kagemiya@ふたば - メネス
「全リンク接続試行............404エラー」
「……良かった。今日も何事もなく、平和に終わりそうだ」


【CLASS】ゲートキーパー
【マスター】ミーナ・“メイプル”・フィリップス
【真名】メネス
【異名・別名・表記揺れ】メニ・ナルメル・ホルアハ・スコルピオン・ホルス
【性別】不明
【身長・体重】143cm・43kg
【肌色】濃い目の褐色に白い刺青のような線 【髪色】銀 【瞳色】左目・赤 右目・銀 ただし平常時はメカクレ
【外見・容姿】長い髪を三つ編みでサイドに垂らし、ロータスの意匠の入った白いシルクと黄金の装飾を纏う、少年とも少女ともつかぬ人間
【好きなもの】人類、特に星の開拓者には特別な親愛を抱いている・宇宙開発全般・SF小説
【嫌いなもの】諦念・拒絶・遊星
【特技】情報技術全般・ペットボトルロケットの制作・ハグ
【願い】現在は取り立てて無し
【天敵】ヴェルバー02・人類
【地域】神代エジプト
【元ネタ】史実、エジプト神話およびマネト著『アイギュプティカ』
【年代】BC3100〜
【属性】混沌・善
【天地人属性】人
【その他属性】人型
【ステータス】筋力D 耐久A 敏捷E 魔力A++ 幸運D 宝具EX


【クラス別スキル】

財宝守護:A

ゲートキーパーのクラススキル。対侵略、もしくは人理の防人とも呼ばれるもの。
サーヴァントを不動の最終防衛線として特化させ、強化するスキル。
ゲートキーパーは聖杯や土地や神霊、またはそれに類するモノと直接的な契約で結ばれており、人間のマスターを必ずしも必要としない。
その為、侵蝕耐性、粛清耐性、そして莫大な量の魔力供給という破格の効果が付与されている。
ただしこれは彼が財宝――――例えば黄金、例えば聖杯、例えば神霊、例えば国、例えば信念――――を狙う前の敵に立つときのみ、効果を発揮する。

――――当然だが、このスキルは守護すべき対象を攻撃することを禁じている。
無論、このスキルを持つものはソレを守りたいからこそ召喚に応じるのであるが。

【固有スキル】

千里眼(偽):EX

幾度の思考によって疑似的に未来・現在・過去視を可能とするスキル。
全知の魔眼(ウジャト)とまで謳われた情報処理・演算能力。

カリスマ:B+

エジプトに所縁のものに対してはA以上相当のカリスマとして機能する。

■空の刻印:C--

生前メネスであったことを示すスキル。
――――それと同時、これは遊星の侵蝕によるヴォイド化の汚染度合いをも意味する。
現在の容姿、人間性、時折訪れる痛みと破壊衝動は、このスキル……すなわちヴェルバー02に起因している。
容姿が微妙にアルテラに似ているのはそのため。

機能していないスキル


【宝具】

賢者の砂ジェフティ・クラスタ

ランク:C〜EX 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
生前のメネスの友人たちが残した、賢者の贈り物。知恵と発明を司る三神より生まれし神造兵装。
最小なる賢者の石最大の集合体。神代に創造された、現世で最も複雑なオーパーツ。
死してたった一人となる彼の無聊を慰めるための、空前絶後のアルバム。
一粒一粒はマイクログラムオーダーの大したことのない賢者の石。
しかしながらそれを一個の群体として取り扱った結果、入力された情報を完全に再現する事象加工・再現機、マシナリーエーテルと化した。
これを使用するにはクラスタ制御に必要な膨大な演算力、および正確無比な設計図やコピー元の情報が必要となるが、メネスは千里眼(偽)によりこれを可能としている。
事象加工は現代の物質を加工する機能。これによって自己複製を可能としており、時間経過によって増殖する性質を持つ。
事象再現は砂の量に応じた規模の事象を再現する機能。この「事象」には神秘や生命といったものも含まれているが、使用者の記録の関係で神代エジプトのものに制限されている。
メネスはこれを手足のように操り攻撃や防御を行う。神代エジプトの神秘を纏う砂の大質量はそれだけで恐ろしい威力を誇り、また大抵の攻撃を吸い込みきってしまう。
砂の量が一定数に到達することで高度に編みこまれた神秘――――例えばセルケトの化身の大サソリや、対神対粛清防壁メンフィス等――――をも再現する。
膨大な消費魔力と増殖時間さえあれば神代エジプト軍、全艦隊を再現することさえ可能であり、これを打倒、あるいは防ぐことは並大抵のサーヴァントではかなわないだろう。
ただし通常の聖杯戦争の枠組みにおいてその消費リソースの量は現実的とは言い難く、本領を発揮することはない、はずだ。

赤き瞳の太陽聖典ラーカノン・ウラエウス

ランク:A+ 種別:対人宝具 レンジ:1〜99 最大捕捉:1〜50
メネスが生前に持ち得ていた権能『赤熱の終焉太陽セクメト・ラー』を魔術的に再現した宝具。
太陽―地球間にあるラグランジュポイントL1に展開された重力レンズにより太陽光を収束、右目で捉えた対象へ凝集光による熱量攻撃を行う。
粛清攻撃でもある本宝具はラーの怒り、もしくは天罰神性セクメトの具現と考えられ、太陽の、時に暴力的な側面を強調したものと考えられる。
所詮は再現であり、出力は本来のものには遠く及ばない。それでも、現代においては驚異の神秘である。

【Weapon】

『錫杖“ホルス”』

生前からメネスが使用していた、黄金の隼の意匠を持つ杖。
現在は『賢者の砂』の管制機能が付与されている。
これを媒介に神代エジプト魔術の使用なども可能。

『紅白王冠“ベンベン・プスケント”』

彼が頭部に付けている、小さなクラウン。白と赤、二色のパーツと円により構成されている。
足先が触れていればそこが海の上であろうと彼が立てるだけの土地が形成されるという強力な加護を持つ。

【解説】

紀元前3000年代に統一されたエジプト。マネトの王名表に記されたその統一エジプト王朝最初のファラオ。統一王。黒の神祖。墜落者。
当時、神代エジプトは魔術によってあらゆるものを使役し、互いの神話世界を喰らい合い奪い合うという恐るべき場所だった。
本来これを諫めるはずの神々もまた使役され、戦力として、人間にとって都合の良い力を引き出すモノとして扱われていた。
メネスは、この現状を憂慮した古き神々によって地上に遣わされた調停者であり、破壊者。

…………そう当時のものは語り合い、そしてそれは、一つの伝承へと変化した。


――――ネケンと呼ばれる都市の近く、ナイル川の畔に打ち上げられたところから、再び記録は始まる。
システム・オグドアドの招集命令。
どこから放たれているかもわからないそれにより、永い眠りから目覚め、再起動。地表での活動を開始した。
そこではたと気づく。
全身に走る痛覚。目の前のものを殲滅し焼却し消去してしまえという破壊衝動。
かつての戦闘で刻まれてしまったらしい、ヴォイドの因子より放たれる、悪性指令。
その痛みを知ったとき感じたのは、きっと、初めての、戸惑いという感情。
いやそもそも、今までは感情というものさえ―――――――――――。
その全てを抑え込み、彼は歩いた。人の声のする場所へ。

ネケンはその当時、別の都市――――別の世界の侵攻により瓦解寸前まで追い詰められていた。
目覚めた彼に、当時のネケンの者たちは縋りつく。
「助けて」「私たちを救って」
救いを求める、一切の関わりを持たない生命体たちの言葉に、なぜか、彼は首肯した。
――――――――それが、始まりの一歩。

それ以来、メネスはネケンの軍勢を率いた。
エドフの軍を無力化し、次に来るテーベを無力化し、河を下る形でコプトス、アビュドス、エレファンティネ……オンボス。
下したことで合流し、膨れ上がっていく軍団と共に百年かけて上エジプトと呼ばれた地域を平らげた。
その過程にあった、なつかしく見覚えのある技術や、魔術師に使役されていた破壊の形をした神格たち。これらは全てメネスが取り込み人が触れられないようにした。
侵略船団アポフィス、その頭脳オグドアド。目覚めた時より頭に鳴り響く、彼らの命令を聞きながら。
そうして、彼という嵐、彼女という太陽は将来エジプトと呼ばれる世界を更に飲み込んでいく。

セト、ジェフティ、ソベク、ネイト、イシス、ハトホル、クヌム、プタハ、ネフティス、ウアジェト、ネクベト、セルケト。

後年では有力な神霊となった数多の魔術師、神格、ニンゲンを従え、散らばった技術を拾い集め、彼はついに全土の統一を果たす。
上と下、合わせて200年。
老朽化する有機ボディを破棄して名を変え印を変え、それでも変わらぬ意識を保ちながら、彼はそれを成し遂げ。
そして、押さえつけていた破壊衝動に任せるままに、自身の上位存在であった、同胞であった、同郷であったオグドアドを破壊し、今度こそ封印した。

そうして、エピローグへ、たどり着いた。

『オグドアド破壊によるフィードバックは、ただ死ぬんじゃない。機能をリセットされ全ての記録を紛失し、虚数空間を漂う一個の泥へと戻される』
『だからすまない――――セト』

「…………命令しないのか、いつものように。さすればオレは、常のように唯々諾々とそれに従うだろう」

『結局のところ、ボクのわがままなんだよ、これは』
『その為には、船体の修材として呼び戻されるわけにはいかない。それだけのことさ』
『他の者たちではこの体を破壊できない。あの船骸さえ退けた君だけがそれを行える……お願いだ、セト』

『ボクは君の手で、死にたい』

 大気の真エーテルが軋む。七分に渡り術式を展開する大魔術は物理法則を書き換え、死を知らぬモノにさえ死を与えるほどの破壊の力へと変貌する。
 その輝きの中で、セトは問う。

「お前は、答えを得られたのか? この星の人間に手を貸した事。他国を侵略と略奪ではなく併呑と共生で済ませた事。自身の上位存在であるオグドアドを破壊した事」

「…………そこまでして、何を、為したかったのか。その答えを」

『――――いいや。ボクにはまだ、わからないんだ。予想はできるのに、確信はない。ごめんねセト、いつか答えると、君に勝った時に約束したのに』

 術式の構成が終了する。あふれるほどの輝きはセトの手のひらに集い、眩く光る長い、長い牙へとカタチを変える。

『でもさ、今、この時に到ったこと、後悔してないよ。だから、泣かないでおくれ』

『…………ありがとう、さようなら。君のこと、なんだかんだ言って好きだったよ、セト』

 腹部に突き立った砂塵の牙は、オグドアドを破壊し、得たはずのものを取りこぼしながら壊れていくメネスを死に追いやるのに、十分な威力だった。
 力を失い、倒れながらメネスは声にならぬ声で言う。
 友に礼を。世界に感謝を。人の行く末に祝福を。
 そして、この問いかけに解答を。 



――――王はカバに齧られて死んだ。
後から来た者たちへ、セトはそう言い放った。

それが、歴史に残る彼の最期。

ここで記録は終了する。





生前のボクは、考察はできたけれど最後まで確信に至ることはなかった。
請われるままにナイル川を遡上し、危険を排し人々を傘下に置き、ついにはシステム・オグドアド――――かつての自分の子らが残した最後の遺産さえ破棄した。

けれど今ならわかる。
だから素直に告白しよう。

なぜあの時、人々の願いを叶えたのか。
――――――――それは、嬉しかったから。必要とされたのが久々過ぎて、ヒトと言葉を交わしたのが久々過ぎて、嬉しかったから。

なぜ単純な侵略ではなく、文化を残すような形で国を、世界を統合したのか。
――――――――それは、悲しかったから。強制され続けた、全てを滅ぼす、という行いはどこにもたどり着かない、悲しいものだったから。

なぜ自身の最後の同胞であり、上位存在であったはずのシステム・オグドアドを破壊したのか。
――――――――それは、怒っていたから。否定され失敗したものを頑なに行おうとし、素直にこの星に受け入れられた同胞さえ否定したことに、怒っていたから。

結局のところ一体、何をしたかったのか。
――――――――それは、楽しそうだったから。かつての大敵、かつての宿敵。それら全てが手を結べば、一体どこまで行けるのか。なんて、セトが語った建国の夢。
ボクはそれに心奪われた。想像の羽が広がっていく。セトの話を飛び越えてその先へ。
空を見上げて、ボクは見た。
そこに映る遥かな未来を、その脳裏の内に見た。
街を超え国を超え大陸を超え星を超え銀河を超え。
そして―――――――――――――――――――――――――――――――――――――見知らぬ事象の地平、ソラの果てさえ乗り超える、人類の姿を見た、気がした。
そんな夢が、楽しそうだったから。

そんなこと、実は想像さえした事はなかった。
ヒトがどこまでいけるか、なんて。
けれどそれは、これまでに感じたことのないほど愉快な想像だった。
想像自体、初めてだったかもしれない。
創造と破壊はしたことあるんだけどね?
…………星を渡り、ソラの限界の先へ至るのは一大事業だ。
区切られた敷居の中で、行えるものではない。
けれど、ボクは笑おう。
種は、この地に既に撒いた。
だからやがて、彼らが『団結と協力セマ・タウィ』の言葉の元に一つへと纏まり、船に乗って星を飛び出す。
そんな荒唐無稽を笑って夢見よう。
飛び去る船にボクが乗ることはない。
死したるものはただ歴史に刻まれるのみ。
その見果てぬ先の未知の景色は無論、こんな千里眼風情では届かない。
それでもいい。
見守り、見届け、そして朽ちる。
それこそが、ボクだけが見つけ、ボクだけが決めた、誰に憚ることもない、ボクだけの使命。
その時が来るまで、「我が財宝じんるい」を守ることが、ボクの仕事だ。
財宝守護人理の防人。好き好んで守護者と化した、神代の残滓の、最後の夢だ。

子らよ。手を取り合え。そして果てを目指して歩け。走れ。飛んで行け。

どこまでも、どこまでも。

それまではボクが、君たちを守ろう。

――――その時まで共に歩み、寄り沿ってみせよう。今度こそ。



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