その真名は、史実においてダンテの妻となった
ジェンマ・ドナーティ。
神曲は愚か史実においてもほとんど情報のない女性であり、各資料からも
・ダンテとの間に3人ほどの子を残したということ。
・ダンテより長生きしたこと。
・ダンテの死後、押収された彼の財産の返還をフィレンツェ政府に要求したこと。
程度のことしか分かることがない。
ジェンマの存在はダンテにとってはある種失恋、人生の転換期の象徴。
絶対的に逆らうことの出来ない『現実』として立ちはだかる壁であった。
そのことは、彼の著作や神曲の中で彼女の存在がまったく触れられていないことから読み取ることが出来るだろう。
事実、ダンテとジェンマの関係は冷え切っており、子こそ残せど二人の間に愛情はほとんど存在しなかった。
その最大の理由は、他でもない『淑女』ベアトリーチェ。
自身の恋人、半身……或いはそれ以上の何か……と心を結べず、挙句の果てに喪った悲しみ。
その悲しみをジェンマは理解することが出来なかったし、ダンテも理解させることが出来なかった。
自分の内界にのみ存在する喪失の痛みは、ダンテを稀代の詩人として完成させたが、家人としてのその生活を破綻させてしまったのである。
互いの価値観の違いを結局埋めることが出来ず、二人の仲は次第に冷めきっていった。
ダンテは家に帰らず女達の間を遊び歩き、すばらしい詩を書く。
ジェンマは家に留まり、実家からの結婚資金を切り崩しながら家事に努める。
そして1301年のダンテのフィレンツェ追放から、二人は本格的にその袂を分かったのである。
しかし追放以降もジェンマはダンテへの資金援助を行っていた。
形式的なものではあったがジェンマは最後まで『ダンテの献身的な妻』であったことには間違いない。
結ばれることなく永遠にダンテに思われるようになったベアトリーチェが『淑女』として語られたように、
許嫁として結ばれはしたがダンテに思われることのなかったジェンマは『魔女』として、歴史の影の中に消えることとなっていった。
――ところで、ダンテの残した『神曲』に、こんな一節がある。
「人生の道半ばで、正しい道から逸れてしまった私は、いつか暗い森の中に迷い込んでいた」
正しい道から逸れた? 私と結婚しておいて?
正しい道から逸れた? 私に子供を産ませておいて?
正しい道から逸れた? 私の家から金を毟り取っておいて?
正しい道から逸れた? 私と子供を差し置いて、彼女を心に置いておきながら、更に別の女と寝るあなたが?
ほう。
ほほう。
なるほど。
なるほどね。
そう思ってらしたの。
へぇ。
ふぅん。
暗い森ね。
うふふ。
ははぁ。
はぁ。
それはそれは。
言ってくれるじゃない、この■■■■野郎――!!
『ベアトリーチェ』という名、姿、設定は全てフェイカーのスキルによってでっち上げたもの。
「どういう形でもいいので一回以上はダンテをぶん殴ってスッキリしたい」
というジェンマの怨嗟が、どういうわけかベアトリーチェという殻を得てついに結実した姿である。
その本性はダンテが生前書きながらも、表に出ることなく消えていった無数の『没稿』と『文字になり得なかったインク』から成る形なき怪物である。
本来、ジェンマ・ドナーティという英霊は存在しない。
彼女は単なるどこにでもいた一人の主婦で、どこにでもいた一人の女だからだ。
しかし、だというのに、彼女は『ダンテ・アリギエーリ』が存在する場所に超低確率で化けて出る。
英霊ではなく反英霊、もしくは単なる悪霊か、怪異か、もっと質の悪いなにかか。
まさしくダンテという存在に突きつけられた『現実』の象徴。
復讐を求めた死せる私への答え。
妻なるものの同盟者。
貴様にとっての悪夢だ!!
【台詞】
「あぁ、こういう時なんて言えば良かったのかしら……そうそう、こうだったわね。
Lasciate ogni speranza, voi ch'entrate.(貴方にもう希望なんてないのよ)」
「ch'assolver non si puo chi non si pente(後悔することね、おバカさん)」
「私にだって歌いたい歌があったわ。恋だってしたことがある。青春があったの。
でもね、それは全部あの神の詩の前に殺された。
分かるかしら。私の人生は虚構に負けたのよ。
もう現実にはいない彼女への思いに、現実の私の人生が負けたの」
「聞け、神の曲を紡ぐ者よ。
聞け、天使の名を謳うものよ。
我が名はジェンマ・ドナーティ。
貴方に子宮を貸し与えた、唯一無二の妻!」
【因縁】
ベアトリーチェ
恋?敵。実際は知人以下の存在で、許嫁が恋破れた相手という程度の認識でしかない。
しかし奇しくも、ジェンマの棺はベアトリーチェと同じ教会に修められている。
そういった意味では非常に親しい『隣人』であると言えよう。
同じ男と結び付けられ、同じ男を愛し、同じ男を憎んだ、全く違う二人の女。
その縁から、ジェンマの怨嗟はベアトリーチェの影法師と成り得たのかもしれない。
『ジョヴァンニ』『ヤコポ』『ピエトロ』『アントニア』
ダンテとの間でジェンマが生んだ子どもたち。
その数は3人とも4人とも5人とも言われ、正確な数は分かっていない。
放浪の末に神曲を着想し、ラヴェンナに腰を落ち着けたダンテに引き取られてジェンマの元を去っていったとされている。
それについてジェンマがどういう思いだったのかは定かではない。
ただ、それでもあの子たちは私が確かに子宮に宿し、血を流して産み、時を割いて育てた子ども達。
可愛くないわけがないでしょう?
ダンテ
「Siete della patetica feccia」
【その他】
『七獄に堕ちよ■■■■』
ランク:B+ 種別:対■宝具、固有結界 レンジ:1〜666 最大捕捉:666
↓
『七獄に堕ちよクソ野郎』
ランク:B+ 種別:対夫宝具、固有結界 レンジ:1〜666 最大捕捉:666
真名『ダンテ・アリギエーリ』を含む霊基への即死成功確率超大アップ。
『/蹂奏』
ランク:B 種別:対■宝具 レンジ:1〜666 最大捕捉:666
↓
『/蹂奏』
ランク:B 種別:対夫宝具 レンジ:1〜666 最大捕捉:666
真名『ダンテ・アリギエーリ』を含む霊基への最終ダメージ超大アップ。