【第二章 人捨てし夜】

初公開:2014/11/02

これは、わたしのきおく?

あるいは、だれかの夢―?


わたしは、誰かに連れ去られている。


けれど、わたしは、腕に抱える何かを振るい――。



わたしの身体が、地面に投げ出される。


わたしは、地を駆け出して―。


そこで、夢の海に、光が射し込んで。
夢の水面へ浮かんでゆき。

わたしは、目覚めた。


鈴鶴「ん………」

ヤミ「鈴鶴様、おはようございます…
   …もう、逢魔が時ですけれどね」
目の前に、いつものヤミの顔。

先に目覚めていたらしいヤミが、わたしを起こした。


鈴鶴「ヤミ…あのふたり……は?」

わたしは、きょろきょろ見回そうとしたとき。


女性「……………」
女の子「おはよう、起きたのねー」

ふたりの女性は、座りながらこちらを向いた。


鈴鶴「その…、あの、助けてくれて…
   ありがとう…」

わたしは、ぺこりと頭を下げ。

ヤミ「鈴鶴様に同じく、感謝いたします」

ヤミも、丁寧に頭を下げた。


ヤミ「…そういえば、あなたがたの名は何と言うのでしょうか?
   わたくしは闇美と、こちらの娘は、鈴鶴と申します」


女の子「ああ、そういえば名乗ってなかったわね」

そして、ふたりの女性は互いの自己紹介をした。


女性「わたしは…シズという」
髪の長い、衣を羽織った格好の女性は、そう名乗り。


女の子「あたしは、フチ」
おかっぱ頭の、狩衣衣装の女の子は、そう名乗った。


わたしは、名前を聞いて、なんだか懐かしく――。
そして、今まで混乱していた頭の中も、元通り正常に戻っていき――。


わたしは、疑問をぶつけた。


鈴鶴「どうして、わたしたちを助けたの?
   …見ず知らずの―ふたり、でしょう」


シズ「わたしたちは…月に住まう、人とは違う生を生きる………【月の民】…」


そのことばには、聞き覚えがある。
わたしの母親は、そうだった―そう、父が言っていた。


だから―。
鈴鶴・ヤミ「月の、民…」

わたしとヤミは、ふたり同時に、驚いた声で呟く。


シズ「…あなたがたには、月の民の王族の、血が、命が流れているから
   鈴鶴……には、その【血】が
   ヤミ……には、その【生命】が」


鈴鶴「わたしの、母上の――」
ヤミ「鈴鶴様の、お母様の――」


再び、わたしとヤミは呟いて。


鈴鶴「けれど、王族……
   それは、どういうこと?
   それが、どうしてわたしたちを助けたことに?」



わたしは、次の疑問をぶつけた。


フチ「……それは、話せば長くなるけれど
   …話さなければ、納得しないでしょう?」

フチは、わたしににこりと微笑む。

わたしは、その問いに視線で答えて。

フチ「うふふ、そうよね
   まぁ、言わないと、教えないと、語らないといけないことなのだけど、ね」

子供らしい軽い口調で答えるものの、次に発せられる言葉は、重々しい口調になった。

フチ「………
   あなたたちが神という存在を信仰するように、あたしたち月の民も神を信仰しているのよ
   ――そのことが、今回のことに深く関わっているの」


そして、話は語られた。


―――月には、神剣と語り継がれる剣があった。

ある神を殺したと言われる、剣があった。



その剣には、ある話があった。

月の神―月の女神の話が。

ある神を殺し、その為に姉と永遠の縁を切られた―という伝承が。


永遠の縁を切られたあと。

月の女神は―。
自らの魂を、神を殺したその剣に封じ込め。
自らの魄を、月の民として切り分け、発現させ。


その姿を、この世から消した―。

そして、残されたその剣は、月の王族によって黄泉剣(よみのつるぎ)と名づけられた―。

そのような話が、伝承が――あった。


月の民。
【月の民】――。
変若水の血を持つ、長寿の民。

その中でも、月の神の血を濃く継ぐ者は、月の王族であり―。


その王族の者は、その剣を永久に封印し、月を治めていった―。

それが、この話の結末――。


それは、あくまでもただのお話として語り継がれてきたというだったそうなのだれけれど―。




ある日、月にとある男が、産まれた。

その男は、怪物であった。

――その名は、リュウシュ。


強さを求め、覇者という存在こそが正義という理念があった。

リュウシュは、人を惹きつけるだけの力を持ち、その男の正義に感銘を受けた民が集まり、集団が出来た。


そしてその集団は、神をも殺した剣ならば、覇者になれると考えた。

その集団は、いつしか神を殺したという剣を求め始め―。


その集団は、封じられた剣の封印を解くために動き―。




その剣の封じを、解いた。


月の王を生贄に、その剣の封じを解いた―。



その剣―黄泉剣は、ただの、神話の象徴として作られた剣などではなく。

神を一人殺すほどに値する、本当の神の剣であり。


潮の動きを操り、月を蝕む呪いの魔剣であり。



リュウシュは、その月の魔剣を操り、月を破壊していった。


そして、リュウシュは。


龍の首の鬼―そう自負し。


自分に逆らう月の民を片っ端から滅ぼしにかかった。


黄泉剣は、その刃で切られるだけで、月の民を消し去る。
それは、月の魔剣と呼べるほどに恐ろしい存在で。


黄泉へと送る剣―月の呪いの魔剣で、自分に逆らう民を虐殺した。

――場面は、月の王の宮殿へ。


月の王は殺された。

けれど、月の王には娘がいた。

月の女神の血を引く、王族の血を引く娘がいた。


フチはその娘―【姫】を世話する世話役。
そして、同時に【姫】を守る警護役。


シズは、フチの幼馴染―。

元は腕の立つ刀工だったが、刀の扱いも達人であった。

そのため、【姫】の刀の修行役ならびに、警護役に抜擢された。


シズ、フチ、そしてその他の同胞たちは、【姫】を守るため、この星―わたしたちの住む星―青き星へと逃げ―。


その男たちも、この青き星へと追い―。


決死の闘いの末、シズ、フチ、【姫】だけが生き残るほどの死闘の末―。


リュウシュを殺し、黄泉剣で消し去り―。


黄泉剣を海の底の底へと沈めた。





けれど、その【姫】は、満身創痍のシズとフチの隙をついて、男どもの生き残り―仏と自負したシャクハツという男に連れ去られた―。


ぱん――。

フチが、手を叩く。


フチ「―ここまでが、昔話ね」


その話は、わたしたちが暮らしていたのとは別の次元の話のように思えた。


けれど、それでは―。

その月の【姫】―わたしの母は、どうなったのか?
なぜ、父と出会ったのか?


わたしが思い悩んでいると。


フチ「……何故、【姫】様が、鈴鶴の母親なのか。
   それは、分からない
   …けれど」


フチは、わたしの問いの前に、その答えを出し―。



フチ「けれど、その一年ほど後。

   【姫】様と、出会ったときには、既に――」


――死んだと聞かされていた、母は。


フチ「…【姫】様は、何があったかは分からないけれど…
   鈴鶴の父親と出会った

   …そして、【姫】は鈴鶴を産み…」

――そして。

わたしが心の中で思っていた言葉を、ヤミが発する。


ヤミ「傷つき、空へ掻き消えそうだったわたくしの命を助け――」



フチ「【姫】様は、その命を、散らした」


シズ「【姫】が、…命を散らす寸前に…
   わたしたちは……【姫】に頼まれた」


フチ「鈴鶴と、ヤミのことを、月の女神の血を引く者として―守って欲しい、と」



シズ「だから……わたしたちはあなたがたを守るため、遠くから見守っていたけれど」

フチ「鈴鶴の父親に、月の民となりしあなたたちが、月の民が完成された身体となる、15年まで…
   見守り育てることをお願いしていて…

   ―そして、15年後、昨日、あたしたちが其処に行こうとしたとき」


鈴鶴「――奴らが、来た」


ヤミ「――わたしたちの一族を、皆殺しにした」


―妖殺し―カショが。


フチ「一足、遅かった」


シズ「そして…
   わたしたちは、あなたがたを守るため、追って―」


フチ「今に至る―というわけね」

鈴鶴「わたしの父上は…」

シズ「恐らくは、奴らに―」


鈴鶴「……
   …でも、わたしとヤミを―」


フチ「…生かし、逃がしてくれた。
   立派な、父親だったと思うわ」


鈴鶴「ええ」

ヤミ「鈴鶴様のお父様は、ほんとうにご立派でした―」


わたしとヤミは、衝撃を受けたけれど―。
その事実を、受け入れた。


鈴鶴「あなたたちは、わたしたちの家族―ということ…でいいのかな」
―今まで、見守ってくれていたふたり。


シズとフチは、その言葉に目を丸くしたけれど。

シズ「家族……
   …まあ、一蓮托生したことになるから…

   よろしく、頼む…」
すぐに表情を戻して、冷静に答えた―。


フチ「ふふふっ、家族―。
   ……まぁ、わたしたちは【姫】様の家族に近い存在ではあったからね

   鈴鶴、ヤミ、…改めて、よろしくね」
シズとは対称的に、にこりと笑顔で答えた。


いつしか、外は夜になっていた―。



わたしとヤミは、シズとフチと色々会話をする。


鈴鶴「ここは?」


シズ「たまたま、見つけた岩の洞穴だ
   わたしたちの住処は、…別のところにある」


ヤミ「明日ほどにはその住処へ、戻るのですか?」


フチ「…まぁ、そうなるわね
   …この国の、とある島の山の中
   ――結界を貼った、その中よ

   そこにあたしたちが、拠点としていた場所がある

   …まぁ、奴らに気づかれないように行かなきゃいけないけれど、ね」


こうして、時間が過ぎる――――――――。

―――――わたしたちは、色々な会話をした。

これまでの暮らしについて、それぞれの好みについて―。


シズ「…その太刀は……」

シズは、わたしが大事そうに持つ太刀について訊く。

鈴鶴「母上の、形見だと」


シズ「ふむ…」


シズは、わたしの太刀を懐かしそうに、見つめる。


シズ「……大切にしてくれていたんだ、ありがとう
   【姫】に贈った、わたしの作った太刀だから…
   【姫】の好きな花の、百合の飾りに一番苦労したのが…
   懐かしいよ」


そう言って、母の形見の太刀―シズの贈り物だという、それを撫でた。


ヤミ「そういえば、わたくしたちを守るのは、【姫】君のお願いのためだけ、ですか?」


その言葉に、シズとフチはぴくと身体が反応し。


シズ「――正確には、もう一つ理由がある

   …黄泉剣を、封印しなくてはならない」


ヤミ「…王族が、封印したから、そのためですね?」
ヤミが問う。

そして、その問いに答えが返る。
フチ「そういうことね
   けれど、こっちの用件はついでに―近いわね
   剣をどうにかするためには、海の底へ剣を引き揚げないといけないから」

ヤミ「―黄泉剣は、大丈夫なのでしょうか?」

フチ「流石の【月の民】も、海の底に消えた黄泉剣は引き揚げられないし、ね
   ―王族の、女神の血を引く者になら、できるのだけれど、ね」

鈴鶴「―わたし?」

フチ「そう
   だけれど、今のあなたを連れてもただ狙われるだけだから」


ヤミ「あくまで、わたくしたちを守ることが一番の義務というわけですね」


フチ「そういうことになるわね」


――そして、話は、また色々と―。


いつしか、話の種も切れて。


フチ「そろそろ、休もうかしら?
   すぐに出発して、あの島へ向かいたいし」
フチが、そう言って寝床に向かう。

ヤミ「そうですね」
ヤミも、その言葉に続いて、寝床に入って。

シズ「では、眠ろう…」

鈴鶴「では、おやすみなさい」



再び、仮眠を取って、眠りの渦の中へ。



――――今日見た夢は、何も特別なことのない夢で。




――わたしは、目覚めた。


シズ「さて、行こうか」

鈴鶴「そうね」


わたしたちは、支度を整え、敵に見つからぬように気をつけながら、島へと向かった。


数日かかる、旅だった。


てくてくてくてく、わたしたちは歩く。


敵に―妖殺しの存在も考慮しながら、わたしたちは歩く。


途中、野宿で休みながらも、その島目指して歩く。

野宿の間も、会話をする。
ぱちぱち燃える焚き火の周りで、話をする。


鈴鶴「―そういえば、わたしたちのいた住処はどうなったの…?」
ふと、思いついたことを訊ねてみる。


シズ「…………
   ……わたしたちがたどり着いたときには、燃え盛る火炎が――」
―そして、その答えは、悲しき答え。


鈴鶴「そう、なのか…」
――その答えに、私は少し落ち込む。
ああ、恐らくわたしの父は――。

シズ「…確か、カショは火鼠とか名乗っていたはずだ…
   実際に、火を操ることもできたらしい…」
そう、シズが思い出したように言う。

ヤミ「火炎……わたくしのときも、住処が燃えていました…
   妖殺しとして、焼き尽くすことは……都合が良いのでしょうね」
ヤミも、ああと思い出すように。

フチ「……そうか、ヤミは――」

ああ、そうだ―。
ヤミが妖殺しに襲われたとき、そこで、何があったのかを知っている―。

ヤミ「…これで、二回目ですね…
   これはもう、運命なのでしょうね
   立ち向かわないといけない、という……」

ヤミは、すこし悲しそうに。
けれど、強い意思をこめた言葉で、言う。


会話は続く。


ヤミ「そういえば、シズ様や、フチ様は…
   なにか、能力…というのでしょうか?そのようなものを、持っているのですか?」


ふと、ヤミが訊いた。


シズ「……わたしは、別段そんなことは出来ないな
   ――まぁ、特技といえばこの太刀などを振るう、こと……かな
   そういうことなら、フチのほうが…」
飾りげのない太刀を持ちながら、シズはフチに目をやる。


フチ「あたしは、火水風土を触媒として式神として呼び出すことが出来る―
   簡単に言ったら、火や水や風や土から兵士を作り出す―というところね」
話を振られたフチは、すらすら淀みなく、はっきりと答えた。


鈴鶴「どういう、感じに?」
わたしは、少しわくわくして、お願いする。


その答えとしてフチは、得意げな顔でわたしとヤミを見て。
フチ「いいわよっ
   ん〜っ!!」

手に持つ小刀に念を送り、焚き火の火から式神を呼び出した。


それは鬼のような、亜人の見た目で―。


向こうの景色が少し見える、水のような質感の式神がそこにいた。


鈴鶴「わぁ…」
わたしは、それに感嘆した。
これほどのものを、簡単に呼び出せるなんて、すごい―。

そしてその感情は、わたしだけではなく、ヤミにもあって。

ヤミ「この式神は、どんな力を持っているのですか?」
ヤミは、興味深そうに訊いた。


フチ「ん〜…」
フチは、少し悩んでいたが、それもほんの少しの時間で―。


フチ「そこの岩を、砕けるぐらいかなあ?」
フチは、フチの背ほどの―四尺ほどの大きさの岩を指差した。


フチ「さ、壊してみせて」
式神に、命ずる。


式神は、無言でその岩に拳を振り下ろし―。

ぐしゃ。
砂の塊を蹴散らすがごとく、岩を粉々に砕いた。


鈴鶴「…すごい」


フチ「まぁ他にも、味方を運んだり―補助が出来るわね
   ―さ、戻りなさい、お疲れ様」

フチが指をぱちんと鳴らすと、式神は焚き火へ歩み寄り、元通りの火へと戻った。



ヤミ「…こんなことができるとは、すごいですね」
ヤミは、丁寧ながらも、目を輝かせながらその様子を見ていた。


フチ「まぁ、わたしは、身体が小さいからね」
だからこそ、これほどまでの力をつけたのだ、と言った。


――こうして夜は更ける。


私たちは、歩き、歩き―。


島の近くにたどり着いてからは、海を渡って―。


といっても、船ではなく、空を飛んで渡った。

わたしは、ときどきそうされていたように、ヤミに抱きかかえられて飛んでゆき、シズとフチは月の民が使えるという飛ぶ力で渡った。


―わたしたちは、無事、島に辿り着いた。


そこからまた、山の中をてくてく歩いて―。
シズとフチの住処に、たどり着く。



わたしたちは、住処の中で腰を下ろした。

いつもやらないことをすると、疲れは溜まるもので…。

鈴鶴「…つかれた」


ヤミ「鈴鶴様、お疲れ様です」

わたしとヤミは、へとへとだった。
特にヤミは、わたしを抱えて飛んだのだ。けれど、疲れは顔に出さず。

わたしは、ヤミのようにならないと、と拳をぐっと握った。


鈴鶴「……シズとフチは、疲れていないの?」

シズ「わたしは、慣れているから…」

フチ「あたしも
   あなたたちのところに、15年も様子を見に行ってたしね」

けれど、シズとヤミは、わたしたちとは対称的に、元気に話していた。


やはり、15年わたしとヤミを見守っていただけある―。


その元気そうなシズは、布団を引っ張り出した。

シズ「さて、休もうか
   ここなら、もう少し気持ちよく寝られるだろう」

―けれど。


ここまで来るときは、身体を禊ぐ機会が少なかったので、さすがに禊ぎをしたい。

鈴鶴「禊いでからで、いい?」


わたしの問いに、シズはああそうだと思い出したように。


シズ「そうだ…な、禊ぎは大切だ…
   …この住処には…湯がある―温泉とわたしたちは呼んでいるが、それが裏手に引いてある
   ……心地よいはずだろう」

鈴鶴「あたたかいみそぎ…」
とても魅力的な言葉に、わたしはぽけーっとしてしまう。


ヤミ「鈴鶴様、楽しみですか?」
ヤミが、そんなわたしの顔を嬉しそうに見ながら、そう訊く。


鈴鶴「う、う、うん!そう!」
突然の質問に驚いて、動揺しながら肯定した。


けれど、それは第三者から見ると、とても不自然に見えるものなのか―。

フチ「…あらあら、そんなに楽しみなのね」
フチは、子供を微笑ましく見るような表情で、わたしを見つめた。


鈴鶴「あ……」

恥ずかしい。


かぁっと顔が赤く染まる。


そして、そんなわたしに、ヤミはにこっと笑って。

ヤミ「ふふっ、鈴鶴様、行きましょう」

ヤミが、わたしの頭を撫でて、ぎゅっと手を繋いで歩き出す。


鈴鶴「…うん」
わたしは、赤く染まった顔をうつむかせた。




わたしたちは、温泉へ―――。


鈴鶴「ああ、あたたかい…」


あたたかい水は、わたしたちの疲れを取ってゆく。


ああ、とても気持ちいい――。


そう、ぽけーっとしていると。



フチ「鈴鶴って、胸大きいわね
   【姫】様の血は、こんなところまで継いでたのね…」



突然、こんなことを言われた。


わたしの顔は、またかぁーっと熱くなる。

鈴鶴「え、ちょ、ちょっと…」


その様子を見て、ヤミは慌ててわたしの胸をむにと掴んだ。

そして―。
ヤミ「だ、だって鈴鶴様のここは…
   わたしが、こうやって………」

追い討ちの言葉。


ヤミは、わたしよりも動揺していた。


フチ「それにしても、ヤミは…
   ―鈴鶴とは、大きく違うわねえ……」
にやにや、フチが見つめる。

うう、幼い見た目なのに、なんでこんなにいじわるなんだろう―。
それとも、幼い見た目だからいじわるなのだろうか?


ヤミ「もう、鈴鶴様と出来ったときは、こんな大きさでしたから」
―小さな胸を張って、はっきりと答える。
けれど、威厳は感じられない。

やはり、先ほどの動揺の与えた影響はそう消えない。



フチ「…それにしてもヤミは、わたしみたいな、幼い姿の頃に鈴鶴にもしていたの…
   ずいぶんと仲が良かったのねえ」
けれど、それに返した言葉は、的確で―。

ヤミ「う…」
ヤミは、言葉に詰まった。

フチ「図星だったんだ」
フチは、さらに、にやにやヤミを見つめる。


フチ「―鈴鶴の大きさは、シズといい勝負ねぇ、うふふ」
そしてフチは、ヤミから視線を外してシズに目をやった。


シズ「………そうだな」
わたしよりも大きな胸に手をやりながら、硬く、冷静に答えた。


ああ、わたしもシズのように冷静に対応したい―。


風呂の湯気が、ゆらゆらと漂う中、そんなことを思って―。



―――こうして禊ぎの時間は過ぎていった。


――月が昇り、夜が訪れ――。


わたしたちは、布団の中。
慣れない寝床で眠れないわたしとヤミとは対称的に、シズとフチはすやすやと眠っていた。


けれど、わたしたちは―。

鈴鶴「ヤミ…その……」
布団の中で、ヤミに呼びかける。

ヤミ「…あの…禊ぎのときは、その…ごめんなさい」
ヤミは、そんなわたしにぺこりと謝る。


そんなヤミを見ると、何故だか心が苦しい。
実際とても恥ずかしかったのだけれど、それよりもヤミが苦しむことが心に響く。

鈴鶴「……あの、そうじゃなくて…」



沈黙――。


そして、わたしは―。
鈴鶴「血、吸い合おう……?」



首筋を、露にした。
わたしとヤミは、いつものように、互いの血を吸い合う―。

鈴鶴「…んっ、んっ…」

ヤミ「…はぁ、ん…っ…」

互いの首筋に、歯を、牙を、食い込ませ。
互いの身体は抱き合って。

シズとフチには気づかれないように、いつもより声を抑え目に―。


けれども漏れる小さな甘い喘ぎ、増す心拍数。



血を吸い合って、服を直して、布団の中でくっつきあって。




いつしか、眠りの海にわたしとヤミも沈み。



――――次の朝が来た。



人物・専門用語
鈴鶴(すずる)

・生年月日:792年10月12日
・身長  :165cm
・体重  :45kg
・スリーサイズ:89-61-85
・髪色  :黒
・目の色 :黒
・血液型 :B型
・利き手 :両利き
・一人称 :わたし


ヤミ(闇美)

・生年月日:782年5月6日
・身長  :170cm
・体重  :60kg
・スリーサイズ:72-62-78
・髪色  :黒と白(ブラック・ジャックのような感じ)
・目の色 :青
・利き手 :右
・一人称 :わたくし
・背中に翼が生えている

シズ

・生年月日:はるか昔、フチと同じ年に生まれた。
・身長  :178cm
・体重  :68kg
・スリーサイズ:94-65-92
・髪の色 :白
・目の色 :眼球は黒・虹彩は青
・利き手 :右
・一人称 :わたし

フチ

・生年月日:はるか昔、シズと同じ年に生まれた。
・身長  :118cm
・体重  :24kg
・スリーサイズ:60-42-60
・髪の色 :白
・目の色 :眼球は黒・虹彩は青
・利き手 :右
・一人称 :あたし
・火・水・風・土から式神を作り、呼び出す能力を持つ。

【第三章 黄泉の彼方に】?へ。
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