三韓は遼東半島？

【三韓は遼東半島？】

そのような説もあり、実はそっちの方が中国歴史書と合います。

そもそもが「楽浪郡が今の北朝鮮の平壌だった」というのは後付けで言われ始めた説であり、中国史料を読むと楽浪郡は遼寧地方にあります。漢四郡に関しては、中国側の史料に明確に記載があり朝鮮半島にはなく、遼東地域にあった事は確実ですし。また、馬韓や辰韓など三韓についてはこちらの方が合います（正直言えば、辰韓についてはほとんど記録がない）。

もともとでいえば紀元前334年の段階で『史記』蘇秦列伝に戦国時代の燕の領域に「東に朝鮮・遼東、北に林胡・楼煩、西に雲中・九原、南に呼沱・易水がある」と書かれており、「朝鮮」と言うのが朝鮮半島になかったというのは判っている。

【記録にある遼東郡】

「遼東郡は今の北朝鮮の平壌だった」という説が今は定説とされていますが、しかし、3世紀の魏晋南北朝時代（AD220～589年）には遼東郡や楽浪郡などは平州 (遼寧省)にあった事が書かれている。

元々、漢四郡などと呼ばれるが、漢代では紀元前106年に漢の武帝が全国を13州に分割。その各州に刺史を設置した際に、現在の河北省・遼寧省・北京市・天津市を中心とする地域に幽州を設置、涿郡・勃海・代郡・上谷・漁陽・右北平・遼西・遼東・玄菟・楽浪・燕国の11郡国を管轄したというもので、楽浪郡もこの幽州の中の地域なのである。
この中で襄平市と呼ばれる場所が統治の中心となり、五郡を治めます。

遼陽市は、かつて襄平、遼東城と呼ばれていた、中華人民共和国遼寧省管轄の都市。2300年以上の歴史を持つ中国北東部最古の都市で、紀元前3世紀から17世紀にかけて、中国東北部の政治・経済・文化の中心地・交通の要衝・軍事拠点だった場所でした。戦国時代、遼陽は燕国遼東県の首都であり、襄平と名付けられていました。

とあるように、当時の遼東地域の中心だったのです。

他にも判っている市を考えると、以下のような地域の配置になる（中には、5世紀以降に出来ている県もある＝朝鮮半島にあったというのでは成り立たない）。
そうすると、馬韓の西にあった「州胡」はどこか？というと大連辺りになります。倭は古くから遼河文明と交易をしていますし、大連からなら山東半島とも交易が出来ますので、中継地として機能していたのだと思います。

【魏志の時代の韓の位置】

ここからさらに「韓」を配置するとこうなる。

馬韓と弁辰は倭に接しているので、それも加えると朝鮮半島というのは、『山海経』にあるように「倭」の土地だったようです。
「漢四郡」と呼ばれた地域自体が、朝鮮半島どころか遼東半島にも入っていません。

平壌の位置が「長城の端」にあると言うのも書かれているのだが、この長城は『魏略』に書かれている燕が築いた秦開に造陽から襄平までの東西二千里にわたる「燕の長城」の事であり、襄平＝平壌は一致する。

【衛氏朝鮮と古朝鮮】

箕子の場所が大体判りますので、燕の武将だった衛満がそこを滅ぼして建てた衛氏朝鮮の位置も判ります。

となると、「古朝鮮」と呼ばれていた場所は、今の朝鮮半島ではないという事です。

【『山海経』朝鮮の位置】

山海経には、

朝鮮在列陽東海北山南列陽屬燕

朝鮮は列陽にあり、東に海（湿地）・北に山があり、南列陽は燕に属している。

と書かれています。
つまり「朝鮮の位置」は『列陽』の場所で場所が決まる。
古代において「列陽」とは現在の中国・遼寧省にある遼河と北遼河の合流地点付近を指す地名です。この地域は、かつて遼河（現在の遼河）を主体とする一大河川であり、その流域には多くの土着の集落が存在していた場所であり、朝鮮半島ではありません（何故か、この「列陽」の位置を無視して朝鮮半島説で説明しているのを幾つも見掛けました）。

ここで区切りに注意しなくてはならず、よくあるのは、

朝鮮在列陽東（朝鮮は列陽の東にあり）
海北（北に湿地？海？）
山南（山が南）
列陽屬燕（列陽は燕に属している）

と訳しているのを見掛けるのだが、これは間違いである。
魏志東夷伝で例えば「挹婁在夫餘東北千餘里」とあり
・「紹介する場所名」+「在」+「起点となる場所」+「方向・距離」
という形で書かれており、これを考えると「朝鮮在列陽東（朝鮮は列陽の東にあり）」になる。
しかし、周囲の説明については「南與北沃沮」「東窮大海」、つまり
・「方向」+「起点となる場所」
という書き方になる。これから「海北」「山南」と区切る事は訳し方がおかしいのである。
つまり、「朝鮮在列陽東海北山南列陽屬燕」の区切りは、

朝鮮在列陽（朝鮮は列陽にある）
東海（東に海あるいは湿地）
北山（北に山）
南列陽屬燕（列陽南部は燕に属している）

この文章は「燕に属している朝鮮と言う地方は北に山があり東に湿地があり、列陽地域の南部にある」と書かれているのである。
この記載に合致している場所は、遼東地域でも内陸側にある位置となる。
現在の地理で言えば通遼市あたりとなる。

【魏晋南北朝時代】

魏志の時代、それぞれの郡に属していた県はある程度分かっている。
「今現在の朝鮮の～」となっているのは、史料に拠らないものなので参考にはならない。

昌黎郡	昌黎県	●	中華人民共和国遼寧省錦州市義県一帯
	賓徒県	●	中華人民共和国遼寧省西南部小凌河（錦水）河口部の錦州市近辺
	他、大洼区の周囲に「昌黎、宾徒、徒河、无虑、险渎、房县」といった場所があった事が書かれている。
遼東郡	襄平県	●	中華人民共和国遼寧省遼陽市中心部
	汶県	●	中華人民共和国遼寧省大石橋市南東部
	居就県	●	遼陽縣の西南
	楽就県	●	遼陽縣の境
	安市県	●	密雲縣の東北約4km 河北省豊寧満族自治県北東部
	西安平県	●?	後漢書高句麗伝「郡國志西安平帶方縣並屬遼東郡」郡國志では西安平・帶方県は遼東郡に属す。
	新昌県	●	中華人民共和国遼寧省海城市北東部
	力城県	●	遼寧の境
楽浪郡	朝鮮県	●?	山海経「朝鮮在列陽東海北山南列陽屬燕」列陽（古代において現在の中国・遼寧省にある遼河と北遼河の合流地点付近を指す地名）の南部今の通遼市あたり
	屯有県	●
	渾弥県	●
	遂城県	●	徐水縣の西2kmぐらい
	鏤方県	●	遼陽（中華人民共和国遼寧省遼陽市）の東。紫蒙県の辺り。水経注「浿水出楽浪鏤方縣東南過臨浿縣東入於海」
	駟望県	●
玄菟郡	高顕県	●?	中華人民共和国遼寧省鉄嶺県一帯
	望平県	●	「遼河東岸、中華人民共和国遼寧省錦州市黒山県北東部」とあるが、これは元に設置された県漢代だと鉄嶺市とされる
	高句麗県	●
帯方郡	帯方県	●?	後漢書高句麗伝「郡國志西安平帶方縣並屬遼東郡」郡國志では西安平・帶方県は遼東郡に属す。
	列口県	●?	後漢書郡國志：列口『郭璞注山海經曰「列水名列水在遼東」』列水は遼東にある。
	南新県	●?
	長岑県	●	瀋陽縣の東後漢書列傳「長岑縣屬樂浪郡其地在遼東」長岑県は楽浪郡に属し、遼東にある。「故城在今奉天瀋陽縣東」と城址が奉天の東にあるとあるが、同じ県かは分からない（位置的に別の同名県の気もします）。
	含資県	●?
	海冥県	●?

実際に史料に書かれている中で、楽浪郡も帯方郡も、位置が判る県は遼東にあると書かれているのである。
この中で、楽浪郡の位置、またそこから付随する帯方郡の位置を知るのにKeyとなるのは、かなり具体的に位置を書かれている楽浪郡の「鏤方県」と「朝鮮県」である。

鏤方県
鏤方城の遺構は判っており、場所は遼陽（中華人民共和国遼寧省遼陽市）の東にある。水経注に「浿水出楽浪鏤方縣東南過臨浿縣東入於海」と出てくる場所。よく議論になる川の流れなのが、この川もま下流で特徴的な蛇行をしている。この蛇行は場所として挙げられている特徴とも一致し、泪水は大遼河だと言うのが判る（正確には、大遼河から太子河に至るルート）。

朝鮮県
朝鮮県は、朝鮮は山海経で「朝鮮在列陽東海北山南列陽屬燕（燕に属している朝鮮と言う地方は列陽地域の南側にある）」と明確に書かれており、この「列陽」というのは古代において現在の中国・遼寧省にある遼河と北遼河の合流地点付近を指す地名であり、遼東地域の内陸部にある場所だというのは明確である。

この場所に衛氏朝鮮があった事も書かれている。つまり、朝鮮半島や朝鮮民族（現韓国人）とはなにも関係が無い事も明らかなのである。

今なお場所が分からない県もあるのだが、『楽浪郡』の「鏤方県」と「朝鮮県」について場所が史料で明記されているので判り、それは遼東地域にあり朝鮮半島ではないのは明らかなのである。特に、朝鮮県はかなり北にいった内陸地域である。
また、鏤方県の位置が判っているので「泪水」が大遼河を指すことが判り、朝鮮半島ではなく遼東にあった事が明確である。それに伴い「列水」「帯水」も大体の位置が判ってくるのである。泪水が大遼河なので、列水や帯水はその南にある、やはり遼東にある川という事である。

文献資料から分かる位置と、中国側の地図の説明と、泪水の河が特定できたから推定できる県の位置を書きこみ、それで帯方郡が作られる前後のそれぞれの郡の場所を図示すると、以下になる。

この「帯方郡」の位置だが、『前燕』で慕容仁が本拠地として地域でもある。この慕容仁自身は前燕内の政争で命を失うが、一族や慕っていた人たちは東に逃げたという記録があり、これが百済（「百済」とは元々は他国が言い始めていて、「様々な家が集まった集団」という意味になる）になったものと考えられる。

また、今の定説では西安平は北朝鮮の平安北道で、北は鴨緑江・南は清川江の間となっていますが、これは遠いだろうと思います。
あるとしたら、遼東半島の南側の平地の位置（楽浪郡と帯方県より南に西安平）なので、西安平討伐の帰路に帯方令を殺し、楽浪郡守の妻子を誘拐するというのができる。
また、馬韓に入り込んでいる雑多な民族のうち、韓族や濊族が帯方県の方に度重ねて侵入していたので、楽方郡の南方を独立させ帯方郡として馬韓を誅して「帯方郡」という領域が出来上がるつまり、楽浪郡と繋がっている地域であり、その楽浪郡の中にある「朝鮮県」と「鏤方県」が遼東内陸部にあるのが判っているので、朝鮮半島にあったという説自体がおかしいのである。

ちなみに間違えてはいけないのは、「馬韓」というのは独立した周辺国ではない。
この土地は楽浪郡に従属している地域であり、中国の一部である。その為、史料によって「楽浪郡」として記載しているのもあれば、「楽浪郡の外様地域」として別に記載しているものもある。ただ、西安平が北朝鮮の平安北道というのは、幾ら馬韓が臣従している地だとしても、馬韓自体は他民族な上にルールがあまりない、言っては何ですが蛮族の地です。そこを東に突っ切って平安北道まで、さらに言えばこの当時だとまだ未熟な船と渡航技術しかない漢の時代（AD160年より前）に、大勢で大洋河や鴨緑江といった川幅の広い川を簡単に渡れるとも思えないのですよね（大きな帆付きの船が出来るのが、大体、三国志の時代なのでこの100年後ぐらい）。

長城の外にある朝鮮県は、衛氏朝鮮の時代に雑多な民族が集まります。
扶余や濊貊も入っており、扶余は漢族（衛満ら元燕国）は為政者側に付くが、濊貊は非支配者層になる。衛氏朝鮮が漢に滅ぼされると、住民らは漢時代の長城建設に従事させられ、そこから逃げた民族が南下し、雑多な民族の集まり（倭人もいたらしい）の中に入るが、そこでトラブルを起こし続けたので、東にと追い払われたのが辰韓となり、その一部は南下して倭人が同居を許しておりそこが弁韓と中国には呼ばれる（しかし、三国志東夷伝韓条を読む限り、主は倭人たちなので、倭人の領域である）。
たぶんだが、辰人は自分たちを「秦の末裔だ」と、今の韓国人が「檀君の子孫だ」という戯言と同じような事を言い、ルールを守らず横暴な態度だったのだろうというのは、予想される事である。しかし、遺伝子分析が進んだ結果、辰人は秦とは関係がない民族である事も既に分かっている。秦の時代だと辺境の蛮族、衛氏朝鮮の時代だと下級民だったというのに。

ルートを見ると、長白山の北側を蓋馬大山を越えて中国（遼東地域）文化圏に入ってきたが、その言動や態度から200年ほどで周囲から鼻つまみ者扱いの民族になり、長白山の南回りルートで元の濊貊の方へと追い返された、という感じですね。判るように、何処に行っても文化寄生をしているだけで、独自の文化を作っていない部族であり、たぶん、濊脈の中でも浮いていた部族だったのではないかと想像させられます。

衛氏朝鮮や楽浪郡・帯方郡、そして馬韓というのは、朝鮮半島とは関係なく明らかに中国の歴史であり、朝鮮人（現韓国人）とも民族的に繋がりが殆どないのである。
また、高句麗や百済も倭人と同じく、朝鮮人（現韓国人）とも民族的な繋がりが殆どないのである。
言っては何だが朝鮮人とは「他文化」「他国家」「他民族」の歴史と明言が出来る。
こう見ると、韓国人の祖先というのは、当時だとまだ「朝鮮人」という民族が出来ていないのですが、精神性はとても今とも似ている気はします。自分たちで文化を作れておらず、文化寄生や文化強奪しているのですよね、歴史を見ると。

【楽浪郡の位置】

帯方郡の位置、韓の位置、倭の位置だが、結局は「楽浪郡はどこか？」で位置が定まるわけです。
実は、魏志東夷伝にきちんと書いてある。
「高句麗条」の部分に書かれているのだが、

至殤安之間句麗王宮數寇遼東更屬玄菟遼東太守蔡風玄菟太守姚光以宮爲二郡害興師伐之宮詐降請和二郡不進宮密遣軍攻玄菟焚燒候城入遼隧殺吏民後宮復犯遼東蔡風輕將吏士追討之軍敗沒宮死子伯固立順桓之間復犯遼東寇新安居鄉又攻西安平於道上殺帶方令略得樂浪太守妻子靈帝建寧二年玄菟太守耿臨討之斬首虜數百級伯固降屬遼東〔熹〕平中伯固乞屬玄菟公孫度之雄海東也伯固遣大加優居主簿然人等助度擊富山賊破之

とある。
遼東に侵犯している東夷を相手にし、また、西安平に攻め入り、その道中で帯方令を倒し楽浪太守の妻子を誘拐した事が書かれている。
この「西安平」というのは、今の定説では北朝鮮の平安北道で、北は鴨緑江・南は清川江の間にあり、今の北朝鮮の平壌より北にある（それさえも疑問があり、西安平県は西晋時代の平州の中の遼東郡に属しています）。その「西安平」までの経路の途中に帯方県と楽浪郡はあった事が明確に書かれているのである。この頃はまだ帯方郡が出来る前で「帯方令（帯方県長）」であり、楽浪郡の中の県の1つとなる（靈帝建寧二年＝163年より以前の話）。

「経路の途中」だから、これが「平壌楽浪郡都説」だと、より南の今の韓国あたりから北上するルートでないと「西安平征伐の道中で」とはならないのだが、しかしそこは遼東地域ではないし、東夷を攻める事もできないの地理なのは明確である。

復犯遼東寇新安居鄉又攻帶方殺帶方令於道上攻西安平略得樂浪太守妻子

と、「平壌楽浪郡都説」であれば最も南にある帯方県を攻め、帯方令を殺し、道中で西安平を攻め、楽浪太守の妻子を誘拐した、と書かれているならルートの説明がまだつくのだが。実際にはそう書かれておらず、書かれているのは、

復犯遼東寇新安居鄉又攻西安平於道上殺帶方令略得樂浪太守妻子

西平安を攻めたその道中で帯方令を殺し、楽浪太守の妻子を誘拐した、とあるのである。
書いている順番から、西安平⇒帯方県⇒楽浪郡都⇒遼東郡と、西安平を討伐した帰路で事で、帯方県と楽浪郡都は西安平と遼東郡の間に位置していないとおかしいのだが、定説ではそうなっていない＝平壌遼東郡都説はおかしいと判る。

結局は、魏志東夷伝でしっかりと「平壌楽浪郡都説」は否定されているのである。

【單單大山】

ちなみに、韓国や日本でもウィキペディアでは「單單大領は白太山脈（朝鮮半島の東に北から南に続く山脈）だ」と言っているが、中国歴史書を読むと場所は違う。
魏志東夷伝では2か所に出てきている。

1つは東沃沮の説明であり、

東沃沮在高句麗蓋馬大山之東濱大海而居
其地形東北狹西南長可千里
北與挹婁夫餘南與濊貊接
戶五千無大君王世世邑落各有長帥
其言語與句麗大同時時小異
漢初燕亡人衛滿王朝鮮時沃沮皆屬焉
漢武帝元封二年伐朝鮮殺滿孫右渠
分其地爲四郡以沃沮城爲玄菟郡
後爲夷貊所侵徙郡句麗西北今所謂玄菟故府是也
沃沮還屬樂浪
漢以土地廣遠在單單大領之東分置東部都尉
治不耐城別主領東七縣時沃沮亦皆爲縣

とある。
高句麗にある蓋馬大山の東に東沃沮があり、海に面している事が書かれている。魏志東夷伝の内容はAD3世紀なので、高句麗はまだ高句麗県を中心とした領域にあり南下していない時期である（この時点で、Wikipediaにある「單單大領は白太山脈だ」という説明は成り立たない）。その為、ここに書かれた「東沃沮在高句麗蓋馬大山之東」の高句麗は、遼東半島ではなく長白山の北西で遼東地域の襄平の東の地にある。その東にあるのが「蓋馬大山」なので、大体、下図あたりの部分。これを越えた東の先に東沃沮がある。北には扶余に属する與挹がおり、南は濊貊に接っしている。この東沃沮の地は初め玄菟郡に所属していたが、その後、楽浪郡に属する事になる。遠いので分割し單單大領の東に東部都尉が置かれる（なんとなくですが、玄菟郡は外からの防衛の役割。楽浪郡は外へ攻める役割なのでしょうか？）。

「蓋馬大山」はもう少し北にある老白山あたりの可能性もあるが、そこだと北に行き過ぎると思う。

2つ目は濊の説明であり、

濊南與辰韓
北與高句麗沃沮接東窮大海今朝鮮之東皆其地也
（中略）
自單單大山領以西屬樂浪
自領以東七縣都尉主之皆以濊爲民
後省都尉封其渠帥爲侯
今不耐濊皆其種也
漢末更屬句麗

南は辰韓に接しており、北に高句麗沃沮（高句麗に属している東沃沮）に接しており、東は大海で行きどまりになっている。ここは朝鮮（遼東の北側）の東の地である。
單單大山より西は楽浪郡に属しているが、單單大山より東の7県は東都に属しており、（その7県の住民は）濊人だったと書いてある。その後は都が廃止されそれぞれが県から周辺国と認められ、漢末には高句麗に属していた事が書いてある。東沃沮では「單單大領」と大きな範囲を書いてあるが、濊では「單單大山」と単体の山を指している。

どう考えても、中国から見て目印になる長白山（古くは「不咸山」「白山」「太白山」と呼ばれた）や長白山脈の事である。北朝鮮や韓国では「白頭山」と呼んでおり、名称問題になっている山である。
そもそもが「單單」というのは「唯一」的な意味になり、周囲に比べると他とは明らかに区別できる明確な目印になるから「單單大山（ただただ大きい山）」や「單單大嶺（ただただ大きい山脈）」と書かれているのである。使われ方も、中国の歴史から見て遼東地域や吉林省周辺の部族の場所の説明に使われているもので、朝鮮半島で高くて1000m級の山脈が使われるような話ではない。

朝鮮半島、それも韓国で言うと、最高峰は済州島の漢拏山で1950m。次が南部の全羅南道・全北特別自治道・慶尚南道にまたがる、小白山脈の南端に位置する智異山で1915m。三番目でやっと太白山脈になり、北東部の江原特別自治道の雪岳山で1708mになる。朝鮮半島、特に今の韓国である南半分では1000m級もそれほどなく、吉林省や日本に比べると高くない山なので、中国が「單單」と唯一的な大きさの感想を持つはずがないのである（あるとしたら「馬の背」とか「狗の尾」でしょうね）。

より広域で見れば分かるが「單單」と書かれるような山は、遼東地域や遼東半島、朝鮮半島という周囲では長白山しかないのである。
つまり、中国の史料で「單單」と書かれるような山や山脈は、長白山脈より南には明確に「無い」と言えるのです。

もっと古い『山海経』では「蓋國（鉅燕）」というのが出てくる。

鉅燕在東北陬（鉅燕は東北の僻地にあり）

これは、東北にある地域をさしており、これでもやはり地理的に遼東半島や朝鮮半島はありえないのである。

そもそも、地理を見て。
ウィキペディアでは「單單大領は白太山脈（朝鮮半島の東に北から南に続く山脈）だ」はおかしいでしょう？

濊貊を南にずらして白太山脈の横まで持ってきているが、沃沮は確実に長白山より北東方向にあるのだから、この位置にある沃沮を「單單大領の東」とはどう考えても言えないでしょう。

【平壌の遺跡】

問題となっているのが、『楽浪郡』の位置である。
現在、定説となっているのは、現在の北朝鮮の平壌辺りとされている。
しかし、これはおかしく、中国史料を読む限り「楽浪郡は遼東地域にあった」ことを一貫して示しています。

「楽浪郡朝鮮半島説」なのですが、これの根拠となっているのが、平壌周辺で楽浪郡関連の遺物や遺跡があるからである。
しかし、それをもって「楽浪郡は朝鮮半島にあった」とは言えない。

『魏志（三国志）』に、

准王海中不與朝鮮相往來

とあり、「韓（馬韓）」は「朝鮮」とは離れていて往来できなかったという事です。「平壌楽浪郡説」であれば楽浪郡は朝鮮半島にあり、その南に韓（馬韓）があるのでやはり朝鮮半島になるので、『「韓（馬韓）」は「朝鮮」とは離れていて往来できなかった』という事は記載されるはずがありません。
「朝鮮」は「朝鮮半島」の事ではなく、楽浪郡は朝鮮征伐後に置かれた郡ですので楽浪郡が朝鮮半島にあるのはおかしいのです。
また、

漢時屬樂浪郡四時朝謁

と、漢代には「韓（馬韓）」が楽浪郡に従属していた事も書かれています。

実は、「北朝鮮の平壌に楽浪郡都があった」わけではない事を示す証拠は、「楽浪郡朝鮮半島説」が根拠としている平壌周辺での楽浪郡関連の遺物や遺跡そのものです。

【北朝鮮の平壌周辺の遺跡】

まず、この「北朝鮮の平壌周辺の遺跡」はどうあるか。
大同江の北側に川沿いに多くある遺跡群です。

実は、これらの遺跡群からも「ここが楽浪郡ではなかった」と言えるものがあります。それは墓です。

大同江の北側の墓で楽浪郡関連の遺物が見つかっており、多数の遺構があり、それなりに規模の大きい施設があった事は確かです。
墓は主にBC1世紀末～AD3世紀頃にかけて、すなわち前漢末から後漢、そして三国時代（魏）にかけての時期に築造されたものが中心です。これは、この地に施設が設置され、機能していた時期（BC108～AD313年頃）とほぼ一致します。特に、規模の大きな木槨墓や煉瓦墓は、概ねこの時期に盛んに営まれまています。大同江北側の楽浪郡関連墓は、木槨墓や煉瓦墓が主体であり、これは当時の中国本土における墓制（特に漢代）と共通する特徴を強く持っています。

なお、この時期の馬韓地域（遼東半島南西部）の墓制は、地域によって多様性がありますが、木槨墓（木材で槨を構築した墓）や甕棺墓（かめかんぼ、大きな土器に遺体を納める墓）、そして支石墓（しせきぼ、テーブル状の巨石記念物、ただし埋葬施設としての性格は多様）などが代表的です。馬韓は様々な民族が混じって暮らしていた事が中国歴史書にも書かれていますので、墓にもバラエティさがあるようです。

それに対して、川の南側にも「晩達面古墳群」というのが図の右下側にあります。
大同江南側の晩達面古墳群に含まれる墓の年代は、大同江北側の墓と一部重なりますが、より後世まで続く要素も含まれます。具体的には、AD1世紀頃から始まり、特に石室墳などの形式はAD3世紀以降にも継続して築造されたと考えられています。晩達面古墳群に見られる石槨墳や初期的な石室墳は、同時期あるいはやや先行する時期の日本列島（弥生時代後期など）で見られる石棺墓や箱式石棺墓、あるいは初期の石室墳といった石を用いた墓制と、石を用いるという点や構造の一部において、確かに共通する特徴や類似性が見られます。

また図の左下側にも「柏洞古墳群」があります。
貞柏洞古墳群の主な築造年代は、AD3世紀後半～5世紀にかけて、すなわち三国時代の中期から後期の時期が中心であると考えられています。これは、以前に述べた大同江北側の墓（主にBC1世紀末～AD3世紀頃）の主要な築造時期よりはやや新しい年代に重点があり、晩達面古墳群の石室墳などが継続する時期とも重なります。墓の形式は、主に石室墳（石で羨道や玄室を構築した墓）が主体です。石室の構造は様々であり、中には比較的大型のものも見られます。石槨墳も見られますが、石室墳がより特徴的とされます。
この時期は、日本列島においては古墳時代（概ねAD3世紀中頃～AD7世紀頃）にあたります。古墳時代の日本列島でも、様々な墓制が見られますが、特に古墳の内部主体部として石室（石を組んで遺体を納める部屋）が広く用いられました。古墳時代を通じて石室の形式は多様に変化しますが、大きく分けて、羨道（入口から玄室へ至る通路）を持たない竪穴式石室（地面に掘った穴の壁を石で築いたもの）と、羨道を持つ横穴式石室（地面に掘った穴の側壁に入口と羨道を持つもの）があります。貞柏洞古墳群の石室墳の形式と、古墳時代の日本の石室墳との共通性について、考古学的な調査から以下のような点が指摘されています。

石室墳の存在
貞柏洞古墳群が石室墳を主体とする点、そして古墳時代の日本でも石室墳が主要な墓制の一つであるという点で、大きな共通性が見られます。石を用いて遺体や副葬品を納める部屋を構築するという基本的な概念が共通しています。
構造の類似性:
貞柏洞古墳群に見られる石室の中には、古墳時代前期（概ねAD3世紀後半～AD4世紀）の日本列島に見られる竪穴式石室と構造的に類似するものが指摘されています。

今の平壌辺りのBC1～AD3世紀頃の時代では、この大同江を国境として北側が中国系国家あるいはそれに属する民族の支配下であり、南側は倭あるいはそれに属する民族の支配下にあったという事が判ります。これは墓陵の設置場所とみても判りやすく、当時の中国の墓の考え方では、川を「あの世」と「この世」の境目と考える事も少なくなく、もし川の南側も中国系国家の地であれば、墓陵は人が住む川の北岸ではなく、川の南側に作る方が一般的です。にもかかわらず、人が住んでいた痕跡がある川の北側の、川岸から少し離れた場所に墓陵を作っているという事が、川の南側は他の国の土地になっていた、という事なのです。

このようにはっきりと分かれており、今の平壌周辺にあるBC1～AD3世紀の「楽浪郡都の遺跡」と思われている遺構類は、都ではなく関（川を利用した国境関）であるという事です。
遺跡で見つかる遺物から、南の倭とはかなり交流交易をしていたようです。

【馬韓から東に送られた辰韓】

辰韓が送られた先と考えられる朝鮮東海岸方面ですが、同じ時期のこちらの墓の形式は、石墓（石を積み上げたり、石板を組み合わせたりして主体部を構築する墓）が多く見られます。積石墓（石を積み上げた墳丘を持つ墓）や、石箱墓（石で棺を納める箱を作った墓）などもあります。他にも土壙墓（土を掘って遺体を埋葬するシンプルな墓）も広く見られます。埋葬品に土器・石器・骨角器・鉄製品などが出土しますが、中国東北部やシベリアなど周辺地域からの影響、そして倭の影響を受けたものもあり、多様な様相を呈します。

これを考えると、中国歴史書には

其耆老傳世言秦之亡人避苦役適韓國馬韓割東界地與之

その古老たちが代々語り伝えるには、秦の亡命者が苦役を避けて韓国に適した（たどり着いた）ので、馬韓が東の境界の地を割いて彼らに与えた。

秦代では東夷征伐で、その土地の人間を長城建設などをさせていましたので、その東夷の者達が苦役から逃げて馬韓に入ったが、文化の違いから馬韓の中では浮いており、それらを東に開拓として送った、と考えるといいかとは思います。

【遺跡の正体は川を使った国境関】

今の北朝鮮の平壌にあるBC1～AD3世紀の遺跡は、規模の大きさから「楽浪郡都だった」という主張がありますが、それですと、川を挟んだ南側に倭式の墓が同年代に作られている事がおかしく、「都」はまず異なるだろう、となります（もし楽浪郡都であり、川の南側が馬韓の多民族国家の領域であれば、その真正面に郡都を置くはずがない）。
では、この規模が郡都でなければなにか？というと、「関」です。「函谷関」などでも言われる「国境の関」ですね。

このような大規模な河川沿いの関や城は、中国の歴史において様々な時期に築造・改修が行われましたが、漢代を含む秦漢時代にも、重要な渡河点の管理や防衛のために、これらの施設が数多く存在し機能しています。いくつかの例とその関連年代を挙げると、

黄河沿いの重要渡河点

蒲津関（ほしんかん）
黄河の重要な渡河点に位置し、秦代から設置され、漢代にも引き続き重要な関として機能しました。対岸との交通・軍事上の要衝であり、関連する防御施設や管理施設が置かれていた。
孟津（もうしん）
洛陽に近い黄河の渡河点であり、漢代には重要な渡河管理の拠点。
小平津（しょうへいしん）
孟津と同様、黄河の重要渡河点であり、漢代に施設が置かれた。

これらの渡河点には、関所の機能を持つ施設や、それに付随する城塞や営（部隊の駐屯地）などが設けられ、人や物の往来、軍事的な移動を管理しました。

長江沿いの重要渡河点

江陵（こうりょう）
長江中流域の要衝であり、秦漢時代から重要な都市、軍事拠点として機能しました。長江の渡河管理や水上交通の制御において中心的な役割を果たした。
建業（けんぎょう -後の南京）
後漢末から三国時代にかけて、長江下流域の重要な都市、軍江拠点として発展しました。長江の渡河管理や水運の要衝。

長江沿いの重要地点にも、渡河管理や地域防御のための城塞や関所が設けられました。

これらの事例は、漢代を含む秦漢時代において、黄河や長江といった大河川の重要な渡河点に、地域防衛や交通管理の要となる、ある程度の規模を持つ関所や城塞が存在していたという事実を示しています。これらの遺跡が作られた年代は、平壌の楽浪郡遺跡（漢代）が築造・機能していた時期と重なります。平壌の遺構の類型と整合する可能性があり、平壌の遺構が持つ「河川沿いの、単一で比較的規模の大きな城塞/管理施設」という構成が、漢代の中国本土における大河川沿いの要衝に見られた施設の類型と共通する側面を持っています。

この関の相手は地理的に2つしかなく、交易の相手としては倭しかない。倭と中国が交易を遥か昔から続けていたという話である。
もう1つは、馬韓から辰韓（辺境）に人を送る際に、南に逃げさせない為の役割があるのだろう。

この関に「朝鮮半島人（韓国人の祖先）の歴史」はなく、あるのは「日本の歴史」と「中国の歴史」なのである。

【遺物】

「平壌に楽浪郡があった」という証拠で『平壌の楽浪王光墓から「楽浪太守掾王光之印」が発見されている』というのがあります。
しかし、これは「楽浪郡」が今の北朝鮮の平壌辺りにあった事になりません。

まずは官位だが、「掾」とは様々な管理をする「曹」という役割の長の立場で、官位としてはそこまで高くなく、給与もそこまで高くありません。郡のトップである「太守」（通常二千石）や「都尉」（通常比二千石）に比べれば、「楽浪太守掾」の官秩は、高くても四百石や三百石程度、あるいはそれ以下の場合もあり、「掾」という役職は全体としては中級以下の役職です。
この「掾」というのは「官（国家運営する人々）」とはまた違う役割で、「掾」の任命は首長（この場合は楽浪太守）が行うものですので、「楽浪太守掾王光之印」は「楽浪太守が任命した掾の証」という以外の何物でもありません。これがあるという事は、北朝鮮の平壌辺りの遺跡は楽浪郡と関係がある遺構であるのは間違いはありません。
この「掾」は、現代的に分かりやすくすると、「戸籍・兵事などの数量などを管理したり記録して報告する係」です。
漢代において、郡治（府中）から離れた郡内の「地方」で、行政的な業務やそれに携わる人員が活動していたことを示す史料や考古学的証拠は存在します。例えば、郡の下には県が置かれ、県令が行政を司りましたし、特定の重要な地点に軍事的な拠点が置かれたり、特定の事務（例えば屯田や塩業など）を管理する出先機関が設置されたりしました。また、太守から特定の任務のために「掾」や「史」が郡内の各地に派遣された記録があります。
見つかった「楽浪太守掾王光之印」は、川を使った国境関の管理の為に派遣された人物の物と考えられます。

そして「楽浪太守掾」の墓は、平壌で発見された楽浪郡時代の墓の中でも比較的規模が大きく、副葬品も豊富で、文字資料を伴うなど、その身分を示す要素を持つ立派な部類に入る墓です。
その事が、やはりここが「楽浪郡の郡都」ではない事を証明しています。

漢代の郡治遺跡や県治遺跡、あるいはその他の重要な地方行政・軍事拠点の遺跡からも様々な官吏の墓が見つかっています。
しかし一般的に、郡治が確認されている遺跡（例：長安城郊外の漢代墓地、あるいは他の地域の郡治に関連する墓地）では、郡のトップである太守や都尉クラスの高位官吏の墓が見つかることがあり、基本的に規模は周囲より大きいです。同時にその下で働いていた掾や史、他のスタッフクラスの中下級官吏の墓も、より多数、しかし規模はそれほど大きくなく見つかるのが典型的なパターンです。これらの墓は郡治の周辺に集中して分布することが多いので、おかしい事ではありません。

それに対して、県治遺跡や地方拠点の例:県治（県の役所所在地）の遺跡からでも、県令や県長といった県のトップや、その下の県丞、県尉、そして県に置かれた掾といった役人の墓が見つかります。これらの墓の規模は、郡治にいる太守などの墓に比べれば小さいのが普通ですが、それでも他の墓よりも大きいのが一般的です。特定の軍事拠点や産業拠点の遺跡からは、その機能に関連する役人や軍人の墓が見つかり、その中での序列に応じた規模になります。
他の地にも事例はあり、郡都よりも下位の行政単位である県の長官（県令、俸禄六百石や四百石）やその下の丞といった役職は、全体としては中級以下の官吏ですがその治める県においては最高責任者です。県治（県の役所所在地）やその周辺からは、県令クラスの墓が見つかることがあり、その地域の他の墓に比べれば比較的規模が大きく、一定の副葬品を伴うなどその地位を示すものとなります。

「楽浪太守掾」の墓は中級以下の役職の立場でありながら、北朝鮮の平壌付近で発見されている墓の階層構造の最上位が「楽浪太守」や「都尉」といった郡のトップクラスでなく、「楽浪太守掾」やそれに準じるレベルに留まっているにも関わらず、その墓が立派でありその周囲では地位が高かった形式であるということは、そこが「楽浪郡ではなかった」という事を如実に示しています。

【馬韓は楽浪郡の一部】

馬韓の領域のはずなのに、なぜその端に楽浪郡の施設があるのか？
これは単純です。
「馬韓」は古くから「楽浪郡の一部」という地域だからです。これは『後漢書』でもはっきりと書かれており、

建武二十年韓人廉斯人苏馬諟等詣樂浪貢獻
光武封苏馬諟為漢廉斯邑君使屬樂浪郡四時朝謁

「建武二十年」とはAD44年。この時に、韓人が朝貢に来ており、韓を周辺国（属地域）から楽浪郡の臣下（直轄地域）にしている事は記載されている。

【大同江北岸の遺跡の役割】

これは、

移民が南に行かないようにする国境の関所

という役割が大きいのでしょう。
秦の末期から漢の初期の時代、長城建設などの労役から逃れた東夷の人々が韓に逃げたという事は中国歴史書にも書かれています。
これは、遼東地域の労役から、遼東半島南岸に広がる韓（中国の属地域としてあった馬韓）に逃げたという話であり、急に増えた人々や違う地域からの移民で、現在の世界で起こっている移民問題の様にトラブルが多く発生したのでしょう。その為、それらの人々を朝鮮東海岸の方へと開拓移動させます。その時に、既に交流がある倭側に行かないようにするための川を使った関所ではないかと思われます。

また、

倭系民族（大同江以南の民族）が北上し馬韓に入らないようにする関所
倭との陸路での交易の窓口になる関所

という役割も担っていたでしょう。
BC1～AD3世紀の墓が、大同江の北側では秦・漢式で、南側は倭式（半島南部式）というのもこのためです。

これらを踏まえて、馬韓の小国の位置を考えると、この辺りは下図のような位置になります。

馬韓の小国『楚山塗卑離國』は「厳しい山道で下民が行く国」ですし、辰韓の『冉奚國』は「（馬韓に）従属している国」という意味です。
名前から位置を考えていくと、今の北朝鮮の平壌があった辺りは『不雲國』と考えられますので、大同江の北岸にある遺跡群は「不雲関遺跡群」と呼ぶ方が合うのでしょうね。

衛氏朝鮮が漢に滅ぼされたのがBC109年あたり、それで韓（馬韓）に逃れて、BC1世紀には韓（馬韓）の中で移民問題が起こり、移民を東に移住させる。その際に不用意に南に行かないように設けられた関。
こう考えると、北朝鮮平壌の大同江の北岸沿いに広がる遺跡群の年代とも符合します。

【楽浪太守章】

平壌の遺跡では、『楽浪太守章』という封泥がたくさん出土しています。
これをもって「楽浪郡都は平壌にあった」という説を唱えられていますが、これは全く逆で、この『楽浪太守章』封泥は、今の平壌が楽浪郡都でなかった事を示しています。

封泥は、竹簡や木簡などを束ねたものを紐で縛り、その結び目の上に粘土塊を押し付け、乾く前に役所や役人の印章（印）を捺して固めたものです。封泥の主な目的と機能は以下の通りです。

・封緘
文書の内容物が、途中で開封されたり改ざんされたりしないように封をする役割を果たしました。封泥が損なわれていれば、文書が不正に開かれたことが分かります。

・差出元と責任の明示
封泥に捺された印章には、文書を発行した役所や役人の名称が刻まれています。これにより、文書が「どこから送られてきたのか」、そしてその文書の内容に対する「責任は誰にあるのか」を明確に示すことができました。これは、公的な文書の管理、認証、追跡において極めて重要な機能でした。

・証明・認証
印章の印影があることで、その文書が正規の機関や人物から発行されたものであることを証明し、信頼性を与えました。

という性質のものです。これはそれぞれの場所でも特徴があり、

・郡や県の治所（都にあたる場所）での封泥出土
郡や県の治所、すなわちその行政区画の中心（都にあたる場所）では、封泥は多数出土しますが、その多くはその治所自身が発行した文書に伴うものではありません。むしろ、より上位の機関（例えば、中央政府や州）から送られてきた文書に伴う封泥が多く出土する傾向があります。そのため、治所で出土する封泥は、様々な差出元からのものが混在しますが、特に上位機関からのものが目立つ可能性があります。
都（郡や県の治所）では、他の場所から送られてきた文書に伴う封泥（特に上位機関からのもの）が多く出土する傾向。自身が発行した文書に伴う封泥は少ない。

・都以外の施設（軍事施設、下部組織など）での封泥出土
郡や県の治所から離れた下部組織や軍事施設などでは、その上位機関、特に郡や県の治所（都）から送られてくる文書に伴う封泥が多数出土する傾向があります。これらの場所は、自らが高位の文書を発行する機会が治所に比べて少ないため、受け取った文書に伴う封泥の割合が高くなります。したがって、これらの施設で出土する封泥は、特定の差出元（特に上位機関）からのものが集中して見られる可能性が高いと考えられます。
都以外の施設（軍事施設、下部組織など）
上位機関、特に都から送られてきた文書に伴う封泥が多く出土する傾向がある、という利用上の性格があります。

「平壌周辺の遺跡では『楽浪太守章』封泥が大半である」というのは、今の平壌地域は都ではなく、都以外の施設である事を示しているのです。楽浪土城で見つかった公的な印が押された封泥は「楽浪郡および管下の諸県のものに限られていて、中央ならびに他の都県のものは合まれていない」というのもあり、今の平壌にある遺跡は都の下部施設であった事を示しています。

【裕福な場所】

今の北朝鮮の平壌にあった施設だが、裕福だったのは墓の中身からも確かである。
しかし、都ではない証拠は色々とある。であれば、この場所は何でそんなに裕福だったのか？
様々な史料や証拠から、平壌周辺の施設は「国境の関」と

これもきちんと記載がある。

國出鐵韓濊倭皆從取之諸巿買皆用鐵如中國用錢又以供給二郡

そう、輸入品が存在しているのである。
「弁辰から」となっているが、この鉄の産出地は主に伽耶地域、つまり倭の領域になる。倭も朝鮮半島から輸入しているわけだが、中国側も輸入している。鉄も含めて倭からの輸入をしているし、倭への輸出もしています。これは、日本に楽浪様式の遺物などが発掘されている事からも判ります。遥か昔だと倭は直接に遼東地域に行き交流交易をしていましたが、BC1世紀あたりからはこの関を使って交流交易をしていたわけです。
このような国境の関でも都市のようになった事例は古代中国でも多い。例えば、

玉門関・陽関（敦煌）

現在の甘粛省敦煌市の北西および南西にあった玉門関と陽関は、シルクロードの重要な関所でした。これらの関自体が直接的に都のような規模になったわけではありませんが、これらの関の存在によって、後背地の敦煌が西域との交易の一大拠点として発展しました。「敦煌」という都市は、「敦は大なり、煌は盛なり」と言われるように、国境を守る軍事的な機能と、シルクロードの中継地としての貿易機能により大いに栄えました。城壁内には寺院、質屋、倉庫、酒場、住宅などが立ち並び、その賑わいは都市と呼ぶにふさわしいものでした。玉門関や陽関は、この都市を維持・機能させるための重要な門戸として機能していました。

山海関

現在の河北省秦皇島市にある山海関は、万里の長城の東端に位置し、「天下第一関」とも称されました。明代に強固な関城が築かれ、軍事的な重要性が非常に高かった場所です。関の周辺には、兵站基地や駐屯兵、それに付随する人々が集まり、商業も発展しました。関城そのものが大規模な要塞であることに加え、その周囲に形成された居住区や商業区を含めると、かなりの規模の集落となり、都市的な様相を呈していました。

嘉峪関

現在の甘粛省嘉峪関市にある嘉峪関は、万里の長城の西端に位置し、こちらも「天下第一雄関」と呼ばれる堅固な関所でした。明代に築かれた関城は非常に大規模で、その内部には兵舎や倉庫などの施設が完備されていました。嘉峪関もまた、軍事的な機能に加え、シルクロードの要衝として、往来する商人や旅人を相手にした商業が栄え、関の周囲に市街地が形成されました。現在の嘉峪関市は、この関を中心に発展した都市です。

雄州

宋代には、契丹との国境地帯にあった雄州（現在の河北省雄県）が、澶淵の盟以降、両国の外交窓口となるとともに、人、物、金、情報が集まる国境都市として大いに繁栄しました。軍事的な機能だけでなく、政治、経済の中心としても機能し、都市規模に発展した例と言えます。

このように、国境の関は場所によっては、外交窓口として、そして人・物・金・情報が集まる国境都市として発展をします。
平壌あたりにあった施設も、「倭」を主な相手國として発展した場所なのである。

【帯方郡の遺跡？】

黄海道鳳山郡文井面石城里から「帯方太守張撫夷」の銘をもつ塼室墓が出土しているとあるが、大事な部分（墓主の立場を示す文字）を削除している嘘がある。
この遺跡の発掘調査は日本人学者によっておこなわれたが、塼室墓の構造は地上に構築された煉瓦とそれを覆う墳丘で構築されており、天井の構造は穹窿式であった。副葬品は盗掘されており、ほとんど残っていなかったが、墳丘の築造に使用された煉瓦には文字が刻印されており、煉瓦には「使君帶方太守張撫夷塼」「張使君」「大歲在戊漁陽張撫夷塼」「大歲申漁陽張撫夷塼」などの銘文が刻まれている。
「この銘文によって墓主は、中国河北省薊州出身の帯方太守張撫夷であることが判明した」とあるが、この『塼』には他にも違和感があり、

		張撫	使
		夷	君 ①
		塼	方 ② ③

という構成になっているのは明確なのである。この左右の2行、上中下の3分割されたスペースに刻まれた文字である、というのがこの『塼』を理解するのに重要なのだろう。

右半分をまず見てみると、

右側上段

右側上段は「使」だけを1区画の中央に書いている。左側上段が「張撫」とより字画が多い2文字を入れているのだから、2文字を十分に入れられるのだが、ここには「使」の1文字を中央にしか入れていない。
尊称として「使君」という使い方がある。これが「使君帶方太守」と「帯方太守の印だ」説に繋がっているわけだが、それならこの右側上段は「使君」が刻まれていなくてはおかしい。しかし、この『塼』の製作者あるいは製作指示者は意図をもって「使」の1文字だけにしているのである。
また、普通に考えれば「使君」という尊敬として付ける単語を「使」「君」と明確に分けて書く事は不敬になる。

右側中段は「君①」とある。①の部分は「帯」と言われているが、似ているようで似ていないようでという文字である。この『塼』は隷書という文字で刻まれているが、隷書で「帯」は、

という形である。①が「帯」だとすると、隷書というより篆書体に近い形で、篆書体は下のような形になる。

だが、この1文字だけ篆書体はおかしい話であるし、緩くカーブを描く横に曳いた2本の線は、「帯」というにはどうしても違和感があり、別の文字の可能性がどうしてもある。
これを考えると、似た文字の形を探すと「帯」ではなく「竿」ではないかと思う。

つまり「君帯」ではなく「君竿」と書かれているのではないだろうか（「君竿」については後述）。
どちらにしろ、構成から「君■」というので1単語なのである。

右側下段だが、ここにはとても窮屈に3文字が入っている。
「使君｜①方｜②③」と刻んであるなら違和感はなかったでしょうが、「使｜君①｜方②③」という、アンバランスな刻み方をしている。これは「方②③」というのが役職だったという事でしょう。
②は「大」なのか「太」なのか、どちらもありえる形ですが、この時代なら「大」ですね。

それに対して③の部分。これを「守」としているのだが、削れていて判別が難しい。
ただ、この時期は魏の時代の前後になるので、彫るなら「大」ではなく「尹」でないとおかしいだろうというのもある。

どういう文字に似ているのかと、幾つもの石碑の拓を確認してみた。

左上の「守」は、有名な『曹全碑』にある文字
右上の「官」も、その『曹全碑』にある文字

です。これはどちらも似ていない。

左下の「守」は、『居延漢簡』という木簡にある文字
右下の「官」は、『居延漢簡』では文字自体は見つけられなかった（全部を確認をしていない）ので、『居延漢簡』のウ冠と『曹全碑』の己部を合わせたもの

となります。癖字となりますが、一番似ているのは右下であり、この文字は「官」であってもおかしくないのである。

繋げると「方大官」であり、「地方の大物官吏」です。
「方大官」という役職はありませんが（後の時代には「太官」や「方大官」というのも出てきますが）、これは亡くなった方の墓なので「戒名」みたいなものでしょう。
実際はどうかまでは分からないが、しかし塼の彫り方から、「方大■」という3文字の役職あるいは職の戒名である事は確かなのである。

左半分を見てみると、よく「張撫夷」という人物だと言うが、刻み方に大変に違和感がある。
「張」という家（氏）なのですから、

「張撫夷」と1マスに刻み込む（右下段で3文字書き込めている）

あるいは2マス使い、

「張」で1マス（左側上段）
「撫夷」で1マス（左側中段）

という刻み方をしなければ、「名を途中で切る」という大変に失礼な印になるからです。
という事は、この塼（左側下段にある文字で、この石碑そのものを指します）は、名前は「張撫」である、という事です。
ちなみに、この「張」氏の人はそれより前の時代に倭に使者としても行っていますので、どうやら「倭に精通した、あるいは倭語を話せた外交的家門」のようです。

では2マス目の「夷」は何かと言うと、これは「東夷」の「夷」であり、この墓の地を言っているのか、それとも「夷」を相手にする使者（外交官）という事でしょう。
そしてその相手は『倭』でしょう。魏志倭人伝（正確に言えば「魏志東夷伝倭人条」）があるのでも『魏志（三国志）』の『東夷伝』に「倭人」はあります。「夷」自体が中国から見た周辺国を指した言葉です。

3マス目の「塼」は、この物自体を指しています。

ということで、この『塼』に書いてあるのは
『使|君竿|方大官』
『張撫|夷|塼』
です。
意味は、「君竿に仕えていた辺境大使の張撫・倭の地にて」と書いてあるわけです。
その他に書いてあるのが、

「大歲在戊漁陽張撫夷塼」
「大歲申漁陽張撫夷塼」

これは、張撫という人物の出身を書いています。漁陽は秦代に置かれた郡および県名。現在の北京市密雲県の西南にある地域で、「在戊」とありますので、そこで生まれた人物です。

この『塼』の違和感は、何よりその刻み方です。

彫り方から再考		定説を是とする場合
張撫	使	張	使君
夷	君竿	夷撫	帯方
塼	方大官	塼	大守

左のように実際には刻まれています。
もし、定説とされている意味なら、右側の様に刻まれてなくてはいけないのです。これを「使-君竿-方大官」ではなく「使君-帯方太守」と読みにくい文字を無理矢理に読むので「帯方太守だ」となっているだけです。

墓の場所は文井面石城里のある辺りで、そこら辺りが帯方郡だった、という証拠にはなりません。というか、かなり辺鄙なところです。

墓の形式は石摺墓で、遼寧省遼陽近郊の石摺墓に似ている。
位置が大同江の南側で、それから「倭への使者」を務めていた人物と考えられ、歳をとり退官した後なので正式な官位は書かれておらず、礼を遇し中国様式の墓を建てたというものです。
亡くなった張撫がそう望んだのかもしれません。帯方郡の時代ですから卑弥呼が使者を送った時代でもあり、中国からも使者が送られていた時代です。つまり、倭と中国は昔から交流をしており、魏志倭人伝では日本本土へは船で行っていますが、朝鮮半島にいる倭とは陸路でも交流交易をしていた事を示す証拠と言えます。位置からすると、思い出のある陸路の経路の途中のようですね。広い平原が見えた位置で海は見えないでしょうから、風景が内陸にある郷里を思い出すと、本人の希望で倭に承諾を得て建てたのかもしれません（ただし、船の歴史から考えると、古代中国からすると倭とは「昔から海からやって来る異民族」なのでしょうね）。
この時代、平壌にあった国内関は辰韓への監視という役割もあるのですが、倭との交易でかなり裕福な場所だったようです。

このように他国で墓を作られる例はいくつでもありますが、重要な歴史的な証拠なのに大事な部分を削除して歪曲して広まっているので、大変に残念ですね。

最後に『君竿』です。
これは、羋戎というBC332～262年に居た、中国戦国時代後期の楚の公族で秦の政治家であり、BC265年に范雎の奏上で宣太后が廃位、羋戎ら四貴も罷免され、その権力を奪われると関中から追放され封地にて余生を過ごすこととなり、BC262年に死去した人物です。この羋戎は「华阳君」「華侯」「新城君」とも呼ばれる（この「華」も刻まれた文字の候補だったが、字画が多いので外した）。後世の本なのですが「粤雅堂丛书」の中の文、

见上注阳下原注正义云华阳亭名在洛州密县故华城在郑州管城县南杜注新城密也故戎又号新城雹恩泽案索隐曰华阳君竿戎亦号为新城君郡国志宏农郡华阴故台兄兆有太华山注吕重春秋尤薮曰秦之华阳弹蝇作阳韩五荡孽夕粗刚测高诱曰成在萝萨军四则华阳即在华阴之右然华阴在华山北此云华阳当在其南未可合而为一司马彪曰华阳在密县山名则密曰有华山而此地适当苴南故曰华阳水经注黄水出新郑县太山南黄泉东南流运华城西即华阳也索隐又云华阳韩地后属秦则小司马固不以此为准阴矣顾祖禹曰华阳本育华国史伯谓郑相公华今国语木作宰量全也今适围开封府新郑县东南二十里有华城亦曰华阳亭又案川吐省通鉴注华阳君竿戎曰华阳即武王归马处引冰经注云门水又东北应阳华之山即华阳山也至呜盛日今商州雒南县有阳华山盥拥林之野南北相圣胡渭注庾信八江南赋华阳奔命亦然按河云杜氏谓准日连延束出阳华在奢艾酉南夸艾在今闽乡县东育一十五里正所谓连延东出者乃西岳支峰古通谓之口山一然戎称新城君究以情县之诸为是新城

という文がある。
時代が200年ぐらいは違うので、この羋戎自身の事ではないのだが、中央から郡にと左遷？された人に仕えていた、という事かもしれません。

【BC3～AD3世紀】

この時代に関して言えば、「楽浪郡などは遼寧地方にあった」という方が成り立ちます。

【BC221～206 秦時代】

この時代は遼寧地方は秦の領土。
元は燕の領土。

元の住民は苦役（万里の長城）に駆り出される。

【倭の範囲】

BC8～6世紀頃（青銅器時代前半）に倭（縄文人）がどこまできていたかは、ドングリ遺体で判る。
青銅器時代、倭は清川江あたりまで進出している。

それに対して、北からいつぐらい来たかはL字形竈で判り、BC4世紀（青銅器時代後半）では清川江の北側あたりまでである。

無論、倭とは交流をして交易をしていたようである。

【BC190年】

『山海経』の書かれた頃。
漢になった際に元燕の武将の衛満が漢から逃げ、既在の箕子がいた場所を滅ぼして衛氏朝鮮を建てる。

【BC109～108年】

衛氏朝鮮が漢に滅ぼされ、四郡を置かれる。

「漢四郡」と呼ばれるのは、「楽浪郡」「玄菟郡」の他に「真番郡」「臨屯郡」なのですが、これは衛氏朝鮮の跡地を分割されています。
「真番郡」は「玄菟郡」に吸収され、「臨屯郡」は「楽浪郡」「玄菟郡」「帯方郡」に吸収されます。
この時に、高顕県も箕子や衛氏朝鮮の有った場所に作られている。

【滄海郡】

いまいち場所が分からないので「滄海郡」がある。これは衛氏朝鮮が滅亡した後の一部で、後に臨屯郡に編入されるので、場所的には臨屯郡の北部になると考えられる。
ただ、色々とみている中で、「滄海郡」を朝鮮東海岸としているのを見掛ける。ただ、それは、

衛氏朝鮮の将で漢に投降するのが濊系民族
濊貊は東に海があり、辰韓の北

と、この2つを混ぜてしまっているだけ。
濊系民族自体は広く広がっていいたのと、衛氏朝鮮自体が周囲の民族を集めて作っているので、その中に濊族もいるので、2つは繋がらない。

【北方の民族】

この頃、馬韓（と括られていたかは分からないが）は、大同江の北側まで来ているのは「L字形竈（高麗時代にオンドルとなる）」で判る。

辰韓が馬韓から東の地に送られたのは、早くてこのBC2～1世紀頃だと思われる。

「オンドル」自体が高麗時代に出来る文化であり、辰韓や新羅の文化ではない。
つまり、他民族他国の文化を「自分たちの文化だ」と李氏朝鮮時代に使っただけで、韓国人の文化とは言えない。

【AD25年】

「汶県」というところが年代によって所属が変わっている。

秦代:遼東郡
漢代:玄菟郡
唐代:安東都護府

AD30年ぐらいからは直接統治から冊封体制に移行し、扶余・高句麗・東沃沮などを諸王とし属国とする。

「玄菟郡」がBC75年に少し西に拠点を移すのだが、これは対処する範囲が増えたのもあるのでしょうね。

【AD121年】

この年、高句麗が馬韓と濊貊と共に玄菟郡を攻めたが、扶余により撃退された事が記録されている。
ということは、汶県がこの時期は玄菟郡だった事が判る。

これにより、韓（馬韓や辰韓）と濊貊は中国に従属させられる（中国の属領になる）。

【AD190年】

『後漢書』の頃である。

「韓」が出てくる、

楽浪郡の南に「馬韓」。
馬韓を通り東に送ったのが「辰韓」で濊貊の南。
辰韓の南に「弁辰」。
東西は海。
南は倭

という配置になる。
「楽浪郡の南に馬韓」となっているので、玄菟郡の南側部分が楽浪郡所属になっている。
馬韓が辰韓を東に送ったとあり、BC3世紀頃に比べると倭は少し南に下がっていると考えられる。

【AD204年頃】

韓（馬韓）と濊が、楽浪郡の南側を繰り返し荒らす。
「荒れた土地」とあるが、地形を見ると繰り返し水害がある湿地のような場所のようである。

濊も攻めていたという事は、東海岸の濊が辰韓を通り馬韓に協力していたという事になる。
「辰韓の王は馬韓から」とあるように、辰韓は馬韓の支配を受けていた土地のようだ。
その結果、中国（公孫）は対応するために楽浪郡の南を分割して『帯方郡』を作る。

この頃の情勢が、『三国志（魏志）』で書かれている情勢になる。
なお、帯方郡は韓濊征伐に乗り出し、これを降して従属させる。
……ということは、馬韓・辰韓・濊を帯方郡に従属させた、という事である。

【小国】

よく議論になるのは、魏志に書かれている辰韓・弁韓の国がどこにあるかである。

【三国志】

このように記載されている。

辰韓在馬韓之東其耆老傳世自言古之亡人避秦役來適韓國馬韓割其東界地與之有城柵其言語不與馬韓同名國爲邦弓爲弧賊爲寇行酒爲行觴相呼皆爲徒有似秦人非但燕齊之名物也名樂浪人爲阿殘東方人名我爲阿謂樂浪人本其殘餘人今有名之爲秦韓者始有六國稍分爲十二國弁辰亦十二國又有諸小別邑各有渠帥大者名臣智其次有險側次有樊濊次有殺奚次有邑借有已柢國不斯國弁辰彌離彌凍國弁辰接塗國勤耆國難彌離彌凍國弁辰古資彌凍國弁辰古淳是國冉奚國弁辰半路國弁樂奴國軍彌國〈弁軍彌國〉弁辰彌烏邪馬國如湛國弁辰甘路國戶路國州鮮國（馬延國）弁辰狗邪國弁辰走漕馬國弁辰安邪國〈馬延國〉弁辰瀆盧國斯盧國優由國弁辰韓合二十四國大國四五千家小國六七百家總四五萬戶其十二國屬辰王辰王常用馬韓人作之世世相繼辰王不得自立爲王魏略曰明其爲流移之人故爲馬韓所制土地肥美宜種五穀及稻曉蠶桑作縑布乘駕牛馬嫁娶禮俗男女有別以大鳥羽送死其意欲使死者飛揚魏略曰其國作屋橫累木爲之有似牢獄也國出鐵韓濊倭皆從取之諸巿買皆用鐵如中國用錢又以供給二郡俗喜歌舞飲酒有瑟其形似築彈之亦有音曲兒生便以石厭其頭欲其褊今辰韓人皆褊頭男女近倭亦文身便步戰兵仗與馬韓同其俗行者相逢皆住讓路弁辰與辰韓雜居亦有城郭衣服居處與辰韓同言語法俗相似祠祭鬼神有異施灶皆在戶西其瀆盧國與倭接界十二國亦有王其人形皆大衣服絜清長髮亦作廣幅細布法俗特嚴峻

ここまで書かれているが、これは辰韓と弁辰が混ざって書かれているのである。
このうち、

辰韓在馬韓之東其耆老傳世自言古之亡人避秦役來適韓國馬韓割其東界地與之有城柵其言語不與馬韓同名國爲邦弓爲弧賊爲寇行酒爲行觴相呼皆爲徒有似秦人非但燕齊之名物也名樂浪人爲阿殘東方人名我爲阿謂樂浪人本其殘餘人今有名之爲秦韓者始有六國稍分爲十二國。

其十二國屬辰王辰王常用馬韓人作之世世相繼辰王不得自立爲王魏略曰明其爲流移之人故爲馬韓所制

これは馬韓にも書かれている内容で、辰韓について書かれている。

弁辰亦十二國又有諸小別邑各有渠帥大者名臣智其次有險側次有樊濊次有殺奚次有邑借

これは弁辰の事になる。
よく議論になっているのが、

有已柢國不斯國弁辰彌離彌凍國弁辰接塗國勤耆國難彌離彌凍國弁辰古資彌凍國弁辰古淳是國冉奚國弁辰半路國弁樂奴國、軍彌國〈弁軍彌國〉弁辰彌烏邪馬國如湛國弁辰甘路國戶路國州鮮國（馬延國）弁辰狗邪國弁辰走漕馬國弁辰安邪國〈馬延國〉弁辰瀆盧國斯盧國優由國
弁辰韓合二十四國大國四五千家小國六七百家總四五萬戶

この小国群で、これが辰韓なのか弁辰なのか分からないということである。

ただ、思うのだが……単純に、辰韓の「12国（実際は10国）」と弁辰の「12国」を書いているものではないだろうか？

辰韓はどう出来たかは書かれているのだが、弁辰はどう出来たかは書かれていない。
というか、先住民である倭から出来ている国なのだろう。

【辰韓の国】

書かれている中で、

不斯國弁辰彌離彌凍國弁辰接塗國勤耆國難彌離彌凍國弁辰古資彌凍國弁辰古淳是國冉奚國弁辰半路國弁樂奴國

ここまでの10国が辰韓ではないかと思うが、国の名も「どんな国か」というのを説明しているもので、国号みたいな話ではどうも違うと思います。

不斯國：民信がない国＝終わりの国（端の国）
弁辰彌離彌凍國：弁辰から遠く離れた寒い国
弁辰接塗國：弁辰のような国
勤耆國：従順な国
難彌離彌凍國：ますます離れ寒い国
弁辰古資彌凍國：昔の弁辰のような風習の寒い国
弁辰古淳是國：昔の弁辰のような雰囲気の国
冉奚國：（馬韓に）従属している国
弁辰半路國：弁辰との間にある国
弁樂奴國：弁辰に従属している国

といった、「国号は分からないが」というのが多く記載されている。
ただ、それをそのまま国号としたというのもあるようである。ようは「周りからどう呼ばれていたか」なのでしょうね。
「弁辰彌離彌凍國（弁辰から遠く離れた寒い国）」「弁辰接塗國（弁辰と道が接している国）」などとあるように、何故か「弁辰」が説明の基本になっている場所も多い。また、大変に曖昧な国名で書かれているようなので、直接訪れた人がおらず弁辰で聞いた話で書いているように思える。
12国あるはずなのに10国しかないのは、そのほとんどが編纂者に伝えたの人も伝聞で聞いただけだからなのだとは思う。

【弁辰の国】

残る部分

軍彌國〈弁軍彌國〉弁辰彌烏邪馬國如湛國弁辰甘路國戶路國州鮮國（馬延國）弁辰狗邪國弁辰走漕馬國弁辰安邪國〈馬延國〉弁辰瀆盧國斯盧國優由國

が『弁辰の国』だろう。

軍彌國〈弁軍彌國〉：軍力を持つ国（弁辰の軍力を持つ国）
弁辰彌烏邪馬國：弁辰の鳥葬文化を持つ国
如湛國：精神的に満ち足りた国
弁辰甘路國：弁辰で農作が発展している国
戶路國：狭い場所が多い国
州鮮國（馬延國）：騎馬を使っている国
弁辰狗邪國：弁辰の他国と交易してる国
弁辰走漕馬國：弁辰の海運をしている国
弁辰安邪國〈馬延國〉：騎馬を使っている国
弁辰瀆盧國：倭と隣接している国
斯盧國：民信がある国
優由國：起点になるとてもいい国

書いてあるのは、この「弁辰の12国」だけではないだろうか？

【それぞれの国の位置】

この国の位置だが、単純に辰韓の北側から弁辰の南までを、北からルート順に並んでいるようである。
辰韓の国としてある

弁辰彌離彌凍國（弁辰から遠く離れた寒い国）
難彌離彌凍國（ますます離れ寒い国）
弁辰古資彌凍國（昔の弁辰のような風習の寒い国）

など、寒さを強調していた国としても合う。
また、韓伝にある「弁辰狗邪國」と、倭人伝にある「狗邪韓國」はたぶん別の場所を示している。
この「狗邪」は「他国（邪＝倭）と貿易をしている土地」という意味だとは思う。

【辰韓諸国】

辰韓のそれぞれの国の位置を凡そでプロットすると、こうなる。

これで判るのだが『弁辰半路國』は、弁辰に向かう時に使う国、つまり半島の東海岸沿いで南への行路がある国だったと思われる。
その位置当たりに辿り着くとなると、経路はたぶん、この辺り。

西側が馬韓で、東側が辰韓になる。

【弁辰諸国】

弁辰のそれぞれの国の位置を凡そでプロットすると、こうなる。

これも単純に北側から順番に挙げているだけだと思われる。

ただ、ほとんどの「国」が『弁辰』を基準にしている。これは、ここらが元は『弁辰』の地域、つまり先住民としていた縄文系民族が居た土地だったのではないだろうか？
「倭」地域だった場所に馬韓が秦の苦役から逃げた辰韓人を押し込んだという事で、

倭人が殆ど居なかった移住（逃亡）者がほとんどの場所が「辰韓」
元々いた倭の中に受け入れられ一緒に住んだのが「弁辰」

というだけではないだろうか？

そもそも論になるのだが、この朝鮮半島の東海岸側では南から北まで、縄文系民族の痕跡が存在している場所である。

そこに後から、濊貊系が入ってきている場所になっている。
辰韓の国の名前で「弁辰〇〇」と付くのも、元はその地に住んでいたのは倭の文化を持つ民族系がいたからでしょうね。

【馬韓】

魏志東夷伝の韓条に書かれていますが、実際を言うと馬韓についてが最も詳しく書いています。
これには理由がきちんとあります。

【魏志東夷伝韓条】

韓条のなかで辰韓などは「東に送った」という程度ですが、馬韓は詳しく書かれています。
これは、馬韓というのは楽浪郡の臣従するなど、「中国の周辺地域の1つ」となっているからでしょうね。

韓在帶方之南東西以海爲限南與倭接方可四千里
有三種一曰馬韓二曰辰韓三曰弁韓
辰韓者古之辰国真番旁衆国也
馬韓在西其民土著種植知蠶桑作綿布各有長帥大者自名爲臣智其次爲邑借散在山海間無城郭
有爰襄國牟水國桑外國小石索國大石索國優休牟涿國臣濆沽國伯濟國速盧不斯國日華國古誕者國古離國怒藍國月支國咨離牟盧國素謂乾國古爰國莫盧國卑離國占離卑國臣釁國支侵國狗盧國卑彌國監奚卑離國古蒲國致利鞠國冉路國兒林國駟盧國內卑離國感奚國萬盧國辟卑離國臼斯烏旦國一離國不彌國支半國狗素國捷盧國牟盧卑離國臣蘇塗國莫盧國古臘國臨素半國臣雲新國如來卑離國楚山塗卑離國一難國狗奚國不雲國不斯濆邪國爰池國乾馬國楚離國凡五十餘國
大國萬餘家小國數千家總十餘萬戶
辰王治月支國臣智或加優呼
臣雲遣支報安邪踧支濆臣離兒不例狗邪秦支廉之號其官有魏率善邑君歸義侯中郎將都尉伯長
侯准既僭號稱王爲燕亡人衛滿所攻奪《魏略》曰：昔箕子之後朝鮮侯，見周衰，燕自尊爲王，欲東略地，朝鮮侯亦自稱爲王，欲興兵逆擊燕以尊周室。其大夫禮諫之，乃止。使禮西說燕，燕止之，不攻。後子孫稍驕虐，燕乃遣將秦開攻其西方，取地二千餘里，至滿番汗爲界，朝鮮遂弱。及秦並天下，使蒙恬築長城，到遼東。時朝鮮王否立，畏秦襲之，略服屬秦，不肯朝會。否死，其子准立。二十餘年而陳、項起，天下亂，燕、齊、趙民愁苦，稍稍亡往准，准乃置之於西方。及漢以盧綰爲燕王，朝鮮與燕界於浿水。及綰反，入匈奴，燕人衛滿亡命，爲胡服，東度浿水，詣准降，說准求居西界，（故）中國亡命爲朝鮮籓屏。准信寵之，拜爲博士，賜以圭，封之百里，令守西邊。滿誘亡黨，衆稍多，乃詐遣人告准，言漢兵十道至，求入宿衛，遂還攻准。准與滿戰，不敵也。將其左右宮人走入海，居韓地，自號韓王。〈《魏略》曰：其子及親留在國者，因冒姓韓氏。准王海中，不與朝鮮相往來。〉其後絕滅，今韓人猶有奉其祭祀者。漢時屬樂浪郡，四時朝謁。《魏略》曰：初，右渠未破時，朝鮮相曆谿卿以諫右渠不用，東之辰國，時民隨出居者二千餘戶，亦與朝鮮貢蕃不相往來。至王莽地皇時，廉斯鑡爲辰韓右渠帥，聞樂浪土地美，人民饒樂，亡欲來降。出其邑落，見田中驅雀男子一人，其語非韓人。問之，男子曰：「我等漢人，名戶來，我等輩千五百人伐材木，爲韓所擊得，皆斷髮爲奴，積三年矣。」鑡曰：「我當降漢樂浪，汝欲去不？」戶來曰：「可。」（辰）鑡因將戶來（來）出詣含資縣，縣言郡，郡即以鑡爲譯，從芩中乘大船入辰韓，逆取戶來。降伴輩尚得千人，其五百人已死。鑡時曉謂辰韓：「汝還五百人。若不者，樂浪當遣萬兵乘船來擊汝。」辰韓曰：「五百人已死，我當出贖直耳。」乃出辰韓萬五千人，弁韓布萬五千匹，鑡收取直還。郡表鑡功義，賜冠幘、田宅，子孫數世，至安帝延光四年時，故受復除。桓、靈之末，韓濊強盛，郡縣不能制，民多流入韓國。建安中，公孫康分屯有縣以南荒地爲帶方郡，遣公孫模、張敞等收集遺民，興兵伐韓濊，舊民稍出，是後倭韓遂屬帶方。景初中，明帝密遣帶方太守劉昕、樂浪太守鮮于嗣越海定二郡，諸韓國臣智加賜邑君印綬，其次與邑長。其俗好衣幘，下戶詣郡朝謁，皆假衣幘，自服印綬衣幘千有餘人。部從事吳林以樂浪本統韓國，分割辰韓八國以與樂浪，吏譯轉有異同，臣智激韓忿，攻帶方郡崎離營。時太守弓遵、樂浪太守劉茂興兵伐之，遵戰死，二郡遂滅韓。其俗少綱紀，國邑雖有主帥，邑落雜居，不能善相制禦。無跪拜之禮。居處作草屋土室，形如塚，其戶在上，舉家共在中，無長幼男女之別。其葬有槨無棺，不知乘牛馬，牛馬盡於送死。以瓔珠爲財寶，或以綴衣爲飾，或以縣頸垂耳，不以金銀錦繡爲珍。其人性強勇，魁頭露紒，如炅兵，衣布袍，足履革蹻蹋。其國中有所爲及官家使築城郭，諸年少勇健者，皆鑿脊皮，以大繩貫之，又以丈許木鍤之，通日嚾呼作力，不以爲痛，既以勸作，且以爲健。常以五月下種訖，祭鬼神，群聚歌舞，飲酒晝夜無休。其舞，數十人俱起相隨，踏地低昂，手足相應，節奏有似鐸舞。十月農功畢，亦復如之。信鬼神，國邑各立一人主祭天神，名之天君。又諸國各有別邑。名之爲蘇塗。立大木，縣鈴鼓，事鬼神。諸亡逃至其中，皆不還之，好作賊。其立蘇塗之義，有似浮屠，而所行善惡有異。其北方近郡諸國差曉禮俗，其遠處直如囚徒奴婢相聚。無他珍寶。禽獸草木略與中國同。出大栗，大如梨。又出細尾雞，其尾皆長五尺餘。其男子時時有文身。又有州胡在馬韓之西海中大島上，其人差短小，言語不與韓同，皆髡頭如鮮卑，但衣韋，好養牛及豬。其衣有上無下，略如裸勢。乘船往來，巿買韓中。

辰韓は本当にさらりと書かれているだけで、関心が薄い事が感じられます。これは、馬韓は楽浪郡などに臣従している周辺地域ですが、辰韓はその馬韓の支配下の地域だからでしょうね。
弁韓は辰韓よりは多いものの、やはり記述は少ないですが、これは次に「倭人条」があり、そこで詳しく書いているからでしょう。

【規律のない場所】

馬韓はなかなかに蛮族風だったようです。

其俗少綱紀國邑雖有主帥邑落雜居不能善相制禦無跪拜之禮

彼らの風紀規律が少なく、部族に有力者はいて雑居はしているが統制は取れていません。跪き礼拝する風習もありません。

という集団です。
ただ、これは「雑多な民族の場所」であり、それぞれがそれぞれの風習規律で動き、「馬韓」という大括りしたからだと思えますし、南下し馬韓に入って来たある民族は色々とトラブルを起こしたのか、東の地に送ります（それが辰韓です）。近隣同士でも風習などはかなり違っていたようで、雑多に民族が混じっていたようです。

【騎乗しなかった】

馬や牛についてはこう書かれています。

不知乘牛馬牛馬盡於送死

牛や馬の乗り方を知らず、葬式に使っていた

と書かれています。騎馬（直接に乗る）という事をしてなかった、というので鐙とかはなさそうですね。

【辰王】

辰王治月支國。

とあり、馬韓の首長となっている物が『辰王』と呼ばれた事が書かれている。

其十二國屬辰王。辰王常用馬韓人作之，世世相繼。辰王不得自立爲王。

12国が辰王の領地であり、辰王は馬韓人から出されており、自分たちで王となる事はできなかった。

とある。

【生活】

居處作草屋土室形如塚其戶在上舉家共在中無長幼男女之別

墓のような形をした茅葺きの土小屋に住んでおり、その小屋は上部に戸があり、その中に老若男女の区別なく家族全員が住んでます。

とあり、松菊里遺跡にある環濠集落である竪穴式住居が彼ら（馬韓の北部で主流だった扶余系民族）の文化ではない事も判る（ちなみに、日本では環濠集落を既に作っていた時代である）。また、この時代ではまだ「オンドル」も出来ていない。

たぶんだが、朝鮮時代でも一般的であった民間家屋の形態をもう少し原始的にした家のようなものですね。

ちなみにこれらの写真は「田舎だから」ではなく、1880年代の京城（現在のソウル）の南大門通り（中心通り）でも普通にあった家の形式です。

つまりだが、「松菊里遺跡にある環濠集落である竪穴式住居」は、中国からではなく、日本からの文化の伝達である可能性が高いのです。

【馬韓の位置】

そもそもの勘違いが、「韓が独立した勢力だった」と思う所なのではないかと思う。
すなわち、「韓は中国勢力下の属領や帰属国であり、大きな図ではその中に存在するのである」です。
これは『後漢書』にしっかり書かれており、

建武二十年韓人廉斯人苏馬諟等詣樂浪貢獻光武封苏馬諟為漢廉斯邑君使屬樂浪郡四時朝謁

とあります。
「建武二十年」とはAD44年。この時に韓を周辺国（属国）扱いから直轄地域（臣下）にしている。

靈帝末韓濊并盛郡

靈帝（在位168～189年）の終わりの頃というから、AD180年代だろうか、時代に韓と濊が活発になる。これは帯方郡が出来る前で、楽浪郡の管理地だがその後に帯方郡の湿地に韓濊が勝手に侵入するなど調子に乗る。それを征伐するために建てられたのが帯方郡である。AD160年の前には征伐も出されている。

縣不能制百姓苦亂多流亡入韓者

制御が出来ないので漢は征伐に乗り出し、そして再び組み込まれるのだが、百姓などは騒乱で生活が苦しくなり韓の奥へと逃げていく事になる。

これを見ると、主に反抗していたのは馬韓においても西側地域だと思われる。ここが直接統治になり、前燕の時代では前燕の領土となっている。

【州胡】

馬韓には州胡という部族が西に居た事が判っている。

又有州胡在馬韓之西海中大島上
其人差短小
言語不與韓同
皆髡頭如鮮卑但衣韋
好養牛及豬
其衣有上無下略如裸勢
乘船往來巿買韓中

「大きな島」とあるので、今の大連がある遼東半島の先っぽの地域だろうか？とも思うのだが、候補としてもう1つあるのが、そのもう少し北にある場所。

実はこのもう少し北にある場所は、遼東半島としては最古と言える遺物が出てきている場所、つまり先住民が住んでいる場所で、韓とは言語が違ったとも書いてある。
今は道路も繋がり、島の周囲や間には養殖場を作られているので繋がって見えるが、元々は（今でも）島の場所です。「交流島」という地名がある場所ですので、「船（小舟）を使って中国や韓（馬韓）の市に来ていた」と舟を使う文化を持っていたようです。

【狗邪国】

また、韓伝にある「弁辰狗邪国」と倭人伝にある「狗邪韓国」は別の場所を指しており、

朝鮮半島東岸と山陰地方との交易をしていた「弁辰狗邪国」
主に半島南部と九州西北部の交易をしていた「狗邪韓国」

の2つがあり、「狗邪」とは「邪馬（日本本土）」と交易をしていた土地、という意味なのだと思われる。
ただ、この交易はどちらにしろ「倭」と「倭」の、日本の地方同士の交易でしかない。

実は、馬韓でもある。

狗盧國
狗素國
狗奚國

である。
判りやすいのが「狗素國」で、これは中国の春秋時代の列国の一つ「斉」、つまり山東半島と交易をしていた土地のことです。
「狗奚國」は庫莫奚で、遼河の源流の方にある土地との交易です。
「狗盧國」は、「慮、すなわち河北省と交易をしていた土地になる。

國の名前だが、これは意味がある。
「弁辰狗邪国」⇒「弁辰-（狗＝やり取り＝交易）-邪（邪馬＝倭の大国の1つ）」國
である。
「狗邪韓国」は「（狗＝やり取り＝交易）-邪（邪馬＝倭の大国の1つ）と韓（馬韓）」
と、交易中継地になっている場所を示している。この「韓」だが、これが現在の平壌にある国境関を指していると思われる。

【狗邪韓国の本当の位置】

海流を考えると『狗邪韓国』が『釜山』周辺であることありえない（人力船では対馬に辿り着くのはほぼ不可能）のだが、では何処かと言うと、『晋州』かさらにそれより西の地域の可能性が高い。
この地点からなら海流に逆らわず斜めに横切る形で対馬に辿り着ける可能性が高くなる。
実際、晋州では、多くの弥生時代の遺物が見つかっている。たぶんだが、探せば縄文時代の遺物も大量に見つかってくるだろう。この位置からは、朝鮮半島から日本に行く場合の起点になるのだが、日本から朝鮮半島の着点にはならない。日本から朝鮮半島の場合は、五島列島あたりから北上をすれば海流に流されて釜山辺り（金官国 = 瀆盧國）に辿り着く。

つまり、中国側から日本に行くルートと、日本側から中国に行くルートは微妙に違う。

ちなみに、済州島から五島列島というルートが可能かも実証試験を複数回行われたが、対馬海流を人力で直角に横切るのも難しい流れのようであり、全て失敗している。

ようは、

「狗邪韓国」は「倭（日本）」へ向かう輸出港
「金官国」は「倭（日本）」からやってくる輸入港

という構成である。

【環濠集落】

『弁辰』の説明は以下になる。

有城栅屋室
諸小别邑各有渠帥大者名臣智次有儉側次有樊秖次有殺奚次有邑借
土地肥美宜五谷知蠶桑作缣布乘驾牛馬嫁娶以礼行者讓路
國出鐵濊倭馬韓并从市之凡諸貿易皆以鐵為貨
俗喜歌舞飲酒鼓瑟
兒生欲令其頭扁皆押之以石
弁辰與辰韓雜居城郭衣服皆同語言風俗有異
其人形皆長大美发衣服洁清而刑法严峻其國近倭故颇有文身者

ここで、「兒生欲令其頭扁皆押之以石」とある変形頭蓋骨は、日本の九州南部と朝鮮半島の南部で見られるものであるが、それ以外にも「辰韓ではなく弁辰の事を書いている」と考えられる部分がある。それは「有城栅屋室」という文章で、ようは環濠集落の事です。この環濠集落も、日本全域と朝鮮半島の南部に見られる弥生時代の形式であり、日本の方が古くからあり、日本から朝鮮に伝わったものと考えられる文化です。この環濠集落の分布は下図になります。

これが中国北方などから来ているなら、北朝鮮や遼東半島、遼寧地方や朝鮮東海岸などにないとおかしいのだが、発掘されていない。

環濠集落自体が紀元前からのものなのだが、発見されている場所は全て倭の場所なのだる。

【雑居】

よく「弁辰と辰韓は雑居していた」となっていますが、これは「弁辰の中に住んでいる辰韓人」について説明していると考える方が合っていると思う。

弁辰與辰韓雜居城郭衣服皆同語言風俗有異。

「弁辰の中に住んでいる辰韓人」は、「（弁辰が作っている）環濠集落の中に一緒に住んで」おり、「服装も同じ」だが、「言葉や風習は異なっていた」という意味が書かれているのだと思います（つまり、別民族だからと劣悪なスラムのような場所に押し込めていたわけではなく、倭系民族は辰韓人に衣食住を支援していた、という事です）。
ますます、弁辰だけでなく、辰韓も「倭」の土地だったところに、辰韓が押しかけて来た感じですね。
倭は譲り合いがあり、逃れてきたと言う人も受け入れて一緒に暮らしていたのでしょう。
ここで大事なのが「弁辰與辰韓」と、「與」という文字である事です。この文字は「与える」という意味ですので、この土地の主体が「弁辰」であり、移民である「辰韓」を受け入れていた、という意味になります。

【牛馬の使用】

乘驾牛馬

これを「牛や馬に乗っていた」と訳しているものが多いですが、これは訳し間違いです。
古代史で見れば、遼寧省の内モンゴル自治区にある夏家店下層文化（紀元前2000～1500年頃）で牛が使われ始めている形跡があります。また、馬に関してはやはり内モンゴル自治区の夏家店上層文化（紀元前1100～500年頃）で、馬具や銅製車具も多く出土しています。ここは東胡の南下と同地の征服によって成立した文化で、同時代の西周の影響も受けている文化です。これらの部族が匈奴として征伐され、組み込まれますが、そこから逃げて南下し、朝鮮地域（平壌周辺）を越えて南下した部族が倭の領域（後の馬韓や百済の地域）に定住していた部族からの文化伝達でしょう。
「乘驾牛馬」を「牛や馬に乗っていた」と訳しているのをよく見かけますが、これは訳し間違いです。「乘驾」は古代中国語だと「農具などに家畜につけ、引っ張る」という意味になり、「乘驾牛馬」は「農業に牛や馬を利用していた」という事が書かれています。

「乗馬」は、倭は以前から馬韓や百済など（それ以前からも）と交流をしていますが、百済を391年に倭が百済を下し従属させており、この交流で手に入れた文化だと思われる。日本の在来馬が蒙古系家畜馬を起源にしているというのと、導入したのが古墳時代という事。また馬の埴輪が古墳時代前期（3世紀後半）から出土するようになっており、大体合っているかとは思う。
また、牛については五島や壱岐で2200～2300年前（BC2～3世紀）に牛の歯が見つかっているので、馬よりかなり古いです。
『魏志倭人伝』では

其地無牛馬虎豹羊鵲

その地には、牛・馬・虎・豹・羊・鵲はいない。

と書かれているが、少なくとも牛は『魏志倭人伝』が書かれているAD3世紀よりも500年ほど前には既に日本には存在して利用しています。中国からの使者が来て見て伝えた範囲では見つからなかっただけなのである。

【金印など】

漢時代は、皇帝が諸侯に与えるものが「金印」で、周辺異民族の王には「銅印」が多かった。

金印は周囲国の諸王・諸侯に贈られ、
- BC109年の雲南「滇王之印」の金印
- AD57年の「漢委奴国王」
- AD239年の卑弥呼は「親魏倭王」の金印
金印でも1つ下が「候」で、これは中国に基準した王国に与えられています。
- チベット系の氐族（テイ族）首領に下賜された「魏帰義氐侯」の金印
- 西晋「晉帰義叟王」の金印

委奴王は諸王並みに遇されている（当然ながら「候」より「王」の方が遇されます）。特に卑弥呼に贈られているのは「親魏」であり、倭人の國は魏として大変に優遇した位置にあるのが判る。

それより下、周辺国だと銀印や銅印になる。

銀印の事例だと、以下の物がある。
- 海南省「朱廬執刲」銀印
- 倭使節大使は「魏率善中郎将」銀印
- 倭次使は「魏率善校尉」銀印

ここで倭の使者に贈られたのは「銀印青綬」であるというので、特別な印になる。二千石には皇帝の許可なく逮捕できない特権や、兄弟や子を郎に就けることができる任子などの特権があった地位であり、比二千石以上の官が持つ印綬が「銀印青綬」となる。「魏率善中郎将」銀印は「宮城護衛の武官の長」という官職、「魏率善校尉」は「軍事や皇帝の護衛をつかさどる官」という官職であり、高位の官職である。この「二千石」というと、楽浪郡などの郡太守と同じ給与であり、2000石（穀物200トンに相当）の官吏の場合、年金額はその年俸の1/3 になります。

銅印の事例だと、以下の物がある。
- 匈奴王「漢匈奴悪適尸逐王」印は銅印
- 朝鮮半島慶州でAD3世紀頃に「魏率善韓佰長」銅印で、弁韓の豪族の首長が官爵を受けている（「魏として韓を良く管理しているので佰長と認める」です）。
- 朝鮮半島浦項市でAD4～5世紀になる「晉率善穢佰長」銅印で、やはり弁韓の豪族の首長が官爵を受けている（「晋として濊を良く管理しているので佰長と認める」です）。

字面を見る限り、韓（辰韓）や濊からの移住者が多い場所だったのでしょう。これは三国志東夷伝韓条にも「弁辰與辰韓雜居（弁辰は、辰韓が一緒に住むことを許していた）」という文に整合しますね（ここで大事なのは「與」の文字が使われている事で、主体は「弁辰」にあり、その「弁辰」が「辰韓」が住むことを許していた（与えていた）という意味になります）。つまり、この朝鮮半島で見つかった銅印は、倭人の邑長に贈られたものであるという事です。

変わったところに琥珀印がある。
- 海南島対岸の「労邑執刲」琥珀印

琥珀印と銅印の方がどちらが上かは分からないが、文字を見ると優秀成績な官僚に琥珀印を渡したのかもしれませんね。

ちなみに、辰王の官は「率善佰長」である。これは「魏率善韓佰長」銅印・「晉率善穢佰長」銅印と同じで、一番下の官位である。
魏の時代だと「率善邑君」「率善邑長」「率善尉」「率善都尉」「率善佰長」という六官で構成されており、魏の時代だと積極的に邑に与えていたようである（これが、三国志東夷伝韓条で、國名が書かれていた理由ですね）。

【南下はいつ頃？】

問題となるのは、半島南部まで百済や新羅（辰韓）がいつ南に下りて来たか、です。
4世紀辺りまでは、この「韓は遼東半島あたりにあった」という方が様々な資料と整合がとれます。
ですが、6世紀の朝鮮半島での情勢の動きが大きかったのも事実です（6世紀頃に百済に土地を割譲したなどは事実ですし、新羅が拡大したのも事実です）。

朝鮮半島、特に半島南側で今の韓国の範囲は、他の民族も入ってきているが、AD400年ぐらいまでは倭の領土のみだったのである。

【百済】

百済は宋書に

百濟國本與高驪俱在遼東之東千餘里其後高驪略有遼東百濟略有遼西百濟所治謂之晉平郡晉平縣。

と東夷の中の1国として書かれており、元々は高句麗と一緒で今の中国吉林省かそれより北ぐらいにあたりにあった民族で、モンゴル系と思えばいい遊牧民族です。
宋書は南朝宋が滅亡（479年）して間もない、まだ多くの関係者が存命の時代に編纂されたために同時代資料を多く収録しており、資料的価値は高い史料です。

【百済建国】

AD313年に国号を「百済」としたと言われるが、本当か分からない（たぶん『三国史記』による創作。というのも、AD313年だとまだ『百済』が存在しない）。
歴史を見ると、どうも3つの百済があり、全て燕に関係してくる。

【燕の変遷】

元は高句麗と同じような場所にあった百済が、なぜ遼東半島から遼西省に拠点を定めたのか判りませんが、拠点は島が沢山ある場所なので遼東半島の南岸の西側で、船も利用していたようです。位置と時代や北魏・高句麗との戦いから、どうも『前燕』や『後燕』のことである。そのため、支配層の民族は鮮卑族になる。

416年には百済王と宋に認められ遼西省あたりを領土にしているとある。
こちらも位置と時代と北魏・高句麗との戦いとの攻防から、これはどうも『北燕』の事で、これは北魏への牽制だと思われる。北燕は前燕・後燕と違い、後燕の中衛将軍馮跋が407年7月に主君であった皇帝慕容熙を殺害して後燕を滅ぼし、そして馮跋は後燕の第2代皇帝慕容宝の養子慕容雲を新たな皇帝（天王）に擁立して自らは実権を掌握している。これが北燕の建国といわれるが、慕容雲は高句麗人の後裔で、天王に即位してからは姓を高氏に戻している。

『百済』は「前燕」の2つと「北燕」の1つがどうもある。
「前燕」の成立頃が西晋国内では永嘉の乱が激化していた頃であり、311年6月に洛陽が陥落して西晋が実質的に滅亡すると、漢族には流民として遼東に逃げる者も多く、前燕は流民の受け入れに積極的に対処して中原文化の導入、農耕技術の進展、人材の確保などを行っている。しかし、『唐会要』百済伝に「仇台は高句麗に国を破られ、百家で海を済（渡）る。故に百済と号する。」とある。高句麗とは「前燕」「後燕」では敵対的（高句麗と対戦し、339年9月の侵略を手始めに、342年には攻勢をかけて高句麗の首都の国内城（現在の吉林省集安市）を破壊して故国原王の母と妻を捕縛する大戦果を挙げたため、343年に高句麗は前燕に服属した）だが、「北燕」では改善され比較的だが友好的である。
この342年に高句麗は首都を吉林省の南端、鴨緑江の上流に移しており、この時点で遼東半島の南側の多くは高句麗の実質的領土になっていたと考えられる。

【倭に入って来た『百済』】

「百済」は船で南に移動しており、倭の領域に入っていたようです。船の利用は、たぶんですが平壌にあった国境関があり慣れた航路だったからでしょう。
国境関より南については初めは他国の領地と知らなかったようです（前燕の拠点は渤海沿岸で、遼東半島西部を拠点としたのも古い時代ではなくAD280年代ぐらいからと新しい）が、年代からすると「百済」は2回に分けてきており、

初めの『百済」は『前燕』で慕容仁に付いていった人達によるものと考えられる。336年で内紛で慕容仁が破れ、「慕容幼・慕容稚・冬寿・郭充・翟楷・龐鑒はみな東へ逃走した」というので、その拠点とした平郭の民やその周辺が東（朝鮮半島）にと逃げたのが最初の『百済』でしょう。（慕容仁にまつわる内容は、慕容仁を「百済王」と設定し、戦った相手を纏めて高句麗にと歪曲し、年を合わせるとAD4世紀の百済と高句麗の争いに似たような形に創作できます）。

彼らについては「神功44年（364年）に百済王は、卓淳旱岐のもとへ日本へ渡る道を知っているか三人の使者を送った」とあり、「神功46年（366年）に斯摩宿禰を卓淳國に遣す。百済との交流が始まる」という記録がありますので、それまでに朝鮮半島に入って来たという事です。それと同時に、それまで倭を知らなかったという事でもあり、百済が朝鮮半島に元々は無かったという事でもある。

彼らは国境関の富も接収して、かなり裕福だったかとは思います。
たぶんですが、今のソウル近郊あたりで定住していた、古墳を作った豪族とその前ほどに接触したのでしょう。この当時の第一の百済の領域は、この古墳の北側までと予想されます。

慕容仁に慕う人々が遼東半島の南を東に、そして鴨緑江や清川江も越えて南に移動したために、渤海西沿岸から遼東半島に掛けては半ば空白地帯が出来る。
そこを高句麗が掠め取るように侵入し実効支配し始めている動きです。342年までに鴨緑江には到達していたようで（たぶんだが清川江あたりまで）、鴨緑江の内陸部（現在の吉林省南部）に国内城を建てています。
307年に建国した前燕は遼東の支配権を得ようと侵出し、楽浪をめぐって高句麗と争うことになります。313年に太守の帰順を受け入れ遼東を領有した前燕は、その後も高句麗とたびたび戦闘を繰り返し、高句麗は大敗を喫しています。その為、高句麗は王都（襄平）を捨てます。しかし、遼東半島に入った高句麗は339年9月でも前燕の攻撃を受けており、342年には建てたばかりの高句麗の首都の国内城を破壊して故国原王の母と妻を捕縛しており、343年に高句麗は前燕に服属しています。その為、更に逃げた人たちを追いかけるような動きが止まります。ところが、前燕とそれに続く後燕は内部で抗争が続いています。407年に高句麗の下に置かれていますが、この年と言うと後燕滅亡の年であり、北燕が成立した年でもある。北燕の皇帝となった慕容雲は養子で高句麗人の後裔であり、高句麗を味方にする代わりに領土の割譲をしたのだろう。

韓国では何故かこの国内城をAD3年などと書いているのも見られており、また日本版wikiでも書き換えられていますが、遺跡は早くて4世紀、周辺は5～6世紀という遺構です。

第一の百済は、AD391年に日本に従属します。これは、高句麗の南下による圧力が大きな要因となったのでしょうが、ようは「百済は日本の地方国家あるいは属国になった」という事です。また、その際には百済の要望により、遠すぎて人もあまりおらず管理も難しい朝鮮半島中央部を百済に割譲します。

しかし、高句麗の南下を止められず、百済はAD399年に対高句麗で倭の中央政権に協力を求めます。それでも70年ぐらい掛けて、じりじりと百済の北境界は南に下がってきます。ほとんど高句麗と陸路での付き合いがない倭が、好開土王碑に載っているのは、倭の勢力が手強かったので調べたからなのでしょう。
その後、AD660年の百済滅亡まで、日本と百済の関係は続きます。

【辰韓に入った百済】

2つ目も『前燕』の百済ではある。
「2つ目の『百済』」となりえるのは幾つかあるのだが、AC400年に新羅（当時は新盧）が「金城を倭に占領されたのでと高句麗に討伐懇願をした」のは、この話があり、これが361年の事なのでその前だと思われる。
すると当てはまるのは慕輿根の謀殺未遂であり、移動したのは慕輿根が大人（部族長）をしていた榼盧城（現在の河北省秦皇島市撫寧区の東）の部族やその周辺だと思われる。

「新盧」と考えられるところは濊貊（濊や東沃沮）に接する所で、高句麗が支配下に置いたいた地域である。『唐会要』百済伝に「仇台は高句麗に国を破られ、百家で海を済（渡）る。故に百済と号する。」とあるのがこれで、また『隋書』にある「その王は百済人で、自ら海に逃れ、新羅に進入し、遂にその国の王となった」に繋がるのだと思われる。先に朝鮮半島に渡った百済人（慕容仁に慕う人々）とは対立する関係ですから、南ではなくそのまま東に進み辰韓に入ったものと思われます。
この「濊貊」や「百済」の話が、辰韓の「新盧国」と慶州北道の「弁辰」にあった『斯盧國』を混同させ、何故か「倭」に置き換わっているようである。

辰韓の「新盧国」が百済に征服されたのは361年。
そして399年に高句麗に新盧国奪還を懇願します。それで5万騎の高句麗兵が派遣されます（第二の百済に占領されていた辰韓は高句麗に平定されたのでしょう）。

また、その場合は東海岸にある辰韓から西に来る場所が高句麗になっていたのでしょう。これが396年に高句麗が南下した際に占領され、第一の百済はさらに南に移動します。ようは、「第一の百済」と「第二の百済」が別の国だと辰韓人（新盧人）は分からなかったので、396年になるまで東に行けなかったのでしょう。

【宋による『百済』】

ところが、この前燕遺民・後燕遺民が『百済王』を名乗ったので、宋が北燕の王を『百済王』と認めたので、3つの『百済』があるのかと思います。
ただ、北燕も滅び、436年に馮跋は高句麗により処刑されている。

【新羅】

そうなると問題は……

『新羅』ってなんなの？

です。6世紀初頭頃には範囲を精げるのは、新羅の碑石で判りますが、それ以前が余り判りません。
その頃の発祥地になるのが、弁辰の「斯盧國」というのは、確かなようです。
でも、どうやらそれは『三国史記』にある『新羅』とは異なるようです。

【高句麗】

高句麗はAD56年に東沃沮を支配下に置いている。
AD246年に魏に負けた際にはこの東沃沮の方まで逃れ、それからAD247年に再出発して故地を取り戻す。
この際に東沃沮に残った者もいて、その者が新羅（南史「三国魏の時代には新盧と称した。宋の時代には新羅あるいは斯羅と称した」とある）になる。

考えるに、「不斯國（辰韓の最北端の国）」を「新盧国（新しい国）」と名乗ったと言うものである。その拠点とした「金城」とは、元々は北朝鮮咸鏡南道の端川市あたりかもしれません。これは記載されており、「靺鞨の侵入」というのが2世紀前半にはよく出てくる。「靺鞨」とはツングース系民族で黒龍江あたりにいた民族の事である。
つまり、弁辰の「斯盧國」はまったく関係がない。

『北史』『南史』で「故楽浪郡に属していた」と書かれているのも間違いではなく、BC108年頃は東海岸の辰韓や濊貊は楽浪郡に属している（すぐに玄菟郡を置かれるので一瞬だが）。「新盧国」と称したのは342年頃なので、中国で言う晋代である。
この頃は小国で他国に使者も送れなかったとある。

【百済】

『隋書』には「その王は百済人で、自ら海に逃れ、新羅に進入し、遂にその国の王となった」とある。
これを考えると、高句麗が南下するに合わせ南と東に逃げたうち、東に逃げて北東に行き、「新盧国」を飲み込んでしまったのが、朝鮮東海岸にあった新羅の祖先となる。

その後、399年の新盧人が懇願し、400年の高句麗兵5万騎のが派遣され、辰韓は高句麗に呑まれたのだと思われる。

その後、高句麗は南下してきているようだ。

そもそもなのだけれど、「高句麗五万騎」を、朝鮮半島でも最も遠い位置にある南東部端の慶州北道の「弁辰」にあった『斯盧國』に行くルートがありません。また、その5万騎もその後が分からず（そして南東部端の慶州北道の「弁辰」にあった『斯盧國』はその後も健在であり）、その5万騎は「新羅が裏切り滅ぼした」とも言われるが、その記録もない。単純に、辰韓を丸ごと平らげて帰属させたのだと考えれば、「その後」は必要ないのである。

【新羅の碑石】

6世紀、つまり503年以降であれば新羅が半島南東部にあった事は事実です。
しかし、多くでは新羅は過剰に装飾されて領土を書かれている。また、国号を「新羅」とするのは504年の事です。
実際は、新羅が残している碑石からも判るが、6世紀初期から出てくるものであり、その北側まで高句麗に占領されていたのも判る。
これについてはこちらに記載しています。
また、朝鮮東海岸にあった「辰韓」の『新盧国』は関係がない。
他にも真興王拓境碑などがあり、この新羅の碑石は、当時の新羅の領土拡大の状況を示している。まぁ、新羅と言うのが移民である事も『魏略』に書かれていますし、その後を見ても、他民族や他国に寄生し、その後に他の国や民族と裏で通じ、自分たちの力ではなく他人の力で弱らせたりした上で略奪・簒奪を行ってきたろくでもない歴史なのだというのが分かる。

【新羅とは？】

これは、名前が似ているので混ぜて創作捏造したのが『三国史記』だと思われる。
すなわち、

朝鮮東海岸にある「辰韓」の『新盧国』
慶州北道の「弁辰」にあった『斯盧國』

名前が似ているので、『斯盧國（慶州北道）』を『新盧国』発祥の地として話を混ぜたのが『三国史記』の新羅伝と思われる。
必要なのは、朝鮮半島の東部中域の歴史ではないだろうか。

ただ、

朝鮮東海岸にある「辰韓」の『新盧国』

の方は、高句麗に5世紀で滅ぼされているのでは？とも思う。
また、『三国史記』の内容は、2つの場所の話をブレンドして作っているので、どこがどちらの歴史の話か？というのを考えなくてはいけないと思う。

【混乱の原因】

色々な史料の中で、「朝鮮半島説」という混乱を招いているのは『三国史記』『三国遺事』という、高麗で12・13世紀に書かれた書物のせいですね。他でも

朝鮮東海岸にある「辰韓」の『新盧国』
慶州北道の「弁辰」にあった『斯盧國』

を混同しているようです。
濊貊に残った高句麗人が国を作った（『新盧国』）とあるのに、大伽耶の属国だった（『斯盧國』）とも書かれていたりもする。
この内容を考慮して考えると、整合性が取れます。

『三国史記』も全てが出鱈目と言うのではなく、「なにかモデルにした内容」があると思います（神話などと一緒）。
位置などを除けば、楽浪郡や帯方郡、高句麗・馬韓・百済などの話は合いますし、それをモデルに朝鮮半島に持ってきて無理矢理当て嵌めた物だとは思います。
ただ、中国史料の方に楽浪郡などの位置が遼東としっかりと書かれているので、楽浪朝鮮半島説は出鱈目と判るわけですね。あとは、新羅に関しては盛りに盛って創作している感じです。また、人質を出す話などは慶州北道の「弁辰」にあった『斯盧國』の話になるのだが、これを「新羅」として纏めてしまっているなどが混乱の大きな要因になっている。

【問題点】

この流れだと、『新羅』は縄文人の集落に漢から逃げて来た辰韓人を受け入れ、時間と共に混血して作られた国、という所ですね。
特に精神性（考え方）が大陸に毒されている感じです。

【新羅征伐】

混乱の要因としてあるのが、朝鮮東海岸方面の辰韓の「新盧国』では「第二の百済」や「濊貊」による騒動と同じような時期に、朝鮮半島の南側の慶州北道の「弁辰」にあった『斯盧國』でも倭との騒動があったからだとは思う。これを、名前が似ているから間違えたのだろう。

「三韓征伐」とあるが、主に新羅（斯盧國あるいは斯盧國とその周辺地域）征伐である。

これは、斯盧國とその周辺地域というのは、交易の関係から九州との関係が深く、九州豪族と同じくヤマト政権中央に反発する倭の地方勢力だったのだろう。

度重なる反発を行う中央政権に対する国内地方勢力の征伐が行われたもの、と考えるとしっくりとくる。その後、ヤマト政権に従属するが、反発の芽は燻っていたと考えられる。
百済も征伐に入っているが、これは、391年の百済従属に反発する百済内勢力の征伐だろう。百済自体はその前後でヤマト政権に様々な朝貢をしている。

ヤマト政権に従属はしていても、これに512年と513年にとヤマト政権が任那地方政権郡に何も言わずに任那を百済に割譲するのに、朝鮮半島南部の倭地方勢力は反発する。ヤマト政権から遠い斯盧國で再び独立活動が始まり、「斯盧國」から「新羅」に国号を変える（504年）。再度、ヤマト政権は征伐しようとするが、呼応して九州地方勢力も反乱を起こし、朝鮮半島征伐が出来ずに勢力を拡大したのが「新羅」ではないだろうか？
これに対して九州地方勢力の誤算は、他の任那地域も併呑した「新羅」が独立を宣言し、九州勢力とも敵対的になった事なのだとは思う。任那復興の会議は持たれたが、九州勢力との溝が埋まらなかったので、半島は残った百済に任せる事になったのだろう。

『三国史記』を用いると、途端に無茶苦茶になりますので、それを整理して

朝鮮東海岸にある「辰韓」の『新盧国』
慶州北道の「弁辰」にあった『斯盧國』

どちらの事かはこちらで検討しています。

【高句麗】

AD400年頃から、高句麗の朝鮮半島南下侵略が始まる。

AD475年頃だと、朝鮮半島の南1/4を除くと高句麗の領土になっています。

4番目の遷都である平壌城＝清岩里城は427年であり、この前で現在の平壌辺りを高句麗の領土としています。

【好大王碑】

歴史を見直してプロットして気付きましたが……好太王、大したことはしてません。

342年に前燕が高句麗を征服・従属させていたが、前燕の内紛での弱体化・辺境監視の弱さを機に活動再開。
慕容仁に慕う人々が朝鮮半島に逃げたのを最追撃（前燕の民だが、弱体化している）
百済の救援要請により倭が参戦し、南下停滞
朝鮮東海岸にある「辰韓」の『新盧国』が、慕輿根派の前燕民に占領され、その救援要請がされて派遣したが苦戦
後燕の内乱と分裂に乗じて、城を掠め取る
407年に北燕に正式に遼東半島地域の領地を割譲され（342年～406年までは高句麗は前燕・後燕・北燕の属国の立場である）独立を宣言

というのを、格好よく盛って好大王碑に書かれているだけである。

まぁ、どうみても「高句麗」というのは、中国は遼東から東にかけての歴史で、韓国人の祖先には関係がありません。
「前燕と楽浪郡を取り合った」とあるように、楽浪郡が朝鮮半島の今の平壌辺りにあるというのは成立しません。

【6世紀の変遷】

6世紀は比較的よく分かっている。

503年	冷水里碑
まだ国号を『新羅』とする前の、新羅最古の碑。
504年	国号を『新羅』とする。

512年	百済の要望により、ヤマト政権は任那の西部4郡を割譲。
ヤマト政権から管理者を派遣していた直轄地。
513年	さらに百済の要望により、ヤマト政権は任那の西部2郡を割譲。

524年	鳳坪碑
「元は高句麗の領土であった」とあるように、524年の少し前まではこの辺りまで高句麗の支配下にあった属領だった判る。
525年	川前里書石
「王が初めて谷を見た」とあるように、新しい領土であり、その少し前までは倭（大伽耶）の領土だったのである。川前里刻石自体はそれ以前（推定は青銅器時代）から存在し、時代を考えると倭の領域時代に作られたもので、それに新羅人が落書をしたというものである。
532年	新羅が金官国（金冠伽耶）を占領する。

545年	赤城碑
高句麗の領土出会った場所を簒奪した後の碑で、「新羅に忠誠を誓えば報償を与える」という事が書かれている。新羅が竹嶺を越え、丹陽一帯の高句麗領土を占有して国境を拡張し、ここの百姓を宣撫（国民や占領地住民に本国の施策を理解させ、民心を安定させること）した標石として立てたもの。真興王が命じ、新羅の拓境（国境開拓）を助け、忠誠を捧げた赤城人の也而次の勲功を表彰すると同時に、将来、新羅に忠誠を捧げる人には同様の褒賞を下すという国家政策の布告内容が記されている。
551年	百済と新羅が同盟し、高句麗を攻撃し漢江周囲まで押し戻し、漢城（今のソウル）を百済領地とする。
占拠した地を考えると、正面から戦っていたのは百済戦力。
553年	新羅が百済を攻める。
新羅が裏切り、百済を救援するとして漢江下流域に入り、高句麗との戦いで疲弊した百済を攻撃して漢江域6郡をも占拠する。西海岸を初めて手に入れた新羅は中国（唐）に連絡し、高句麗や百済を攻める事を唆す。
561年	昌寧碑
伽耶滅亡の前年に伽耶を攻める事を鼓舞するために建てたものらしい。
562年	新羅は大伽耶を滅亡させる。

568年	北漢山碑
漢城（ソウル）地域を百済から簒奪した後に立てている碑。歴史を見ると「高句麗に対抗するために百済と新羅が協力しあう」⇒「百済は漢城地域を取り戻す」⇒「疲弊した百済を新羅が裏切り、百済から漢城地域を簒奪する」という順番なのに、何故か「百済は高句麗だけでなく新羅とも対立する事になった」と書かれている説明が多いのが解せない。これ、百済ではなく明らかに同盟を裏切った新羅が悪く、「新羅は高句麗だけでなく百済とも対立する事になった」と書くべきだと思う。
586年	高句麗が首都を移転し、現在の北朝鮮の平壌に。
韓国や今の解説では「3番目」となっているが、4番目の首都（何故か、2番目の遷都であるAD242年の遼東の襄平への移転は無かった事にされている）。中国の史料を見直すと586年と移転は遅く、新羅に漢城（今のソウル）地域を取られた後である。

新羅は、任那の連合国から独立した国ですね。