1-6:第175次大戦編〜後編〜

初公開:2014/04/15

【K.N.C 175年 第175次大戦 大戦場】

始めに異変に気がついたのはアイムだった。

アイム曹長†「…何かおかしいな」

アイムは足元に落ちている短剣を眺めながら、先程から感じていた違和感を口にした。
使っていた剣は先刻の戦闘の際に根本からポッキリと折れてしまった。
咄嗟に、地面に刺さっていた弓矢の切っ先を敵へ突き立て倒した時は、変な汗をかいた。

一息ついて、戦況を確認するべく辺りを見回す。立ち込めている霧で相変わらず
戦闘の全体像を確認することはできないが、先刻前と戦況は大きく変わっていないようだ。
恐ろしいほどに戦況は変わっていない。

アイム曹長†「もう十分戦闘したぞ。そろそろ敵陣営に着いてもいいころなんじゃないか…?」

陣営を防衛する敵兵が異様に多いのである。
その都度、¢やアイムを始めとする兵士の力で敵軍を蹴散らしてはいるが、
集計係から伝えられている戦況報告と、敵陣営を防衛している相手兵士の数とが合致しない。

『ぶお〜〜〜 現在の兵力は60:40できのこ軍が有利です』

集計係から戦況が報告される。依然として、きのこ軍が有利であることに変わりはないが、
度重なる戦闘で戦闘狂のきのこ軍兵たちにも疲労の色が見え始めている。
既に敵軍の大隊程度は撃破しているはずなのに、いつまで経っても敵軍本部陣営に
到達することができないのだ。
アイムはいい加減辟易としていた。
王様と謁見するために、ひたすら城の扉という扉を開けて奥に進んでいるような気分だ。
無限回廊のように王座に辿りつけない。

気になる点がもう一点アイムにはあった。
未だ、敵軍の主力部隊と思わしき戦力と遭遇していないのである。
戦況報告から推測するに、主力部隊を含む残りのたけのこ軍兵の大多数は
最後の砦となっている本部陣営に結集していることになる。しかし、主力の攻撃部隊を
砦の堀として使用していることは、勝利への道を放棄していることと同義である。
たけのこ軍がそのような愚策をわざわざ選ぶだろうか。

アイム曹長†「くそッまた撃ち漏らした…あいつら逃げ足の早さだけは一級品だな」

悪態をつき、敵の攻撃に備えて塹壕へ潜る。戦いへの緊張感からくる疲れからか、
アイムは敵兵を撃破しきれずに逃してしまうことが多くなっていた。
拾った斧を地面に突き立てる。元々の持ち主の手汗で柄の部分がほんのり湿っているのが気持ち悪い。

¢准将◇「アイム、お前いま何撃破だ?」

塹壕内で新しい弾倉を装填している¢が声をかける。
きのこ軍エースもさすがに連戦に次ぐ連戦からか、肩で息をして呼吸を整えている。

アイム曹長†「今の敵は逃げちまったから、22撃破のままだな。あんたは?」
¢准将◇「18撃破だな。ついさっきも大量撃破のチャンスだったんけど、逃しちまった。
あいつら不利になるとすぐに逃げ出すな」

アイム曹長†「あんたも撃ち漏らしているのか。しかし、どういうことなんだろうな。
さっきから戦えど戦えど、一向に先に進んでいる気がしない」

¢准将◇「奇遇だな。俺もそう思っていたところよ。まるで終わらない迷路に
迷いこんでしまったような気分だ」

アイム曹長†「ループねえ…ん?」

ループ。
¢の表現は現在のアイムたちの状況を的確に表していた。
そして、アイムは気がついた。自分たちがまんまと“罠”にかかってしまったことに。
敵軍の狙いに。


アイム曹長†「大佐!ゴダン大佐はどこだッ!!」

戦闘音をかき消すほどの大声で、アイムは指揮官を探した。

ゴダン大佐▽「どうしたアイム君ッ!」

アイム曹長†「今すぐ本陣に戻るんだッ!じゃないと、大変なことになるッ!」

ゴダン大佐▽「どうしたアイム君ッ!」

アイム曹長†「今すぐ本陣に戻るんだッ!じゃないと、大変なことになるッ!」


『ぶお〜〜〜 現在の兵力は52:35できのこ軍が有利です』

緊迫とした大戦場に、気の抜けた大法螺の音色が響いた。
そして、それはたけのこ軍の反撃の狼煙を告げる合図でもあった。

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【K.N.C 175年 第175次大戦 大戦開始直前】

オニロ曹長†「え?敵軍を罠にハメる?」

たけのこ軍総司令官の山本は神妙に頷いた。

山本元帥☆「みんな聞いてくれ。俺は策を考えた。それを実行すればたけのこ軍は勝てる!」
山本元帥☆「では作戦名を発表する。本作戦名を“霧の国(ニヴルヘイム)”とするッ!」

誇らしげに山本は高らかに宣言するも、誰も作戦について理解できずに困惑げの顔を総司令官へ返す。

山本元帥☆「まあ落ち着け。本作戦では、自然の天候を味方につける」

山本元帥☆「霧を味方につけるんだ」

“霧の国(ニヴルヘイム)”作戦の内容は以下の通りだった。

・主力部隊は、大戦開始と同時に迂回ルートを使い極力敵軍との戦闘を回避しながら、敵陣の北東部に部隊を展開する。
・残った兵は陽動部隊として敵軍の主力部隊を引きつけつつ、たけのこ軍本陣に誘い込むように上手に撤退する。
・本陣で防衛する部隊は“鉄のスカート(ペティコート)”を展開し、敵軍の主力部隊の猛攻を食い止める。
・自軍兵力が35を切ったら、北東部に待機している主力部隊がきのこ軍本陣を強襲。きのこ軍本陣と主力部隊を分断した上で、短時間で本陣を制圧する。

山本元帥☆「主力部隊は霧に紛れながら敵軍に見つかることなく移動しなくてはいけない」

791二等兵=「私の見立てによると、この大戦中は深い霧が立ち込めるから、作戦に支障をきたすことはないよ」

オニロ曹長†「あの、“鉄のスカート(ペティコート)”てなんですか?」

山本元帥☆「ふふふ、よくぞ聞いてくれた。鉄のスカートとは、すなわち我らが愛するきのたけ女神様のスカートのことさ」

山本は腕組みをしながら、芝居がかった動作で兵士の周りをゆっくりと歩き始めた。

山本元帥☆「兵士諸君、よく考えてみてほしい。君たちの目の前に絶世の美女がいるとする。
その美女が艶かしい視線を君たちにおくって誘っている。諸君、どうする?」

山本の問いに、歴戦のたけのこ軍兵士は間髪をいれずに答える。


たけのこ軍兵士「「据え膳食わぬは兵士の恥ッ!!」」

山本元帥☆「その通りッ!服を脱がせてほしいと頼まれたら?」

たけのこ軍兵士「「かわりに服を脱ぐ!!」」

山本元帥☆「そこに乙牌があったら?」

たけのこ軍兵士「「盲牌のごとくなぞる!!」」

山本元帥☆「スカートのラインが際どかったら?」

たけのこ軍兵士「「這ってでも覗き見るッ!!」」

山本元帥☆「グレイト。実にグレイトだ皆。俺は今猛烈に感動している」

山本は目頭を押さえて、周りの兵士と熱い握手を交わしている。


オニロ曹長†「…えと、あの」

791二等兵=「くっだらない…」

大半の兵士が感動を共有し合う中、オニロは目の前の事態に困惑し、791は呆れ顔で首を振っていた。

山本元帥☆「今のが本作戦の真髄だ」

オニロ曹長†「え、本当ですか!?」

社長軍曹¶「うん ピ おわりの章」

山本元帥☆「兵士ならば、誰でもスカートの中の小宇宙(パンティー)を覗きたくなるものだ。
それはたけのこ軍だけではなくて、きのこ軍もだ。我々は“たけのこ軍本陣”という小宇宙を、
何段にもわたるスカート(ペティコート)で死守する。絶対防衛ラインを築き上げることで、
きのこ軍を焦らしてやるのさ。死ぬほどにな」

つまり、ドレスのペティコートのように、小隊で構成された数十段に及ぶ防御陣を敷いて
対応するのが“鉄のスカート(ペティコート)”の役割である。
そして突破された防御陣は再結集して最後尾の防御陣となり、きのこ軍主力部隊は
永遠に防御陣を突破できずに疲労と損傷を蓄積させていくという作戦なのである。

オニロ曹長†「な、なるほど」

オニロは聞かされた作戦のすごさと、目の前の司令官の気色悪さとのギャップに、複雑な思いを抱いた。

山本元帥☆「オニロ。お前には主力部隊として前線で働いてもらいたい。よろしく頼むぞ」
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【K.N.C 175年 第175次大戦 きのこ軍本陣前】

『ぶお〜〜〜 現在の兵力は52:35できのこ軍が有利です』

スティーブ大尉‡「時間だ。これより、作戦を開始する」

静まり返っていた部隊の空気が、一段と張り詰める。オニロは緊張と不安で息苦しくなった。

スティーブ大尉‡「全軍、突撃ッ!!」

隊長の静かで鋭い命令が発せられると同時に、たけのこ軍兵は疾風のようにきのこ軍本陣へ突撃した。


【K.N.C 175年 第175次大戦 大戦場 たけのこ軍本陣手前】

アイム曹長†「…というのが、敵の目論見だ」

ゴダン大佐▽「もしアイム君の言っていることが本当だとしたら、
手薄な本陣はあっという間に敵の手に落ちてしまう」


『ぶお〜〜〜 現在の兵力は36:34できのこ軍が有利です』


きのこ軍「!?」
¢准将◇「お前の予想していたとおりだったな、アイム」

たけのこ軍「おらおらあ!女神様の御御足は拝ませねえぞきのこどもがッ!!」

きのこ軍「!!」

今まで防御に徹していたたけのこ軍が、まるで示し合わせていたかのように、
きのこ軍への大反抗を開始した。

たけのこ軍A「スカートに入り込んだ変態には罰を与えねえとなあ!」

社長軍曹¶「跪いて足をお嘗めは うーんいいぞ。」

アイム曹長†「ちっ、敵が活気づきやがった。あの意味不明野郎もいやがるし、最悪だな」

ゴダン大佐▽「我々をここから逃す気はないってことだな」

¢准将◇「…アイム。数名の兵士を連れて先に戻れ」

アイム曹長†「…あんたはどうすんだ」

¢准将◇「俺たちが食い止めている間にお前が本陣の増援として戻れ。
直に俺たちもお前の後を追う」

社長軍曹¶「アイムくん どこですか〜?」
敵兵の声が近づいてくる。

ゴダン大佐▽「早く行きな。女神様とやらは俺たちのために待ってくれるけど、敵は別だ」

アイム曹長†「…了解ッ!」

アイムは塹壕を飛び出し、数名の兵士と霧の中を駆けていった。

¢准将◇「奴さんどこにいたのかうじゃうじゃ湧いてきやがったな」

ゴダン大佐▽「状況は一転。だが、だからこそ燃えるな」


『ぶお〜〜〜 現在の兵力は28:32でたけのこ軍が逆転しました』

アイム曹長†「ちくしょう!間に合ってくれッ!」

戦いの終わりが、刻一刻と近づいていた。

【K.N.C 175年 第175次大戦 大戦場 きのこ軍本陣】

オニロ曹長†「『グラビティチョコ』!!」

きのこ軍「「うわ〜〜」」

地面を巨大な落とし穴へと変えて、何人ものきのこ軍が落ちていく。

斑虎二等兵=「敵は慌てふためいているな」

スティーブ大尉‡「雑魚に構うなッ!!狙いは本部だッ!」

スティーブ指揮官は、先にある野営テントを指さした。

スティーブ大尉‡「あそこにはためいている敵の旗を燃やし、我軍の旗を突き立てた時が
我軍の完全勝利の証だッ!」

スティーブ大尉‡「全軍進撃!本部を落とした者に秘蔵の[アウアウ]な賞品をプレゼントしよう!」

たけのこ軍精鋭「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」」

指揮官の鼓舞に、精鋭部隊は拳を上げて応える。

ヒノキ曹長†「敵の増援が到着する前にかたをつけないと」

斑虎二等兵=「そんなすぐに到着するわけがないぜ」


きのこ軍 アイム曹長†「それはどうかなッ!」

スティーブ大尉‡「!?」

霧の中から突如現れた短剣はスティーブ目がけて一直線に飛んでいった。
闇雲に走り、奇跡的に制圧される直前の自陣へ戻ったアイムは、
たけのこ軍精鋭部隊の姿を目の前で視認していた。霧のせいで、
精鋭部隊の全貌を把握することはできなかったが、部隊の中心にいた人物めがけて
躊躇うことなく短剣を投げた。拳を振り上げ周りを鼓舞している人物こそが
部隊の中心人物であると推測し、その人物を排除することで部隊の瓦解を狙ったのだ。
アイムの読みは正しかった。その人物こそが、精鋭部隊の隊長スティーブだったのだ。

オニロ曹長†「ッ!!」

その場にいる誰もが事態を飲み込めず、隊長めがけて飛んでいる短剣をただ眺めるしかなかった。
その中で、ただ一人オニロだけが咄嗟に腕をのばした。
スティーブに刺さろうかという寸前、オニロは咄嗟に杖で短剣を薙ぎ払った。
非常事態であることを本能的に理解し、身体が頭よりも先に反応したのだ。

短剣が地面に転がる。短剣から発せられた乾いた音が、周りの兵士を急激に現実に引き戻した。

たけのこ軍「隊長!ご無事ですか!」

たけのこ軍「畜生!敵の増援が到着しやがったのか!」

スティーブ大尉‡「慌てるなッ!」

スティーブは焦りに支配されている兵士を一喝し、すぐさま辺りを見回す。
敵兵が攻めこんでくる様子はない。仮に、霧の向こうに敵軍の増援部隊が到着していたとしても、
自軍部隊が先にきのこ軍本部を制圧してしまえば、その時点で勝敗は決する。
敵軍増援部隊と戦っていては、せっかくの強襲が徒労に終わってしまう。
任務遂行は時間との勝負でもあるのだ。この場で人員を無駄に割いてまで敵軍部隊と戦う必要はない。
スティーブはそう判断した。

スティーブ大尉‡「数名はこの場で待機し、敵軍を抑えろ!残りの者は迅速に本部を制圧する!」

オニロ曹長†「ボクは残ります!」

スティーブはオニロの言葉に一瞬迷いの表情を見せたが、すぐに頷き、
周りの兵士とともに本部へ向かっていった。


アイム曹長†「邪魔だ。そこをどいてくれないか」

霧の中からぬっと現れたアイムと数名のきのこ軍兵を、オニロは静かに出迎えた。

オニロ曹長†「やっぱりアイムはすごいや。こんなに早く戻ってくるなんて」

アイム曹長†「女神様の足なんて興味ないからな。お前らを殲滅することのほうがよっぽど興味がある」

アイムは残ったもう一本の短剣を構える。オニロは杖を両手で持ち、防御の構えに徹している。
オニロの役目は時間稼ぎ。自ら攻撃する必要などないのだ。
一刻も早く本部へ駆けようとする思いをぐっとこらえ、アイムは横目で仲間を確認する。

オニロ曹長†「アイム。それ以上近づいたら、ボクは攻撃しなくちゃいけない」

アイム曹長†「はん?“しなくちゃいけない”?お前は、だから、甘いんだよッ!!」

オニロ曹長†「うわッ!」

踏み出した右足を蹴りあげ、砂を巻き上げる。
巻き上がった砂がオニロの目に入り、一瞬動きが止まる。

アイム曹長†「行くぞッ!」

時間はない。左右に位置していたきのこ軍兵が一斉に走りだす。
オニロは走りだした兵士に気を取られた。

オニロ曹長†「『マルチブルランチャー』!!」

光弾がオニロの脇を抜けたきのこ軍兵をホーミングし追跡する。
しかし、それはアイムの目論見通りだった。

アイム曹長†「邪魔だッ!」

アイムはオニロの魔法が詠唱されたのを確認して走りだす。
仲間を囮にして、自らだけが本部へ到着することを最初から想定していた。
次の詠唱には一定の時間が必要なはずだ。
アイムはオニロの詠唱待機時間を利用して、駆け抜けようとしたのだ。
通常ならば、その選択は正しい。しかし、オニロは規格外だった。


オニロ曹長†「うらあッ!!」

アイム曹長†「連続魔法だとッ!!」

アイムの身体がふわりと宙に浮く。魔法の発生源であるオニロから引力が働き、アイムの身体は
引き寄せられつつあった。
このままでは念動で元いた場所まで戻されてしまう。
アイムは咄嗟に空中で、器用に自らの身体を回転させ、持っていた短剣をオニロに向かって投げる。
アイムの動きに驚いたオニロは、その場で詠唱を解いて攻撃を防御しなくてはならなかった。
念動魔法が切れ、宙に浮いていたアイムはその場で地面に転がり落ちた。

アイム曹長†「ハァハァ…お前、いつの間にそんな技を」

オニロ曹長†「ハァハァ…791師匠との修業の成果だよ…」

お互いに息を切らしながら、じりじりと間合いを図る。
アイムはショックを隠せなかった。
兵士の誰よりも多くの特訓を積んできていた自信があった。手の皮が破れても、足が腫れ上がっても、
決して鍛錬の手を緩めることはしなかった。
特に、オニロがのほほんと中庭でくつろいでいる光景を見た時は、一段と鍛錬に身が入った。

− あいつにだけは負けたくない。負けてなるものか。−

自らが成長する分だけ、オニロと差がついたとほくそ笑んでいた。
撃破数で勝負を持ちかけたのも、自らの強さを絶対的に示すためだった。

しかし、オニロは驚くべき速さで成長していた。
オニロは鍛錬の時間外でも、常に魔法呪文の復唱をするように、791から命じられていた。
アイムにとっては休憩中に見えた間中も、オニロは一時も休むことなく呪文の暗唱を繰り返して鍛錬をしていたのだ。
たゆまぬ努力が、結果として短期間で連続魔法を取得させたといっても過言ではない。
しかし、アイムはそんなオニロの陰の苦労を知る由もない。
連続魔法を難なく使いこなすオニロを目の前にして、アイムは今までの自分の努力が全て否定されたような思いで、
呆然と立ち尽くすしかなかった。


『ぶお〜〜〜 たけのこ軍がきのこ軍本部を制圧しました!よって、本大戦はたけのこ軍の勝利です!』

戦いの終焉を告げる大法螺が鳴り響いても、アイムはしばらくその場で立ち尽くしていた。



【K.N.C 176年 会議所】

名無しの彼「やるじゃんアイム。初大戦で撃破王取るとか、すごすぎるだろ」

95黒「負けちゃったけど、次は勝てるって!」

大戦が終わってから数日、敗軍ながら両軍合わせて撃破王を手にしたアイムは
“きのたけ希望の星”として両軍から賞賛の的となった。
しかし、アイムの表情はうかなかった。撃破王を素直に喜んでくれているオニロと、見下していた相手の
力量差を知って愕然としている自分とを比べ、自分がひどくちっぽけな人間でもあることを実感した。
アイムの異変に気がついた心配したオニロが言葉をかけても、アイムはただ頑なに頭を振るだけだった。

〜それからどうした?〜

【K.N.C 179年 会議所 大廊下】
今日もアイムはいつもの仏頂面をぶら下げ、大廊下を歩いていた。
先日の第178次大戦ではきのこ軍はたけのこ軍に大敗を喫し、オニロが初の撃破王を手にした。
対して、アイムといえば早々に戦死してしまい、まともに戦果を上げることができなかった。

アイム「はぁ…」

筍魂「ため息の数だけ、幸せは逃げるぞ」

アイム「…何のようだ」

筍魂「随分と浮かない顔をしているな。腹を下した直後の俺の顔とそっくりだ」

アイム「…オレはいま腹の居所じゃなくて虫の居所が悪い。
お前と喋っている今この時でさえ、苦痛でたまらないんだ」

アイムは露骨に顔を歪ませたが、意に介さず涼しげな顔で筍魂は言葉を続けた。

筍魂「ほーん。俺ならその苦痛を取り除いてやれるぜ?」

アイム「それは助かる。なら今すぐこの場から消えてくれ」

筍魂「まあ落ち着け。お前はいま伸び悩んでいる。お前はそんな自分をやるせない。
初めての大戦でこそ活躍はしたが、以降の大戦では戦死が相次ぎ満足に戦果を上げられていない。
一方で、オニロは戦役が進むごとにメキメキと頭角を現し始めている」

筍魂「戦果を思うように上げられない、そしてライバルのオニロが実力をつけてきて、
ますます焦ったお前は戦果に逸り、戦死を繰り返す。負のスパイラルだ、違うか?」

アイム「…オレの実力はオレが一番良く知っている。お前ごときに何がわかる」

筍魂「知っているさ。少なくとも今のお前よりはな」

アイムはじろりと睨む。

筍魂「オニロとお前との決定的な差を教えてあげようか?」

アイム「そんなものは聞きたくない」

筍魂はアイムの言葉を聞き流して続ける。

筍魂「“スタンドプレイ”か“チームプレイ”」

アイム「…オレが軍のことを考えずに突進する脳筋だって言いたいのか?」

筍魂「いや、その逆だ。お前は“考えすぎる”。試行錯誤することはいいことだ。
相手として戦ってみてわかったが、お前はたいそう機転がきく。
しかし、お前の考えは全て“自分のため”という前提条件の下に成り立っているように見える」

筍魂「オニロも、またお前と真逆だ。彼は“動きすぎる”。考えるより先に身体が先に動くんだろう。その原動力は全て“仲間のため”。自ら身を挺してでも、軍のために貢献するという思いがある」

アイム「どっちが良いかなんて一概には決められないはずだ」

筍魂「一理ある。ただ、お前の凝り固まった考えは、自らの視野と可能性を狭めるものであることに
お前自身が気づいていないといけない。今のお前は、鎖に繋がれた番犬のようだ。
一定の範囲内でしか噛み付いてこない今のお前は、まるで怖くない」

アイム「自分の命を守って何が悪いんだ。オレが自分で考えて行動に移す行為そのものは、
オレが“生きていないと”できっこないんだ。生こそ全て。それを優先して何が悪い」

ダダをこねるような言い方でアイムは反論した。

筍魂「もちろん生こそ全てだ。しかし、今のお前の“スタンドプレイ”では、
せっかくの生き残る可能性をフイにしてしまっている。現に、お前はそのせいで何度も戦死している」

アイムは反論できずに、悔しそうに下唇を噛んだ。

筍魂「山本さんはお前を『突撃兵』として育成したいようだが、俺の考えは違う。
お前は『援護兵』タイプだと思っている」

援護兵。特徴を持たないことが最大の特徴であるタイプ。

筍魂「俺ならお前のスランプを解消することができる。
戦闘術『魂』はお前をきっと良い方向に導いてくれるだろう。
アイム、いやアイちゃん。ウチにこないか?」

アイム「エッ」

筍魂「オニロを見返してやろうじゃないか!」

アイム「タ、タマサン… 」



アイム「とは、ならない」
筍魂「すまんな」


1-7. wiki図書館に隠された秘密編〜へ。
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