鬼畜陵辱SSスレ保管庫のサンプル

拙作を投下しようと思うのですが。
先に注意点をば
・長い。合わせて薄めの文庫本程度の長さ。
・長さの割りにエロシーンが少ない。
・百合。
・腕が取れちゃう程度のグロ
・とんでもガンアクション

といった要素がありますので、嫌だなあと思いましたら酉をNGにぶち込んでください。
 
全3回に分割して投下します。今回は前半17レス分投下します。



   <01――発端>
 
 
 月が出ていた。
 雲ひとつない空、白色の月が雪で覆われた路面を照らしている。
 深夜の住宅街、細く狭い一車線の道路、車が通ってくることはなく、歩いている者の姿
もまばらだ。
 彼、伊佐美紅<いさみ こう>はコートのポケットに手を突っ込み、黙々と歩いていた。
 夜に紛れるような黒いコート、黒いジーンズ、短い黒髪――まるで鴉のようないでたち。
そう、鴉が獲物を狙うように、彼の瞳は前方を歩く人影へ向けられていた。その瞳は、ま
るで血のように赤い色をしていた。
 ポケットの中に隠した獲物を捕らえるための爪をもてあそびながら、彼は今回の仕事内
容、その手順を頭の中に浮かべた。
 今回の仕事内容はいたって単純なものだ。
 人を殺す、死体は発見されてはならない。
 たったそれだけだ。
 紅はとっとと仕事を片付けて、自宅に帰りビールを呷りたいと思った。そう思うと、喉
にビールの苦味が蘇ってくるようだった。
 正月は仕事はせず、酒を呑んで過ごす。そのために大量の酒を買い込んである、今日仕
事から帰って酒に溺れても余るだけの量を蓄えている。問題があるとすれば、つまみがそ
の分だけあるかということだった。
 爪が隠されているのと反対側のポケットに突っ込んであった携帯電話が振動した、仕事
を開始するという合図だ。
 今回の仕事は主に三段階に分かれている。
 まず目標を殺し。
 次にその死体を運び。
 そして死体を始末する。
 紅は二段階目にまで関わり、その途中で抜ける。
 彼の役目は目標を殺すことだった。
 紅が属している組織は、合法的ではない仕事をこなすためのものではあったが、だから
といって人を殺せるものばかりではない。
 いや、人を殺すことだけならば誰にでもできるだろう。だがその後が問題だ。
 人を殺してしまった後でも、平然としていられる者が必要なのだ、大抵の者は人を殺す
とネジが外れてしまったかのようになってしまう。
 人を殺してしまったことによって、快楽殺人者になってしまう者。
 人を殺してしまったことによって、悪夢に苛まれるようになる者。
 人を殺してしまったことによって、罪悪感に押し潰されてしまうもの。
 様々だ。
 だから、紅のような人間が必要とされる。
 車が一台通るのが精一杯という道に、一台の車が雪面に痕跡を残しながら走ってきた。
 その車は紅の先を歩く目標がいるのを認めてか、足を止めた。
 ハイビームが眩しい。
 目標は顔の前に手をやり、車に道を譲るようにして道の端にどけた。そこへ、音もなく
紅が近づいていた。
 目標はわずかなうめき声をあげて、絶命した。喉から血が質の悪いジョークのように溢
れた。
 車から男たちが降りてきて、目標を抱えあげると、トランクの中にしまった。
 死体と一緒に、血のついた雪をスコップでかき集めて一緒にいれた。
 紅はトランクに血が付いたナイフを投げ込むと、終わったというようにため息をついて、
後部座席に乗り込んだ。
 窓から外を見上げると、ゆっくりと雲が流れてきて、少しずつ月が隠れていく。静かに
雪が落ちてきていた。
 
 
***
 
 
 
 
 
 紅は仕事から帰ると、名称のない組織から与えられたアパートに戻り、電気をつけスト
ーブに火を入れた。
 黒色のコートを脱ぎ、ハンガーに引っ掛けた。
 やかんで湯を沸かし、電子レンジに冷凍食品のペペロンチーノを突っ込んだ。
 紅が暮らすアパートには、彼が知る限り、彼と同じ組織に属する人間はいない。大抵は
地方からでてきた学生やフリーターが暮らしている。
 テレビのない部屋だけに、隣の部屋の音が気になった。
 右隣の大学生の部屋には三日前のクリスマスより、彼女が来ているらしく、毎晩のよう
にあえぎ声が聞こえた。
 今日も耳を澄ませずとも、女が喘ぐ声が聞こえていた。
 その女の顔を、紅は知っていた。
 大学生がいない日に女が訪れたところに遭遇したのだ。
 女は紅の容貌を見て色目を使ってきた。
 闇を濃縮したかのような黒髪、雪のように白い肌、深紅の瞳、整った容貌に引き締まっ
た肉体。紅にとって、そうされることはよくあることでしかなく。いつも通りだというよ
うに、追い払った。
 紅は女に興味がなかった。
 それに今まで特定の誰かと付き合ったこともなかった。まともに友人関係すら構築でき
たこともない。
 紅は常に一人だった。
 その美しい容姿から、男女関わらずよく声をかけられ、そうした行為をしないかと誘わ
れることもあったが。紅の返答は常に一様だった。
『興味ない』
 たったそれだけだ。
 紅は他人に興味を示さないし、信用もしない。
 紅にあるのはたった一つ、自らの存在だけだ。
 だから、紅はよく奇異な目でみられる。誰とも会話を交わさず、誰にも興味をみせず、
何にも関心を見せない。紅は誰とも関わろうとしない、故に誰も紅と関わろうとしない。
 例外があるとすれば、紅に仕事を伝える男だけだ。
 紅は手についた返り血を拭うついでにと、シャワーを浴びることにした。
 裸になると、鏡に映る自分の姿を見て、紅は不意に思った。
――使用していなくても、性器は機能を失わないものなのだろうか?
 紅はそこに触れてみようとした、が、その時脱衣所に置いた携帯電話が鳴った。
 紅は裸のまま脱衣所に戻ると、電話を取った。
 誰からの電話かは、すぐに分かった。というよりも、この電話にかけてくるのは一人し
かいない。紅に仕事を伝える男から。
「……はい?」
『なにをしていた? 取るのが遅い』
 男の声の背後から音楽が聞こえた、ジャズだ。
「シャワーをあびるとこ」
『そうか。今からそちらへ行く、鍵を開けておけ。十分もせずに着く』
 男の好きな曲だ。
 これを聞いているときは、男にとってよくないことがおきている場合が多い。
「仕事の話?」
 男は僅かな沈黙の後、くそったれとうめいてから答えた。ブレーキを切り、雪を跳ね上
げるような音が聞こえた。
『そうだ。悪いが年跨ぎで仕事をしてもらう、いいな』
 紅は酒のことを思った。
『いいな、今から行くから。鍵を開けておけ。くそったれ! こんな深夜に出歩いてるん
じゃねえよ、轢かれたいのか』
 男は怒鳴り声を撒き散らしながら、一方的に通話を切った。
 紅は自分の計画が崩れたことに悲しみを覚え、深くため息をついて、浴室に戻った。
 
 
「なんで、服を着てないんだ」
 紅の部屋を訪れるなり、黒服の男――紅には飯島直治<いいじま なおはる>と名乗って
いる――は言った。
「シャワーを浴びていた」
 水気はふき取られているものの、紅の身体からは薄く湯気が昇っていた。白い肌は熱を
帯びて、薄く朱色に染まっている。

 飯島は紅の裸身に僅かに目をやった、下腹部に視線が向けられる。
「下くらい履け」
「言われなくとも」
 紅はそういって男に背を向けた。
 飯島は紅の肢体を眺めながら、ぼんやりとした口調で言った。
「おまえ、下の毛剃ってるのか?」
 紅は肩を竦めた。
「生えてこない。一生子供のまま、ということさ」
「ピーターパンだとでもいうのかよ。酒はあるか、少し身体を温めたい」
「ああ、冷蔵庫に。適当にやってくれてかまわない」
 男は雪がついた靴を脱ぎ捨てると、紅の部屋に上がりこんだ。
 紅の部屋には必要最低限のものしかない。
 服をしまう箪笥、寝床、食料品をしまう冷蔵庫、調理するための電子レンジと小さな鍋、
寒さをしのぐためのストーブ、情報を得るためのノートパソコン。それくらいのものだっ
た。私物と呼べるものが殆どなかった。
 飯島は冷蔵庫からビールを取り出すと、空けて、ぐいっと呷った。
「お前もいるか?」
 飯島が聞くと、紅は「頼む」と即答した。
 飯島は冷蔵庫の中からビールとつまみになりそうなものをいくつか取り出すと、ノート
パソコンが置かれたテーブルの上に置き、座った。
 飯島に向き合うような形で、紅も座った。
「服を着ろ」
 紅はその言葉を無視した。
 言われたとおりにパンツは履いたし、上は首にかけたバスタオルで十分隠れている、そ
れに室内は裸でいても大丈夫な程度に温かい。
 紅はビールの缶を掴むと、空け、呷った。空っぽだった胃にアルコールが注ぎ込まれ、
身体が喜びの悲鳴を上げるようだった。
「まったく、いるのなら、親の顔が見てみたいものだ」
 飯島の愚痴に、紅はふっと笑った。
「そんなに私が裸でいることが都合が悪いというのか? 第一、私の育ての親はアンタだ
ろう、違うとは言わせない。躾が悪いというのなら、アンタの責任だ」
 飯島はむうとうめき声をあげると、白髪交じりの髪をかきあげた。
 家族を殺されて天涯孤独の身になった紅を拾ったのは、紅がまだ小学校に入る前のこと
だった。それから、有に二十年は過ぎている。飯島はもう五十を過ぎていた。
「俺は今でも後悔しているんだ。お前に人殺しの道を歩ませていることをな」
「後悔ね」
 チーズを頬張りながら紅は答えた。
「どうしたんだ? アンタらしくない」
「俺らしくない? どういうことだ」
「弱気だってことさ」
 紅はビールの缶を掴み、チーズを胃に流し込んだ。
 飯島はハムでチーズを挟むと、口に押し込み、三度ほども咀嚼すると一気にビールで流
し込んだ。
「……歳をとったら誰でも弱気になる。否応なく、な」
 紅は「ふうん」と興味なさそうに答えると、飯島の隣まで行き、その下腹部に手を伸ば
した。
 スラックスの下で飯島の陰茎はわずかに硬くなっているようだった。
「おい、なにを」
 飯島の言葉を無視して、紅はチャックを下げて、陰茎を掴み取り出した。
「歳を取ったという割りに、元気そうじゃないか」
「バカなことを、やめろ」
 紅はバスタオルを放ると、段々と硬度を増していく飯島の陰茎を咥えた。
「……くっ」
 陰茎の根元を掴み、握る強弱を指ごとに変えて波打たせるように玩びながら。その亀頭
を吸った、わざと音をたてるように。
 じゅぷっ、じゅぱっと繰り返し。
 飯島は「時間がない」と呻いた。
 紅は手を離すと、強く吸い付きながら、陰茎を根元まで咥え込んだ。亀頭が喉をついた。
舌を絡め、口腔をすぼめて、飯島の陰茎を愛撫しながら頭をゆっくりと前後に動かした。
「もうシャワー浴びたから、んっ、口の中で出せよ」

 紅はそういうと、ゆっくりと首を動かして、ねぶった。
 飯島は紅の頭を掴み、押し付けるようにした。
「ああ、ああ、分かっている」
 飯島が紅にこういうことを仕込んだわけではなかった。
 気づくと、紅のほうからするようになっていた。
「……うまくなったな」
 紅を拾ってすぐのころ、飯島は紅を普通の生活に戻すつもりでいた。
 だが、紅がそれを望まなかったのだ。
「練習してるのか?」
 紅は咥えていた陰茎を放し、糸を垂らした。それをこぼさないように、舌で絡めとリ、
口に含んだ。
 紅は首を横に振った。
「アンタの以外、咥えたことはない」
 飯島はなんと答えるべきなのか判断に迷った。喜ぶのも、呆れるのも違うような気がし
て。ただ紅の髪をなでてやった。
 紅からは血のにおいはしなかった。
 紅は袋のほうを口に咥えた。
 酒が入っているせいか、それともそういう気分で来たわけではなかったからか、飯島は
三十近く歳の離れた紅の口技に思わず声をもらしてしまった。
 それが気恥ずかしくて紅を見たが、紅は手で飯島の陰茎をこすりながら、睾丸を甘噛み
していた。
「そろそろ、出そうだ」
 飯島が言った。
 五十過ぎているのに妻もおらず、風俗に通っているわけでもない男にとって、紅との触
れ合いだけが行為の全て。
 前にしてから有に一週間はしていなかったため、冗談でなくもう出そうだった。
 紅は少しだけつまらなさそうな顔をしたが、すぐに頷いて、飯島の陰茎を口の奥深くま
で咥え込んだ。
 紅は他の連中や紅自身に言わせれば表情というものに乏しい、だが二十年近く親のよう
に面倒を見てきた飯島にとって。紅が今なにを考えているかなんて、表情を見ればすぐに
分かってしまう。
「……そろそろだ、っ、くっ……でるぞ」
 飯島は紅の顔を押さえつけた。
 勢いよく精子が飛び出していくのが分かった。
 紅は少しも身じろぎもせず、それを口の中にためて、ゆっくりと飲み下していく。
 若い頃に比べ量も勢いも衰えていると飯島自身自覚していたが、紅はなにも言わない。
「俺はまだシャワーを浴びるつもりはない」
 それだけ言えば、紅には分かった。
 精液を飲み干した口で、飯島の陰茎を拭く。
 小学校高学年になったころ、一緒に風呂にはいっていた紅が、唐突に飯島の陰茎を口で
洗うと言い出した時のことを思い出し、飯島は苦笑し口元を綻ばせた。
 それ以来だった。
 紅とこういうことをしてしまうようになったのは。
 飯島にはまったくそういうつもりはなかった。
 血なまぐさい仕事をしているだけに、紅を真っ当に育てる気でいた。それが自分が今ま
で為してきた罪への、せめてもの贖罪であるかの如く。
 しかし、実際には飯島は紅に誘われるがままに手を出してしまった。
「終わった」
「ん、ああ」
 紅の言葉に現実に引き戻された飯島は、前をしまいながら、紅の頭をなでてやった。
「じゃあ、早く服を着ろ、仕事だ」
 紅は薄い唇を僅かに曲げた。
「ねえ、ちょっと手」
「ん? なんだ」
 紅の手に導かれ、飯島の手は紅の股間に触れた。パンツの布越しであったが、濡れてい
ることがわかった。
 紅の唇を見た。
 まるで森の精霊が、迷い込んできた男を惑わすように、言葉が紡がれる。
「濡れちゃったから、パンツも着替えたいんだけどさ。その前に一回、しない?」
「――ッ!?」

 飯島は紅の手を振り解いた。
 反射的に紅を突き飛ばしてしまっていた。
「仕事だと言っただろう。早くしろ、行くぞ」
 飯島はそういって部屋を立ち去った。
 その脳裏では、仕事が控えていなかったら自分はどうしていただろうという考えが渦巻
いていた。
 紅の若い肉体を抱くのは嫌ではないし、もう何十度と繰り返してきた行為だ。今更だと
いうことは分かっていたが、それでも、飯島は紅とそうした行為をすることを望んでいる
わけではなかった。
「くそっ……」
――親の顔が見てみたい、だ?
 飯島は安アパートの階段を蹴った。
「ンなモン吹き飛ばしてやりたいよ、まったく」
 
 
***
 
 
 紅は黒いジーンズに黒いシャツ、黒いロングコートに、黒いブーツという格好で部屋か
ら出てきた。
 それが紅の仕事着だ。
 いつも飯島が黒いスーツを着ていたから、真似たのだろうと飯島は考えていた。
 なにを着てもくたびれた親父にしかならない自分と違って、紅はなにを着ても様になっ
た。顔かたちの作りがいいのだ。
 紅は車に乗り込むなり、飯島に言った。
「得物は?」
「これだ」
 飯島は分かっているという風に、すぐに紅に一丁の拳銃を手渡した。
「……なにこれ?」
 紅は手にしたそれをいろんな角度から見たり、簡単にばらしたりしながら、飯島にそう
聞いた。
 銃にしてはあまりに、オモチャっぽすぎた。
 本当にオモチャなんじゃないかと思ったが、きちんと銃弾が装弾されていて、紅は考え
を改めた。
「安全装置は?」
「ある、左側だ。その機能を廃したらもう少し小型化できそうなんだがな」
「ふうん。ああ、これか。プラスチック?」
「そのようなものだ。耐久性、軽量化、金属探知機に引っかからない。その要素を満たす
素材だ」
「金属探知にひっかからないって、金属使ってないの?」
 飯島は律儀にシートベルトを締めてから、車を発進させた。
「ああ、弾丸もプラスチック。しかも土に埋めておけば、自然に還る」
 紅は安全装置をかけて銃をコートのポケットにしまった。
「エコロジー? リサイクルか?」
「そういうのもあるが、証拠隠滅のためだ」
「なるほどね」
 紅は口先でそういって、倣うようにシートベルトを締めた。
「それで、今回の仕事内容は? 年越しだって?
 飯島は頷いた。
「今回のお前の仕事は、一人の少女を守ることだ」
「女の子か、苦手だな」
「そういうな。かわいい子だ。きっちり守りぬけ」
 飯島はポケットから一枚の写真を取り出して、紅に渡した。
「騎士になれって?」
「そういうことだ」
 紅は写真を見て、「ふうん」と呟いた。
 写真に写っている少女は、中学生くらいのように見えた。学校の制服を着て、通学途中
の一枚といった感じの写真だった。ふわふわした長い髪の毛を見て、紅はもやもやした気
持ちを抱いた。
「かわいい、ね」

 写真を投げると、紅は腕を組んで瞳を閉じた。
「それで、具体的にはどうしたらいいんだ?」
 紅に促され、飯島は言った。
「今回お前が守るのは、柊透華<ひいらぎ とおか>。市立豊幌中学校に在学中の中学二年
生だ。家族構成は父一人娘一人だったが、今日、その父親が死んだ」
「騎士じゃなく父親になれって?」
 紅の言葉を無視して、飯島は続けた。
「その父親は柊健介<ひいらぎ けんすけ>、遺伝子工学の権威と言われていて、最近彼は
重大な発見をしたらしいのだが。その発見を彼が属する研究所側のものとするか、彼個人
のものとするかで揉めて、殺された。彼は研究内容を、一枚のメモリーカードにいれてい
たそうで、それが欲しい研究所側は血眼だ」
「それを娘が持っている?」
「いや、それは既に依頼主側で確保しているそうだ」
 紅はなるほどと頷き、「ん?」と首をひねった。
「なら、娘はどうでもいいんじゃあ? 父親が殺されたのはかわいそうだけどさ」
「そうもいかない。そのメモリーカードには時限式のキーが設けられていたんだよ」
「時限式?」
「本人から聞き出したことだ。新年になるまではデータを開封することができず、新年に
なっても本人か娘にしか分からないキーワードを入力しなければならないそうだ」
 心底面倒くさそうに飯島は言った。
「それまで守らなければならないということか」
「そういうことだ――着いたぞ」
 
 
***
  
 
 柊透華は携帯電話を開いて小さくため息をついた。
――新着ゼロ件。
 メールも電話もきていない。
 テーブルに並べておいた夕食は冷めてしまった。
「……大変なのはわかるけどさ」
 透華はぽつりと呟いて、父親の分の夕食を冷蔵庫にしまった。自分の分はすでに食べて
しまっていた。
 いつも父は七時までには家に帰ってくる、遅くても八時までには家に帰ってくることが
殆どで、それ以上遅くなる場合には連絡をいれてくれる。
 時計の針は十一時を回っていた、父からの連絡はなかった。
 父の携帯電話へ何度も連絡を入れようとしたが、留守番電話にしか繋がらない。勤める
研究所へも連絡は入れたが、もう父は帰ったといわれた。
 どこへ寄っているのだろう?
 なぜ連絡をいれてくれないのだろう?
 透華の不安は段々と増していき、押し潰されてしまいそうだった。
 母が死んだのは、透華が幼稚園のころのことだったと聞かされている。交通事故だった
そうだ。
 それ以来、透華は父と二人暮しを続けてきた。
 透華にとって、父が唯一の家族だった。
 それだけに父と連絡が取れない、父の居場所を掴めないということが不安でしょうがな
かった。
 だが、あまり遅くまで起きていたら、明日の学校に響いてしまう。
 不安ではあったが、父は子供ではなく、もう四十をとおに過ぎた大人なのだから、心配
しなくてもちゃんと帰ってくるよね。
 ――そう、透華は自らに言い聞かせるように思った、その時だった。
 インターホンが鳴った。
「帰ってきた!」
 透華は嬉しそうに玄関まで走り、扉を開けた。
「おかえりなさー……い? え、あ、ええと」
 しかし、そこに立っていたのは父ではなく見知らぬ三人の男だった。
 透華はわずかに顔を赤らめ、こほんと咳をして言った。
「えと、どちらさまでしょうか?」
「おい、この娘か?」

 一番がたいのいい男が後ろに立つ二人の男に聞いた。
「ええそうです、柊透華。柊健介博士の一人娘、だな?」
 細身の男に聞かれ、透華は「そうですけど」と小さく首を頷かせた。
「そうか」
 がたいのいい男は口元ににやりと笑みを浮かべた。
 その笑みはまるで粘性の高いどろどろとした油のようだった。
「い、生きてたらいいんですよね。田所さん」
 一番背の低い男が細身の男に聞いた。
 田所と呼ばれた細身の男は、表情一つとして浮かばない彫像のような顔で答えた。
「ええ。元日まで生きていれば、その他の扱いに関しては特に指定されていません。ただ
口と目と耳と指は使えるようにしておけ、と」
 その言葉に背の低い男は「くふ、くふ」と気味の悪い笑みを浮かべた。
 透華は男たちの様子に、まずいと本能的に思った。
「あ、あの、あなたたち誰なんですか。いったい、なんの用なんですか」
 その言葉に大柄な男が答えた。
「テメエを誘拐しに来たんだよ」
「……へ?」
 男の言葉に透華はよろめくように後ろに下がった。
「ゆ、誘拐って……あ」
 誘拐される理由なんてないと透華は思ったが、父が最近なにか発見をしていたのを思い
出した、それが理由ということだろうか。わたしを人質にして、父さんから研究内容を奪
おうとしているということだろうか。
 だとしたら、当然父さんにも危険が迫っているのではないか。もしかしたら、父さんが
帰ってきていないのは……。
「お、お父さんは……」
 震える声で透華が聞くと、大柄な男はにやりと笑って答えた。
「死んだよ、殺された、かわいそうなことになあ」
「しん、だ……え、そんな……」
 透華はその言葉の意味が理解できなかった。
 父さんが殺される理由なんてない。
 透華は首を振り、うめき声をあげた。嘘だ、嘘だ。繰り返し繰り返し。
 しかし、父の死を告げられて呆然としている暇は透華にはなかった。
 大柄な男に腕を掴まれた、その手は脂ぎっていて、まるでナメクジのようだった。
「きゃ……ぃやっ、触らないでっ」
 透華は振り払おうと腕を振り回したが、男の手は透華の腕を掴んで放さない。
「抵抗されないためにはどうしたらいいか、知ってるか?」
 大柄な男はにやついた顔でそういった。
「いえ」
 田所は短く答えると。
「地沼さん、津田さん、その娘の拘束は任せました。私は柊博士の研究成果が他にもない
か見てきます」
 そう言い残して家の中へ入っていった。
 残された二人の男は、田所の言葉へ二者二様に答えた。
「津田、後ろから押さえろ」
 大柄な男がそういうと、津田と呼ばれた小柄な男はくふくふ笑いながら透華の後ろへ回
り、抱きついた。
「――ひっ」
「いい匂いだ、女の子の匂い、くふ、くふっ」
 津田の手は拘束しているというよりも、透華の身体をまさぐっているといったほうが正
しかった。
「触らないで、いやっ、変態」
 透華はなんとか逃げようと必死に身体を動かしたが、地沼が腕を掴んでいるせいでうま
くいかない。
 津田の手は透華の年齢のわりに大きな乳房を服の上から掴むと、牛の乳を搾るように強
く握った。
「ぃ、……っぅ……ぃやめてっ、そんな強く掴まないでよっ」
 成長期の少女の胸は極度に敏感で、触られるだけでも不快感があるというのに、強く握
られれば不快を通り越して痛みとなって透華の身体を襲った。
 だが、津田にはそんな言葉は届かない。

 透華の胸を握っていたら、いつかは搾乳できるんじゃないかというように、揉みしごき
続ける。
「くふ、くふ。このおっぱいの感触、くふ、下着つけてないな。くふ、くふ。変態、痴女
だ、レイプされたいんだ。くふ、くふ」
 透華の背中に顔を埋め小男ささやき続ける。
 透華は「家の中でくつろいでたんだからしょうがないでしょ」と反論したかったが、胸
の痛みのせいで反論できず、わめき声をあげることしかできなかった。
 地沼はその様子をしばらく静観していたが、おもむろにズボンのチャックを下ろすと、
猛りきった一物を取り出した。
 透華は後ろの津田をなんとかしようともがいていたから、最初それがでたことに気づか
なかった。
「おい、津田そのガキ座らせろ」
 地沼がそう言ってことで、地沼に視線を向けたことで気が付いた。
 そこにあったのは極太の肉棒だった。
 筋骨隆々としたその体躯に見合った、太さと長さのその陰茎は、少女を好きにいたぶれ
るという状況に興奮しているのか、すでにカウパーが先走り、ぎとぎととてかりを放って
いた。
「なっ……いやああっ」
 透華がその肉棒に悲鳴をあげた瞬間、小男は一気に透華の身体に力をかけ、かがませた。
眼前には凶悪なまでに猛る陰茎があった。
「ぐっ……くさぃ……」
 透華は身体を起こそうと必死に抵抗したが、地沼に肩を掴まれ、動くこともできない。
「いや、やめてよ、なんでこんなことするの。なんで、いやっ」
 透華は悲鳴を上げ続けていた。
 それが男たちの情欲を煽ることだとも知らず、なにより口を無防備に開けるべきではな
かった。
「ひどい、なんで、やめて。いや、いや、はなして。おねがいだか――――ふごっ!?」
 口に栓がされた。
 悲鳴を上げ続ける口を、地沼は自らの陰茎という太い棒で栓をした。
「――ふぐぅっ!!」
 一気に喉を突き上げられ、えづく透華だったが、吐くこともできなかった。
 なんとか逃れようとしたが、地沼の巨大な手が透華の頭を掴み、押さえつける。
 地沼はわずかだけ腰を引き、直ぐにその巨大な陰茎の亀頭で透華の喉を突いた。何度も
何度も。
 そうされている内に、呼吸のペースが乱され、うまく呼吸できなくなっていた。
「がっ……ふっ、ぐ……ぅ、うう……うウゥんっ……」
 それは陰茎による拷問だった。
 透華に悲鳴をあげさせず、反抗意思を殺ぎ取るための。
 地沼が粘性の笑みを浮かべながら、透華をいじめている間も。津田は、透華のやわらか
い身体をまさぐり続けていた。
「おっぱい、おっぱい、くふ、くふ。乳首びんびんに勃起してる、いやらしいなあ、変態
だなあ、くふふ」
 津田はTシャツをまくりあげ、透華の上半身をあらわにして、もてあそんでいる。
 しかし、先ほどまでは両手を使っていたのに、今は片手だった。
 その理由はとても簡単だった。
「髪の毛、いいにおい、いい、いい。くふ、くふう」
 先ほどから透華の長い髪の毛が、何度も小刻み引っ張られていた。それが痛くて、なに
をされているのだろうと透華は疑問に思ったが。見えなかったのは、ある意味、よかった
のかもしれない。
 津田は自らの小さく、皮で覆われた陰茎に、透華の長くやわらかな髪を巻きつけて、オ
ナニーしていたのだ。
 透華の色素が薄く茶色にも見える髪に、津田の先走りが浸透し汚していき。そして、び
くんと大きく脈打つと、発射された。
「う、ぐ……ふぁ、ああ……なんか、背中に……」
 津田の精液は透華の髪の毛をすり抜け、透華の背中を汚した。それをみて、津田はくふ
くふと繰り返し笑った。
 いつもは一回で我慢してしまえる陰茎も、十四歳の少女を犯せるとあって、萎えること
を知らない。
 津田は透華の背中に付いた自らの精液を手に絡め取ると、その手で透華の胸をもんだ。

 その粘着質の不快な感触に、透華は更に激しく身をよじったが、口を陰茎でふさがれて
いて、悲鳴をあげることもできなかった。
 津田は透華が激しく身をよじったのを見て、喜んでいるのだと思い、笑いを深めた。
 地沼は津田のそんな行為を見て、少しだけあきれていた。
 後で胸を吸おうと思っていたのに、小汚い精液で汚すとは、と。
 しかし、時間はたっぷりある。洗浄すれば汚れも落ちるだろう。
 洗浄――いい言葉だと思った。
 この少女の膣にホースを突っ込み水を注ぎ込みたいと、地沼は思った。行為を行ってい
ない時は、その状態で放置しておこうと決めた。
 その前に、と地沼は、少女の顔を洗ってやることにした。
 極太の陰茎、数え切れないほど女を食ってきた欲望の塊は高ぶり、今にも射精してしま
いそうだった。
 透華は、地沼が抱いてきた女の中でもっとも若く、そして最も美しい少女だった。
「さて」
 地沼は透華の顔を引き離すと、自らの手で肉棒をしごき始めた。
 透華の恐怖におびえた瞳は、眼前で繰り広げられる肉棒の自慰行為に、涙を流していた。
 そして、透華の口内で十分に興奮を高められた陰茎は、少ししごいてやるだけで、マグ
マのように熱い精液を透華の顔にぶちまけた。
 その瞬間、透華は目をつぶってしまった。――それは幸いだった。
「――っ!?」
 地沼が声にならない悲鳴をあげた。
 その声に、別な声が重なった。
「デタラメな威力だな」
 透華はゆっくりと目を開いて、驚いた。
 地沼の右の手首から血が噴出していた。
「だ、誰だっ!」
 地沼はそれでもタフな生命力で叫び、ジャケットの内側から拳銃を抜いて、後方に向け
て撃ったが、一発も当たらなかった。
 次の瞬間――地沼の身体は横に吹っ飛び、倒れていた。
「……間一髪といったところか」
 透華をみて、地沼を蹴り飛ばしたその人はそう言った。
 透華はその介入者を見て言葉を失った。
 その介入者は、まるで夜の闇が人になったかのような姿をしていた。
 黒いコートに、黒いジーンズ、漆黒の髪、雪のように白い肌、そして深紅の瞳。
 透華はおびえる小男を振りほどくと、その黒ずくめの介入者に抱きついた。誰なのかは
わからなかったが、地沼たちに襲われているところを助けてくれたのだから、きっと地沼
たちの敵、つまり味方だと考えたのだ。
「む……」
 介入者は困ったようにうめき声をあげた。
 そこへ、後方から一人の男が声をかけてきた。
「おい、逃げるぞ、乗れ」
「わかった」
 介入者は短く答えると、透華を抱きかかえ、暗闇の中を疾駆した。
 
 
 田所は銃声を聞きつけ、玄関に戻って、絶句した。
 片手をなくし、床にはいつくばる地沼。
 玄関の隅で頭を抱えてうずくまるだけの津田。
 透華の姿はどこにもない。
 田所は彫像のような顔をしていた。そこには怒りは浮かんでいない、それどころか他の
表情も一つとして浮かんでいない。
 田所は鋭利な刃物のように鋭い声で言った。
「追いますよ」
 そういっても動かない二人に、田所は繰り返し言った。
「あの少女の片手、片目、片耳、半身が失われてもかまわない。奪い返しに行きますよ」
 
 
***
 
 
 透華を救った介入者は伊佐美紅と名乗り。
 その仲間の初老の男は飯島直治だと名乗った。
 白い乗用車の後部座席に乗せられた透華に、なにがあったか二人は聞かなかった。
 ただ紅は透華にコートを貸し与え、その肩を貸してくれた。透華はそれに甘え、紅に抱
きついて泣き続けた。
 抱きついた時に、紅の体系に若干違和感を覚えたが、その正体が分かるほど透華に冷静
な思考は残されていなかった。
 しばらく車を走らせたあと、飯島は連絡をとってくるといって車を降りてしまった。
「待て、私一人じゃ面倒みれない」
「少しの間の我慢だ、紅。ちゃんと後で合流する」
「……分かった」
 そのことに紅は納得した様子ではなかったが、飯島が紅の口にキスをすると、紅はおと
なしく従った。
 紅が運転席に座ると、透華は後部座席で一人になることを拒み、助手席に座った。
 紅は、透華に話しかけようとはしなかったし。透華も話す気分ではなかった。ただ透華
は紅の横顔を見ていて、美しいと思った。
 町の中をぐるぐると走った後、紅がおもむろに口を開いた。
「少しの間、危険だから、キミの家には帰れない」
 透華は頷き。
「あの、父さんが……父が死んだというのは、本当でしょうか」
 震えた声で聞いた。
 紅は無感情な声で答えた。
「そう聞いている」
「そう、ですか……」
 透華は泣き喚くことはしなかった。そうするだけの体力は残されていなかった。
 ぐすっと鼻をすすり。
「どこかで休みたい、横になりたいんですが」
 紅は頷いた。
「そのつもりだ」
「ありがとうございます」
 透華は小さな声で答えた。
 
 
   <02――透華>
 
 
「え、ここですか……」
 車を駐車場に停め、数分歩いて着いたのは、
「そうだが?」
 ラブホテルだった。
 透華は顔を赤く染めた。
 十四年間の人生で入ったことはなかったが、どういう場所なのかは知っていた、どういっ
たことをする場所なのかも。
 先ほど襲われた透華としては、そう言った場所に連れて行こうとする紅も、先ほどの男
たちと同じなのだと残念に思ってしまっていた。
 透華の表情を見て何かに気づいたのか、紅は面倒くさそうに言った。
「高級ホテルに泊めてやりたいが、もちあわせがないんだ。我慢してくれ」
 それに、と、紅は言った。
「私は女に興味はない」
 短い言葉だったが、飯島と別れる際にしていたことを思い出してしまい、透華は赤面し
てしまった。
 透華の周りにはそういう性的嗜好の人間はいなかったけれど、話では聞いたことがあっ
たし。それに、こんなに美しい人なら男女問わず放っておかないんだろうなあ、と一人で
納得した。
「わかりました」
 透華はそう答え、紅の後に従った。
 受付の男は紅に「一番安くて、清潔な部屋」といわれると、先払い料金を要求してきた。
 紅は言われた額より多い額を渡し、キーを受け取ると、透華の腕を引いた。
 連れてこられた部屋は、透華が想像していたより綺麗で落ち着いた雰囲気の部屋だった。

 てっきり壁一面鏡張りだったり、床が半分プールだったりする場所なのだと思っていた
が、そんなことはない質素な部屋だった。
 紅は直ぐにルームサービスに電話をいれて、ビールと透華の分のアルコールの入ってい
ないジュースを頼んだ。
「何か食べたいか?」
 と聞かれたが、食欲はわかなかった。
「それよりも、替えの服と下着と、あと靴が欲しいです」
「ああ。明日の朝、もってきてもらえるよう頼むよ。その他に、欲しいものはあるか?」
 透華は少し考え。
「シャワー浴びてもいいですか?」
 そう答えた。
 男たちの汚れを洗い落としたかった。
 紅は頷き、浴室に案内してくれて。洗い立てらしきバスローブを見つけると、おいていっ
てくれた。
 透華は衣服を脱ぎ捨てゴミ箱に捨てた。上着から下着から靴下まで全てだ。
 あの男たちの匂いが付いたものなど、もっていたくなかった。
 透華は浴室にはいると、浴槽にお湯を溜めながらシャワーを浴びようとして、背後に人
の気配を感じて振り返った。
 そこには紅が立っていた。
「……あっ」
 透華はタオルを掴み、それで前を隠して後ざすった。
「キミを一人にはしておけない」
 紅は短い言葉でそう言った。
 紅も服を着ていなかった。
「や、やっぱり……」
 透華は震える声で言った。
 この人もわたしを、犯そうとしているんだ。
 そう思うと立っていられなかった。助けに入ってくれた白貌の介入者、こんなに綺麗な
人がそんなことをするなんて、何も信じられない気分だった。
 だが、
「自殺されては困るからな」
 紅は淡々とした声でいう。
「立てるか?」
 そういって、腕を掴まれた。
「ひっ」
 透華は短く悲鳴をあげ、紅を見上げた。
 そして――
「やめ…………え?」
 紅の下腹部を見て、言葉を失った。
 紅の股間には、透華が考えていたようなものはぶらさがっておらず。一筋の肉の割れ目
があった。
「どうした?」
 無毛の股間、よく見える陰部、わずかに具がはみ出していたが、その周囲は色素が沈着
しておらず綺麗だった。
 透華はゆっくりと視線をあげていって、気づいた。
 小さな尻、くびれた腰、小さいが一応ある胸、突き出た鎖骨。
 透華は赤くなった顔にどんどんに赤みを足していった。
 クラスの男子が教室でパンツを脱ぎだした時よりも、赤くなってしまっていた。
 異性の身体を見て、ではなく、同性の身体を見て、透華は顔を真っ赤にした。
「あ、あああ、あの、もしかして、あなたって」
「ん?」
「おんなのひと?」
「そうだが」
 紅は当然のように答えた。
 透華は恥かしくて、穴があったら入りたい気分だった。
「ご、ごめんなさい。てっきり男の人だと思って」
 紅は気にした風もなく、透華の手を引くと。
「よく言われる。ほら、ついてないだろ?」
 そう言って、自らの陰部を触れさせた。指先がわずかに割れ目に食い込んでしまった。
「ひ、あにゃ、ごごごごごめんなさいっ」

 透華は紅の手を振り解き、頭を下げて、蹲ってしまった。
「謝らなくていいから、早く体を洗おう。明日は早い」
 紅にそう言われて、差し伸べられた手を掴み、透華は立ち上がろうとした、その瞬間。
 ぷしゅー
 勢いよく、透華の尿道から黄金色の液体が放出された。
「ふぇっ、あ、え、な、とまって」
 緊張が解けたところで、力をこめてしまっていたためだろうが。一度出始めたおしっこ
は止まらず、透華が手で押さえても溢れてしまうほどだった。
 その様子を見て、紅はため息をついた。
 
 
「……ごめんなさい」
 浴槽に浸かりながら、透華は何度目になるか分からない謝罪をした。
「気にするな」
 紅はそういって、洗い場に飛び散った尿を洗い流し、そして自らの身体を洗った。
「それだけ怯えていたということだ」
 透華は身体を洗う紅を見ていて、綺麗な身体をしているなあ、と思った。
 紅の身体には無駄な肉がついていない、猫科の野生動物のようなしなやかな身体つきを
している。
 それに比べて。
 自分の身体がどれだけ無駄が多いことか。
 胸は確かに大きくてもいいかもしれないけれど、その分腕や足までむっちりしてしまっ
ていては意味がない。
 身長は紅のほうが二十センチも高く見えるけれど、横幅は自分のほうが大きそうで、少
しだけ悲しくなった。
 そうやって、あまりにまじまじと見つめていたせいか、紅と目が合った。
「なにを見ている?」
「え、あ、いや、なんでもないです」
 透華はそう言ってから、ごまかすために言葉を付け足した。
「伊佐美さんて、いつもこういうお仕事してるんですか?」
「紅でいいよ。それより、こういうって?」
 透華はそれでも紅の綺麗な身体を見たまま言った。
「その、人助けとか。伊佐美さん、紅さんたちが来てくれなかったら、わたし、どうなっ
てたか……」
 紅はわずかに逡巡したあと、短く答えた。
「まあ、そのようなものだ」
 本当のことをいって透華を不安がらせるのはまずいと思ったからだった。
 人殺しをするほうが多いといえば、透華は紅のことを恐れるだろう、それでは透華を守
ることができない。
「そうなんですか」
 透華は頬を染めて言った。
 紅は最後にシャワーで身体を洗うと、「よしいいぞ」と言って、透華に洗い場を譲った。
 今度は紅が浴槽に浸かり、透華が身体を洗う番だった。
 透華はいつものように髪から洗おうと、まず髪をぬらして、シャンプーらしき透明なボ
トルをつかみ、それを手に出した。
 髪も汚れていたので、いつもより多く、手に溢れるほどだった。
「あ、待て」
 紅の静止は一歩遅かった。
 頭にかけた。
「え、なんです?」
 紅は答えるべきか迷ったような顔で、しかし、ゆっくりとした語調で答えた。
「それはシャンプーではなく、ローションだ」
「ろーしょん?」
 聞きなれない言葉だった。
 透華が聞き返すと、紅は答えた。
「セックスの時とかにつかう、潤滑液だ」
「え、ええっ――きゃっ」
 驚いてボトルを強く握ってしまい、中身が押し出されて透華の身体にかかった。
「あ、ああ。早く洗い落とそう」

 透華はそう言って、シャワーホースを掴み、身体にお湯をかけたのだが。そのローショ
ンは希釈して使うもので、先ほどまで以上に透華の身体はどろどろになっていた。
 透華は更にひどいことになった自分の身体に、今にも泣きそうな顔で紅を見た。
「ど、どうしたらいいんでしょう」
 紅は額に手をあて、ため息をついた。
「これだから、女の子は苦手だ」
 
 
「キミに任せておいたら、時間がかかりすぎる」
 紅はそういって透華からシャワーを奪い取った。
「洗い流してやるから、動くなよ」
「え、ええっ、自分でできますよ」
 透華は奪い返そうとしたが、紅は透華の背では届かない高さまで手をあげて言った。
「明日は早いと言っただろう、そのためにも早く寝る必要がある」
 それに、と紅は言った。
「今日はもう疲れた、眠いんだ。そのためにはキミが眠りに着くのを見届ける必要がある。
私はキミを守るようにと、キミから目を離すなと言われているんだ」
「で、でもぉ」
 紅の言っていることは理解できたが。だからといって、自分の身体を人様に洗ってもら
うなんて、透華には考えられなかった。
 だが紅は、片手で透華の身体を掴むと、頭の上からシャワーを浴びせた。
「ひゃっ……ちょっ、いきなり。これじゃあ、なにもみえない」
 透華の髪をたっぷりの湯で濡らすと、紅はシャワーホースを一旦壁に引っ掛けた。そし
て今度こそシャンプーを手に出し、軽くあわ立ててから、透華の髪を洗い始めた。
 紅自身の短い髪を洗うのと違って、透華の髪は長くふわふわとウエーブしていて、その
量は半端ではなく多かった。
 これでは洗うのは大変だろうと思いながら、紅が手を動かしていると。顔についた水気
を手で拭った透華が言った。
「自分でできますから、だから」
 紅はその話題を繰り返すのかとうんざりし、違うことを言った。
「キミはいい髪をしているな、女の子らしい。その」
 透華の髪について褒めようとしたのだが、言葉が詰まってしまった、紅は自らの語彙の
なさにわずかに悔しさを覚えながらも。飯島が言っていたことを思い出していった。
「かわいい髪形だな」
 そういうと、先ほどまでわめき散らしていた透華がおとなしくなった。
「あの、えと、ありがとうございます」
 なんで礼を言われたのだろうと紅はきょとんとした。
 だが背を向けた形で立っている透華には、紅のそんな表情は見えない。
「紅さんこそ、その髪型、格好いいです」
「そうか?」
 ただ単に手入れが面倒だから短くしているだけで、褒められたのは初めてだと紅は思っ
た。飯島はよく紅に『女らしく髪を伸ばしたらどうだ?』というが、仕事の邪魔になりそ
うで、飯島の言葉とはいえそうする気はなかった。
 透華の髪を洗うだけで、紅は若干疲れを覚えた。
 この時間で自分の身体を上から下まで洗い終わっていたに違いない。
 顔は透華自身がタオルでふき取っていたので、紅は透華の髪をまとめあげてやると、身
体に取り掛かった。
 洗うといってもローションを洗い流すだけだから、そんなに手間はかからないだろうと
思い、上からゆっくりとお湯をかけてやっていて。あることに気がついた。
 上からかけているだけでは、落ちない場所がある。
 紅はそれを手で掴むと。
「え、ええっ、ここここ、紅さんっ」
 その肉の塊のようなものを持ち上げ、上から下から横からとお湯をかけてやったり、手
でこすってやっていると。
「――ん、どうした?」
 透華が顔を真っ赤にして、すごい目で紅のことを見ていた。
「な、なんで胸もむんですカッ!?」
「うん?」
 紅は不思議そうに首を傾げ、手に持っているものを見て、ああと頷いた。
「ここは特に汚れていたから、念入りにな」

 紅の言葉にはよこしまなものは感じられなかったし、それに確かにそこにはあの小男が
精液をすりこんだから汚れているのには違いない。
 でもだからといって、胸を他人に触られていると気になってしまう。
「別に、いやらしい気持ちで触っているわけではない」
 紅の声は背後から聞こえて、その顔は見えない。
「…………」
 透華はそれでも納得できないというように、唇をアヒルのように尖らせた。
 紅は困ったなとわずかに考え、ならばと行動に移した。
「じゃあ、今の触り方にいやらしい気持ちがはいっていなかったことを証明するため。少
し、セックスの時にするように触る」
「……へっ?」
 透華には静止するチャンスもなかった。
 次の瞬間には紅の長く細いしなやかな指先が、透華のはりのある乳房をもみ始めていた。
「ちょ、ちょっとやめてくださ――あっ!」
 最初はゆっくりと、根元から乳頭へと揉んでいるだけだったが。紅の手が透華の乳房を
真正面から掴むと、人差し指以外の四指は透華の大きな乳房を揉んでいるのだが、人差し
指だけは乳首に触れ、コリコリと硬くなった乳首を縦横にいじくり始めた。
「やっ……こ、紅さん……そ、それっ……そこ、へんなの、むずむずする……」
 紅は手だけで少女の肉体を操りながら、その耳元に顔を寄せ、ささやいた。
「気持ちいいのか?」
「……っ。……そんなの……いわない、で」
 透華は紅の手から逃れようと身体を動かし続けたが、しかし、紅の手の魔力には逆らえ
なかった。
「乳首いじるだけで、これか。成長期は大変だな」
 少しの間触っただけで、透華がどこを触られるとよく鳴くのか、紅には理解できた。
 仕事の関係で、幾度か女を抱いたことがあった。紅は着衣のまま、男だと偽ってのこと
だった。
 紅の整った容貌は、少年的な要素があり。彼女の普段の服装のせいもあって、よく男と
間違われることが多い。
 それに比べて、と紅は思った。
 透華のなんと女らしいことか。
 まだ十四歳だと聞いていたが、透華の体つきはすでに女のそれだった。
 柔らかな肌、長い髪、豊かな乳房。少しだけ嫉妬した。自分もこういう風に育っていれ
ば、飯島から遠ざけられることもなかったのではないかと。
 少女時代にはよく紅の相手をしてくれた飯島も、紅がある意味で男性的な格好よさをもっ
て成長した今となっては、なかなか一つの布団にはいることすら許してもらえなくなって
しまった。
 もし、と、紅は思う。
 自分も透華のようであったのなら、毎晩のように飯島に愛してもらえたのだろうか? 
今でも飯島と同じ屋根の下で暮らすことを許してもらえたのだろうか?
 そう考えていると、透華をいたぶる手が強さを増していた。
 透華くらいの年のころ、紅の胸も敏感になりすぎてしまっていた時期があった。それは
成長期特有のことだといわれ、紅は自分の胸が大きくなるのだと思ったが。それは直ぐに
収まり、今のサイズで成長は止まってしまった。
 だから、透華がどうして胸を触っているだけで、こんなに喘いでいるのか、理由は分かっ
ていた。
 しかし、紅は手を休めようという気にはならなかった。
「う、あ、ああっ、だ、だめえ」
 透華が悲痛な叫びを上げた。
 それと同時に、透華の泌尿器から再び黄金職の液体が飛び出したのだった。
「ちがっ、ちがうの……」
 透華は両手で顔を覆った。
 同性の手でエクスタシーを感じてしまったこと、しかも胸を揉まれただけでだ、その上
お漏らししてしまうなど。
 紅はそんな透華を見ながら、次の行動に移っていた。
 透華の前に膝をつくと、その下腹部に顔を近づけ、尿を出したばかりの部分を舐めた。
「……っ。……紅、さん?」
 透華は震えた声で聞いた。
 声は無表情な声で淡々と答えた。
「汚れたから拭いている、動くなよ」

「そんな、そこ、だって、きたない」
 涙声で叫ぶ透華。
 けれど、紅は耳を貸さず、黙々と愛撫を続けた。
 塩辛く苦い、癖のある味だった。ビールで喉を洗い流したかった。
 舐めながら、紅は思った。
 この少女には薄くではあったが陰毛が生えている、なのに、なぜ私には陰毛がはえてこ
ないのだろう。
 体質の問題なのだろうか。
 それとも、私が正常な女でないから?
 紅は少女の性感帯を探るように愛撫し続けた。
 少女は立っていられなくなり、腰を落とした。それでも紅は攻める手を休めなかった。
 もう一度少女をいかせるまで、と。
 紅はなぜ自分がこんなことをしているのかよく理解できなかった。
 ただ、少しだけ、女として正しく成長しているこの少女の姿が、うらやましかったかも
知れない。
 自分もこうなりたかった、そう思っていたからかもしれない。
 紅は無表情な目で、少女の身体を貪った。
 
 
***
 
 
 津田良人、それが彼の本名だったが、彼をその名前で呼ぶものは極限られている。
 津田へ組織からの任務を伝える田所と、津田とよく行動をともにする地沼、その二人く
らいしかいない。
 だからといって、津田の交友関係がその二人だけかと言われれば、違った。
 彼には無数の友人がいる。
 それこそ、彼と友人だと名乗ろうとするものは、数百、数千単位でいる。
 だが、彼の取り巻きたちは、彼を津田とは呼ばない。
 人は彼をこう呼んだ――バグス、と。
 それがあるインターネットサイト上で津田を神と崇める者たちが、津田を呼ぶときに使
う名前だった。
 その由来は極簡単だった。
 津田はそのインターネットサイト上で、合法ではないポルノ画像をあげていて、そこに
張った広告料や有料ページの会員料で収入を得ているのだが。
 そのポルノ画像というのが、幼い少女たちを性的にいたぶっている最中のもので、特定
の性的嗜好者たちにはとても評判がよかった。
 一時期津田は、虫を使って少女たちをいたぶるのにはまっていたことがあった。
 大量のゴキブリと一緒にダンボールの中に一晩閉じ込めたり、身体に糖蜜を塗りたくっ
て木に縛り付けたり、特殊な器具を使って少女の膣の中に虫の卵を入れてそこで孵化させ
たりと。
 そうした虫を用いた責めかたから、津田には名前が与えられた、バグス、と。
 そのサイト上には誰も言及しようとはしなかったが、その画像の中には、ニュースで行
方不明だとされている少女に似ている写真が多数あったり。新聞に載っている死因の通り
の姿の画像があったり。中には、少女の死体を犯している姿や、真っ当な思考をしている
ものにはグロテスクな画像にしかみえないものも多数あった。
 そんなサイトが潰れない理由はいたって簡単だった。
 そのサイトの収入――津田には教えられていない――は一月で数億を超えるとも言われ
ていて、それは組織の収入源にもなっていたからだ。
 津田と地沼の組織での役割は、そうしたポルノ画像を作ることであり。
 柊透華を誘拐するのに、二人が連れてこられたのは、柊透華もそうした画像の被写体に
される予定だったからだ。
 だが予定は狂ってしまった。
 突如として現れた介入者が、透華をさらっていってしまった。
 バグス/津田良人は一度陵辱すると決めた相手は、必ず陵辱してきた。
 だから、今度もそれを成功させると、彼は誓っていた。
 そのために、津田は捜索活動を始めた。
 一流の狩猟者による、捜索、その方法は――

「くふ、くふ、かわいいよ。透華。ぼくの透華。くふ。くふふ」
 津田は透華の部屋で下着が詰まった引き出しを見つけると、それをベッドの上にばら撒
き、全裸で寝転がった。

「くふ。透華。ケーキみたいなにおい。くふ。くふ。このパンツ。くふ。染みつけて。く
ふ。くふ。よごしたい」
 田所に付き添われ地沼が病院にいってから、津田はずっとこの調子だった。
 透華のベッド部屋中に津田の精液の後が残っていた。
 透華が座っていたであろう場所。透華が触っていたであろう場所。透華の下着、透華の
衣服。とにかく透華に関係するものであれば、なんにでも射精した。
 この男小さく包茎で一度に射精する量も少なく勢いもないが、とにかく、萎えることが
なかった。
 興奮状態にあれば何度でも射精することができた。
「お。くふ。おお。くふ。おおおおおおおお」
 津田はあるものを見つけ、奇声をあげた。
 それは股間の部分に染みのついた透華のパンツだった。
 彼はそれを喜んで頭にかぶった。
「くふ。くふ。透華のぱんてぃー。くふ。えっちな透華。くふ。くふ」
 本人は喜んでいたが、その染みは先ほど自分が射精したものだったりするのだが―――
―本人が幸せならば、それはそれで。
 この姿だけ見ると津田はただの変態だが、何もしていないわけではなかった。
 街中に逃げてしまった透華たち、それを地道に足で探していては、見つけられるものも
見つけられない。
 ならば津田、いや、バグスはどうやってみつけるかというと。
 それは犯罪抑止のためにと、日本が導入したシステムを用いた方法だった。
 全国各地、さまざまな場所に配置されたカメラ、その映像を誰でもリアルタイムで見れ
るというシステムがあるのだが。
 それを彼の信者たちに監視させ、透華たちを見つけ出すというものだった。
 そしてそれはその効果を発揮した。
 
 
***
 
 
 津田は今、透華たちが泊まるラブホテルの一室にいた。
 それも透華たちが泊まっている部屋にだ。
 受付の男にはきつい電流を食らわせ、強引に侵入した津田は透華たちの部屋を突き止め
る進入すると、二人がともにシャワーを浴びていることを確認し、その部屋のベッドの下
に隠れた。
 無論、脱ぎ捨ててあった透華の衣服を抱きしめて、だ。
「くふ。くふ。透華の脱ぎたて。くふ。くふ。いい匂い」
 女ものの下着が二枚あったが、特に気にはならなかった。
 津田はバスルーム内から聞こえる二人の声に、妄想を膨らませ、ばれたらまずいのは分
かりながらも、自慰行為をしていた。
 どうせなら、透華の処女がほしかったがしょうがない。
 乗り込んでいって『あの男』に勝てるとは、到底思えなかったし。
 スタンガンで電流を流してしまえば、透華の身も危ない。
 死姦趣味もある津田だったが、透華は生かしておかないといけないことはしっかり覚え
ていて、その一線は守っていた。
 津田はここで二人が寝静まるのを待つことにして、オナニーにふけった。
 しばらく待つと、バスルームから誰かが出てきた。
 その誰かはどうやら透華のようだった。
「紅さん……まさか、あんなことする人だったなんて……」
 小さな声で呟きながら、透華はベッドの上に倒れこんだようだった。
 津田はベッドの下の隙間から覗いていて、透華が裸同然の姿だったのは見ていた。
 だが、まだ出てはならない。男が出てくるのを待たなければ。
 しかし、待っていてもなかなかあの男は出てこなかった。
 そうしている内に、津田は痺れをきらしてしまった。
 男のほうがバスルームにいるのなら、そこへ電流を流したらいい。それだけのことだと
思いベッドの下からはいでた。

 津田は直ぐに行動するべきだった。
 けれど、津田はベッドの上に裸でうつ伏せに寝転がる透華を見て、全ての行動順序がリ
セットされてしまった。

 透華の肉体は幼い少女ばかり、そうした少女しか犯せなかった津田にとって、魅力的な
ものだった。
 彼は幼女趣味ではあったが、だからといって女の魅力というものが分からないでもなかっ
たし。透華の年齢を考えると、透華は津田が望んだ存在だと言えた。
 まだ年齢的には幼いが、肉体的には大人のそれをもった透華。
 それを犯せる、好きなように、好き放題に。
 津田は自らの陰茎を握り、カウパーを撒き散らしながら、透華に近づいていった。
 少しずつ透華との距離が縮まっていく。
 津田は考えた。透華が自分を見たらどんな顔をするだろうと、その顔に射精してやった
らどんな顔をするだろう、と。
 早く透華の膣に、口に、尻に、穴という穴に陰茎を挿入したかった。
 透華のこぶりだが、むちむちとした尻を見た。
 その時だった。
 透華はうつぶせに寝転がっていたのを、身体を反転させて、仰向けになった。
 顔が驚愕に染まった。
 透華はそこに小男/津田がいることに驚いた。
 そして、津田は
「は、はえてる……」
 透華の股間に陰毛が生えていることに、その場に崩れてしまうほど驚いてしまった。
 彼にとって陰毛とは、大人の証だった。
 従順で、純情で、純白無垢な少女たちにはないはずのもの。
 そこへ、
「そこまでだ」
 紅が拳銃を構えて現れた。
「ひっ」
 津田は振り返り、紅の顔を見て、拳銃を見止めて、絶望して顔をうつむかせようとして
視線を下げていった先に、あるものを見つけた。
 それは彼にとってヴァルハラだった。
「つるつるまん――」
 鋭い衝撃が津田の即頭部を襲った。
 閃光のような紅の蹴りだ。
 あっさり気絶して倒れてしまった津田を見て、透華は言った。
「ねえ、この人わたし見て驚いて『生えてる』とか言ってたけど。なんのこと」
「私が知るか」
 紅は先ほどの言葉を思い出し、もう一度津田を蹴り飛ばした。
 
 
――続く、

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