経済・経済学に関するメモ。

スタグフレーションとは、財政・金融政策により景気が過熱し過ぎてインフレーションが進行し、企業・家計の経済活動を委縮させ、経済成長率が停滞する状況である(「http://toyokeizai.net/articles/-/49750 インフレが日本を救う デフレは、若者世代への「経済的虐待」である」東洋経済オンライン2014年10月6日)。
スタグフレーションが起きる背景には、ケインズ的な有効需要管理政策があり、年金・社会保障などが巨額の財政支出を生み常にインフレ促進要因となっていることや、賃金が下がりにくい(賃金の下方硬直性)社会構造をつくり出してきたことなどがある。そういった背景からアメリカやイギリスでは「小さな政府」を目指す動きとなっていった(神樹兵輔 『面白いほどよくわかる 最新経済のしくみ-マクロ経済からミクロ経済まで素朴な疑問を一発解消(学校で教えない教科書)』 日本文芸社、2008年、96頁)。

供給ショック

ミルトン・フリードマンは、ケインズ政策はスタグフレーションに繋がるとし、ケインズ政策の実行→景気拡大→失業率の低下→インフレ期待の上昇→賃金の上昇→物価の上昇→実質GDP成長率の低下→再び失業率の上昇というメカニズムで結果、物価だけが上昇すると主張している(竹中平蔵 『経済古典は役に立つ』 光文社〈光文社新書〉、2010年、200-201頁)。
供給側の制約を十分に考慮せず、拡張的なマクロ経済政策を続ければやがてインフレとなり、それを引き締めようとすれば今度はスタグフレーションになる(野口旭・田中秀臣 『構造改革論の誤解』 東洋経済新報社、2001年、62-63頁)。
スタグフレーションは、景気が過熱している中で、金融政策・財政政策で経済を刺激し過ぎた結果起きることであり、インフレ率の加速によって人々のインフレ予想が不安定になったり、インフレ加速を抑制するため過度な金融引き締めを行うことによって結果、経済が停滞するということである(「http://toyokeizai.net/articles/-/47356 インフレが日本を救う 消費増税先送りで、アベノミクスは復活する」東洋経済オンライン2014年9月8日)。

物価賃金スパイラル

景気拡大→労働不足→名目賃金の上昇→非正規雇用・労働時間の増加→労働供給量の増加→生産の拡大→緩やかな物価上昇を伴った経済の拡大といった循環を経て、労働者が実質賃金(名目賃金を物価で割り引いたもの)が下がったと判断しその結果、労働組合が将来のインフレ率を織り込み賃金の引上げを要求し、企業が賃上げを受け入れる。このように名目賃金率とインフレ率が同時に同じ速さで上昇すると、実質賃金が上昇しなくなるため、労働供給量が減少し、統計的に失業率が上昇する。こうして、失業率が上昇しているのにインフレ率も上昇しているというスタグフレーションが発生する(岩田規久男 『マクロ経済学を学ぶ』 筑摩書房〈ちくま新書〉、1996年、166-167頁)。

歴史

1970年代、アメリカ・日本でインフレ率が二桁台に上昇し、失業率・インフレ率も高まるという状況が生じた(岩田規久男 『マクロ経済学を学ぶ』 筑摩書房〈ちくま新書〉、1996年、166頁)。

イギリス

1960年代末から1970年代におけるイギリスはインフレと失業が深刻であった(橘木俊詔 『朝日おとなの学びなおし 経済学 課題解明の経済学史』 朝日新聞出版、2012年、186頁)。</ref>。
マーガレット・サッチャー首相はケインズ経済学を放棄し、市場経済を重視する新古典派経済学の政策である規制緩和・民営化・競争促進・福祉削減を実行した(サッチャリズム)(橘木俊詔 『朝日おとなの学びなおし 経済学 課題解明の経済学史』 朝日新聞出版、2012年、11頁)。
サッチャーの改革は、イギリス経済を建て直した(橘木俊詔 『朝日おとなの学びなおし 経済学 課題解明の経済学史』 朝日新聞出版、2012年、189頁)。

アメリカ

アメリカでは1979年の第2次オイルショックにより、スタグフレーションが深刻化した(三菱総合研究所編 『最新キーワードでわかる!日本経済入門』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2008年、163頁)。
1980年代にはロナルド・レーガン大統領による減税・規制緩和を柱とした経済政策「レーガノミクス」や当時のFRB議長であるポール・ボルカーによる強力な金融引き締め政策によってインフレは終息した(三菱総合研究所編著 『最新キーワードでわかる!日本経済入門』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2008年、163頁)。
ポール・ボルカーの「ディスインフレ」政策は1980年代のインフレを劇的に抑えた一方で、10%に迫る失業率を生み出した(田中秀臣 『ベン・バーナンキ 世界経済の新皇帝』 講談社〈講談社BIZ〉、2006年、181-182頁)。
ベン・バーナンキは、1970年代のアメリカのインフレの原因について「民間の経済主体の高いインフレ期待が、高いインフレーションもたらした」と指摘している(田中秀臣 『ベン・バーナンキ 世界経済の新皇帝』 講談社〈講談社BIZ〉、2006年、93頁)。

日本

昭和初期
1927年、田中義一内閣がモラトリアム令を配布し、各民間銀行に日本銀行が巨額の救済融資を行い、取り付け騒ぎを鎮めたが、再三の日銀特融による日本銀行券の増発によって、不況の中のインフレの発生(スタグフレーション)に陥った(田中秀臣 『デフレ不況 日本銀行の大罪』 朝日新聞出版、2010年、113頁)。
オイルショック
2015年
日本では今(2015年)、急速な円安のマイナス面が表面化し、物価が上昇している。それに対して賃金の上昇が追いついていないために、スタグフレーションに陥りつつある(「http://president.jp/articles/-/14177 クルーグマン教授・独白「日本経済は、世界の良きモデルになる」【1】ノーベル賞経済学者が安倍総理に直訴」PRESIDENT Online – プレジデント2015年1月2日)。

外部リンク

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