2-10:戦闘術魂、伝承編〜後篇〜

初公開:2015/02/24

【K.N.C180年 会議所 大戦年表編纂室 二日目】

オニロ「うーん、“生命力の流れ”かあ。聞いたこと無いなあ」

アイム「過去に読んだ文献や書籍にそれらしい事は書いてなかったのか?」

オニロ「う、うーん。ボクが覚えている限りは。記憶力には自信があるほうなんだけどね、ごめんね」

アイム「…使えねえな」

アイムの毒づきに思わずオニロは苦笑する。二人は書庫に移動して、関連する文献がないか夜通しで調べていた。
棚から本を取り出しては、二人して少しでも関連した記述が無いかを探し出す。読み終えた本は周辺に置き、再度書庫棚から書物を取り出す。
足元に積み上がっていく本を見ながら、これじゃシューさんを叱れないな、とオニロは思った。

アイム「あークソ、これでもないか」

オニロ「…アイム。『ユリガミノカナタニ』なんて本からじゃ見つからないと思うよ」

アイム「うるせえ!何か手がかりがあるかも知れないだろッ!あーでも、この物語いいな…」

手がかりは未だ一向に掴めない。

オニロ「無秩序の全は一に帰し、“生命力の流れ”は即ち“世界の理”と同化する、か…」

アイム「あーもう、ゴチャゴチャしててわかりにくいんだよ。そもそも秩序てなんだよ、生命力てなんだよ、世界の理てなんなんだよ」

オニロ「なんにもわからないねえ」

アイム「よくもそんな呑気なことを…あと数時間もすれば、オレは筍魂の野郎と会う。
その時に、『答えは見つからなかった』と素直に頭を下げるしかないんだ。ふざけるな、もうオシマイだ」

オニロ「物事をマイナスに考えちゃいけないよアイム」

アイム「クソッ、屈辱的だ。お前に勝負で負けて慰められた時以来の屈辱だ」

オニロ「あはは、それをボクに言うんだ…」

と、オニロはそこで、ほうと一息ついて隣のアイムから見えない天井に視線を向ける。螺旋状に年表は天高く、暗闇の天井へと伸び続けている。

オニロ「ねえアイム、ボクたちは。“会議所にいるボクたちは”今を生きているんだよね?」

アイム「は?当たり前だろ」

何をおかしなことを言っているんだという目をオニロに向ける。しかし、オニロは視線を年表に向けながら話を続ける。

オニロ「ボクたちは今を生きている。そして、大戦世界で過ごしてきた多くの人たちは過去を“生きて”、今を“生きて”、そしてこれからも未来に向かって“生き続ける”」

オニロ「ボクはね、アイム。この編纂室に来てから多くの書物を読んできたけど、大戦年表ほど惹かれる書物はなかったんだ。これまでの大戦や会議所の歴史が詳細に記されている大戦年表。
過去の先人たちがどうやって大戦での戦いでどう振る舞ってきたか、大戦の繁栄を願ってどう行動してきたのか、すごく気になったし勉強になったんだ」

歴史に興味が薄いアイムにはわかりづらいかもしれないね。そう屈託ない笑みで気遣う話し方にカチンときたアイムだが、
今はオニロに話しの先を促すために黙っておくことにした。

オニロ「ボクは今まで大戦年表を“時代の流れ”を記録した歴史書だと思ってばかりいた。でも、いま思ったんだ。
大戦年表は、兵士の活力、いや、“生命力の流れ”を示しているものなんじゃないかって」

目を丸くしてアイムはオニロを見返す。

アイム「お前は、大戦年表にこそオレたちの探す答えが記してあると。そう言うのか?」

オニロ「それはボクにもわからない。でも、大戦年表に記されている時代の流れは、その時代にいる兵士たち一人ひとりの力や勇気といった
“兵士たちの生命力”が作り上げてきたものなんだ。ボクもまだ全て年表を読み終えていないけど、確信をもってそう言える」

オニロの真剣な眼差しに、アイムは暫く逡巡した後、わかったと頷く。

アイム「見てみよう。大戦年表を。時代の歴史を」

そう言い終わるや否や、勢い良く立ち上がり書庫を出ようとする。

オニロ「うわっアイム!痛ッ!痛い痛い!足輪が食い込んでるから!ボクまだ起き上がってないから!ていうか、年表の側に行かなくても、年表読むことできるからッ!」

その後、二人は自らの身体を巻き付くように纏わりつく大戦年表に悪戦苦闘しながら大戦の歴史を紐解き始めた。
夜明けまでもう幾ばくの時間も残されていない。しかし、二人はまるで何かに取りつかれたかのように年表に描かれた時代の流れを、
兵士たちの“生命力の流れ”を追い続けた。

オニロ「K.N.C21年頃には、大戦内での撃破数不正が発覚して会議所から波及した騒ぎは大騒動へと発展する。
直後に¢さんは【階級制のルールを変更する】ということで不正騒動への対策を取って、大戦の“負”の流れを断ち切った」

アイム「K.N.C71年辺りでは、集計班さんが体調不良で集計係を長い期間休み、その影響で集計係が不足。
大戦開催が何度も見送られるといった事態にまで発展した。そんな危機を、抹茶や斑虎さんを始めとした一部の兵士が集計係を代替したり、
負担軽減のために複数集計体制を取ろうとするなどして、“正”の流れが大戦の勢いを取り戻した」

オニロ「他方で順調に兵士を増やしていたK.N.C170年頃では、集計班さんの一存で強行された新ルールが一部に不評で、
その“負”の流れが会議所にまで伝わって参加人数の低下を招いた…」

そして、二人は読み進めていくうちにある一つの法則に気がつく。大戦世界が創造されて間もない黎明期から、
大戦の歴史は様々な兵士たちの“正”と“負”の感情・思いによって創りあげられてきているものだと。

アイム「時代の変化のターニングポイントでは、必ず誰かが“正”か“負”の思いを持って行動に起こす。
たとえば集計の負担を軽減したいと考えた抹茶は集計ツールを開発するという“正”の思いで行動に起こし会議所が盛り上がり、
オレたちの敵であるスクリプトは大戦をメチャクチャに荒らしたいという“負”の思いを持ってかつての大戦を荒らし回り、その結果として会議所は停滞した」

兵士個人の“正”や“負”の感情は巡り巡って世界を突き動かす流れとなる。

オニロ「兵士たちが持つポジティブな感情やマイナスの感情、即ち平面上に存在する“正”の流れと“負”の流れは
世界の変化で容易に“正”の方向に振れるし、“負”の方向にも振れる。兵士はそうやって生きている。
それこそが【生命力の流れ】…」

アイム「兵士たちの“正”や“負”の流れは、結果として大戦世界の変化の元になる“理”となる。
それこそが【世界の理】であり、同時に【生命力の流れ】でもある」

個々人の兵士たちが持つ“正”や“負”の感情から引き起こされる思想・行動は、結果として大多数の兵士たちをその方向に揺り動かす。
世界はメトロノームの両端にある“正”と“負”に向かって常に揺れ動いているようなもので、誰かがメトロノームの針をちょいと摘んでしまえば、世界の流れはすぐに変化してしまう。


――【“生命力の流れ”は即ち“世界の理”と同化する】


アイムとオニロは、筍魂の語った言葉を、きのこたけのこ大戦の歴史から理解したのだ。

アイム「生命力の流れ云々はわかった。ただ、その前の【無秩序の全は一に帰し】ていう文はどういう意味だ?」

オニロ「無秩序…そう言えば、前に読んだ本で『自然のエネルギー則というものは秩序から無秩序の方向に進む』て書いてあったような」

アイム「なんだそりゃ…」

オニロ「えと、たとえば部屋がきれいな状態を秩序、部屋が汚い状態を無秩序とすれば、必ず部屋は汚くなっていく方向に進んでいく、ていうことかな」

アイム「それが万物の法則だっていうのか?ますますわけわかんねえな」

必ず部屋を汚す主犯格である集計班がそのエネルギー則のエネルギー量とでも言うのだろうか。
それ以上の考えは自らの頭を混乱させるだけなので、アイムは考えを遮断させる。
と、そこでアイムは一つの考えに辿り着く。

アイム「目に見えない大きな流れがあるということか。部屋の中の小さな誇りも、いま部屋の中にいるこの自分も、
ちっぽけな存在である“一”に変わりはない。その小さな一が集まって、全てが存在する」

目に見えない世界の流れ。
そこにいるそれぞれの兵士はそれぞれちっぽけな“一”であり、同時に“全”でもある。

ありとあらゆる全ては同じ一つの存在である。その“一”から生まれる“正”や“負”の流れは即ち“全”の流れ と同化する。
“一”は“全”、“全”は“一”。
それこそが世界の理。戦闘術魂の真理。

アイム「繋がった…繋がったぞッ!あいつの言っていることを、理解できた…」

オニロ「やったねアイム!これで修行はクリアできるねッ!」

アイム「つ、疲れた…なんか一気に疲れが」

オニロ「ホントだよ。でも起きたらまたシューさんの机の周りを掃除しないと、はぁ」

アイム「だからお前は家政婦かっての。ケッ、そんなんがたけのこ軍期待の星とは笑わせるな」

オニロ「なッ…アイムはシューさんの机周りを一人で掃除してみてご覧よ!あそこは魔境だよ!」

空が白み始めた頃、二人は世界の理を理解した。緊張の糸が切れたのか軽口を叩き合うようになった二人の様子を集計班は物陰で静かに確認して、そして独り頷いてベッドに戻っていった。


【K.N.C180年 会議所 大戦年表編纂室 三日目】

筍魂「時間だ。【無秩序の全は一に帰し、“生命力の流れ”は即ち“世界の理”と同化する】この答えを聞こう」

アイム「【無秩序の全】は世界、【一】はオレ。【一】が【全】の“正”・“負”を支配し、逆もまた然り。それが――」

オニロ「――それが【生命力の流れ】で【世界の理】の一部」

アイム「なッ」

筍魂「…正解だ」

アイム「おい!せっかく良いところだったのに、どうしてお前が言うんだッ!」

オニロ「いやあ。なんかつい言いたくなっちゃって。ほらチームプレイて言うじゃない?連携を取って筍魂さんに説明したてことだよ」

アイム「ハン!この修行はオレだけに出された課題だぞ。解答するのはオレだけだ!
それを出しゃばるとは、お前も個人プレーが過ぎるな」

オニロ「それをアイムには言われたくないよ…」


集計班「修行はクリア、ということですかね?」

筍魂「そうですね。『二つ』の課題をクリアしましたからね、彼は。いや、彼らか」

集計班「戦闘術魂の真理と、アイム君の精神的内面を同時に鍛える。さすがですね…まあ彼らはまだまだ未熟ですが」

ギャアギャアと騒ぐ二人を尻目に、集計班と筍魂は肩をすくめる。

791「随分と楽しそうだね。私も混ぜてよ」

気がつけば、オニロのすぐ横には大魔法使い791が立っていた。

オニロ「師匠!移動魔法使ったなら言ってください、吃驚します」

791「アハハ、ごめんごめん。アイム君も、オニロ君も修行お疲れさま」

アイム「おい791師匠様よお。弟子の指導は考えなおしたほうがいいぜ。
なんで一日三食ネギを弟子に徹底させてるんだ。お陰でネギを嫌いになりかけたぜ」

791「ネギは貴重な魔力補給源だから仕方ないよ」

パチンと指を鳴らすと、二人の足輪は音もなく消え去った。

筍魂「おめでとう。この修行は終わりだ。負の考え方をすれば、世界は、負の流れになる。また、正の考え方をすれば、正の流れにもなる。
世界の理を、世界の大きな流れをお前は理解したということだ」

筍魂「私は世界そのものであり、世界は私そのものである。ありとあらゆる【全て】は同じ【一つ】の存在。
それを理解することことが【戦闘術魂】の基礎となる」

【戦闘術魂】は純粋な戦闘力を底上げする小手先の技を教えるものだけではない。
術者の精神を鍛え、目に見えない大きな流れに身を任せて同化する。それこそが【戦闘術魂】の真理。

アイム「よっしゃ!これでオレも【戦闘術魂】を修得したてわけだな!フフフ、筍魂、いや師<せんせい>、三日前の再戦を願おう。泣きべそをかくまで傷めつけてやるよッ!!!」


【K.N.C180年 会議所 教練所 中庭】

筍魂「『ウッドハンマー』」

アイム「ぐえッ」

筍魂「『りゅうせいぐん』」

アイム「ぐッ!!」

筍魂「『アネ゙デパミ゙』」

社長「バグ技 きた!?」

アイム「な、なんでじゃあああああああ」

筍魂「たった三日で【戦闘術魂】を修得できるはずがないんだよなあ。お前が学んだのは【戦闘術魂】の真理であって、これからの本修行で修得していくんやで(ニッコリ)」

筍魂「いい忘れた。ワイの“本気の”鍛錬は厳しいゾ」

アイム「ふ、ふざけるミ!」

社長「伝  染」


2-11. 時限の境界、再突入編へ。
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