作者:社長
初出:http://kinotakehinan4.exout.net/test/read.cgi/pray...





…最初に、言っておく。わたしは、狼なのだ。

人を喰らい、血をすすり、肉を喰らわなければならぬ性がある。
――人の姿であっても、その性は抑えられない。

―――俗に言う、人狼という存在なのだ。

生まれたときから、わたしは人とは違うと云われ。
呪われた身体と、云われ。


いつしか、わたしは、人を喰らう獣に成り果てた。

今夜は、どの村にしようか………。


空が少し赤くなった頃、立て看板があった。
『ここは 燐ノ寸村(まつのちむら)』


……ここに、しよう。
そう、決めた。

この村では、何日耐えられるのだろうか。

……わたしにとって、人を喰らわない行為は、欲を束縛していること。

人の食らう食べ物で耐えていても、いつかは耐えられなくなる。
いつかその縄が、千切れてしまう。

この村では、いつまで耐えられるのだろうか。
永遠に耐えられればいいと思うけれど、わたしが保てられたのは一年ほど。
行く年も人を喰らう行為を続けていれば、初めは嫌悪感のあったことも、もうない。

わたしは八百の時を、過ごしている。
そんな長い永い年月は、わたしを獣にしたのだ。

…わたしが、村の宿に荷物を置いて、ぶらぶらと散歩する。
そのとき、近くから、誰かをいじめるような声。

「この呪われ者ぉ、近づくなァ!」
「近寄るなよ、呪われるだろぉ」

どうやらその対象は、近くにいた少女に。

おかっぱで、雪のような白い髪。
けれども、袖の長い黒い服と、深く被った帽子が、彼女を隠すように包み込んでいた。

いじめているのは、少年二人。
何故だか、わたしは、性が抑えられない。

それは、いつもの肉を喰らいつき、血をすするものではなく。

ただ、殺してしまいたい。
その感情が、渦巻いて、仕方がない。
こんな場所にはいたくない。何故だか、歩き去る少女のあとを追いかけた。

「…だれ、ですか?」
「…わたしは、旅の者ね。
 流れ者…そういうことにしておいて」

「…その、何の用ですか?」

「あなたが、気になったの。その…」

わたしが、言い出しづらいと、少女は判断したらしく。

「私は、生まれたときから、こうなんです
 色がない子って、呪われた子だって」
少女は、ただ淡々と。

「…それに、わたしは呪いのようなこともできるから」

「呪い?」
「人のことが、分かるんです。
 集中しないと、分からないけれど、その人がどのような人物であるか、が。」

そんな力があるから、私は一人ぼっちなのだ、と。

何故だか、わたしと重なっているようで。
何故だか、言葉が勝手に口から出る。

「わたしは、呪いだとは思わない、かな。」

少女は、不思議そうに問うた。
「どうして、ですか?」

わたしは、何故だか、思いが口から出ることが押さえられない。

「人は、それぞれ違うから、かしら
 ただ、それだけなのだけれど、わたしはそう思うわ。
 それに、あなたのその髪も、肌も、雪のようで わたしは美しいと思うわ」

「個性、ですか…」

少女は、小さく呟き、そしてわたしにまた問うた。
「お名前は…何ですか?」

「わたしの名前は、ロウと言うわ」
「私は、…ささめと言います」

いつのまにか、夕暮れ空は、暗くなろうとしている。

「そろそろ、夜ねぇ。わたしはこの村でしばらくいるつもりだから、また明日会いましょう」
「…わたしは、森の近くの、小さな家に、います。
 ありがとう、ございました」

そうして、1年の日々が過ぎていった。



とある夜―――
わたしは、人を食べたい衝動に駆られて、目が覚めた。
わたしは、血肉を貪りたい。

眠って押さえつけようとしても、そのことで目が冴えて、押さえつけられない。


もう、限界なのか。

わたしは、外に出るやいなや、獲物を探し当てた。

「ングゥ!」

獲物の口を塞いで、首を裂く。
猟銃を持った狩人が、たまたまそこにいたから、そいつを裂いたのだ。


「はぁ…はぁ…もぐ、もぐ」
肉を喰らい、血を啜り。
食事が終わると口元の血をぬぐい、わたしは宿へと戻った。

翌朝―――
村は、当然のことながら、騒ぎになっていた。
人狼が出た、と。

村の会合では、話し合いが行われる。
「おい、どうするんだ」
「…この村の中に狼がいるってことだから……」

話し合いが続く中、ひとりが提案する。

「呪われ者のあの娘に、頼ってみるとかはどうだ」

そして、ほかの村人も話をする。

「そーいや、人がどうって分かるんだよな」
「今までのことは、水に流して…認めていけば」
「わしは信用できないと思うのお」
「その力だけ有効に使ってもらって、どさくさで追い出せば」

ガヤガヤと、話し合いが続く。

わたしは、適当に相槌を打ちながら、吐き気を我慢していた。
何故だか、こいつらからは吐き気がする。

どうしてなのだろう。わからない。

「そうじゃ、ロウさんや。あの娘にお願いしてくれんかのう」
「頼みやすそうだしな 頼むよなっなっ」
「…はい、承りました」

わたしが行く、ということで話は終わったらしい。


夕刻、わたしは彼女のところへ行って、彼女と話をした。

「…この村に、狼がいる…ということは、知っている…わよね」
「はい…。猟師さんが、食べられたって」
「…どうやら、村はあなたの力で誰が狼かを暴いて欲しいらしい、わ」

彼女は、うつむいて、悲しそうな目で見つめながら。
「…ロウさんの、意見ですか」

「わたしは、別にわたしたちで探せばいいんじゃないか、って思うけれど
 ……一応、村全体はそういう感じね」

「わかり、ました
 じゃあ…明日、迎えに来てください」

夜――


何故だろう。わたしは、捕食したい性が渦巻いているのに、彼女だけは捕食したくない。

適当に、見張りをしていた男を殺した。

そして、夜が明けた。


「どうも」
「おはよう、ございます」
彼女と一緒に、あーだこーだとどよめく会合の場に訪れた。

「誰が、狼か、分かったかぁ?」
少々、威圧的な態度で、ひとりの村人が聞く。

「いえ…
 6人占ったんですけれど、その、全員狼ではありませんでした
 占ったのは……」

彼女が、一人ずつ挙げていく。

きっと、彼女は、わたしのことを信じているのだろう。

だから、わたしが狼だと知ってしまったなら。

そしてわたしが死んでしまったあとに残される彼女のことを考えると、どうすればいいのだろう。

わたしは、愚かな行為をしてしまったのだと思いながら、彼女が挙げる人物の名前を聞いていく。

「そして、ロウさんです」

私は、内心驚いた。
どうして、嘘を言うのだろう。



もしかしたら、わたしが狼であることは、知っていたのかもしれない。

話し合いは、進んで行く。

「うーむ、あの娘の力は本物だしなあ」
「とりあえず、誰か、怪しい者を処刑してみるか」



「オレじゃねエエエエエエエエエーーッ!」
「仕方ない 村のためだ 犠牲になれ」

……村人の誰かが、処刑される。

夜になり、わたしは、村人を食べていく。

翌朝も、彼女は同じように、占いの結果を告げていく。

そして、夜が来れば、また私は人を食べていく。

それが繰り返されていき、いつしか占われていない者は2人になった。

彼女は、こう告げた
「…さんは、その…狼、でした」
「ふはははは!粘ったようだがおしまいだぜ」
「違う!俺じゃあない!」

「…なら、処刑しなければ、ね。」
「だなあッ!おら!喚くな!」
「やめろぉおおおおおおうおおおおおおおガァアアああッ!!」

数の暴力。―3対1という決め方ではあったけれど、多数決で、そいつは処刑された。

最後の夜――
わたしは、最後に残った村人の一人を殺した。

「何故だ!?何でキサマがあああああああ」

「…報いなのかもしれないわね あの子への。
 あなたでこの村も終わり。
 さようなら。」

そして、最後に彼女の元へ―――
彼女の家に、たどり着く。

彼女は、何故だか笑顔で、私を見つめる。
「やっぱり、あなたでしたね。狼さん、は」


「やっぱり、分かっていたのね」


「私は、あなたが人を食らう狼だったとしても」
少女は、私に歩み寄り、私に身体を寄せて、顔を見上げて。


「私と、一緒にいてくれたから。
 たとえ、狼だとしても、私はあなたのためになるなら、命だって捧げてもかまわない。」

わたしは、彼女を、抱きしめた。

「…できれば、わたしはあなたを殺したくはない」
「私は、あなたのものになりたい」

「だから」
「だから」

「私を」
「あなたを」

「狼にしてほしい」
「狼にする」

お互い、人差し指を切る。
そして、その血を交わらせた。


わたしと彼女は、互いに、呪われている血を、共有しあう。
わたしは占う霊力が、彼女には狼の力が。

これは、間違っているのかもしれないけれど。


彼女といっしょになれるなら、間違っていたってかまわない。




人狼たちは村人を全滅させると、獲物を求めて次の村へ向かうのであった…



ロウ 800歳程度

人狼の血を持つ、人に在らざる存在。
見た目はスタイルが良い、おねえさん。
人を喰らいたい気持ちが抑えられないとき、人を喰らう。
狼と化したとき、狼のような尻尾と耳が生え、鋭い爪を持ち、狼のごとき動きができる。

ササメ 12歳程度

アルビノであり、かつ占い師の能力を持つ。
その特異性から、村人達からは迫害されていた。
ロウと出会い、すでにロウのことは狼だと分かっていた。
ただし、ロウへの愛から、隠していた。いわば、狂人の占い師。

2014/05/12 公開
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