BBSPINKレズ・百合萌え板の【艦これ】艦隊これくしょんで百合スレのSSまとめサイトです

821:名無しさん@秘密の花園:2013/10/06(日) 18:13:46.47 ID:gVnAw5EM
この半端な時間なら長門むっちゃん妄想を投下しても許されるはず・・・
途中連投規制引っかかったらごめんなさい

***

「戦艦陸奥、帰投しました」

演習を終えて簡単な報告を済ませ、ついでに提督の机に置いてある今日の戦果報告書に目を通す。
ふーん、と流し読めたならそれは幸せな日。
でも今日は残念ながら、一番先頭の報告で目が止まってしまった。

『第一艦隊

 雷 大破
 不知火 中破
 敷波 中破
 球磨 中破
 鳳翔 中破
 長門 小破』

あ。駄目だこれ。一番まずいパターンだ。
寮へ帰ったらシャワーを浴びて夕食までゆっくりするつもりだったけど、予定変更かな。

「むっちゃん、頼んだネ」

報告書を机に戻すと、書類整理していた秘書艦の金剛さんが小声で言った。
いつものハイテンションじゃなくて、眉毛が下がり気味の、気遣うような優しい微笑みを浮かべている。
あらあら。見抜かれてるのね。この人のこういうとこ、侮れない。
金剛型だけでなく、戦艦みんなのお姉さんみたいなものだしね。

「善処します」

執務室を出て一応ドックを訪ねてみたけど、予想通り長門は高速修復を頼んで早々に出て行ってしまったらしい。
じゃあ、あそこかな。

822:821:2013/10/06(日) 18:17:05.58 ID:gVnAw5EM
工廠の建屋をまわって裏の廃材置き場に向かう。
ここには開発や修理にも使えないくらい損傷した艤装の一部や端材などが積み上げられている。
鋼材として再生できないことはないのだが、かなり手間とコストがかかるのでなかなか手が付けられずに放置されているらしい。
周囲は一応鉄柵で囲われ南京錠のかかった扉には「危険 許可無く立ち入り禁止」とは書かれているが、
頑丈な私たち艦娘にとっては公園の砂場と大して変わりはない。

「よいしょっと」

よって、気にせず扉によじ登って乗り越える。
長門はこの場所が好きだ。それは私もちょっと分かる。
ここに漂う鉄錆や機械油の匂いは、潮風の匂いと同じく私たちにはとても親しみ深いものだから。

中に入ると旧式の砲の残骸にもたれて、長門が地べたに座っていた。
じっと夕暮れの空を見つめている。
私に気づくと微妙に口元が動いて、それは笑顔を作ろうとして失敗した印。
どうしたの、とはわざとらしすぎるので聞かない。とりあえず隣にしゃがんでみる。

「不甲斐ない」

しばらくして、長門はそれだけをぽつりと言った。

823:821:2013/10/06(日) 18:19:37.68 ID:gVnAw5EM
どう考えても鎮守府で長門のことを不甲斐ないと思ってるのは本人だけなんだけど。
私たちは訓練された軍艦で、いわば戦闘のプロなのだから、それなりの心構えはできている。
それに帰ってきさえすればみんなドックで療養して元通り元気になれるのだから、
戦闘で負傷しても誰かを恨むようなことはそうそうない。
それでも、一番頑丈な自分が、仲間を守れず一番軽い損傷でむざむざ帰投したということが、
人一倍責任感の強い彼女にとっては戦果を上げられないことよりも、自分が被弾して大怪我することよりも、
悔しくて辛いことらしい。

もちろん、長門も自分一人の力でなんとかできたはずだみたいな驕ったことを考えている訳ではない。
分かってはいても、やれたはずの何かがあったのではないか、ということを考えずにいられないのは、
先の大戦の記憶がそうさせるのかもしれない。
私はほら、あの時アレがアレしてああなったから……というのは置いといて。

長門は強い。愚痴らないし弱音を吐かない。
その癖馬鹿正直で不器用だから毎度真正面から苦悩して、一人自分を責める。
それでもどうにか立て直して、翌日にはまた強くて格好いい戦艦長門として出撃していくから、
心配ないといえばないんだけど、惚れてる身としてはやっぱり落ち込んでる姿を見るのは忍びない訳で、さてどうしよう。

824:821:2013/10/06(日) 18:21:57.49 ID:gVnAw5EM
んー、と思案しつつなんとなく視線を落とすと、長門の指がコンクリートのひび割れから生えている雑草の、
小さな白い花をそっと撫でていた。
こんな時でも名もなき草花を徒にむしったりしない優しいところ、本当に好き。
ついでにこの指が本気出すと意外とえっちなことも思い出してしまった。
何考えてるのかしら私。

「ね、長門」

同調してほしいなんて微塵も思ってないだろうし、あなたの背負っているものを肩代わりしてあげるなんてことも言えない。

「うん?」

だからいつも結局私は、ただ伝えるだけ。あなたの側には私がいると。

「んっ――」

不意にキスして、ちゃんと対応できる辺り、お互い慣れたなあと思う。
一旦唇を離して、鼻が触れそうな至近距離で目を合わせる。
瞳にはちゃんと光が宿っている。よしよし。
もう一度重ねて、舌先で唇をくすぐると素直に開いてくれたので滑り込ませる。
絡めたり撫でたり、でもあまり激しくせずに、あくまで優しく。

横から首を傾けてるのがちょっと辛いし抱きしめたくなってきたので、キスしたまま長門の腿の上にまたがって正面から向き合う。
誰かに見られたら結構困る体勢だけど、誰も見てないので良し。

825:821:2013/10/06(日) 18:25:03.90 ID:gVnAw5EM
私が長門の首に腕を回すのと同時に、長門からも抱き寄せられてより密着する。
『陸奥の手は綺麗だな。ほっそりして女性らしい。私のはごつごつしているから』なんて前に言ってたことがあって、
確かに私より少し大きいけど言うほどごつくないし、何より背中に伝わるこの手のぬくもりを私がどんなに愛しく思っているか、
余すところなく正確に表現する術があれば誰か教えてほしい。
ただただ、この溢れそうな気持ちの千分の一でも万分の一でも伝わればいいなと思いながら、ひたすら吐息と体温を混ぜ合わせる。

「現金なものだな」

ふっと、今度は素直な微笑みをしてくれた。

「悩んでいても、いつも陸奥に触れると心が軽くなってしまう」
「あら。あらあら」

それでいいのよ。あなたは強いもの。
だからこれからもみんなを守ってね。
あなたのことは私が守るから。

おでこをくっつけて、くすくすと密やかに笑い合う。
こんな長門は、きっと誰も見たことがないだろう。
これは私だけに取り分けられたご馳走。だから誰にもあげないの。

826:821:2013/10/06(日) 18:27:29.31 ID:gVnAw5EM
もっともっと、ちゅー責めにしたりぎゅーぎゅー抱きしめたりしたいけど、
さすがにこれ以上は本気のスイッチが入ってしまいそうなので、名残惜しいけど立ち上がる。
いつの間にか夕闇が深くなっていた。

「もうすぐ夕飯だな」
「今日栗ご飯らしいわよ」
「本当か!?」
「ふふっ」

また鉄の扉を乗り越えて、寮へ戻る。
長門の背中にはあからさまに錆の跡がついちゃってるし、たぶん私も汚しちゃっただろうから、
ご飯の前にお風呂に入ってしまおう。

「陸奥」
「ん?」

それぞれの部屋に入ろうとした時、長門が声をかけた。

「今晩、行っていいか?」

どうやら、もっとご馳走してくれるらしい。

「いいわよ。待ってる」

***

827:821:2013/10/06(日) 18:32:40.60 ID:gVnAw5EM
おしまい
山なしオチなしとはこのこと・・・!!
この二人が好きすぎて辛抱たまらんかったのでカッとなって投下した
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