経済・経済学に関するメモ。

比較劣位産業と構造的失業

比較優位の考え方は、固定的に考えたり、押しつけたりすれば強者の理論になるが、当事者が得意な分野を発見し、次の段階に発展していこうとすれば有効な理論にもなる二面性を持っている。(中略)比較優位は、全体で利益は向上するが、一部で仕事をあきらめるなどの犠牲を払う必要がある理論である(新井明・柳川範之・新井紀子・e-教室編著 『経済の考え方がわかる本』 岩波書店〈岩波ジュニア新書〉、2005年、131-132頁)。
比較劣位の産業の縮小を押し戻すことは、無理な輸入制限か膨大な補助金が必要となるため不可能に近い(伊藤修 『日本の経済-歴史・現状・論点』 中央公論新社〈中公新書〉、2007年、180頁)。
1817年のリカードの国際貿易の基礎は、150年後もまったく揺らいでいない。リカードの貿易理論は、1)ある産業の生産者を外国からの競争から保護すると、他の産業の生産者が被害を受けることになる、2)ある産業の生産者を外国の競争から保護すると、必ず経済効率が低下すると予測していた(スティーヴン・ランズバーグ 『ランチタイムの経済学-日常生活の謎をやさしく解き明かす』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2004年、306頁)。
比較優位とは、比較劣位と常に裏腹の関係にある。一国にとって「あらゆる産業が比較優位になる」ということは考えられない。構造調整が済むまで一時的な現象ではあっても、失業を増加させる。比較劣位化した産業の当事者にとっては耐え難いことであるが、貿易を行う限り、受け入れざるを得ない。貿易を閉ざした経済とは、発展の無い経済にほぼ等しいということも事実である(野口旭 『ゼロからわかる経済の基礎』 講談社〈講談社現代新書〉、2002年、202-204頁)。
もちろん自由貿易にはデメリットもあり、比較劣位にある職業・産業をあきらめなければならない。全体としてはプラスサムになるとしても、トレードの過程で勝者と敗者が出るのは避けられない。そこは、再配分・セーフティーネットで解決するしかない(若田部昌澄・栗原裕一郎 『本当の経済の話をしよう』 筑摩書房〈ちくま新書〉、2012年、150-151頁)。

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