4-7:軍神帰還

初公開:2017/12/31


【K.N.C180年 きのこの山】
その日、仕事を終えたじゃがバター兵士は鬱屈とした思いで帰路に就こうとしていた。
目に刺さる夕陽を嫌うように手で日除けを作りながら、彼は陽の方向にある古ぼけた建物のある一点を見つめていた。

かつて、あの建物<会議所>の中に自分がいたことが今でも不思議だと、じゃがバターは思っている。
大戦初期、自分自身は会議所の中心に居た。集計班の代わりとして大戦の集計係まで務めたこともある。
あの日あの時、大戦に対する情熱は誰よりも強かった。
しかし、ある時を境に自分の心の中から大戦への情熱の火がふっと消えてしまい、気がつけば会議所はおろか大戦場へ立ち寄ることすらなくなっていた。

感慨に耽っていた時間を取り戻すように、じゃがバターは早足で自宅へ歩を進めた。
彼の周りにも大戦への興味が無くなってしまった者は多い。そうした者は大戦への参加すらも敬遠することが殆どだが、全く生活と縁がなくなるかといわれればそうではない。
きのこの山の住民の多くは大戦関連の産業で生計を立てている。彼も勿論その例外ではなく、大戦で使用される銃器の生産工場で働いていた。

一時は残業をしても生産数が追いつかないほど大戦の特需に湧いた武器界隈だが、今は閑古鳥が鳴く不況具合だ。それもその筈、大戦自体が暫く開催されていないためだ。
時間通りに帰れることの安心はあるものの、手取りが減ってしまったため日々の生活は苦しい。

大戦に参加するほどのやる気はもう無い、しかし大戦が開催されないと困ってしまう。
やり場のない怒りをどこにぶつけていいかわからず、じゃがバターは暗澹たる思いで広場を通りかかった。


??「…私たちは今まで信じれば救われると信じてきた。信じた結果、どうなったッ!!」

じゃがバターの耳にある兵士の演説が聞こえてきた時、彼は興味本位で広場の集会で行われている奇妙な集会に近寄ってみた。
広場の中心で喋る一人の兵士の姿とそれを取り巻く兵士たちから奇妙な熱気を感じたのだ。
中心の兵士は身振り手振りを交え、熱心に何かを訴えているようだった。

??「大地は荒れ果てェ文化と生活は荒廃し、兵士たちは考えることを止め生活は貧しくなったッ!この間、“夜のきのこ”きのこ軍は一体何をやっていたのかッ!
“常勝”たけのこ軍もだ!私たちはァ猛省しないといけない!」

壇上に立つ兵士の熱心な演説に、周りの兵士たちはたまらず拍手と歓声を浴びせた。よく見ると、山の殆どの住民が彼の演説を聞き入っていた。
さらに、群衆の中にはたけのこ軍兵士も多く混ざっていた。どうやらたけのこの里で既に同じ演説を行い、支援者を引き連れきのこの山へ乗り込んできたらしい。

??「貴方達は覚えているかァ!かつて大戦世界には数多の神が存在したことをッ!その中に軍神<アーミーゴッド>という現人神が大戦に居たことをッ!」

群衆の多くはハッとしたように息を呑んだ。じゃがバターも兵士の言葉で、初めて軍神<アーミーゴッド>の存在を思い出した。
あれ程戦場を賑やかした存在のはずなのに、今ではその存在に靄がかかったように思い出せない。じゃがバターは途端に不安になった。
壇上の兵士は戸惑う兵士たちを導くように、力強く演説を続ける。

??「久しく軍神<アーミーゴッド>を忘れていた者も多いだろゥ。それもその筈、奴は大戦をインフレへと引き上げバランスをめちゃくちゃにした暗黒の象徴なのだァ!」

突拍子もない話だ。決して軍神<アーミーゴッド>は目の前の兵士の語るような存在でないはずなのに、他方で話の通りとんでもない大悪党であると確信する思いも持っている。
じゃがバターは自身の相反する思いが交錯していることにたちまち不安が増大された。

??「貴方達はいま知られざる軍神<アーミーゴッド>の正体をきき、混乱しているだろゥ。無理もない、光の象徴 軍神<アーミーゴッド>の姿は奴が捏造して洗脳してつくりあげた存在。
貴方達は必死に抵抗しようと、今まで軍神<アーミーゴッド>の存在を記憶から封印してきたのだ」

おかしな話だが、たしかに辻褄は合うかもしれない。
先ほどと打って変わって優しげに語りかけてくる兵士の言葉が、じゃがバターの葛藤する胸中にストンと落ちた。

??「貴方達は今まで邪悪の化身である軍神<アーミーゴッド>から必死に身を守ってきたのだ。忘れていたのは恥ではない、誇りだ。
そして今、その誇りを勇気へと変える時が来た。軍神<アーミーゴッド>が再び現世に復活したのだァ」

群衆の多くから悲鳴とも取れる叫び声があがった。兵士は両手を群衆に向け落ち着かせる仕草を取った。

??「会議所が軍神<アーミーゴッド>を匿っている。奴を使い、会議所は貴方達を再び洗脳し世界を支配しようとしているゥ」

会議所というフレーズにじゃがバターを含め、全員が息を呑んだ。大戦世界を支える運営所たる会議所は、山里の住民にとって感謝こそすれど批判の的にはできない聖域だったのだ。
そんな群衆の態度を見越し、壇上の兵士は囁くように話を続けた。

??「怖がるゥ気持ちはわかる。だが、これは真実だ。

考えてもみろ、会議所は君たちになにを与えた?

どうして私達の生活はここまで苦しいんだ?それは大戦が開かれないからだ。そもそも大戦はどうして開かれない?

私達の努力不足もある、だがそれ以上に会議所の怠慢が原因だァ…」

嘆きから怒りへ、群衆の表情が一斉に切り変わったのを壇上の兵士は見逃さなかった。畳み掛けるように兵士は声を荒げ力説する。

??「会議所は【意図的に】大戦を開催していない。わざと私達を苦しめているゥ!!

なぜか?

会議所に力を集約させ、私達を奴隷みたいに指図するためだッ!

こんな蛮行を許しておけるのかッ?」

群衆から怒りにも似た声が次々に上がった。明らかに会議所に対する拒絶の声だった。

??「こんな生活に誰がしたッ?誰が悪いんだッ!!」

群衆「会議所だッ!!」

全員は声を揃え、兵士の呼びかけに呼応した。

??「この現状を生み出した諸悪の根源はなんだッ?」

群衆「軍神<アーミーゴッド>だッ!!」

??「軍神<アーミーゴッド>を匿う会議所に、我々はどう立ち向かう?」

群衆「襲撃だッ!!」

耳をつんざくほどの大声で全員は答えた。

??「襲撃だけでいいのか?」

群衆「軍神<アーミーゴッド>を引きずり出して、その場で処刑だ!」

壇上の兵士は満足するように一度うなずき、握りこぶしを振りかざした。

??「民衆よ、チョコと槍を取れ。今こそ両軍の垣根を超え、真の敵へと立ち向かうときだッ!
進めェ!
この日が暮れるまで一人でも多くの賛同者とともに真の自由を取り戻す戦いをするのだッ!」

「戦え!」「進め!」「根絶やしだ!」

群衆は鼻息荒く、壇上から下りた兵士を先頭に輪はうねりとなり、会議所まで行進を始めた。
興奮したじゃがバターもその場で鞄を放り出し、神父の格好をした兵士から支給されたチョコ剣を手に取り輪に加わった。
洗脳されたじゃがバターの耳に、微かに他の兵士の声も聞こえてきていたがもう彼の理性には届かなかった。

山本「我々が信じていた神は死んだ!今こそ民衆よ!
疫病神・軍神<アーミーゴッド>を打ち倒し真の平和を取り戻せッ!
日暮れまでに少しでも多くの同志をかき集め会議所へ討ち入りだッ!
この【きのこ軍 真参謀 B’L様】が我々をお救いなされる!
心配は無用だ!進め!進め!進め!」

B’L「終わりだ、軍神<アーミーゴッド>ォ」

先頭に居たB’Lは卑しい笑みを隠しきれないように口角を釣り上げ、勝利を確信したように歩を進めた。



【K.N.C180年 会議所 大戦年表編纂室】

オニロの言葉で改めて一致団結した会議所では、DBを偵察しに出かけた山本が未だに戻らないことに対する対応策とDBの今後の行動に対する検討をしていた。

791「山本さんはあの最低な乙牌教の教祖ということもあって、煩悩に人一倍に弱い。洗脳されていると考えたほうが自然じゃないかな?」

筍魂「あの山本さんがDBに洗脳されているなんて!…ありえるな」

抹茶「DBの目的は大戦世界の“負のオーラ”を集めて自身を強大にすることですよね。そのためにスクリプトを使い過去大戦の歴史を改変していたけど、それもできない」

オニロ「だから現代に留まるしかないDBは、いま”負のオーラ“集めをするしかない。そうすると各地で厭戦感情を高める行動や暴動を起こすか…」

――さもなくば、DBと対極の位置にいる“正のオーラ”を持つ軍神<アーミーゴッド>を破壊して人々を絶望させるか。

皆の混乱を抑えるため、オニロは敢えて口には出さなかったがDBの真の狙いは軍神<アーミーゴッド>の消滅であることを軍神の二人は本能的に理解していた。

そして開いた口をぎゅっと結び、オニロは横にいるアイムをチラリと見やった。

互いの性格は真反対、さらに最初は彼から”自分のような甘ちゃんなど大嫌い“と明言され、オニロ自身も彼の傍若無人な態度に何度も嫌気がさしてきた。
それ程までに真逆だった二人が実は同じ一人の人物と―正確には神だが―わかった瞬間に、オニロは隣りにいたアイムがまるで実の兄弟なように懐かしくなり、不可思議な事態にもすぐに腑に落ちたのだ。

オニロが持つ慈愛、優柔不断さとアイムが持つ冷徹さと自信過剰は全て同じ軍神<アーミーゴッド>が持つ個性が分裂したもので、
それぞれの個性の強さに大小の違いはあれ、オニロから見たもうひとりの片割れを兄弟のように愛おしく思う気持ちが強まった。

アイムは周りの兵士たちと会議所の今後の対応について話している最中だった。アイムも横目でチラリとオニロを見て視線があったのが気恥ずかしかったのか、すぐにふいと視線を外した。
そんな様子が可笑しく、オニロは結んでいた口元を緩め柔らかに笑った。

皆がオニロの言葉に鼓舞され士気を高めていた中、きのこ軍兵士¢は周りから相反するように円卓テーブルの端で独り震えていた。
自らの行いを独り悔い、それでも皆と同じような希望に足を踏み出せずにいる自らの意志の薄弱さに心のなかで泣いていたのだ。

  集計班『とびきり邪悪な怪物をつくっていただけませんか。それを会議所で討伐するんですよ、どうですか楽しいと思いません?』

若かりし頃の¢は当時の集計班の言葉にしたがい、圧縮装置で負のオーラを集め邪悪な怪物DBをつくりあげたが、その事実を知る者は実は殆どいない。
¢の発明品の中でも自我を持ち想定外の動きを頻発するDBはとりわけ”優秀“だった。
会議所の古参としてよりも開発者としての矜持を忘れられなかった¢は、K.N.C28年での初の討伐戦で討伐予定だったDBを秘密裏に解放し世に解き放った。
¢は悩み苦しんでいる。DBの生みの親である自身が皆を苦しめているという事態に、それを公表できない心の弱さに、そして――

アイム「¢さん。少しだけ時間いいか?」

本来であれば気がつける筈のアイムの気配にも気づけないほど、歴戦のエース¢は周りへの罪悪感と自らのDBに対する愛憎が入り混じり極限にまで追い込まれていた。

アイム「会議所の行動についてあんたの確認を取りたかった。加古川さんとも話していたが山本さんの野郎は十中八九DBに捕まっている。
罠も考慮し市井の様子を探りに何人か偵察に行かせてもいいよな?」

¢「ぼくはそれで異論ないんよ…」

目を合わせず¢はポツリとつぶやいた。自らの意思など気にせず続けてくれと言わんばかりの弱々しさだった。

アイムはそんな彼の様子を数秒ほど見ていたが――

アイム「¢さん。いままで悪かった」

突然¢に頭を下げた。¢は吃驚して顔を上げた。

¢「ど、どうしたんよいきなり」

アイム「オレはあんたを疑っていた。DBの一味なんじゃないかと思っていた」

¢「…」

アイム「でもそれは誤りだった。あんたはあんたなりの信念で動いていたんだな。それを理解できなかった、だから謝る。ごめん」

軍神<アーミーゴッド>の頃の記憶が戻り、¢が葛藤していた様子も気がついたのかもしれない。アイムの真っ直ぐな気持ちに圧され、¢も本音で返さざるをえなかった。

¢「信念なんてそんな大層なものじゃない。俺は弱い兵士なんだ」

アイム「弱さと強さは両立する。
確かにあんたの言うように固執する心は周りが見えなくなり弱くなるかもしれない。
でも、それがあんたを強くしている原動力でもあるんだ。少なくともオレは¢さんの強さを知っている」

アイムは頭を上げた。キザな悪戯っ子のように口元をつりあげて笑っている。

アイム「気持ちを圧し殺すんじゃない。”認める“んだ。そのうえで何が正しいか、その時々で判断すればいい。オレはそう学んだ」

¢「…それは軍神<アーミーゴッド>としてか、それともアイム自身の意見か?」

アイム「前者さ…と言いたいところだが、そんな御高説たれるほどできた兵士じゃないよ、オレは。いまのはどちらかというと後者からの意見さ」

アイムは背後にいるオニロと筍魂をチラリと見やり、視線を再び¢に戻した。

¢「社長のときと同じで兵士を立ち直らせるのがうまいんよ、アイムは。さすがは軍神<アーミーゴッド>の化身といったところか」

アイム「暗いところでウジウジしてないで¢さんもこいよ。オレも一人のほうが好きだが、たけのこ軍のやつらとバカをやるのも、まあたまにはわるくない」

アイムはすっと¢に手を差し伸べた。¢から見てもアイムは変わったと思う。本来の性格はそのままに、兵士たちを導いていく力が目に見えて増した実感がある。
軍神<アーミーゴッド>のオーラが戻っただけなく、これまでの経験がアイムをここまで強くしたのだ。

― これがアイムの言う乗り越えた力か。

自分もいつか乗り越えることができるだろうか。
未だ不安を残したまま前進をしようと、¢がアイムの手をつかみかけた正にその瞬間、突然、最終決戦の合図は告げられた。
編纂室の扉が勢いよく放たれ、ビギナーが息も絶え絶えながら叫んだ。

ビギナー「大変だッ!!!会議所の周りを大勢のデモ隊が取り囲んでいるッ!軍神<アーミーゴッド>を出せと民衆が血眼になって会議所に押し寄せてきているぞッ!!」




【K.N.C180年 会議所 wiki図書館】

普段は静寂を保っているwiki図書館にもデモ隊の騒動は伝わってきた。
地上に戻ってきたアイムとオニロたちを地上兵士たちが待ち構えていた。

抹茶「これはいったい何事ですかッ!?」

ゴダン「ふと外が騒がしいと思って会議所から覗いてみたら、きのこの山とたけのこの里の方から大量の住民がこちらに向かってくるのが見えて…」

埼玉「慌てて会議所の門を閉めたんだたまッ!でもそれもいつまで持つか…」

図書館から外の様子を窺い知ることはできないが、取り囲んでいるデモ隊はおそらくきのこの山とたけのこの里のほぼ全住民ではないかと、埼玉は付け加えた。

参謀「こちらから偵察を送る手間が省けたな。デモ隊の要望はなんや?」

「会議所は軍神<アーミーゴッド>を匿っているッ!俺たちの生活をめちゃくちゃにした軍神<アーミーゴッド>を出せッ!!」

拡声器か魔法で増大された怒りの声がwiki図書館にも届いた。

791「軍神<アーミーゴッド>を標的にしたデモとはこのタイミングで不自然だよね」

¢「そもそもぼくたちも含めてみんな軍神<アーミーゴッド>のことを忘れていたのに、突然軍神<アーミーゴッド>のデモを起こすなんておかしいんよ」

社長「それは一理ありますね。」

オニロ「DBの仕業ということだね」

誰もが疑念を抱いていた言葉をオニロが最初に口にした。

アイム「DBの洗脳能力を使い、山本さんや黒砂糖さんに加えて全世界の住民を巻き込んだというわけか」

抹茶「全世界…今までとは規模が違いすぎる。これがDBの本気なのか」

抹茶の言葉に全員が言葉を飲んだ。これまで数人単位での洗脳が瞬く間に数千、数万倍ベースで一般兵士にされDB勢力になったのだ。予備兵の会議所兵士たちをあわせても兵力の差は歴然だった。
そんな皆の不安を他所に、アイムは気にすること無いとばかりにポンと一度手を叩いた。

アイム「怯えることはないよ抹茶さん。ヤツもそれだけ本気ということだけど、その分力は使っている。あいつは自分で集めた負のオーラを消耗することで洗脳しているんだ」

オニロ「ということは、今回の洗脳はだいぶDB自身を弱体化させているんだ。正にこの戦いに賭けているというわけだね」

アイムの言葉にオニロが補足して付け加えた。

抹茶「なるほど。逆にDBも追い詰められているということですね。なんか勇気わいてきた…かも?」

¢「ただ依然として兵力の差は圧倒的なんよ。会議所で籠城しても勝ち目があるかどうか…」

オニロ「その話だけど、ボクとアイムにいい案がある。そうだよねアイム?」

オニロの言葉にアイムは深く頷いた。

アイム「¢さん、頼みがある」

アイムとオニロは¢に向き直り深々と頭を下げた。




【K.N.C180年 会議所 地下室】

薄暗い地下室でぼうと光る圧縮装置の前で、アイムとオニロは決意に満ちた表情で地下から上がってきた会議所兵士たちと相対していた。

¢「本当にいいんだな?」

アイム「ああ、頼む」

オニロ「DBに勝つためにはこれしかないよ」

― オレたちを軍神<アーミーゴッド>に戻してほしい。

アイムの頼みは周りを大いに驚愕させた。
DBが負のオーラを結集させ過去最悪の力を手に入れているとするならば、正のオーラを纏う軍神<アーミーゴッド>で対抗し、民衆の目を覚ますことができれば形勢は一気に逆転する。
アイムとオニロの“欠けたピース”のままではDBとの完全決戦に挑むのはどうしても不完全なのだ。

ただしDBに扇動されている民衆は軍神<アーミーゴッド>に対し強い敵意を抱いているため、ひと度軍神<アーミーゴッド>が民衆の前に表れれば標的にされ何が起きるかわからない。
圧縮装置での軍神<アーミーゴッド>の復帰はDB討伐戦を会議所勝利の終結に導くか、さもなくば歴史がDBの手に落ちるか究極の二択を迫られる危険な賭けでもあった。

¢は一瞬、逡巡した後に装置のボタンを一度だけ押した。
圧縮装置がおもむろに機械音を発し始めたと同時に、二人の身体が白く光り始めた。

抹茶「もう二人には会えないんですか?」

アイム「バカだな抹茶さん。姿形は変わったとしても心は同じ、オレとオニロ。生きている」

アイムはそう言って、自らの胸を拳で二度叩いた。

オニロ「ボクとアイムがご迷惑をおかけしました、これからは軍神として皆さんを導きます」

アイム「おいオレを巻き込むんじゃねえ」

二人の変わらない掛け合いに周りの兵士たちからは思わず笑みがこぼれた。当人たちも軽口を言い合いながら互いに顔を見合わせた。
当初は誰にも馴染まず一匹狼を貫いた冷静沈着なアイムと、柔和ながら芯の強さを秘め歴史家としての才能を開花させた温厚で直情的なオニロ。
性格が真反対なきのたけの“希望の星”は、軍神<アーミーゴッド>の性格を分け与えられた“欠けたピース”ながら、それぞれが会議所で成長しともに師を持ち世界を大いに盛り上げた。


オニロは、窮地に追い込まれながらも不思議と心地の良い気持ちに、目を瞑りその時を待った。
アイムは、来る最後の戦いへの興奮と早る気持ちを抑えるために、目を瞑りその時を待った。




              そして、救世主が現れた。





まばゆい光が徐々に消え去り、アイムとオニロが立っていた場に一人の長身の兵士が現れた。
黒を貴重としたマントを羽織り、両軍服のモチーフカラーをあしらった専用の軍服はシワひとつなく清潔感を与える。
幼さの残る顔立ちの割に立ち振舞いに威厳があり、穏やかながら人を貫かんとする意志の強い目はアイムとオニロの名残を感じさせる。
紛れもない軍神<アーミーゴッド>、その兵士だった。

軍神「皆、待たせてすまなかった」

軍神<アーミーゴッド>の第一声に、止まっていた時間が動き出したように会議所兵士たちは慌ててピンと背を張った。

軍神「時間がもうない。すぐに我は外に出るぞ、付いてこい」

優しげな声色の内に秘めた強烈な力強さは、会議所兵士たちを鼓舞するには十二分だった。

参謀「よっしゃあ!いくぞッ!ほぼ全ての会議所兵士を会議所防衛に投入する。会議所への侵入を試みるデモ隊を軍神が食い止める。そして、デモ隊の中心にいると思われるDBを発見し討伐するッ!
ただ、DBを含めその周りにいる黒砂糖さんと山本さんは特に強力や。個別に対応する兵士をつけたほうがいい」

軍神<アーミーゴッド>の声に反応したように、討伐隊隊長の参謀は矢継ぎ早に指示を出し皆に意見を仰いだ。会議所が徐々に団結していく。

791「黒砂糖さんの対応は私に任せてもらってもいいかな?前回、魔法の使いすぎで先に寝て負けちゃったから今回はおまけで抹茶も引き連れていくよ」

抹茶「えっ」

指名された抹茶はただでさえ緑がかった顔色をさらに真緑にした。

筍魂「山本さんは俺で引き受けるゾ」

参謀「決まりやな。黒砂糖さんには791さんと抹茶で、山本さんには筍魂が相対しDBから引き離す。常人が近づけない対DBには竹内さんの存在が必要不可欠や。
まだ地下で茶でも飲んでるだろうから連れてきてくれ。負けられない戦いになるなッ!」

ビギナー「報告。いま入った情報によると、DBはきのこ軍 真参謀 B’Lと、参謀に似た名前を騙ってデモ隊の中に化けているらしい」

参謀「訂正じゃ…この戦い、死んでも負けるんじゃねえぞッ!!DBの野郎を討伐やッ!!!」

威勢のいい声とともに湿った地下は途端に大戦場のような熱気を帯びた。
最後の戦いの火蓋がここに切って落とされた。



4-8. 魂の演説編へ。
Chapter4. 大戦に愛をへ戻る。

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