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3-2:遭遇編

初公開:2020/08/22

【きのこたけのこ会議所 本部事務棟】

明くる日、加古川は会議所議長の滝本から驚きの話を告げられた。

加古川「えッ!私がチョ湖支店に出向ですか?」

滝本「ええ。お願いできないかと思いまして…」

徹夜明けなのか青髪をボサボサにした滝本は、困ったように頭を掻いた。

滝本「チョ湖支店にいた責任者の方が過労で倒れてしまいましてね…最近、あそこの支店は周辺の急な人口増加で仕事が切迫していまして。
私としても信頼できる方を後任に充てたいところで…」

“大変心苦しいお願いですが”と続ける滝本を見ながらも、加古川の脳裏には昨夜の埼玉が語っていた空言が頭の中に浮かんでいた。

埼玉『そうです。その“ダイダラボッチ”です。それがチョ湖のほとりにも現れるというんです』

加古川はひとしきり考えた後に、力強く頷いた。

加古川「その話、受けましょう。すぐに準備をします」

打診したはずの滝本は逆に目を丸くし驚いた。

滝本「そんなあっさりといいんですか?加古川さんはご家族も居るというのに…」

加古川「なに、単身赴任ですから。定例会議の際には会議所本部に戻ってくるようにしますよ。それに…いや、なんでもありません」

加古川は一瞬、滝本に昨夜の与太話を話そうか悩んだが、すぐに止めた。
仕事の最中に茶々を入れることになるし、そもそも真偽が不明な話で目の前の疲れ切った顔の彼を混乱させることもない。

それに突然の異動にも関わらず、加古川は内心で湧き上がる興奮を抑えきれなかった。

加古川は、子どもの頃から人一倍探究心が強かった。
分からないことがあればすぐに周りの者に聞き回り自分が納得するまで繰り返し聞いた。身の回りにあふれている謎も進んで解明したがった。
裏山にある廃墟に人が潜んでいるとの話があれば仲間を引き連れ進んで探検に向かった。結果は狸だったが。

そうして青年になった頃の彼の芯には、探究心の強さとともに謎を残すことを良しとしない生真面目さも加わった。
壮年期を迎えるに連れ生真面目さが表立ってきていた彼は周りから緻密な人間だと評価され、現在の事務方で役職を得るまで至った。
しかし、彼の心底には幼少期から宿る“探究心”が今も確かに強く残っていた。

昨夜聞いた“きのたけのダイダラボッチ”の話は子どもの時以来の探究心を心の奥底から喚び起こした。
そして運命のようにチョ湖へ赴く話が転がり込んだ。

これでワクワクするなという話が無理なのだ。
仕事に忙殺され枯れかけていた彼の心は、再び熱く燃え上がる兆しを見せていた。

滝本「ありがとうございます。すぐに向こうの邸宅はこちらで手配しますので。宜しくお願いします」

滝本は深く頭を下げた。
こうして加古川のチョ湖支店への異動は決まったのだった。



【きのこたけのこ会議所 チョ湖支店】

滝本の言葉に嘘偽りは無く、異動後の加古川は周りへの挨拶などろくにする暇も無く仕事に追われる日々だった。

続々と訪れる住民の住民登録や相談対応に奔走し、気づけばあっという間に数日が過ぎ去っていた。
加古川の新しい職場はチョ湖ほとりにある【会議所】支店だ。古城のようにそびえ立っていた【会議所】本部と違い、チョ湖支店は田舎町の劇場といった具合のこぢんまり具合だ。
しかし、その劇場に例年にはない人々が押し寄せ支店は既にパンク寸前だった。

仕事を整理しているうちに、その日はあっという間に深夜を迎えていた。
加古川は椅子の背もたれに背を投げ、大きく伸びをした。

加古川以外に働いている者はいない。

加古川「仕事になれた…なんて言えないな。疲れすぎてて、先日の【大戦】にも出られなかったし。年はとりたくないものだ」

【きのこたけのこ大戦】は会議所自治区域の南部にある【大戦場】にて行われる世界規模の模擬戦だ。
自治区域民であれば無条件に参加できるし、事前登録さえすれば他国からでも参加は可能だ。

事前に戦場で実弾抜きの銃器を借りるか持ち込み、定められたルールに則りきのこ軍、たけのこ軍という架空の軍に分かれ勝敗がつくまで戦う。
これが【大戦】のルールであり、会議所自治区域を収益でも精神的にも支えている一大イベントだ。
会議所区域民で余程のことがない限り大戦を欠席する人間はいない。
年間の参加割合で減税等の優遇措置が取られるといった制度の恩恵を各々が受けられるといったことも背景にはあるが、単純に区域民が【大戦】をゲームとして愛しているのだ。

【会議所】は【大戦】を恒久継続させるために、様々なルールで参加者を飽きさせないように努力させている。
参加者全員に階級章を配り戦いながら自身の階級を成長させる【階級制】ルール、兵種という役割に振り分けられ部隊が団結し敵軍と戦う【兵種制】ルール、
さらには大戦場内に複数の陣地を設け陣取り合戦を行わせる【制圧制】ルールなどルールの豊富さには枚挙にいとまがない程だ。

【会議所】は人々を飽きさせないようにこうしたルール作りに加え、【大戦】遂行にあたり交通インフラの整備や大戦終了後の交通規制などを率先して執り行う。
当日は数百万もの人が一気に移動するためにてんやわんやだ。
だが、その後会議所で働く人々も一緒に【大戦】に混じり戦い疲れを吹き飛ばしながら銃を乱射する様はストレスの捌け口としても優秀なのだ。

加古川も【大戦】を心待ちにする人間の一人だった。
それだけに、異動後の業務に忙殺され【大戦】を欠席してしまった自分自身に、歳をとってしまったという感想が出てくることは至極当然なのだ。

加古川「しかし、チョ湖付近の人口増加率が対前年比で400%超えか。それは前任者も過労で倒れるわな」

前任の支店長だったきのこ軍 じゃがバターが倒れるのも無理はない。
今、加古川のいるチョ湖の湖畔沿い地域は【大戦場】から相当離れており、これまで住民の頻繁な移住など殆どなかった地なのだ。

観光地としての役割も対岸のオレオ王国カカオ産地の観光地帯に奪われ、この地で潤うものといえば湖畔の陸に並ぶサトウキビ畑ぐらいだ。
生産量こそカカオ産地とほぼ同等規模だが、昨今のチョコ革命でカカオに注目が集まる今、角砂糖に注目が集まることなど殆どなかった。

なので、現在の人口増加は異常と言ってもいい。突然の人口増に備えのない地方支店では限界などすぐに超えてしまっていたのだ。

加古川「こんな辺境の地への突然の人口流入。流入者の多くが新規就農者。鍵となるのはこの教団か…」

数日ではあるが、加古川は事前のリサーチで人口増加の原因をほぼ突き止めていた。
手にしていたクリップ留めの資料をバサッと机の上に投げつけると、表紙に書かれていた文字が改めて目に止まった。


『ケーキ教団』


自らまとめた報告書の表題にマジックペンでデカデカと書いたこの教団は、最近になり信者数を増やしている新興宗教団体である。
まだ会議の議題に上がったことは一度もないが、先日も新しい部下に訊いたところ、殆どの人間が教団の存在を認知していた。

加古川自身も会議所本部にいた頃に、酒場で話を何度かきいたことがあったが気にも留めていなかった。
それが、この町に来るや否や街中に教団の公告は溢れ、教団後任のケーキ屋も多く立ち並び、ケーキ教団は自然と街と同化していた。
教団本部は人里離れ広大な山の中に本部を構え多くの信者を呼び寄せているという。
ここまでの認知度の高さだとは内心驚いた。会議所中央と地方とではかなりの温度差があることを実感した。

また、ついでだからとあわせて“きのたけのダイダラボッチ”についても訊いてみた。
こちらについてもケーキ教団程ではないものの反応した部下は何名かいた。
しかし、その内容はどれもメチャクチャなもので、ある若手の部下は“ダイダラボッチは湖ではなく鬱蒼とした森で雨の日だけ現れる”と言い、
またある部下は“何年かに一度、大戦場に現れ大戦をメチャクチャに荒らして帰っていく”と言った出処のない話をするなど、その話はいずれも支離滅裂で容量を得ないものばかりだった。

ある意味で“きのたけのダイダラボッチ”が都市伝説として確立され、その存在だけが独り歩きしていると言えるだろう。
この話を聞いて、加古川はダイダラボッチ伝説について当初ほどの熱は無くなってしまった。

加古川「【ケーキは食と世界を救う】が教理、か。
年のいったこの身からすると、こんなバカげた考えに若者の賛同する理由がわからないな」

いま、ケーキ教団は会議所自治区域内で急激に信者を増やしていた。
そして教団本部のあるこの地に、ケーキの材料に使う角砂糖となるサトウキビを収穫するため、若者が続々と移住してきていることが今回の人口増加に繋がっていると推測できた。
なんと涙ぐましい努力だろうか。

加古川「しかし、なぜここまで角砂糖が必要になる…?」

若者のケーキブームが来ているからか。
その可能性も考えられるが、わざわざそのために若者が今の職を捨てサトウキビ畑農家に転職するだろうか。
そもそも角砂糖が足りなくなっているという話も聞いたことはない。


何か言いようの知れない違和感が加古川を包んでいた。


加古川「まるで教団が…手引を…している…ような」

一つの推測に到達しかけた加古川だが、途端に急速な眠気に襲われた。
もともと、何日も働き詰めだったからか疲れがここに来て一気に押し寄せたのだ。

抗うこともできずに、加古川は深い眠りへ落ちていった。



【きのこたけのこ会議所 チョ湖支店】

加古川はハッと目を覚ました。気づかぬうちに机の上に突っ伏して気を失っていたようだ。
壁の時計を見ると夜中はとうに過ぎ、もう明け方に近い刻だ。
窓の外はまだ漆黒の闇に包まれているが、直に白み始めるだろう。

顔を起こし、身体を伸ばすと節々が痛む。
若い頃は夜通し働き続けられたものだが、年老いた今ではデスクワークも一苦労だ。首を曲げると自分でも不安になるほど骨のなる音が響いた。

加古川「一旦、家に引き上げてシャワーでも浴びるか…」

身体を起こし勢いよく椅子から立ち上がると、その風圧で机の上の調査書が足元に滑り落ちた。
ケーキ教団という踊る文字を見て、居眠り前にたどり着いた推測を加古川は思い出しかけたが、結局思い出せずに資料だけをケースに戻し、その場を後にした。


加古川「この季節だと夜中はまだ若干冷えるな…」

ブラウンのチェスターコートに身を包ませ、加古川は外へ出た。
この辺りの地域は温暖な天候だ。一年を通じてあまり気候は変わらず、だからこそサトウキビが成長しやすい。
しかし季節の移り目もあり、本格的な温暖な気候に向けてはまだ幾分かの時は必要だった。
中折れ帽を目深に被り厚手のコートに身を包むその姿は、この地方からすれば少々厚着のように思えるが、加古川はこの格好を気に入っていた。

ずっと屋内にいたからか、寒気は無視しても外気を吸うことは新鮮で加古川の気を軽くした。
昼間の喧騒が嘘のように、誰も出歩いていない中心街はひたすらに静寂を保っている。

加古川「そういえば、此処にきてからまだまともに湖を見ていないな」

加古川の家はチョ湖とは反対の内陸方向だ。だが、まだ幾分の時間はある。
どうせ帰宅しシャワーを浴びて少し経てばすぐに夜明けだ。
中途半端な時間を過ごすくらいならば、湖畔でも眺めて気を落ち着けるのも悪くはないだろう。
加古川は湖畔を見渡せる丘の方へ歩み始めた。

湖畔近くに並ぶ住宅街を通り過ぎると、さっと視界が広がり小高い丘へ続く道かサトウキビ畑へと下っていくY字路が出てきた。
上り坂に続く道の方を選び、目の前の丘にとぐろを巻くように続く轍を進んでいくと、すぐに周辺の住民が“展望台”と呼ぶ頂へと到着する。

加古川「展望台、と呼ぶには少々手入れが行き届いていないみたいだがな」

加古川は苦笑しながらも雑草の生える木のベンチに腰掛けた。
展望台はまるで民家の裏山の先端をちょん切ったような、こぢんまりとした広さだった。

季節柄、草木は枯れ見通しこそ良いが夏になれば背の高い木々が視界を邪魔するだろう。その程度にはこの展望台は荒れている。
異動した初日に若手社員からこの場所をきいていたが、まさに“穴場”のスポットのようだ。

加古川「それでも綺麗だな」

既に月は沈んでいたが、湖面はどこからか光を受けキラキラと反射していた。
薄明を控える湖畔は、乾いたサトウキビ畑の揺れる音と湖の波打ち音が絶妙のハーモニーを奏で加古川の心を癒やした。


暫くぼうと湖を眺めていた加古川だが、耳に届く音をより感じたいと思い目を閉じた。

湖の波は丘から少し離れた眼下の崖にぶつかり、静かなさざなみを発生させていた。
まるで海に来たかのような感覚だ。
そういえば、もう長く家族で遊びに出かけていない。

思えば仕事一筋で生きてきた人生だ。家族のことは何よりも愛しているが、家族の食い扶持を稼ぐためという理由で、いつしか仕事に没頭していた。
今回だってそうだ。
妻子を残し一人辺境の地にやってきて初日から残業三昧だ。こうしてちゃんとした休憩を取るのも久々な気がする。

静かに一定の周期で、さざなみ音は加古川の耳に心地よく届いた。
加古川の心は次第に落ち着き、仕事で凝り固まった身体や気持ちは少しずつほぐれていった。
いつしか加古川は幼少期の思い出を振り返るほどに感慨深く自省し、繊細になった彼の心にそっと寄り添うように波打ち音が静かに響き渡った。


静かに。

静かに。

徐々に早く。

段々と早く。

次第に周期を早めて激しく。


いつしかさざなみは暴れ、お互いの波を打ち消しあい、岩壁に殴りつけるかのような乱暴な音を発するようになった。
波音はタクトを早める指揮者の奏曲のように加古川の耳にどんどんと押し寄せてきていた。

加古川「…なんだ?」

どれほど経っただろうか。いつしか異変に気づき、加古川は目を開けた。
ベンチから立ち上がり少し先の眼下の岸壁を眺めた。湖の波が激しいほどに暴れている。強風も吹いていないし、波が荒れる要素などないはずだ。大型の船舶でも近づいているのだろうか。

加古川「一体なにが――」



ふと顔を上げた先に、“答え”はあった。







いつの間にか、湖に“巨人”が立っていた。






瞬間的に加古川は言葉を失った。
あまりに自然と巨人が周囲と同化していたからである。
まるでずっと前からそこにいたかのように、巨人はまんじりともせずに立っていた。

ある程度の距離があるからか加古川は巨人を一望できているが、
近くに寄ろうものなら首を垂直にしても視界からは見切れてしまう程に巨大さを誇っていることは、容易に想像できた。

加古川「ダイダラ…ボッチ…」

酒の席で埼玉からきいた“きのたけのダイダラボッチ”の話と瓜二つの状況だ。
当時は話半分に聞き流していたが、なんの前触れもなくこうして目の前に現れてしまっては信じるほかない。

加古川「なんなんだ、あいつは…」

ダイダラボッチは顔と思わしき部分を上げ、空を見上げているようだった。
というのも、彼に目鼻は無かった。顔と胴体の部分が首で区切られていることからようやく顔だと認識できるほどだった。
漆黒の闇に紛れ全貌は伺いしれないが、長い手足はともに湖に付き、身体の輪郭は流線型で、彫刻のような造形美が見て取れた。

彼は夜の闇の中でなにもせずぼうっと突っ立っていた。
時折、思い出したように膝の部分までつかっている脚を数歩動かすも、少し動いただけで歩みを止めてしまう。
一歩動くたびに身体は前のめりになりながらよろけ、転ばないように一々止まっているようだった。

まるで幼い動物が歩行練習をするようだ、と加古川は感じた。
波打ち際に押し寄せてきた乱暴な波の原因は彼がむやみに足をばたつかせているからに他ならなかった。

加古川は急ぎ展望台を降り、サトウキビ畑を抜け少しでも巨人の下に近づこうか寸分悩んだ。

眼前の“巨人”に何故だか加古川は言いようの知れない安心感を覚えていた。彼は街を襲わないし自分が近寄っても何もしないという根拠のない“確信”があった。
第六感が働きかけているのか、自身の心の探究心が彼自身をけしかけているのかは定かではなかったが。
しかし、目を離したら途端に姿を消してしまいそうな、彼にはどこかしら儚さがあった。

“きのたけのダイダラボッチ”を見ながら幾分か冷静になった加古川は、ふと巨人の横で煌めく輝きを発している“存在”に気がついた。
灯台だ。展望台から数km近く離れたところで光を放つ小さな灯台が、仄かに巨人の足元を懸命に照らしていた。

加古川「あの近くにある城は…教団本部の建物か?」

巨人の背後には、展望台よりも標高の高い小高い山がそびえ立っていた。その山の頂きには廃城跡があり、小さな灯台はその天辺から懸命に光を放っているようだった。
先程資料で見たのだから間違いない。あの廃城は加古川の仕事を苦しめているケーキ教団の根城だった。

加古川「灯台の光に照らされているのならば、あの巨人の存在に気づいてもおかしくないな…」

ケーキ教団という異質な存在について考え始めようとした瞬間、白み始めていた空から一気に暁の陽が差し込み始めた。
上空の厚い雲から漏れた陽が湖を照らし、湖面はそれに応えるようにキラキラと反射し始めた。
数分もすると辺りはあっという間に朝の陽に包まれ、水面により散乱した太陽光に思わず加古川は手で目を覆った。

そして、指の隙間から再び湖を見ると、さらに不思議なことが起きた。

加古川「なッ!?消えたッ!?」

先程まで巨人が立っていた場所に巨人の姿は跡形もなかった。

後にはゆらゆらと湖面が揺れるだけだ。

加古川は目を細め辺りを探してみた。
しかし、移動した痕跡どころか、先程までの光景が夢なのではないかと勘違いしてしまうほどに、巨人の痕跡は一切見つけられなかった。

あれ程巨大な図体を持った巨人が何の音も立てず消えることなど物理上不可能だ。


埼玉『みんな口を揃えて、明け方になると日光に溶けるようにスゥーッと透明になり姿を消してしまうというんですタマッ』


目の前で起きている現象は、先日の埼玉の与太話通りになっていた。
巨人の姿が無くなってもなお、波は暴れたように岩壁に押し寄せ乱暴な波打ち音を発していた。

加古川「なにか妙だな…」

大抵の人間ならば、きっと首を傾げながらも一度家に帰り、本棚の奥にしまっていたオカルト図鑑を引っ張り出しては、今日の“きのたけのダイダラボッチ”と空想上の妖怪の特徴点を探し想像に耽けていたことだろう。
そして夜に酒場に赴き、自らの体験談を多少誇張してでも伝説を目の当たりにした自身の体験を吹聴するに違いない。


しかし、加古川という人間は、自分が思っている以上に“探究家”であった。


加古川「チョ湖での出現。夜中に突然現れ、明け方には突然消える。何をするわけでもなく佇み、その近くには…ケーキ教団の本部がある」

彼の頭の中には、巨人伝説をただの都市伝説にしない左証の欠片が次々に思い浮かび上がってきていた。

加古川は額に人差し指を当て少し考えた。

彼は元来、真実を追い求める探究家だ。喰らいついた謎は解明しないと気がすまない。その性格ゆえ、幼い頃は得もしたし同様に損もした。
成人し会議所で働くようになってからは、些細なミスも見逃さず不明確な処理があればひたすら原因を追求する名事務方として名を馳せるようになった。
そんな彼の性格が此処にも出た。



“きのたけのダイダラボッチ”の謎を解き明かしたい。



そう強く願う彼を誰が否定できようか。
もし仮に、彼のこれからの悲劇を全て承知している第三者が現れ彼を静止しようとしても聞く耳を持たないだろう。
先日、埼玉から“きのたけのダイダラボッチ”の話を聞いたことも、そして今日加古川がこの場所を訪れたことも、全ては偶然であり同時に必然なのだ。


ただ加古川にとって不幸だったことは、この“きのたけのダイダラボッチ”伝説は彼の口癖通り、“真理は想像を遥かに超える”出来事を孕んでいたということだった。


3-3.教団本部見学編へ。
Episode : “赤の兵(つわもの)”加古川かつめしへ戻る。

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