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6-13:英雄の敗北編

初公開:2021/06/27



未だ大火に包まれていない王宮を背に、斑虎たちは二体の陸戦兵器<サッカロイド>に囲まれた。

いま一体は自分たちの目の前で銃を構え、もう一体は周期的な足音を地に震わせながら刻一刻とこちらに向かってきている。
腕と一体化している小銃の無機質な銃口が三人を捉えたままぴたりとも動かない。まるで居合いの間のように、先に動いたほうが負けるというような緊迫感が巨人から醸し出されていた。

小銃とはあくまで陸戦兵器<サッカロイド>を基準にしたときにそう見えるだけで、実際に間近で見れば砲台のような大きさを誇っているのだろう。
いずれにせよ、あの銃弾が炸裂すれば、自分を含めた三人は木っ端微塵になるだろうと斑虎は感じた。

滝本「私はね、常に疑問に思っていたことがあるんです。
よく、安いドラマのシナリオで、窮地に追い詰めた敵が主人公にベラベラと心情を明かして、その隙に大逆転を食らう。
そんなくだらない展開を何度も見てきた」

彼らの正面に向かい合っている、“遅れて”登場してきた巨人の肩の上で、滝本は堪え切れない愉悦を露にして嗤っていた。
顔よりも面積の広い青髪が風に吹かれ流れても、彼はその髪を払うことなく目の前の状況を目に焼き付けるように、じっと彼らを見下ろしていた。

滝本「なぜ、圧倒的有利に立っている敵が油断して足元を救われるのか。
今まで私には分かりませんでした。さっさと殺してしまえば、倒されることはないのにとね。

ですがね、いま自分がその立場になってみて気づいたのです。

これは油断でも奢りでもない。“同情”なのです。

これから死にゆく若者たちに向けて、せめてもの手向けを贈らないといけないという義務感。その憐れみだけがいまの私を突き動かしています」

斑虎「べらべらと喋っているところすまないが、すでにその考え方が油断だと自分で白状しているようなものじゃないか?」

斑虎の挑発にも臆することなく、滝本は器の大きさを誇るように深々と一度頷いてみせた。

滝本「そうかも知れませんね。そういえば参謀にも油断するなと言われていました。
では、さっさと済ませましょうか。
“まいう”さん、“Ω”さん。貴方たちの手で【会議所】をより良い方向に導きましょう」

まいうと呼ばれた陸戦兵器<サッカロイド>はピクリと肩を震わせ、流れるような所作で小銃を構え直した。
あわせて次第に大きくなっていた地鳴りが止んだ。
斑虎が横に目を向けると、“Ω”の巨人がようやく広場前に戻ってきたところだった。彼も、ゆらりとした所作で長い片足を上げ、戦闘態勢に入った。

続いてすぐ横の仲間たちにも目を向ける。
すぐ横にいるTejasは顔を歪めているだけまだ元気そうだが、someoneは無表情ながら肩で息をするのもやっとの様子だ。魔法消費が激しすぎたのだろう。
そもそも先程の戦闘で斑虎自身もかなりの痛手を追っている。いまそこまで痛みを感じないのは、アドレナリンが大量に分泌されているからだろう。
交戦能力は殆ど残っていない。

三人の四方は滝本から放たれた矢に囲まれ、それを抜け出しても二体の巨人の攻撃を交わして進まないといけない。
だが、彼らを振り切って戦場に戻っても背後の王宮はがら空きになる。
どちらにしても詰んでいる。

滝本の会話を受け流しながら必死に活路を見出そうと考えていた斑虎は、ここにきて完全に諦めがついた。


斑虎「万事休すだな」

someone「斑虎…」

心配気な声を送るsomeoneに、斑虎は下唇を噛みつつも振り絞って声を出した。

斑虎「すまない。someone、Tejasさん。俺ではお前たちを救えない」

今だけは周りの燃え盛る音も、遠くで鳴り響く地鳴り音も、悲鳴も止んだ気がした。

斑虎「せめて俺が攻撃を受け切る。だから、Tejasさんがsomeoneを連れて少しでも遠くに逃げてくれッ。それしか活路はない」

絶望的だとは分かっている。だが、今の自分に出来ることはそれしかない。
斑虎は二人の一歩前に出ると、手に持つ両剣を交差させ戦いの姿勢を取った。

横にいるTejasは、黙って二体のサッカロイドの顔を交互に見やった。

斑虎「でも、この行動は決して無駄じゃないッ。無駄じゃないんだッ。

俺たちの“正義”を受け継いだ誰かが、きっと奴らに“裁き”の鉄槌を食らわせるだろうよッ!!」

滝本「遺言はそのあたりでいいでしょうかね?」

生者の最後の苦痛の叫びを堪能し、肩の上で立ち上がったままの滝本は満足気に微笑んだ。

滝本「では――」

あっさりと。躊躇いもなく。
タクトを振る指揮者のように、優雅に滝本は片手を振り上げた。

そして、終章を迎えた時の奏者のように、高揚とした顔で滝本は片手を振り下ろした。

滝本「終わらせなさッ――」



耳をつんざくような衝撃音。

直後に脳を揺らすような感覚。


軽い脳震盪程度のものではない。
予想事態の衝撃を受けた時に、脳は神経を遮断しきれず身体の全てに衝撃を食らう。
これが死の直前の感覚なのかもしれないと思うと、それはあまりにも苦痛と驚きに満ちていた。




いま。







滝本スヅンショタンは、横にいた同胞の “Ω”からの蹴りを“まいう”越しに喰らい、その衝撃から宙に放り出されたところだった。


滝本「なッ!!!??」

驚きから目を見開き、滝本は数秒後に訪れる地面への落下を備える暇もなく、ただ視界に映る風景を脳内に焼き付けることしかできなかった。

そこには、確かに“Ω”の蹴りが自分を載せていた巨人の胴体を捉え、態勢を崩す“まいう”の姿と、構えを崩さないままの彼の姿があった。

生前に彼が“まいう”に反逆の心を持っていたとも思えない。なぜ、なぜだ。


急な混乱から魔法を呼び出すこともできず、制御を失った滝本の身体は数十m上空から急速に落下をし始め――


someone「『サーシャメントフリー』」

滝本の身体が地面に直撃する直前、狙いすましたようにsomeoneは魔法を放った。

彼の指先から現れた紐状のロープは織物のようにひとりでに交差模様で結ばれ巨大な布地となり、滝本の身体と地面の間に割り込み、ちょうど救助幕のように彼の落下の衝撃を和らげた。
ただ、布地の薄さゆえ、布越しに落下の幾つかの衝撃を受けた滝本は苦悶の表情でのたうち回り吐血した。

滝本「ガハッ!!」

someone「貴方をここで死なせるわけにはいきません。苦しんでもらいますけどね」

斑虎「な、な…なんだこれはッ!?」

斑虎にとっても、目の前の事態は想定外だった。

ほんの数刻前まで死を覚悟していた。“まいう”の銃弾と“Ω”の蹴りをどちらも一人で受け切る覚悟をしていた。
だが、実際には銃弾が発射されることはなく、彼の横にいた“Ω”の繰り出した真空蹴りはこちらではなく、横の“まいう”に向け放たれた。
鳩尾部に直撃した蹴りで彼は大きく体勢を崩し、滝本はその衝撃で肩から転げ落ち、はるか上空から落下したのだ。

そして、まるで“全てを知っていたかのように”someoneは狙いすまして滝本に魔法を行使した。
意味がわからないとばかりに、横のTejasに目を向けると。

Tejas「ようやく間に合ったな。最初、一体だけで来られた時は肝を冷やしたぜ」

彼の余裕めいた笑みを見たときに、さすがの斑虎も叫ばずにはいられなかった。

斑虎「お前たちッ!?なにか知ってるなッ!?話してくれよ、なにが起こってるんだッ!」

直後に轟音が響き渡った。
斑虎がすぐに振り向くと、眼前では“奇妙”なやり取りが繰り広げられていた。

陸戦兵器<サッカロイドたち>が互いに殴りあっていたのだ。

巨体を揺らし、轟音を響かせながら、こちらのことなど気にもせずただ殴り、蹴り合う。
互いに取っ組み合い、一体が羽交い締めにすると、それから逃れるようにもう一体は足蹴にし、起き上がりまた殴りかかる。

先程までの涼し気で、生気の無い様子とはまるで違う。
優雅な戦いとは程遠い、まるで【大戦】にいる一兵士のように生臭い乱闘の様相を呈していた。

someone「全て僕たちの“計画通り”だったんだよ、斑虎」

呆然と見つめるしかない斑虎に向かい、someoneはポツリと呟いた。
どこからだと聞き返す前に、三人の足元で意識を戻した滝本が言葉を発する方が先だった。

滝本「ば、馬鹿な…二人とも、何をしているんだッ。すぐに、すぐに、斑虎さんたちごと王宮を消せッ!そう、命じたはず…」

地べたに這いつくばる格好になった滝本は、腹をよじりながら驚愕と苦痛の表情で英雄たちを凝視していた。
彼の横でsomeoneがパチンと指を鳴らすと、彼を守った布地はすぐにはらはらと解け、紐の一本一本が滝本の身体に再び巻き付き彼を縛り上げた。

Tejas「無駄だよ、滝さん。もう陸戦兵器<サッカロイド>たちは“手遅れ”だ」

その言葉に滝本は目を見開き、横に立っていたTejasの方を初めてまじまじと見つめた。

滝本「まさか…Tejasさん、あなた…ッ!」

Tejasは浅葱(あさぎ)色気味の長髪をかき分けると、滝本の横にどかりと座り込んだ。
彼に目を向けるグレーの瞳の色は好奇に満ちている。いま起きている出来事に、そしてこれから起きるだろう予測に待ちきれずうずうずとしている様子だ。

Tejas「“俺たち”が今まで何処にいたか、まだ言ってなかったな?
随分と寒いし暗い場所だったぜ。ずっと飯も食わず隠れてるのも辛かったさ」

斑虎「そういえばTejasさん。あなたは今まで何処にいたんだ?」

斑虎は訝しげにTejasに視線を送った。
someoneの行動は把握できたが、Tejasがここにいる理由について何も聞いていなかったことにいまさらながら気がついたのだ。

Tejas「お返しに、俺も語ってやろう。

そうだな。これは油断じゃない。

滝さん風に言えば、生者から負けた人間への“同情”さ」



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