういう……趣味かなんかじゃないか?
//我は女だから問題なく入れるが、お前はそうはいかんだろう多分。という訳で、此度は我だけが顔を出す方針で乙女の園に潜入することとした。
//
//「レンフィールド先輩は招待状もう受け取りました?」
//「んー? そもそも今初めて知ったっすよ? 誰がばらまいているんっすかね?」
//「気づいたら机に置いてあったとか、下駄箱にあったとか、まちまちみたい。ぼくも気づいたら置いてあって」
//
//乙女の花園と言うだけあって、さすがに噂の広まりも早いな。
//"噂を好む"という人間の本質は何処にあっても変わらないものだが、表出するにふさわしい場所と言うモノがある。
//その一つが、こういった思春期の少女たちが集まる場であると思っているよ。そういった性質を今回は利用させてもらった形になる、かな。
//
//「なるほど良い手だ。しかし、塾長に黙ってせこせこ仕込むのは感心しないな」
//「……予想よりも、随分と早い登場だな。お前とは、晴明やアンバルブライベン並みに会いたくなかったわけだが」
//
//人気のない場所までひとしきり歩いた途端、背後から声が響いた。
//振り向かずとも分かる。ホロシシィ・ウリュエハイム。かつて■■とすら呼ばれた災厄級の女。
//それがどういう心変わりをしたのか、今やこの通り乙女同士のキャッキャウフフを眺めるために学舎を作る程度の塾長に収まっている。
//昔はそれ相当に尖っていた女と聞いてはいるが今は……と油断していたが、我に気づかれずにこうして姿を見せるということは腕は鈍っていないようだな。
//
//「会いたくなかったって? へぇ。
// なのに顔を出しているとは、ひょっとしてツンデレと言うやつかな?
// 君のような可愛い少女なら、入学願書なら随時受付中だよ」
//「悪いな。我は誰のものにもならず、何物にも染まらない。燦然と輝く綺羅星の夜空は、我という星にとって狭すぎる」
//
//振り向き、肩を竦めながら我は笑った。
//一応敵意はないようだが、こういう輩は敵意がなくとも平気で殺せるタイプだから油断は出来ん。
//既に招待状は配られている。生徒に危害を加える気は我にはないし、土夏などのような聖杯戦争下という緊迫した状況でもない。
//うまく話せば逃げ切れるとは思うが……これ逃げ切れるか? 詰みじゃないのか?
//
//「いま綺羅星で持ちきりの、"新世界への招待状"の出どころだね?」
//「左様。と言っても危害はないぞ? 取って食ったり痛い目を見せようという訳じゃあない」
//「それは君の態度からもわかる。けど、招待された生徒たちが次々と学園から消え去っているようだ。
// 私としては、自慢の花園を踏みにじられたのは我慢が出来ない」
// 
//「というわけで、さようならだ」
//
//抵抗する暇もなく、我は一瞬にして魔女の攻撃を喰らって消し炭と化した。
//死体も残らぬ一撃だ。たった1人の生徒にすら異変を悟らせぬ見事な攻撃だったと言わざるを得ないだろう。
//いやー、地雷だったな……。マジ痛い。死ぬほど痛い。多分あの後、塾長は招待状を全員に捨てさせたかもしれん。
//だがその前に招待された者はいるかもしれんし、あるいは塾長が動く直前に招待されてしまった乙女らもいるかもしれんな。
//だとしたら、果たしてどのような人物が来るのだろう。そんな風に思いを馳せながら、我は次の泥濘の舞台へと移行するのであった。
//
//
//◆
//
//
//次に辿り着いたのは、電脳世界にある仮想世界サービス、クオリアだった。
//目の前には様々なアバターを纏った人々が行き交う不思議な光景が広がっている。立体に浮かぶ電光表示が近未来感を漂わせているな。
//それもそのはず。今我らがいるこの世界の年代はざっと2102年。今いるべき時代からざっと80年後の世界になるな。どうだ凄かろう?
//3000年代に行ってるから驚きがない? いや、うん。そう言われるとそうだなとしか言えないんだが……。
//
//そして、このような特異な領域においても聖杯戦争は発生する。
//ここもまた泥濘の世界に属する可能性の1つなのだ、当然であろう? オランダや土夏と同じように、運命からは逃れられんのだよ。
//もっとも、ここは土夏やベルリンと異なり、似通った道筋が何一つとして存在しない聖杯戦争を辿った点において、1つのターニングポイントだと思っている。
//舞台の違い、が真っ先に挙げられるのだろうな。このような場で聖杯戦争が発生するという可能性を誰も予期できなかった。だからこそ誰も知らぬ物語が紡がれたのだろう。
//その味はまさしく甘美。こういった物語を我は求めている。っと、最初の目的を忘れるところだったな。ひとまずは、招待状を配るとしよう。
//
//「へぇー、民家の中の小物まで再現されているのか……リアルだな。
// いや、違うぞこれ? 招待状? この宛名……僕宛てみたいなのだが」
// 
//「えっと、ランサー、こんなの道に落ちてたんだけど、何か知らない……よね」
//「マスター。何か危険があるかもしれないので、そう言った物はうかつに拾わないほうが……」
//「だ、だって! 私の名前が書いてあったから気になっちゃって」
//
//聖杯戦争が行われるのは、かの土夏市を再現した電脳エリアの一角。
//そこにあらかじめ招待状を配置させてもらった。仮にも戦争中だからな、手渡しではかつてと同じように受け取られはしないだろう。
//電脳メッセージでポンと表示する手もあったが、そこまで干渉しすぎると鱗画聖永の奴に気づかれるんじゃないかと思うのでやめておいた。
//
//ああ、この聖杯戦争にも黒幕がいる。
//先ほど招待状を手に取っていた青髪の青年、水無月サクヤもその関係者だよ。
//関係者と言うかなんというかだが、故に奴はこの聖杯戦争において中心に立つ運命を背負う。
//だがそんな運命に負けず、奴はこの聖杯戦争を潜り抜けた。その果てに誰と運命を共にするかは、我自身も断言できかねるがね。
//ああいう奴にも、新世界に来てほしいところだ。なにせ叩けば響くような良さと切れる頭をもっている。きっと、奇跡の蒐集に役立つだろうさ。
//
//──────と、他の連中らにも招待状が手に渡った事を確認しつつ、我は先を急ぐ。
//次に向かう世界は、聊か行くのに手間取る故な。我は"神"が存在する場所ならばどこにでも遍在できる。
//それはこのような、2102年という遥か未来であっても変わりはない。どれほどの月日が経とうとも、神と言う概念はこの地上から消えないのだから。
//
//
//言ってしまえば、神のいない領域には我は手も足も出せぬのだ。
//
//
//そんな場所があるのか? と聞きたげだな。なれば答えてやろう。
//この世界はな、星の表層を覆う1つのテクスチャという概念によって成り立っている。今はありていに言えば、物理法則というテクスチャが支配している状態だな。
//かつての神代は、こういったテクスチャが別れ存在していた。かの救世主がそれを1つに統一した事で、この世界は神の時代から人の時代へと移り変わったのだ。
//
//ならば、その失われたテクスチャはどうなったと思う?
//ありていに言えば、星の内海に沈んだのさ。大半はそりゃあもう滅び去ったさ。なにせすでに死んだ世界の断片なのだから。
//だが、一部は生き残った。聖杯を宿し、地表から情報をコピーし、さながら死骸に沸く蛆の如くに──────人々は地の底に沈んだ世界で生き続けた。
//
//土夏、伯林、ストゥーラ、夜観、クオリア……様々な"切り離されし"世界を辿ったが、次に向かうのはレベルが違う。
//そもそも人類史と辿った歴史が違う。法則からして違う。ゆえにこそ、我が簡単にいくことすらままならん。なにせ"神"が居ない世界なども平然とあるのだから。
//今回は少しばかり、裏技を使って移動するとしよう。──────失われた歴史の果て、"喪失帯"に。
//
//
//◆
//
//
//『……っつつつどういうことよ!!
// この際間抜けな芝居をさせられたのは捨て置くわ、あとで引っ叩いてやるけど!』
//『い、今凄く貴女が来てくれたことに感謝していますぅ……! 魔女様じゃなくて本当に良かったぁ……!』
//『収集つきそうにねえじゃねえか…相変わらずの大所帯だな嬢ちゃん』
//
//地の底に揺蕩う世界の死骸、喪失帯へと我は着地した。
//この喪失帯は言葉が力になる世界。言ってしまえば"誰もが神の如く世界を変えられる世界"。
//それゆえに神の信仰はとうに尽き果て、世界の理不尽を掻き消すために人が人を殺し相争う修羅道と化している。
//だからこそ我は、本来ならこの喪失帯に姿を現すことは出来ないのだが……今回は偶然、運よく、ジャックポットが発生したようだ。
//
//「────テメェは」
//「その顔を見れただけでも、来た甲斐があったというものだな」
//
//居合わせた"カルデアのマスター"と、我は挨拶を交わす。彼らは偶然、この喪失帯に霊子記録接続されたようだな。
//霊子記録接続とは、喪失帯が地表の世界から様々な情報を複写し世界に取り込む事象を言う。これにより人間がコピーされた場合、それは異邦人と呼ばれその世界の住人となる。
//フィニス・カルデア。それは人理を保障するべく、疑似天体カルデアスにより人理のよどみである特異点を解決する魔術組織の事を言う。
//以前に訪れた泥濘の新宿なども、元は彼らが管轄するべき異変なのだ。もっとも、新宿は奴らでは片付けることができず常設されているが。
//
//ああ、言い忘れてたが、我はカルデアとも縁があるんだよ。
//その時に登録された霊基の名は、何だったかな。アンナ・シュプレンゲルの方だったか、メルキゼデクだったか。
//ま、どうでもいいか。兎角、その縁を繋げて何とかこうして喪失帯までたどり着くことが出来た次第であるわけだ。
//
//「ああ、暫し待て……おい、ヴィクティとやら」
//「はい?」
//「これを受け取るがよい」
//
//流石のカルデアも喪失帯に関わるのは初めてらしく、混乱とてんやわんやが続く。
//その混乱が一通り終息したところで、この喪失帯における中心──────ヴィクティ・トランスロードに招待状を我は手渡した。
//
//「『いずれ必要になる』。受け取っておけ」
//「なにこれ? 手紙? ……えー…破…………子………読めません!
// でも貰ったモノは取っておきますね! ありがとうございます!」
//「……人選を間違えたか? まあよい。大事に保管しておくといいぞ」
//
//ここから先の話は──────まぁ、ひとまずは割愛としよう。
//この先彼らカルデアは、この喪失帯に潜む大いなる陰謀と過去、そして闇と恐怖に向き合うこととなる。
//それはここで語るにはあまりに長く、険しく、そして素晴らしい物語だった。それはいずれまた、時が来れば語るとしよう。
//1つだけ言えるのは彼女、ヴィクティ・トランスロードは全てを解決したということだ。その果てに、おそらく彼女は招待に応じるであろう。
//その時は、盛大に歓迎してくれる。そう思いながら我は彼らから離脱し、その足で学園都市の空港から別の喪失帯へと向かった。
//
//◇
//
//ん? 何を呆けている。ああ、普通に喪失帯を移動していることが不可思議なのか。
//まぁそれもそうか。星の内海だの閉ざされた世界だの言えば、移動できること自体が不可解に思えるかもしれん。
//今乗っている船は喪失帯交易船団『ゴールドスタイン・トレーディング』の船だ。密入航だがね。こういった星の内海を航海する連中がいるのも喪失帯の特徴だ。
//これがある故、1度でもどこかの喪失帯に潜り込めさえすればあとは招待状を渡し放題だったのだよ。どうだ頭が良いだろう。
//
//「新しいお客様なのじゃ」
//「くーるびゅーてぃーなのじゃ」
//「でもどこか抜けている感じなのじゃ」
//
//というわけで、次の喪失帯についたのじゃが、なんかどこかで見た事あるようなナマモノがいっぱいいるようじゃ。
//……。のじゃああああああああ!!? なんじゃこのぼでーはああああああ!!? あ、そうか…ここの喪失帯の聖杯は確かイザナミの遺体だったのじゃ。
//先のエノキアンと違って神が存在する喪失帯なのじゃ! だから我のぼでーがこの喪失帯の幻想基盤に引っ張られる形に変わってしまったわけか……!
//慌てふためきながらのじゃは招待状を号外新聞の如くばらまいてそそくさと後にしたのじゃ。のじゃああ……やばいこのままでは心までのじゃになってしまうのじゃ。
//
//「招待状が届いているそうです」
//「こんな僻地に? というかどうやって届けたんです?」
//「分かりません……ひとまず内容を確認しようかと」
//
//ひとまずダッシュで逃げ、移動した先はワシントン州レーニア山であった。
//気付けば喪失帯から脱していた……いや、元々喪失帯だった場所が表層に現出したのか?
//まぁ、何はともあれ、ここにも1つの組織が存在したことを思い出したので、ここにも招待状を配る事とした。
//
//マウントレーニア。抑止力によって生み出された、宇宙全体の「発見、探査、解明」を目的とした機関だな。
//機関と言っても、今まで巡った泥濘の組織のように魔術師たちが集っているわけではない。ここに集っているのはサーヴァントたちだ。
//いわゆる1つの学校の如く、彼らは初等部や中等部、高等部と別れ日々この宇宙の謎を解明し、発見できるよう過ごしている。
//
//彼らは皆、無機物より英霊として昇華された者ら……とりわけ"ハービンジャー"と属される英霊が多い。
//そう言った存在を効率よく使い、ガイアとアラヤが双方に危惧するモノを食い止めるために作り出された場所である。
//こういった場に集う者らは、解析や観測に長けている者たちだ。そういった彼らを新世界に招いていいかと、少し危惧が無いと言えばうそになる。
//新世界の仕組みなどを解き明かされたら拙いしな……。だが、うん、しかし招かぬわけにもいかないのがジレンマと言えるだろう。
//
//……しかし、ここは確か喪失帯だったはずなのだが……。
//そんなことを不思議に思いながらも、地上に出れたついでにもう1つ、聖杯戦争が起きていた場所を思い出し、我らはその場へと向かうのであった。
//
//
//◆
//
//
//「ん……あれ? あの落ちてる手紙って──────」
//「どうしたのアズキ。なにか、あった?」
//「いや、ちょっと気になって。確かあれ、大阪でも同じものがあったから……」
//
//そうして我々は函館へとたどり着いた。
//我らだけでなく、函館に聖杯を求めし3つの陣営もまた、同じように辿り着いたようだな。
//ここで起きたのは聖杯戦争でも大戦でもない。言うなれば聖杯"探索"。複数の陣営が互いに入れ替わり立ち代わり、あるいは協力し合い時に裏切り……。
//最終的に聖杯を手に入れるか、あるいは解体するかという物語が繰り広げられた場所となっている。
//
//この探索より以前、2つの戦争が起きていてな。この北の大地はそれら2つの戦いを受け継ぎ、そして終着点となる大地となる。
//東京で勃発した、死者が再び生を掴む為に足掻いた"戦争"。大阪で勃発した、竜種の残骸を保有する極道による"大戦"。どちらも多くの運命が交差したモノよ。
//当然その時代の連中、その戦争や大戦の参加者らにも招待状は配布する。というかすでに配布した。
//その中でも、先ほど招待状を拾った彼女の立ち位置は特異ゆえ、分割する形で配ったのだ。
//
//鴈鉄梓希。今は時計塔の数名やらと行動を共にしているが、かつての大阪で聖杯大戦に巻き込まれた身でもある。
//その際はサーヴァントなどを引き連れるでもなく、ただ巻き込まれた一般人であった。だが此度は違う。聖杯の破壊をスタンスとして動いているようだな。
//まぁ聖杯大戦を目の当りにしたら、聖杯なんて危険なものだと思うだろうがね。我としてもそう思うよ。
//そんな聖杯に手を伸ばしたい魔術師と戦いながらも、彼女は聖杯を破壊する決意を固めるのだ。
//聖杯は争いを、そして願いと言う結実を生むものだから、否定したくなる気持ちもわかる。
//
//
//だが、お気づきだろうか?
//今まで廻ってきた物語には、ほとんどに聖杯が関わっているということに。
//
//
//聖杯戦争や大戦は言うまでも無し。
//特異点と言う存在は聖杯が無ければ形にならないし、組織や家系が追い求めるモノもまた聖杯だ。……いや、始まりの大敵とか求めている家系もあるけど。
//とにかく、だ。この泥濘の世界が何故"泥濘"たるか? その所以こそ、まさしくこの聖杯と言えるだろう。人間は、本能として聖杯を求めてやまないわけだ。
//人は抱くのだ、願いを。人は追い求めるのだ、望みを。その願いの為に命すら捨てても惜しくない。そんな渇望の行き着くさきこそが、聖杯戦争という概念なのだ。
//そういった聖杯戦争が行くたびも繰り返され、時に折り重なり、影響し合い。あるいは全く切り離された世界であろうとも混沌の人間関係を作り出す。
//ゆえにこその、泥濘なのだ。
//
//この函館の模様は、その願いを求める人々の争いの終着点に相応しいと言えるだろう。
//聖杯という概念が目の前にある。万能の願望器が、あるいは無限に等しい魔力リソースが、手を伸ばせばそこにある!!
//それを破壊したいと願うか? それもまたよし。己の渇きをいやすために使うか? それもまた善なり。
//何故なら間違いなどないのだから。否! そも願いに"間違い"を突きつけられる人間がどこにいようか!!
//
//そういった願いの最果てにこそ、我が招待する新世界がある。
//終着点へと至りし彼らに、その次なる果てを示してやるのもまた一興、と言ったところだな。
//まぁ直接顔を出したら疑われて攻撃されかねないから、慎重に、慎重にばらまくとする。
//
//……ばらまき続けて、そういえばこの聖杯探索ってエルメロイ教室の化物共(未来の姿)が割と参加してたよな…と思い出す。
//あれ? あいつらに招待状の存在バレたら、解析されかねない……? い、いや、やめておこう。とりあえず今は責務を果たそう。
//そんな風にばらまきながら、我は次にどこに向かって招待状を渡そうか…などと思いを馳せるのだった。
//
//
//次は、そうだな。
//聖杯に関わる物語だけでなく、別物を巡る物語に向かうなどするか。
//例えばそう……聖胎とか──────あるいは、疑似聖杯ヤオヨロズとかな。
//
//
//[[Next→>Invitation_8『斯くして、新世界への扉は開かれる』]]
//
//
//
//◆  ◇  ◆
//
//
//
//■Tips.[[綺羅星の園]]
//泥組織というか、泥学園。ある日前触れもなく作成された。
//魔女の卵だけが入学できる乙女の花園というお題目で多数の思春期な乙女が集まった。
//聖杯やサーヴァントは一切かかわらないが、様々な厄ネタや秘密を抱える乙女たちによってさまざまな人間関係が交錯するように構築されていった。
//そもそも塾長自体が背後に色々と抱えている様子でもあるので、そういった意味でも過去や事情持ちの女生徒が集まる結果となった。
//
//■Tips.[[2102年の聖杯戦争]]
//今までの泥聖杯戦争企画と異なり、元となる型月作品が一切存在しないオリジナル聖杯戦争企画。
//近未来における電脳世界を舞台にした聖杯戦争ということで大きな盛り上がりを見せ、ヒロインごとの3ルートも作られた。
//これ以降、元となる型月作品のない泥聖杯戦争企画が主流となっていく1つの転機となった泥企画である。
//ルートが分岐したとはいえ、ヒロインと主人公のエロ描写もかかれゴールインまで行ったことも特筆すべき点である。
//
//■Tips.[[喪失帯>喪失帯まとめ]]
//泥で異聞帯のような独自の世界観を形にしようと用意された世界設定。
//切り離された神代のテクスチャが様々な概念を取り込んで独自に進化した世界ということで、様々な世界観を設定できることが特徴。
//主に世界観を0から設定することを得意とする「」ゲミヤが次々と喪失帯を投下したで注目を浴びた。
//学園物にサーヴァントを投げ込むといったマウントレーニア(後に泥組織に変更)などの芸当も可能。
//
//■Tips.[[東京聖杯戦争]]
//「マスター全員がすでに死亡した状態から始まる」という非常に特異なシチュエーションから始まった聖杯戦争企画。
//既に死んでいるというだけあり様々な事情を抱えるマスターや、知事と言う立場を持つ黒幕という部分も他の企画とは違いを見せた。
//後述する大阪聖杯大戦や函館聖杯探索と世界観を同一にするという意味でも、企画と言うよりシェアワールド的な様相を持つ。
//
//■Tips.[[大阪聖杯大戦]]
//上述の東京聖杯戦争から1月後に大阪で発生した聖杯大戦企画。
//「とにかくド派手な聖杯戦争」をコンセプトとし、かなり名の知れた、戦いも派手なサーヴァントが集う企画となった。
//参加者以外にも今までの企画内での泥がエキストラで登場するなどと言った形でも注目を集めた。
//
//■Tips.[[函館聖杯探索]]
//東京、大阪と続いて3つ目となる函館が舞台の聖杯を3陣営が探し求める企画。
//モザイク市においても活躍していた少女、鴈鉄梓希を主人公に据えて3つの陣営による協力や裏切り、そして戦いを描く物語。
//後日談が描かれたり、以前泥メロイ教室で出番のあった生徒たちが大人になって再登場したりなどと言った面でも注目を集めた。
[[←Prev>Invitation_6『混沌の世は一区切り、されど泥濘に限りなく』]]

[[&ref(https://image01.seesaawiki.jp/k/a/kagemiya/_F32xWgBoN-s.png)>https://image01.seesaawiki.jp/k/a/kagemiya/_F32xWgBoN.png]]
''綺羅星潜入中の我ちゃん''




「ねぇねぇ聞いた?」
「何の話?」
「特別な招待状の噂!」
「白魔女のお茶会じゃなくて?」
「そこに行けば願いが叶うとかなんとか!」
「招待されても、ここからまず出るのが大変じゃない?」
「あー、そういえばそうかもね」

姦しくも華やかな雑談が紡がれ続ける。その様子はまさしく、思春期の乙女たちの花園と言って相違ないだろう。
ここは綺羅星の園。魔女術を中心とした薬学や黒魔術全般を学ぶことができる、スウェーデン僻地にある学舎だよ。
所属する魔術師たちは、見ての通り全員女性だ。普通に入学してきたもの、スネに傷のあるもの、まぁその裏にある事情はいろいろだな。
だが基本的に塾長はそんな彼女たちを分け隔てなく受け入れている。入ってはならぬのは男性のみだ。何故って? そういう……趣味かなんかじゃないか?
我は女だから問題なく入れるが、お前はそうはいかんだろう多分。という訳で、此度は我だけが顔を出す方針で乙女の園に潜入することとした。

「レンフィールド先輩は招待状もう受け取りました?」
「んー? そもそも今初めて知ったっすよ? 誰がばらまいているんっすかね?」
「気づいたら机に置いてあったとか、下駄箱にあったとか、まちまちみたい。ぼくも気づいたら置いてあって」

乙女の花園と言うだけあって、さすがに噂の広まりも早いな。
"噂を好む"という人間の本質は何処にあっても変わらないものだが、表出するにふさわしい場所と言うモノがある。
その一つが、こういった思春期の少女たちが集まる場であると思っているよ。そういった性質を今回は利用させてもらった形になる、かな。

「なるほど良い手だ。しかし、塾長に黙ってせこせこ仕込むのは感心しないな」
「……予想よりも、随分と早い登場だな。お前とは、晴明やアンバルブライベン並みに会いたくなかったわけだが」

人気のない場所までひとしきり歩いた途端、背後から声が響いた。
振り向かずとも分かる。ホロシシィ・ウリュエハイム。かつて■■とすら呼ばれた災厄級の女。
それがどういう心変わりをしたのか、今やこの通り乙女同士のキャッキャウフフを眺めるために学舎を作る程度の塾長に収まっている。
昔はそれ相当に尖っていた女と聞いてはいるが今は……と油断していたが、我に気づかれずにこうして姿を見せるということは腕は鈍っていないようだな。

「会いたくなかったって? へぇ。
 なのに顔を出しているとは、ひょっとしてツンデレと言うやつかな?
 君のような可愛い少女なら、入学願書なら随時受付中だよ」
「悪いな。我は誰のものにもならず、何物にも染まらない。燦然と輝く綺羅星の夜空は、我という星にとって狭すぎる」

振り向き、肩を竦めながら我は笑った。
一応敵意はないようだが、こういう輩は敵意がなくとも平気で殺せるタイプだから油断は出来ん。
既に招待状は配られている。生徒に危害を加える気は我にはないし、土夏などのような聖杯戦争下という緊迫した状況でもない。
うまく話せば逃げ切れるとは思うが……これ逃げ切れるか? 詰みじゃないのか?

「いま綺羅星で持ちきりの、"新世界への招待状"の出どころだね?」
「左様。と言っても危害はないぞ? 取って食ったり痛い目を見せようという訳じゃあない」
「それは君の態度からもわかる。けど、招待された生徒たちが次々と学園から消え去っているようだ。
 私としては、自慢の花園を踏みにじられたのは我慢が出来ない」
 
「というわけで、さようならだ」

抵抗する暇もなく、我は一瞬にして魔女の攻撃を喰らって消し炭と化した。
死体も残らぬ一撃だ。たった1人の生徒にすら異変を悟らせぬ見事な攻撃だったと言わざるを得ないだろう。
いやー、地雷だったな……。マジ痛い。死ぬほど痛い。多分あの後、塾長は招待状を全員に捨てさせたかもしれん。
だがその前に招待された者はいるかもしれんし、あるいは塾長が動く直前に招待されてしまった乙女らもいるかもしれんな。
だとしたら、果たしてどのような人物が来るのだろう。そんな風に思いを馳せながら、我は次の泥濘の舞台へと移行するのであった。





次に辿り着いたのは、電脳世界にある仮想世界サービス、クオリアだった。
目の前には様々なアバターを纏った人々が行き交う不思議な光景が広がっている。立体に浮かぶ電光表示が近未来感を漂わせているな。
それもそのはず。今我らがいるこの世界の年代はざっと2102年。今いるべき時代からざっと80年後の世界になるな。どうだ凄かろう?
3000年代に行ってるから驚きがない? いや、うん。そう言われるとそうだなとしか言えないんだが……。

そして、このような特異な領域においても聖杯戦争は発生する。
ここもまた泥濘の世界に属する可能性の1つなのだ、当然であろう? オランダや土夏と同じように、運命からは逃れられんのだよ。
もっとも、ここは土夏やベルリンと異なり、似通った道筋が何一つとして存在しない聖杯戦争を辿った点において、1つのターニングポイントだと思っている。
舞台の違い、が真っ先に挙げられるのだろうな。このような場で聖杯戦争が発生するという可能性を誰も予期できなかった。だからこそ誰も知らぬ物語が紡がれたのだろう。
その味はまさしく甘美。こういった物語を我は求めている。っと、最初の目的を忘れるところだったな。ひとまずは、招待状を配るとしよう。

「へぇー、民家の中の小物まで再現されているのか……リアルだな。
 いや、違うぞこれ? 招待状? この宛名……僕宛てみたいなのだが」
 
「えっと、ランサー、こんなの道に落ちてたんだけど、何か知らない……よね」
「マスター。何か危険があるかもしれないので、そう言った物はうかつに拾わないほうが……」
「だ、だって! 私の名前が書いてあったから気になっちゃって」

聖杯戦争が行われるのは、かの土夏市を再現した電脳エリアの一角。
そこにあらかじめ招待状を配置させてもらった。仮にも戦争中だからな、手渡しではかつてと同じように受け取られはしないだろう。
電脳メッセージでポンと表示する手もあったが、そこまで干渉しすぎると鱗画聖永の奴に気づかれるんじゃないかと思うのでやめておいた。

ああ、この聖杯戦争にも黒幕がいる。
先ほど招待状を手に取っていた青髪の青年、水無月サクヤもその関係者だよ。
関係者と言うかなんというかだが、故に奴はこの聖杯戦争において中心に立つ運命を背負う。
だがそんな運命に負けず、奴はこの聖杯戦争を潜り抜けた。その果てに誰と運命を共にするかは、我自身も断言できかねるがね。
ああいう奴にも、新世界に来てほしいところだ。なにせ叩けば響くような良さと切れる頭をもっている。きっと、奇跡の蒐集に役立つだろうさ。

──────と、他の連中らにも招待状が手に渡った事を確認しつつ、我は先を急ぐ。
次に向かう世界は、聊か行くのに手間取る故な。我は"神"が存在する場所ならばどこにでも遍在できる。
それはこのような、2102年という遥か未来であっても変わりはない。どれほどの月日が経とうとも、神と言う概念はこの地上から消えないのだから。


言ってしまえば、神のいない領域には我は手も足も出せぬのだ。


そんな場所があるのか? と聞きたげだな。なれば答えてやろう。
この世界はな、星の表層を覆う1つのテクスチャという概念によって成り立っている。今はありていに言えば、物理法則というテクスチャが支配している状態だな。
かつての神代は、こういったテクスチャが別れ存在していた。かの救世主がそれを1つに統一した事で、この世界は神の時代から人の時代へと移り変わったのだ。

ならば、その失われたテクスチャはどうなったと思う?
ありていに言えば、星の内海に沈んだのさ。大半はそりゃあもう滅び去ったさ。なにせすでに死んだ世界の断片なのだから。
だが、一部は生き残った。聖杯を宿し、地表から情報をコピーし、さながら死骸に沸く蛆の如くに──────人々は地の底に沈んだ世界で生き続けた。

土夏、伯林、ストゥーラ、夜観、クオリア……様々な"切り離されし"世界を辿ったが、次に向かうのはレベルが違う。
そもそも人類史と辿った歴史が違う。法則からして違う。ゆえにこそ、我が簡単にいくことすらままならん。なにせ"神"が居ない世界なども平然とあるのだから。
今回は少しばかり、裏技を使って移動するとしよう。──────失われた歴史の果て、"喪失帯"に。





『……っつつつどういうことよ!!
 この際間抜けな芝居をさせられたのは捨て置くわ、あとで引っ叩いてやるけど!』
『い、今凄く貴女が来てくれたことに感謝していますぅ……! 魔女様じゃなくて本当に良かったぁ……!』
『収集つきそうにねえじゃねえか…相変わらずの大所帯だな嬢ちゃん』

地の底に揺蕩う世界の死骸、喪失帯へと我は着地した。
この喪失帯は言葉が力になる世界。言ってしまえば"誰もが神の如く世界を変えられる世界"。
それゆえに神の信仰はとうに尽き果て、世界の理不尽を掻き消すために人が人を殺し相争う修羅道と化している。
だからこそ我は、本来ならこの喪失帯に姿を現すことは出来ないのだが……今回は偶然、運よく、ジャックポットが発生したようだ。

「────テメェは」
「その顔を見れただけでも、来た甲斐があったというものだな」

居合わせた"カルデアのマスター"と、我は挨拶を交わす。彼らは偶然、この喪失帯に霊子記録接続されたようだな。
霊子記録接続とは、喪失帯が地表の世界から様々な情報を複写し世界に取り込む事象を言う。これにより人間がコピーされた場合、それは異邦人と呼ばれその世界の住人となる。
フィニス・カルデア。それは人理を保障するべく、疑似天体カルデアスにより人理のよどみである特異点を解決する魔術組織の事を言う。
以前に訪れた泥濘の新宿なども、元は彼らが管轄するべき異変なのだ。もっとも、新宿は奴らでは片付けることができず常設されているが。

ああ、言い忘れてたが、我はカルデアとも縁があるんだよ。
その時に登録された霊基の名は、何だったかな。アンナ・シュプレンゲルの方だったか、メルキゼデクだったか。
ま、どうでもいいか。兎角、その縁を繋げて何とかこうして喪失帯までたどり着くことが出来た次第であるわけだ。

「ああ、暫し待て……おい、ヴィクティとやら」
「はい?」
「これを受け取るがよい」

流石のカルデアも喪失帯に関わるのは初めてらしく、混乱とてんやわんやが続く。
その混乱が一通り終息したところで、この喪失帯における中心──────ヴィクティ・トランスロードに招待状を我は手渡した。

「『いずれ必要になる』。受け取っておけ」
「なにこれ? 手紙? ……えー…破…………子………読めません!
 でも貰ったモノは取っておきますね! ありがとうございます!」
「……人選を間違えたか? まあよい。大事に保管しておくといいぞ」

ここから先の話は──────まぁ、ひとまずは割愛としよう。
この先彼らカルデアは、この喪失帯に潜む大いなる陰謀と過去、そして闇と恐怖に向き合うこととなる。
それはここで語るにはあまりに長く、険しく、そして素晴らしい物語だった。それはいずれまた、時が来れば語るとしよう。
1つだけ言えるのは彼女、ヴィクティ・トランスロードは全てを解決したということだ。その果てに、おそらく彼女は招待に応じるであろう。
その時は、盛大に歓迎してくれる。そう思いながら我は彼らから離脱し、その足で学園都市の空港から別の喪失帯へと向かった。



ん? 何を呆けている。ああ、普通に喪失帯を移動していることが不可思議なのか。
まぁそれもそうか。星の内海だの閉ざされた世界だの言えば、移動できること自体が不可解に思えるかもしれん。
今乗っている船は喪失帯交易船団『ゴールドスタイン・トレーディング』の船だ。密入航だがね。こういった星の内海を航海する連中がいるのも喪失帯の特徴だ。
これがある故、1度でもどこかの喪失帯に潜り込めさえすればあとは招待状を渡し放題だったのだよ。どうだ頭が良いだろう。

「新しいお客様なのじゃ」
「くーるびゅーてぃーなのじゃ」
「でもどこか抜けている感じなのじゃ」

というわけで、次の喪失帯についたのじゃが、なんかどこかで見た事あるようなナマモノがいっぱいいるようじゃ。
……。のじゃああああああああ!!? なんじゃこのぼでーはああああああ!!? あ、そうか…ここの喪失帯の聖杯は確かイザナミの遺体だったのじゃ。
先のエノキアンと違って神が存在する喪失帯なのじゃ! だから我のぼでーがこの喪失帯の幻想基盤に引っ張られる形に変わってしまったわけか……!
慌てふためきながらのじゃは招待状を号外新聞の如くばらまいてそそくさと後にしたのじゃ。のじゃああ……やばいこのままでは心までのじゃになってしまうのじゃ。

「招待状が届いているそうです」
「こんな僻地に? というかどうやって届けたんです?」
「分かりません……ひとまず内容を確認しようかと」

ひとまずダッシュで逃げ、移動した先はワシントン州レーニア山であった。
気付けば喪失帯から脱していた……いや、元々喪失帯だった場所が表層に現出したのか?
まぁ、何はともあれ、ここにも1つの組織が存在したことを思い出したので、ここにも招待状を配る事とした。

マウントレーニア。抑止力によって生み出された、宇宙全体の「発見、探査、解明」を目的とした機関だな。
機関と言っても、今まで巡った泥濘の組織のように魔術師たちが集っているわけではない。ここに集っているのはサーヴァントたちだ。
いわゆる1つの学校の如く、彼らは初等部や中等部、高等部と別れ日々この宇宙の謎を解明し、発見できるよう過ごしている。

彼らは皆、無機物より英霊として昇華された者ら……とりわけ"ハービンジャー"と属される英霊が多い。
そう言った存在を効率よく使い、ガイアとアラヤが双方に危惧するモノを食い止めるために作り出された場所である。
こういった場に集う者らは、解析や観測に長けている者たちだ。そういった彼らを新世界に招いていいかと、少し危惧が無いと言えばうそになる。
新世界の仕組みなどを解き明かされたら拙いしな……。だが、うん、しかし招かぬわけにもいかないのがジレンマと言えるだろう。

……しかし、ここは確か喪失帯だったはずなのだが……。
そんなことを不思議に思いながらも、地上に出れたついでにもう1つ、聖杯戦争が起きていた場所を思い出し、我らはその場へと向かうのであった。





「ん……あれ? あの落ちてる手紙って──────」
「どうしたのアズキ。なにか、あった?」
「いや、ちょっと気になって。確かあれ、大阪でも同じものがあったから……」

そうして我々は函館へとたどり着いた。
我らだけでなく、函館に聖杯を求めし3つの陣営もまた、同じように辿り着いたようだな。
ここで起きたのは聖杯戦争でも大戦でもない。言うなれば聖杯"探索"。複数の陣営が互いに入れ替わり立ち代わり、あるいは協力し合い時に裏切り……。
最終的に聖杯を手に入れるか、あるいは解体するかという物語が繰り広げられた場所となっている。

この探索より以前、2つの戦争が起きていてな。この北の大地はそれら2つの戦いを受け継ぎ、そして終着点となる大地となる。
東京で勃発した、死者が再び生を掴む為に足掻いた"戦争"。大阪で勃発した、竜種の残骸を保有する極道による"大戦"。どちらも多くの運命が交差したモノよ。
当然その時代の連中、その戦争や大戦の参加者らにも招待状は配布する。というかすでに配布した。
その中でも、先ほど招待状を拾った彼女の立ち位置は特異ゆえ、分割する形で配ったのだ。

鴈鉄梓希。今は時計塔の数名やらと行動を共にしているが、かつての大阪で聖杯大戦に巻き込まれた身でもある。
その際はサーヴァントなどを引き連れるでもなく、ただ巻き込まれた一般人であった。だが此度は違う。聖杯の破壊をスタンスとして動いているようだな。
まぁ聖杯大戦を目の当りにしたら、聖杯なんて危険なものだと思うだろうがね。我としてもそう思うよ。
そんな聖杯に手を伸ばしたい魔術師と戦いながらも、彼女は聖杯を破壊する決意を固めるのだ。
聖杯は争いを、そして願いと言う結実を生むものだから、否定したくなる気持ちもわかる。


だが、お気づきだろうか?
今まで廻ってきた物語には、ほとんどに聖杯が関わっているということに。


聖杯戦争や大戦は言うまでも無し。
特異点と言う存在は聖杯が無ければ形にならないし、組織や家系が追い求めるモノもまた聖杯だ。……いや、始まりの大敵とか求めている家系もあるけど。
とにかく、だ。この泥濘の世界が何故"泥濘"たるか? その所以こそ、まさしくこの聖杯と言えるだろう。人間は、本能として聖杯を求めてやまないわけだ。
人は抱くのだ、願いを。人は追い求めるのだ、望みを。その願いの為に命すら捨てても惜しくない。そんな渇望の行き着くさきこそが、聖杯戦争という概念なのだ。
そういった聖杯戦争が行くたびも繰り返され、時に折り重なり、影響し合い。あるいは全く切り離された世界であろうとも混沌の人間関係を作り出す。
ゆえにこその、泥濘なのだ。

この函館の模様は、その願いを求める人々の争いの終着点に相応しいと言えるだろう。
聖杯という概念が目の前にある。万能の願望器が、あるいは無限に等しい魔力リソースが、手を伸ばせばそこにある!!
それを破壊したいと願うか? それもまたよし。己の渇きをいやすために使うか? それもまた善なり。
何故なら間違いなどないのだから。否! そも願いに"間違い"を突きつけられる人間がどこにいようか!!

そういった願いの最果てにこそ、我が招待する新世界がある。
終着点へと至りし彼らに、その次なる果てを示してやるのもまた一興、と言ったところだな。
まぁ直接顔を出したら疑われて攻撃されかねないから、慎重に、慎重にばらまくとする。

……ばらまき続けて、そういえばこの聖杯探索ってエルメロイ教室の化物共(未来の姿)が割と参加してたよな…と思い出す。
あれ? あいつらに招待状の存在バレたら、解析されかねない……? い、いや、やめておこう。とりあえず今は責務を果たそう。
そんな風にばらまきながら、我は次にどこに向かって招待状を渡そうか…などと思いを馳せるのだった。


次は、そうだな。
聖杯に関わる物語だけでなく、別物を巡る物語に向かうなどするか。
例えばそう……聖胎とか──────あるいは、疑似聖杯ヤオヨロズとかな。


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◆  ◇  ◆



■Tips.[[綺羅星の園]]
泥組織というか、泥学園。ある日前触れもなく作成された。
魔女の卵だけが入学できる乙女の花園というお題目で多数の思春期な乙女が集まった。
聖杯やサーヴァントは一切かかわらないが、様々な厄ネタや秘密を抱える乙女たちによってさまざまな人間関係が交錯するように構築されていった。
そもそも塾長自体が背後に色々と抱えている様子でもあるので、そういった意味でも過去や事情持ちの女生徒が集まる結果となった。

■Tips.[[2102年の聖杯戦争]]
今までの泥聖杯戦争企画と異なり、元となる型月作品が一切存在しないオリジナル聖杯戦争企画。
近未来における電脳世界を舞台にした聖杯戦争ということで大きな盛り上がりを見せ、ヒロインごとの3ルートも作られた。
これ以降、元となる型月作品のない泥聖杯戦争企画が主流となっていく1つの転機となった泥企画である。
ルートが分岐したとはいえ、ヒロインと主人公のエロ描写もかかれゴールインまで行ったことも特筆すべき点である。

■Tips.[[喪失帯>喪失帯まとめ]]
泥で異聞帯のような独自の世界観を形にしようと用意された世界設定。
切り離された神代のテクスチャが様々な概念を取り込んで独自に進化した世界ということで、様々な世界観を設定できることが特徴。
主に世界観を0から設定することを得意とする「」ゲミヤが次々と喪失帯を投下したで注目を浴びた。
学園物にサーヴァントを投げ込むといったマウントレーニア(後に泥組織に変更)などの芸当も可能。

■Tips.[[東京聖杯戦争]]
「マスター全員がすでに死亡した状態から始まる」という非常に特異なシチュエーションから始まった聖杯戦争企画。
既に死んでいるというだけあり様々な事情を抱えるマスターや、知事と言う立場を持つ黒幕という部分も他の企画とは違いを見せた。
後述する大阪聖杯大戦や函館聖杯探索と世界観を同一にするという意味でも、企画と言うよりシェアワールド的な様相を持つ。

■Tips.[[大阪聖杯大戦]]
上述の東京聖杯戦争から1月後に大阪で発生した聖杯大戦企画。
「とにかくド派手な聖杯戦争」をコンセプトとし、かなり名の知れた、戦いも派手なサーヴァントが集う企画となった。
参加者以外にも今までの企画内での泥がエキストラで登場するなどと言った形でも注目を集めた。

■Tips.[[函館聖杯探索]]
東京、大阪と続いて3つ目となる函館が舞台の聖杯を3陣営が探し求める企画。
モザイク市においても活躍していた少女、鴈鉄梓希を主人公に据えて3つの陣営による協力や裏切り、そして戦いを描く物語。
後日談が描かれたり、以前泥メロイ教室で出番のあった生徒たちが大人になって再登場したりなどと言った面でも注目を集めた。

どなたでも編集できます