初公開:2020/02/10
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きのたけWARS 〜DB討伐〜
Epilogue.
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頬をなでるようなそよ風がこそばゆく、アイムは静かに目を覚ました。
自分の隣で立派に咲き並んでいた草花が風になびき、起きなさい、と囁いているように聞こえたのだ。
気のせいかもしれない。最近、ロマンティックな表現が頭に多く浮かぶようになったのはオニロにオススメの小説を多く借りすぎてるせいだな、と気恥ずかしさを隠すようにアイムは人のせいにした。
寝ぼけ眼で半身を起こすと、少し離れた丘の上からでも会議所はハッキリと視認でき、復興の様子が進んでいることが分かった。
以前のDB隊の突入により会議所は隅々まで破壊され、当初その復興には多大な時間がかかると予想された。
しかし、会議所兵士だけでなく両軍の一般兵士の力も進んで加わり手を貸すことで復興は着実に進んでいた。
一般兵士の中には元・会議所兵士も多く居て、皆との久々の再会を経て、次は戦場での再会だ、と約束した者までいると聞く。
建材の運ばれる運搬器材の作業音と、釘を打ち付けるコンコンという小気味良い音が響き渡る。アイムはその音を聞くのが好きだった。
活気あふれる会議所を象徴する調音を耳にしながら、アイムはもう一眠りつこうかと目を閉じた。
――『やあ、久しぶりだね』
アイム「久々という程、オレとそんなに面識はないだろあんたは」
アイムの頭の中に響いてきた【謎の声】は、今次討伐戦の中で時限の境界の【制約】をアイムに唯一告げてきた声と同じだった。
――『そういえばそうだね。というか軍神<アーミーゴッド>のままじゃなくて、またアイムとオニロに戻っちゃったんだ?』
あっけらかんとした口調で声は続ける。アイムも大して気にせず、フンと一息ついて寝返りをうった。
アイム「あれから軍神<アーミーゴッド>の中でオニロとも話し合ったが、こうしたほうがそれぞれの軍の【希望の星】として、大戦を引っ張っていけるんじゃないかって思ってさ」
討伐戦後、軍神は¢に再度頼み込み圧縮装置でアイムとオニロに戻った。
今は二人ともきのこ軍、たけのこ軍に戻りそれぞれ希望の星として会議所になくてはならない存在となっている。
――『そうなんだ。まあ何はともあれうまくいって良かったよ』
どこまでも他人事のような声に、アイムは少し黙っていたが意を決して口を開いた。
アイム「なぁ。オレからも質問していいか?」
一陣の風がアイムの頬を再び撫でた。先程とは違い少し警告するように強くだ。
――『なんだい?』
アイム「【預言書】を書いたのはお前だな?」
――『そうだよ』
あっさりと声は認めた。
――『うまいストーリーだと思ったんだけどなあ。DBの存在は目に余っていたし、軍神<アーミーゴッド>も皆から忘れられてしょぼくれていたし。
お互い最期に活躍させるにはうってつけの機会だと思ったんだけどねえ』
アイムが軍神の“欠けたピース”でも構わず、声は自身の考えを述べた。
アイム「シューさんの行動はお前でも予想外だったんだな」
――『そうだねえ。あの兵士にも困ったもんだよ。地上と【避難所の避難所】という重要な連絡役を任せていたのに、こっちの予定外の動きをされちゃあ困っちゃうよねえ』
アイム「それでもシューさんを消すまでしなくても良かったんじゃないのか?」
――『あれは無口さんが強行したことだけど、まあどの道彼の動きを封じなくてはいけなかったから遅かれ早かれではあったけどね。
まあまた【策】は練らないとだけどね』
君たちがきてから全てめちゃくちゃだよ。謎の声はそういいからからと笑った。
怒りはなく、ただ本当におもしろがっているだけのようだ。
アイム「編纂室もめちゃくちゃになったが、幸い大戦年表は無事だったようだ。テープで紙同士をつなぎ合わせているからちょっとみすぼらしいけどな」
アイムは喉の渇きを感じ、持ってきたチョコを口に含んだ。
――『時限の境界も編纂室もこの戦いの後にまだ使う予定があったけど、預言書が使えなくなっちゃったからね。まあ好きに使ってよ』
アイム「編纂室はともかく、時限の境界はもう使わねえよ、あんなところ。懲り懲りだ…」
アイムは再び草むらにその身を落とした。
木陰から零れる木漏れ陽を浴びながら、筍魂程ではないが最近はひなたぼっこの良さを分かってきた、これも戦闘術・魂の教えかな、と見当違いの冗談をアイムは考えた。
こんなくだらない考えができるようになったのも、目の前の謎の声とも平気で話していられるのも、全て平和が戻ってきたからだと実感した。
アイム「なあ、これだけは一つ言っておく」
――『なんだい?』
アイムは暫く陽を浴びながら黙っていたが再び口を開いた。
謎の声は興味津々とばかりに聞き返してきた。
アイム「兵士にもよるだろうが、会議所の中にはあんたらを許してない兵士も多い」
――『まあそうだろうねえ』
DBと軍神<アーミーゴッド>を相打ちさせて世界を操っているなんて、いかにも悪の親玉みたいだものねえ。
屈託ない笑い声を上げながら謎の声は同調した。
アイム「だけど少なくともオレとオニロはあんたらのことを嫌ってはいない」
――『へえ。君たちを消そうとした張本人なのにかい?』
アイム「やり方に違いはあれど、テメエも大戦世界の継続、発展を願っているんだろう?皆と考えに違いはない、同士さ」
――『…』
初めて声は押し黙った。押し黙ったように聞こえただけかもしれないが、アイムは構わず続けた。
アイム「オレとオニロはこれからも軍神の“欠けたピース”として、会議所を率いていく。
テメエらが裏で世界をより良くするようにこれまで通りコソコソ動き回るのは別にいい。
だけど、もし会議所で起こそうとしている案とテメエらの案が相反して、自分たちの案を押し通そうと騒乱を起こそうというのなら―」
― その時は世界の創始者であろうが容赦なく叩き斬るからな。
アイムの最後の言葉に、謎の声こと大戦世界の創始者・たけのこ軍 まいうは少し黙った後、実に愉快そうに笑い始めた。
――『あはははは。やはり君たちはおもしろいねえ。見ていて飽きない。君たちに任せていれば会議所も大戦世界も安泰だッ。
そう考えると預言書を破棄して君たちを生き残らせた会議所の判断は間違ってなかったのかな』
アイム「あんたもたまには遊びに来いよ」
――『ふふ、考えておくよ。さて、そろそろお別れだ。こちらはこちらで忙しいんだよ。じゃあねアイム』
アイム「じゃあな、まいうさん」
――『大戦に幸あれ』
声は途絶え、辺りには再び静けさが戻った。
さてと、と一人息を吐き、アイムは日課の昼寝に戻ろうとした。
すると、間髪入れずに丘を登ってくる一人のたけのこ軍兵士の姿が見えた。オニロだ。
オニロが走ってきた。何やら少し怒っている。
オニロ「やっぱりここにいたねアイムッ!定例会議の時間はもうすぐだっていうのに、サボって昼寝してッ!」
アイム「ゲッ。なんで此処が分かった、誰にも言ってなかったのにッ」
オニロ「ボクはアイムと同じ軍神<アーミーゴッド>の片割れだからね。アイムの考えることくらいお見通しさッ!」
アイム「気色の悪いことを言うな…眠気がふっとんだじゃねえか」
オニロ「ほら戻るよ、アイムッ!今日は今度開かれる大戦に向けた新ルールの策定と、復興に向けた新プランを改めて考えないと」
アイムは渋々といった様子で起き上がる。
アイム「へいへい。段々、議長っぷりが板に付いてきたな。どっかにいるシューさんも浮かばれるなこりゃ」
オニロ「なんかシューさんの怠け癖をアイムが引き継いでいる気がするけどね…ほら、さっさと行くよッ!」
アイムとオニロの二人は会議所へ戻っていく。
二人のいた場所に再び、さあとそよ風が吹いた。
咲いていた草花が、二人を見送るようにゆらゆらと揺れていた。
Fin.
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Chapter4. 大戦に愛をへ戻る。
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きのたけWARS 〜DB討伐〜
Epilogue.
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頬をなでるようなそよ風がこそばゆく、アイムは静かに目を覚ました。
自分の隣で立派に咲き並んでいた草花が風になびき、起きなさい、と囁いているように聞こえたのだ。
気のせいかもしれない。最近、ロマンティックな表現が頭に多く浮かぶようになったのはオニロにオススメの小説を多く借りすぎてるせいだな、と気恥ずかしさを隠すようにアイムは人のせいにした。
寝ぼけ眼で半身を起こすと、少し離れた丘の上からでも会議所はハッキリと視認でき、復興の様子が進んでいることが分かった。
以前のDB隊の突入により会議所は隅々まで破壊され、当初その復興には多大な時間がかかると予想された。
しかし、会議所兵士だけでなく両軍の一般兵士の力も進んで加わり手を貸すことで復興は着実に進んでいた。
一般兵士の中には元・会議所兵士も多く居て、皆との久々の再会を経て、次は戦場での再会だ、と約束した者までいると聞く。
建材の運ばれる運搬器材の作業音と、釘を打ち付けるコンコンという小気味良い音が響き渡る。アイムはその音を聞くのが好きだった。
活気あふれる会議所を象徴する調音を耳にしながら、アイムはもう一眠りつこうかと目を閉じた。
――『やあ、久しぶりだね』
アイム「久々という程、オレとそんなに面識はないだろあんたは」
アイムの頭の中に響いてきた【謎の声】は、今次討伐戦の中で時限の境界の【制約】をアイムに唯一告げてきた声と同じだった。
――『そういえばそうだね。というか軍神<アーミーゴッド>のままじゃなくて、またアイムとオニロに戻っちゃったんだ?』
あっけらかんとした口調で声は続ける。アイムも大して気にせず、フンと一息ついて寝返りをうった。
アイム「あれから軍神<アーミーゴッド>の中でオニロとも話し合ったが、こうしたほうがそれぞれの軍の【希望の星】として、大戦を引っ張っていけるんじゃないかって思ってさ」
討伐戦後、軍神は¢に再度頼み込み圧縮装置でアイムとオニロに戻った。
今は二人ともきのこ軍、たけのこ軍に戻りそれぞれ希望の星として会議所になくてはならない存在となっている。
――『そうなんだ。まあ何はともあれうまくいって良かったよ』
どこまでも他人事のような声に、アイムは少し黙っていたが意を決して口を開いた。
アイム「なぁ。オレからも質問していいか?」
一陣の風がアイムの頬を再び撫でた。先程とは違い少し警告するように強くだ。
――『なんだい?』
アイム「【預言書】を書いたのはお前だな?」
――『そうだよ』
あっさりと声は認めた。
――『うまいストーリーだと思ったんだけどなあ。DBの存在は目に余っていたし、軍神<アーミーゴッド>も皆から忘れられてしょぼくれていたし。
お互い最期に活躍させるにはうってつけの機会だと思ったんだけどねえ』
アイムが軍神の“欠けたピース”でも構わず、声は自身の考えを述べた。
アイム「シューさんの行動はお前でも予想外だったんだな」
――『そうだねえ。あの兵士にも困ったもんだよ。地上と【避難所の避難所】という重要な連絡役を任せていたのに、こっちの予定外の動きをされちゃあ困っちゃうよねえ』
アイム「それでもシューさんを消すまでしなくても良かったんじゃないのか?」
――『あれは無口さんが強行したことだけど、まあどの道彼の動きを封じなくてはいけなかったから遅かれ早かれではあったけどね。
まあまた【策】は練らないとだけどね』
君たちがきてから全てめちゃくちゃだよ。謎の声はそういいからからと笑った。
怒りはなく、ただ本当におもしろがっているだけのようだ。
アイム「編纂室もめちゃくちゃになったが、幸い大戦年表は無事だったようだ。テープで紙同士をつなぎ合わせているからちょっとみすぼらしいけどな」
アイムは喉の渇きを感じ、持ってきたチョコを口に含んだ。
――『時限の境界も編纂室もこの戦いの後にまだ使う予定があったけど、預言書が使えなくなっちゃったからね。まあ好きに使ってよ』
アイム「編纂室はともかく、時限の境界はもう使わねえよ、あんなところ。懲り懲りだ…」
アイムは再び草むらにその身を落とした。
木陰から零れる木漏れ陽を浴びながら、筍魂程ではないが最近はひなたぼっこの良さを分かってきた、これも戦闘術・魂の教えかな、と見当違いの冗談をアイムは考えた。
こんなくだらない考えができるようになったのも、目の前の謎の声とも平気で話していられるのも、全て平和が戻ってきたからだと実感した。
アイム「なあ、これだけは一つ言っておく」
――『なんだい?』
アイムは暫く陽を浴びながら黙っていたが再び口を開いた。
謎の声は興味津々とばかりに聞き返してきた。
アイム「兵士にもよるだろうが、会議所の中にはあんたらを許してない兵士も多い」
――『まあそうだろうねえ』
DBと軍神<アーミーゴッド>を相打ちさせて世界を操っているなんて、いかにも悪の親玉みたいだものねえ。
屈託ない笑い声を上げながら謎の声は同調した。
アイム「だけど少なくともオレとオニロはあんたらのことを嫌ってはいない」
――『へえ。君たちを消そうとした張本人なのにかい?』
アイム「やり方に違いはあれど、テメエも大戦世界の継続、発展を願っているんだろう?皆と考えに違いはない、同士さ」
――『…』
初めて声は押し黙った。押し黙ったように聞こえただけかもしれないが、アイムは構わず続けた。
アイム「オレとオニロはこれからも軍神の“欠けたピース”として、会議所を率いていく。
テメエらが裏で世界をより良くするようにこれまで通りコソコソ動き回るのは別にいい。
だけど、もし会議所で起こそうとしている案とテメエらの案が相反して、自分たちの案を押し通そうと騒乱を起こそうというのなら―」
― その時は世界の創始者であろうが容赦なく叩き斬るからな。
アイムの最後の言葉に、謎の声こと大戦世界の創始者・たけのこ軍 まいうは少し黙った後、実に愉快そうに笑い始めた。
――『あはははは。やはり君たちはおもしろいねえ。見ていて飽きない。君たちに任せていれば会議所も大戦世界も安泰だッ。
そう考えると預言書を破棄して君たちを生き残らせた会議所の判断は間違ってなかったのかな』
アイム「あんたもたまには遊びに来いよ」
――『ふふ、考えておくよ。さて、そろそろお別れだ。こちらはこちらで忙しいんだよ。じゃあねアイム』
アイム「じゃあな、まいうさん」
――『大戦に幸あれ』
声は途絶え、辺りには再び静けさが戻った。
さてと、と一人息を吐き、アイムは日課の昼寝に戻ろうとした。
すると、間髪入れずに丘を登ってくる一人のたけのこ軍兵士の姿が見えた。オニロだ。
オニロが走ってきた。何やら少し怒っている。
オニロ「やっぱりここにいたねアイムッ!定例会議の時間はもうすぐだっていうのに、サボって昼寝してッ!」
アイム「ゲッ。なんで此処が分かった、誰にも言ってなかったのにッ」
オニロ「ボクはアイムと同じ軍神<アーミーゴッド>の片割れだからね。アイムの考えることくらいお見通しさッ!」
アイム「気色の悪いことを言うな…眠気がふっとんだじゃねえか」
オニロ「ほら戻るよ、アイムッ!今日は今度開かれる大戦に向けた新ルールの策定と、復興に向けた新プランを改めて考えないと」
アイムは渋々といった様子で起き上がる。
アイム「へいへい。段々、議長っぷりが板に付いてきたな。どっかにいるシューさんも浮かばれるなこりゃ」
オニロ「なんかシューさんの怠け癖をアイムが引き継いでいる気がするけどね…ほら、さっさと行くよッ!」
アイムとオニロの二人は会議所へ戻っていく。
二人のいた場所に再び、さあとそよ風が吹いた。
咲いていた草花が、二人を見送るようにゆらゆらと揺れていた。
Fin.
warsまとめへ戻る。
Chapter4. 大戦に愛をへ戻る。
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2014-07-27