ランク:EX 種別:対概念宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
アークエネミークラスの杞憂への特攻を持つ宝具。あらゆる不条理を跳ね除ける力を持つ。
もしもアークエネミーと対峙するならばどうにか彼女の身柄を手に入れる必要があるだろう。
宝具は無形の知識であり、アークエネミーが現れる時代では使用されない言語で編まれている。
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そのためアウトプットは不可能で、仮に読心能力を持っていたとしても概念レベルで理解できない。
ロスト自体もその意味を理解できてはいないのだが、聖杯に受けた宿命としてこの宝具がアークエネミーの急所であることを認識している。
その正体は連鎖召喚・宿敵によって呼び出されたもう一体の宿敵であり、どこまでも遠い万華鏡の先の未来で提唱された世界五分前仮説への完璧な反証。
不条理を恐れた誰かが灯した因果の明かり、願いの結晶は世界を恐れる誰かのもとで幽かながらも暖かな光を映し出す。
闇の中に潜んだジャバウォック。この灯火はきっと誰もが一度は描いたソレを打ち倒すヴォーパルソードなのだ。
────しかし、この宝具を呼び寄せた事実こそが杞憂をアークエネミーたらしめる理由である。
杞憂の逸話は二つの性質から成る。
一つは不条理への恐怖。いつ落ちてくるかもわからない天蓋の不安に怯え続けること。
もう一つは啓蒙による解消。賢者による知識の伝達によって無闇な恐れが晴れること。
そして、この二つのうちより強い色を持つのが後者の性質であるのだ。
よってアークエネミー・杞憂の世界五分前仮説に対してロスト・杞憂は完璧な啓蒙を施す。
────そう、"完璧すぎる"ほどに。
賢者の啓蒙は杞憂に理解できるものであり、逆説的に杞憂が入手する解決は杞憂だけには理解できてしまう。
しかし彼女が手に入れる知識は彼女の恐怖を晴らすためのものであるが故に彼女の願いと一致してしまうことになるのだ。
何かの間違いでアークエネミーとロストが同じ願いのもとに協力したとすればそれは世界がたった一人に掌握されることに他ならない。
自在に因果を改変し、自らにとっての不条理を廃したならば、最早抑止力すらもその手が届く事はないのだから。
彼女らは聖女ではない。杞憂の願いの根源には自分や周りの誰かの幸福が続くことを祈るごく当たり前の欲望しか無い。
未達の運命というクラススキルが示すように彼女自身がその願いを叶えることは決してあり得はしないのだ。
だが、もしも不条理に嘆く彼女らが、同じ苦しみを味わう人々のために捨身飼虎することがあれば、────世界は、約束された安寧の中に眠るだろう。