1-1:wiki図書館に隠された秘密編〜

初公開:2014/04/22

【K.N.C 179年 会議所 ???】

深夜の丑三つ時、風音に紛れ、二人の兵士の囁くような声が聞こえてくる。

??「“あの場所”を近々、二人に見せる準備が整いました」

??「随分と時間がかかりましたね。もう少し早くてもよかったのでは?」

咎めるような兵士の口調に、もう一人の兵士は苦笑した。

「何も私の独断で事は運べないのですよ。それはあなたもよくわかっているはずです」

「…」

黙った兵士を尻目に、もう一人の兵士は静かに息を吐く。

「あの二人は、貴方の目からはどう映っていますか?」

「そうですね…凹凸コンビ、といったところでしょうか。
真反対な性格の二人ですし、差し詰め水と油のようなものですかね」

兵士の喩えに、もう一人の兵士は口をすぼめ、わざとらしく感嘆の声を出した。

「貴方はそう思いますか。私はあの二人は、よく似ていると思うんですよ」

「似ている?」

「あの二人は、軍の所属も違えば、戦闘タイプも戦闘方法も違う。一見するとベクトルの違う兵士です。
ですが、彼らは、もう一方にはない“特徴”をそれぞれ持っている。
冷静さ、情熱、機転、瞬発力…
一方が有している特徴を、もう一方は見事に持っていない。
彼らは互いに完全ではないんです」

「完全な人なんていない。それが兵士てものなんじゃないですか?」

何がおかしかったのかもう一人の兵士はくつくつと笑い声を漏らす。

「そうですね。その通りです。完全な兵士なんていない。我々もまた同じです。ですが…」

その先の言葉は飲み込み、兵士はくすんだ夜空を見上げる。

「貴方がたとえた凹凸とは言い得て妙なのかもしれない。
二人はパズルのピースのようなものです。お互いに欠けたピースなんだ」

静かに夜が更けていく。


【K.N.C 180年 会議所 wiki図書館】

オニロは今日も書物漁りのために、図書館に足を運んでいた。
オニロは書物の紙の匂いが好きだった。木洩れ陽が差し込み、人のいない広間で
ひたすら自分が読みたい本を漁る一時は、何事にも代えがたい幸せだ。
三度の飯より本が好きだ。今日も人の気配が無縁であることを半ば期待しながら、足を踏み入れる。
しかし、いつもは人気のない空間に、今日は一人の来訪者が、棚に寄りかかりながら物憂げに天井を眺めていた。

オニロ「アイム!!」

オニロの喜びあふれた声に、気だるげに身体を起こし応じると、
アイムは頭を掻きながらオニロに視線をよこした。

アイム「遅かったな。シューさんは一緒じゃないのか?」

オニロ「え?なんのはなし?」

アイム「あ?シューさんにここに来るように呼ばれたんじゃないのか?」

オニロ「?違うよ。ボクはいつものように本を読みに来たんだよ」

オニロの言葉に自分が集計班に嵌められたことに気づいたアイムは、一人顔を赤くした。

オニロ「アイムは集計さんに呼ばれていたの?」

アイム「あ、ああ。『アイム君とオニロ君に是非見てもらいたいものがあるから図書館に来てほしい』てな。
…くっそ。ダマサれた、どうしてこんな辛気臭いところに来ちまったんだ…」

騙されたことによる怒りがフツフツと湧いてきたが、この湧き上がる怒りを
集計班にも目の前のオニロにもぶつけることができずに、アイムは一人地団駄を踏んだ。

オニロ「ま、まあまあ。図書館も意外と楽しいよ?いろいろな大戦の歴史を楽しめて…」

集計班「そうそう。大戦の歴史を知ることはとても重要なことですからね」

アイム「!!」

規則正しく並んでいる本棚から、集計班はひょっこりと顔を覗かせた。

アイム「シューさん…あんた、いつからここに?」

口元をひくつかせながら、アイムは震える声で集計班に問いかける。

集計班「そうですね…アイム君がキョロキョロしながら広間に入ってきて、
ウロウロしながらオニロ君が来るのを首を長くして待っている時ぐらいからいましたね」

アイム「オレが来る前からいたじゃねーーーーーーーかッ!!」

集計班「まあまあ。アイム君を騙してしまったのは悪いと思っていますよ。
でも、オニロ君が頻繁にここに来ていることも知っていたし、
何より説明するの面倒くさいから。まあ、いいかなと」

既に二人に事の次第を話すこと自体も面倒くさそうだった。

アイム「…あんたも、あの気色悪い野郎とどこか同じニオイがするな」

集計班「社長のことですか?いやあ、あの人には敵いませんよ」

そんなことより、と集計班は両の手をポンと叩き、二人を呼んだ理由を話し始めた。
アイムの気持ちなどお構いなしである。

集計班「二人とも。『歴史』のお勉強に興味はありませんか?」

アイム「…残念ながら、これっぽっちも」

オニロ「あります!あります!」

死んだ魚のような目をして返答するアイムと、キラキラと目を輝かせながら答えるオニロの反応は
どこまでも極端だった。

集計班「そうですか。二人ともとっても興味があるということで…」

アイム「おい」

集計班「今から、ある部屋で歴史のお勉強をしてもらいます」

オニロ「部屋?」

ついてきてください、と二人の返答を待たずに集計班は本棚の間の通路をカツカツと歩き始めた。
慌てて二人は後を追う。館長の参謀によってキレイに整頓された書物の間をグングンと集計班は進んでいく。
書籍の棚の切れ目が訪れると、その度に右に曲がったり左に曲がったりと、まるで迷路を進んでいるようだ。

アイム「なあ、いつまでこんなこと続けるんだよッ!?」

怒気をはらんだアイムの声は集計班には届いていないようだった。
右に曲がったら、左に曲がる。左に曲がったら、右に曲がる。
まるで同じ箇所をグルグルと回っているようだ。次第に、オニロは気分が悪くなってきた。

オニロ「気持ち悪いよおアイム」

アイム「オレに向かって吐いたらタダじゃおかないからな」

いったいどのくらい歩いたのだろうか。当然、同じ通路をグルグルと歩きまわっているはずなので
周りの景色など変わりようがないはずである。
しかし、不思議なことに二人を取り巻く景色は変わりつつあった。まず、日々参謀の手でピカピカに磨かれていた
床にホコリが舞うようになっていた。
そして、綺麗に整頓されていた棚の中も、向きがグチャグチャのまま無理に押し込められているような書籍が
散見されるようになり、終いには行き場を失った本が足元にも散乱し始めた。

集計班「もう少しですよー」

気の抜けたような集計班の声とは裏腹に、二人は、通路に無造作に積み重ねられた本に挟まれながら、
どんどん息苦しくなっていった。

オニロ「ほ、本当に吐きそう…」

アイム「オ、オレも気分が悪くなってきた…」

いつの間にか、窓から差していた木洩れ陽もカーテンで閉めきってしまったかのように届かなくなり、
二人がジメジメとした湿気やら埃やらにいい加減まいっていると、

集計班「ああ、ごめんなさい。もう着きましたよ」

集計班はようやく立ち止まった。あまりにもグルグルと回っていたので、
今自分たちがどこにいるのかもはっきりとしない。
はっきりとしているのは、先程まで通路には無かったはずの薄汚い階段が
三人の目の前に現れていることだった。

集計班「どうぞ。足元に気をつけてください」

階下へ続く階段は、壁にかけられたランタンが仄かに足元を照らすだけだった。

アイム「いったいどうなってるんだよ…」
オニロ「…」

渋々、二人も集計班の後に続く。オニロはあまりに気分が悪いのか黙って階段を下りた。

階段はそれほどの長さでもなかった。今度は迷路のように長時間歩かされることなく、
1フロア分の段数だけ歩いた。

集計班「どうぞ」

古めかしい扉を開け、集計班は二人を“その部屋”の中へ招いた。

アイム「ここはッ…」

オニロ「うわあ!」

気分の悪かったオニロは目の前の部屋を見回してたちまち元気を取り戻した。

その部屋は一言で言えば、書物のみで構成されていた。
たくさんの書物が、足元をうめつくすほどに、乱雑に部屋に置かれている。
そして、見上げる首が折れ曲がりそうなほどの高さの本棚がオニロたちを囲んでいる。
部屋の天井は、どう考えても階上の広間を突き抜けるほどに、恐ろしく高い。
そして、部屋の中心に置かれたロール式の古紙が、まるで生をうけた龍のようにうねり、
終りが見えない天井へ向かって螺旋状に用紙を伸ばしている。
古紙のロール部の付近には、大きな羽ペンがちょこんと空中に浮遊している。

不思議な空間だった。
居心地の悪さは感じない。寧ろ、歪な空間ながら居る者に安心感を与える。
アイムは形容しがたい気持ちを抱いていた。記憶にないはずなのに、覚えがある。
痒い所に手が届かないようなもどかしい思いをしながら、アイムは自らの直感を口にした。

アイム「これは…懐かしい…のか?」

唖然とする二人を尻目に扉を静かに閉めた集計班は、まるで親が子を宥めるように、
静かに優しい口調で二人に語りかけた。



「ようこそ。『大戦年表編纂室』へ」



【K.N.C 180年 ???】

??「見つけたッ!ついに見つけたぞッ!!!!」

聞くものを不快にさせるような薄気味悪いガラガラ声で、言葉の主は歓喜に打ち震えた。

??「ようやくだッ!ようやくッ!!」

見るものを不快にさせるような気色悪い図体を揺らせながら、言葉の主は喜びを全身で表現した。

??「貴様もそう思うだろ?あの地下で語っていた夢が、ついに実現するのだッ!!」

聞かれた者は言葉を発さず、静かに首を何度か上下に振るだけだった。
しかし、言葉の主にはそれだけでその者の思いが伝わったようだった。

??「ここからだ。ここから始まるんだッ!!」

大股で草木で覆われた建物に近づいていく。踏みつける度に、草花は枯れ、
生物は異臭で息絶え、後には無が残った。


??「俺様がァ!俺様がァ!歴史を変えるんだッ!!ハハハハハハハ」


その日、全ての諸悪の根源たる二体の邪悪な生き物は、世界を崩壊させかねない、
それこそ“歴史を塗り替える”ような“歴史的な”発見をした。
世界を根本から崩壊しかねない二人の目の前の建造物の存在は、
しかし会議所中に知れ渡るにはいま暫くの時間を要さなければならい。

そして、この時より、会議所のみならずきのたけ世界の滅亡をかけた “DB討伐戦争”に、
アイムとオニロを始めとした会議所兵士は巻き込まれていくことになる。
そして残念なことに、その事実さえも本人たちが知るのは暫く後になってからとなる。



Chapter2. 悪しき時空の潮流者 へとつづく


Chapter2. 悪しき時空の潮流者へ。
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