姉妹編 ウクライナ情勢について、年単位の中期的見通しを考えるチラシの裏
ログその1
ウクライナ関係時事についてのチラシの裏。日付は原則として元記事に表記された現地時間ですが、日本時間で表示する設定になっているニュースサイト、あるいはそれらを紹介するツイッター記事など整合的でない場合があります。
メタればメタられる(流れの概観)
ロシアは当初、首都キーウなど多正面を電撃的に突破してウクライナを制圧するつもりであったが、キーウ北東の長い車列が話題になったように、自らの連携の悪さとウクライナの小部隊群による後方攻撃でとん挫した。キーウ周辺、続いてハルキウ周辺から撤退した5月中旬には、代わってイジューム方面とポパスナ方面から東部を小さく包囲する作戦もとん挫し、西側に楽観論が流れた。その後、砲弾の領を頼みに正面からすりつぶす戦術に転じ、セベロドネツク、リシチャンシクなどを廃墟化と引き換えに制圧し、一定の成果を挙げた。
このころすでにアメリカを中心として、100門前後のの155mm榴弾砲が持ち込まれていたが、射程の長いエクスカリバー弾の供与は見送られ、ロシアに量で対抗できず、旧ソヴィエト系の砲は残弾がなくなった。射程の長いHIMARSが供与され、要員の訓練が終わるまで1ヶ月ほどはロシアがじりじり押している印象があったが、7月に入ってロシア軍弾薬庫の爆発映像が次々にアップされるようになった。後方要地と補給路への攻撃が続き、補給拠点を後退させるとウクライナの攻撃がそれを追いかけてクリミア半島に及び、徴兵適齢者の逃散を恐れたロシア当局はケルチ半島への橋を自ら閉鎖したとも伝えられる。対応を強いる主導権は8月後半はウクライナにあった。相次ぐ損耗で、地上戦力でのロシアの優位が揺らいできたという断片的な報道があるが、まだそれらは兆候以上のものではない。
経済制裁の効果も含め、世界はロシアが軍事的に、国民生活的に、またはその両方で弱体化したというニュースを予期し、待ちわびているのだが、供給されるのは観測記事の類ばかりであった。9月に入り、ハルキウ東(イジューム北)でウクライナ軍が予兆なく大きく土地を切り取った。このロシアにとっての重大危機があっさり現実になったことは驚きを以て受け取られているようであり、ロシア軍が当面火がついていない戦線からひそやかに部隊を抜いていたことの結果、つまり待ち望まれていたニュースかもしれない。
10月に入り、泥が大地を支配して大きな動きは報じられなくなった。1941/42年の冬は、温暖化の影響がなかった当時としても例年より寒い冬であったようで、11月上旬に積雪前の凍結があってドイツ軍が最後の進撃をした。今年はそんなことはないと予報されているようである。ロシア軍がヘルソン方面(ドニエプル川西岸)からの撤退を開始したのは、いまなら迅速に追って来られないという計算があるのだろう。
厳冬期、ロシアはバフムート(Bakhmut)への攻撃を膨大な損失を出しつつ継続し、2023年1月に入ってその北にあるソレダール(Soledar)を占領した。戦略的価値が今や疑わしいバフムートの獲得にこだわるのは、それがワグナー(の指導者であるプリゴジン)のプーチンへの約束であり、(国内)威信がかかっているからだという観測がある。また1月11日、ゲラシモフ参謀総長が侵攻作戦の総司令官となり、2022年10月からその地位にあって西側から職業軍人としての判断を評価されていたスロビキンが副司令官に降格された人事はさまざまに解釈されているが、プリゴジンの口出しを難しくする側面があるため、「バフムートを取れないことでプーチンからの信頼が低下した表れ」とする解釈も語られている。
2月は1年前にロシアの侵攻が始まった時期であり、泥濘の季節を前に凍結した地面を進める時期であることから、戦闘の活発化は避けられない。西側が相次いで発表した主力戦車の供与も、繰り返されるロシアの攻勢準備に関する報道も、この覆しようもない季節変化を背景としたものである。
2月8日、ISWは2022年9月から係争地となったクピャンスク周辺、とくにスヴァトヴェとクレミンナでロシアが攻勢を準備中との判断を示した。結局のところロシアの攻勢はバハムートに集中し、3月上旬、ついにバハムートの東半分からウクライナは撤退した。いいかえれば、陸上戦力の物量を頼んだ広範囲の攻勢はついになかった。
5月2日、イギリス国防省の戦況分析にロシアの弾薬不足がバハムート攻勢失敗の原因だとする記述が入った。5月1日のJohn Kirby報道官(NSC)の会見でも同種の表現が発言中にあったようである。
Washington Examiner紙「White House asserts Russian latest offensive in Ukraine has 'backfired’」https://www.washingtonexaminer.com/policy/defense-...
5月21日前後に、ロシアはバハムート獲得を宣言した。ただしウクライナはすでに市内への水源を断っており、更地となって防御しにくいバハムートの今後がどうなるかははっきりしない。
そして6月10日前後から、ウクライナの反撃作戦が始まった。対砲兵戦を交え、ウクライナの取り換えした面積は当初大きくはなく、大方の予想に反して東部のバハムト方面にも大きな戦力が割かれた。ロシアは頑強に抵抗する一方、北のクレミンナ方面で相当に有力な反撃作戦を仕掛けた。6月23日ごろからプリゴジンの率いるワグネルのモスクワ進軍事件(まだ定まった名称なし)をはさみ、ウクライナ軍はロシアがダムを爆破して大きく干上がったドネプロ河畔を押し渡り、ドネプロ南東岸に橋頭保を確保したと伝えられる。
ウクライナ6月反攻
戦線図になると意識しづらいが、南方向へのウクライナの反攻軸は、みんな道路に沿っている。とにかく泥に気を付けないといけない国だから当然と言えば当然である。真っ先に話題になったのは、�，瞭始�に沿ってトクマク市を目指すルートであった。少し遅れて、�△離疋優廛躄枠淵襦璽箸任眄鐫爾�開かれた。このふたつが目指すトクマク市は、黒海沿岸を目指すには必ず通らないといけない道路網の要衝であると同時に、実は内陸部へ湾曲したマリウポリ〜メリトポリ〜クリミア方面の鉄道が通っている。トクマク市そのものが陣地帯で守られているが、鉄道が砲撃圏に入るだけで大きな影響が出る。
��のヴェリンカ=ノヴォシルカ、�い離泪螢鵐�と南西のヴレダルでも戦闘が起きている。いずれもマリウポリに通じる道路である。
どれもこれも、クリミア大陸橋を遮断しようとする、ロシアの防備が最も厚い方向である。すでにウクライナ機甲部隊に相当の損害が報じられており、ロシアの電子戦やレーダーシステム、またそれに沿った組織的な防戦が成功したと言われる。その一方で、反撃に有効なロシア軍のTOS-1自走ロケットランチャーが位置を知られ、いくつか撃破されたともいわれる。互いに攻撃手段の位置を察知し合う陰気なプロセスがしばらく続くのであろう。
では東のバハムトを南北から囲むように攻めているのは陽動と断定できるかというと、まあ主力ではないとしても、どうでもよい場所ではない。バハムトはトクマク同様、道路が交差する要衝であって、次の攻勢の起点になる場所だからである。ロシア軍の面子は脇においても、ここを放置して東には進めない。※付記 バハムト北西と南西は、バハムトに対して丘のような地勢であるらしく、カウンターバッテリーを有利にするための観測場所を確保に行っているのだとすれば、最近のウクライナ軍の動きとつじつまが合う。
みんな読んでる小泉先生、スタロムリニウカはルート��のおはなし。
OSINTtechnicalの関連ツイート
6月14日朝現在、�い老覿彬し眄錣世韻能�わったようである[付記:ヴレダル南東のブラホダトネ方向に進出を試みる様子が6/20ごろBBCに報じられた]。�´△和腓�な土地の獲得なく推移しているようだが、�，之眷砲気譴織譽�パルド2がベルゲパンターに回収されたようである。��がここ数日比較的激しく動いており、ウクライナ軍がマカリウカへのロシア軍の反撃を撃退した後、その南のスタロマイオルスクのロシア軍保持が怪しくなっているという話もある。
6月20日付、小泉先生のNHKインタビュー。「ウクライナ反転攻勢 最新状況は？ロシア軍ウォッチャーが分析」https://www3.nhk.or.jp/news/special/international_...
膠着していたスタロムリニウカ方面であったが、26日にリヴノピリ(Rivnopil'、Рівнопіль)がウクライナの手に落ちたとウクライナ側の公式発表があった。スタロムリニウカの北西にある高地でウクライナ軍の南下を阻んでいたが、ここが砲兵観測に使えなくなったことでウクライナ軍の南下も進むと思われる。
7月第2週に入り、クピャンスク方面13万、バハムート方面5万とウクライナ側が伝えたロシア側増援を使ってか、リマン方面に向かってロシア軍が前進したが、相当部分を反撃で切り取られた。NATOサミットに影響を与えようと狙ったデモンストレーションであったかもしれない。南部戦線についてウクライナ軍報道官が、度重なる弾薬庫等への攻撃でロシアの攻撃が鈍ってきたと伝えた。その一方で、ロシア軍将官が前線部隊に休養のローテーションが全くないことに不満を述べて解任されたと伝えられる。いよいよ南部戦線方面の兵站が詰まってきたということかもしれない。
7月下旬の停滞と打開
バハムート方面ではウクライナ軍が押し続け、東側の補給ルートを見下ろせる位置を確保したようである。ところが北に展開した13万ともいわれる増援が、スバトボ方面を中心に大きく土地を稼いでしまったようである。その後、補給や砲撃支援の追随が不十分で、ウクライナが押し返しつつあると伝えられる。https://understandingwar.org/backgrounder/russian-... https://grandfleet.info/war-situation-in-ukraine/r...
いっぽう、アメリカでの報道に押されるようにウクライナも公式に認めつつあるが、スバトボ方面の失地と差し違えるように南部戦線で温存されてきた機械化部隊が投入され、すでに触れてきたいくつかの地点で前進が見られている。 ゼレンスキー氏「前線で非常に良い結果」、近く詳細公表へ https://jp.reuters.com/article/ukraine-crisis-zele... ウクライナ軍、反攻で南東部戦線に新たな部隊投入 米分析 https://www.cnn.co.jp/usa/35207085.html @cnn_co_jpより
夏の総括
航空万能論GF2023.09.5「夏に繰り広げられたウクライナ軍の反攻作戦、忍耐力と適用力の戦い」(ロブ･リー氏とマイケル･コフマン氏による記事の和訳)https://grandfleet.info/us-related/the-ukrainian-a... によれば、ロシア軍はすでにHIMARS対策として頻繁に変わる積み替え地点からの小ロットな兵站に切り替えており、砲撃で物流を止めることは(バフムトなどでロシア側にとっても)限界に突き当たっているという。となれば物理的なクリミア大陸橋遮断を欠いてはクリミアは落ちず、いまロボーティネでほころびを見せているロシア防衛ラインの行方が注目される。
もちろん、本当のウクライナ軍の損害状況を世界にさらせと求めるのは馬鹿げているのだから、あとどれだけ攻勢を続ける余力があるかは、誰にもわからない。
凍り終えた大地(2023年11月末)
期待されたウクライナ軍反攻は、ロシア軍の守りに大きな破孔を作ることができず、明らかに目的を果たせないまま泥の季節を迎えた。もちろんそれは、航空戦力を中心に、ロシアに崩壊ドミノを起こさせるだけの支援がなかったということであり、同時に経済制裁下のロシアが、あらゆる手段とルートで物量を確保し、踏ん張ったということでもある。
ロシアが甚大に人的損失を出していることは明らかである。しかしもともとロシアとウクライナには大きな人口の差がある。人口比を超える損害比になっていないとすれば、案外じりじり削られているのはウクライナ側であるかもしれない。ロシア軍の損害に関するウクライナ側の発表は、米英が国内向けに訂正しない程度には正確であるとしても、ウクライナ側の損害に関する信用できる数字がない。だから、戦争が終わるまでこの件は藪の中であろう。
2014年以来ロシア側勢力が保持していたドネプロ川東側は、バハムト市周辺と並んで、ロシアが国内向けの面子の問題として大きな犠牲を払って奪回を目指し、総じて失敗してきた。このこと自体は、ウクライナ側の大きな状況好転につながる見込みは小さい。ドネプロ川東岸まで輸送トラックを継続的に送り込む手段がないからである。ウクライナはこの夏、世界の予想した通りクリミア大陸橋の切断を狙ったが、ロシアの防御が一番厚い部分を攻める結果になった。
ゼレンスキー大統領への日本経済新聞インタビュー記事が11月末に出たが、やはりウクライナが停戦を口にする基本的な条件は、占領地域の奪還である。少なくともそれに近い状態を作り出すためには、クリミアを丸ごとロシアからそぎ落とすしかなく、厳寒期に入っても両軍の対峙はこのまま続くのだろう。
ログその1
ウクライナ関係時事についてのチラシの裏。日付は原則として元記事に表記された現地時間ですが、日本時間で表示する設定になっているニュースサイト、あるいはそれらを紹介するツイッター記事など整合的でない場合があります。
メタればメタられる(流れの概観) 
ロシアは当初、首都キーウなど多正面を電撃的に突破してウクライナを制圧するつもりであったが、キーウ北東の長い車列が話題になったように、自らの連携の悪さとウクライナの小部隊群による後方攻撃でとん挫した。キーウ周辺、続いてハルキウ周辺から撤退した5月中旬には、代わってイジューム方面とポパスナ方面から東部を小さく包囲する作戦もとん挫し、西側に楽観論が流れた。その後、砲弾の領を頼みに正面からすりつぶす戦術に転じ、セベロドネツク、リシチャンシクなどを廃墟化と引き換えに制圧し、一定の成果を挙げた。
このころすでにアメリカを中心として、100門前後のの155mm榴弾砲が持ち込まれていたが、射程の長いエクスカリバー弾の供与は見送られ、ロシアに量で対抗できず、旧ソヴィエト系の砲は残弾がなくなった。射程の長いHIMARSが供与され、要員の訓練が終わるまで1ヶ月ほどはロシアがじりじり押している印象があったが、7月に入ってロシア軍弾薬庫の爆発映像が次々にアップされるようになった。後方要地と補給路への攻撃が続き、補給拠点を後退させるとウクライナの攻撃がそれを追いかけてクリミア半島に及び、徴兵適齢者の逃散を恐れたロシア当局はケルチ半島への橋を自ら閉鎖したとも伝えられる。対応を強いる主導権は8月後半はウクライナにあった。相次ぐ損耗で、地上戦力でのロシアの優位が揺らいできたという断片的な報道があるが、まだそれらは兆候以上のものではない。
経済制裁の効果も含め、世界はロシアが軍事的に、国民生活的に、またはその両方で弱体化したというニュースを予期し、待ちわびているのだが、供給されるのは観測記事の類ばかりであった。9月に入り、ハルキウ東(イジューム北)でウクライナ軍が予兆なく大きく土地を切り取った。このロシアにとっての重大危機があっさり現実になったことは驚きを以て受け取られているようであり、ロシア軍が当面火がついていない戦線からひそやかに部隊を抜いていたことの結果、つまり待ち望まれていたニュースかもしれない。
10月に入り、泥が大地を支配して大きな動きは報じられなくなった。1941/42年の冬は、温暖化の影響がなかった当時としても例年より寒い冬であったようで、11月上旬に積雪前の凍結があってドイツ軍が最後の進撃をした。今年はそんなことはないと予報されているようである。ロシア軍がヘルソン方面(ドニエプル川西岸)からの撤退を開始したのは、いまなら迅速に追って来られないという計算があるのだろう。
厳冬期、ロシアはバフムート(Bakhmut)への攻撃を膨大な損失を出しつつ継続し、2023年1月に入ってその北にあるソレダール(Soledar)を占領した。戦略的価値が今や疑わしいバフムートの獲得にこだわるのは、それがワグナー(の指導者であるプリゴジン)のプーチンへの約束であり、(国内)威信がかかっているからだという観測がある。また1月11日、ゲラシモフ参謀総長が侵攻作戦の総司令官となり、2022年10月からその地位にあって西側から職業軍人としての判断を評価されていたスロビキンが副司令官に降格された人事はさまざまに解釈されているが、プリゴジンの口出しを難しくする側面があるため、「バフムートを取れないことでプーチンからの信頼が低下した表れ」とする解釈も語られている。
2月は1年前にロシアの侵攻が始まった時期であり、泥濘の季節を前に凍結した地面を進める時期であることから、戦闘の活発化は避けられない。西側が相次いで発表した主力戦車の供与も、繰り返されるロシアの攻勢準備に関する報道も、この覆しようもない季節変化を背景としたものである。
2月8日、ISWは2022年9月から係争地となったクピャンスク周辺、とくにスヴァトヴェとクレミンナでロシアが攻勢を準備中との判断を示した。結局のところロシアの攻勢はバハムートに集中し、3月上旬、ついにバハムートの東半分からウクライナは撤退した。いいかえれば、陸上戦力の物量を頼んだ広範囲の攻勢はついになかった。
5月2日、イギリス国防省の戦況分析にロシアの弾薬不足がバハムート攻勢失敗の原因だとする記述が入った。5月1日のJohn Kirby報道官(NSC)の会見でも同種の表現が発言中にあったようである。
Washington Examiner紙「White House asserts Russian latest offensive in Ukraine has 'backfired’」https://www.washingtonexaminer.com/policy/defense-...
5月21日前後に、ロシアはバハムート獲得を宣言した。ただしウクライナはすでに市内への水源を断っており、更地となって防御しにくいバハムートの今後がどうなるかははっきりしない。
そして6月10日前後から、ウクライナの反撃作戦が始まった。対砲兵戦を交え、ウクライナの取り換えした面積は当初大きくはなく、大方の予想に反して東部のバハムト方面にも大きな戦力が割かれた。ロシアは頑強に抵抗する一方、北のクレミンナ方面で相当に有力な反撃作戦を仕掛けた。6月23日ごろからプリゴジンの率いるワグネルのモスクワ進軍事件(まだ定まった名称なし)をはさみ、ウクライナ軍はロシアがダムを爆破して大きく干上がったドネプロ河畔を押し渡り、ドネプロ南東岸に橋頭保を確保したと伝えられる。
ウクライナ6月反攻
戦線図になると意識しづらいが、南方向へのウクライナの反攻軸は、みんな道路に沿っている。とにかく泥に気を付けないといけない国だから当然と言えば当然である。真っ先に話題になったのは、�，瞭始�に沿ってトクマク市を目指すルートであった。少し遅れて、�△離疋優廛躄枠淵襦璽箸任眄鐫爾�開かれた。このふたつが目指すトクマク市は、黒海沿岸を目指すには必ず通らないといけない道路網の要衝であると同時に、実は内陸部へ湾曲したマリウポリ〜メリトポリ〜クリミア方面の鉄道が通っている。トクマク市そのものが陣地帯で守られているが、鉄道が砲撃圏に入るだけで大きな影響が出る。
��のヴェリンカ=ノヴォシルカ、�い離泪螢鵐�と南西のヴレダルでも戦闘が起きている。いずれもマリウポリに通じる道路である。
どれもこれも、クリミア大陸橋を遮断しようとする、ロシアの防備が最も厚い方向である。すでにウクライナ機甲部隊に相当の損害が報じられており、ロシアの電子戦やレーダーシステム、またそれに沿った組織的な防戦が成功したと言われる。その一方で、反撃に有効なロシア軍のTOS-1自走ロケットランチャーが位置を知られ、いくつか撃破されたともいわれる。互いに攻撃手段の位置を察知し合う陰気なプロセスがしばらく続くのであろう。
では東のバハムトを南北から囲むように攻めているのは陽動と断定できるかというと、まあ主力ではないとしても、どうでもよい場所ではない。バハムトはトクマク同様、道路が交差する要衝であって、次の攻勢の起点になる場所だからである。ロシア軍の面子は脇においても、ここを放置して東には進めない。※付記 バハムト北西と南西は、バハムトに対して丘のような地勢であるらしく、カウンターバッテリーを有利にするための観測場所を確保に行っているのだとすれば、最近のウクライナ軍の動きとつじつまが合う。
みんな読んでる小泉先生、スタロムリニウカはルート��のおはなし。
OSINTtechnicalの関連ツイート
6月14日朝現在、�い老覿彬し眄錣世韻能�わったようである[付記:ヴレダル南東のブラホダトネ方向に進出を試みる様子が6/20ごろBBCに報じられた]。�´△和腓�な土地の獲得なく推移しているようだが、�，之眷砲気譴織譽�パルド2がベルゲパンターに回収されたようである。��がここ数日比較的激しく動いており、ウクライナ軍がマカリウカへのロシア軍の反撃を撃退した後、その南のスタロマイオルスクのロシア軍保持が怪しくなっているという話もある。
6月20日付、小泉先生のNHKインタビュー。「ウクライナ反転攻勢 最新状況は？ロシア軍ウォッチャーが分析」https://www3.nhk.or.jp/news/special/international_...
膠着していたスタロムリニウカ方面であったが、26日にリヴノピリ(Rivnopil'、Рівнопіль)がウクライナの手に落ちたとウクライナ側の公式発表があった。スタロムリニウカの北西にある高地でウクライナ軍の南下を阻んでいたが、ここが砲兵観測に使えなくなったことでウクライナ軍の南下も進むと思われる。
7月第2週に入り、クピャンスク方面13万、バハムート方面5万とウクライナ側が伝えたロシア側増援を使ってか、リマン方面に向かってロシア軍が前進したが、相当部分を反撃で切り取られた。NATOサミットに影響を与えようと狙ったデモンストレーションであったかもしれない。南部戦線についてウクライナ軍報道官が、度重なる弾薬庫等への攻撃でロシアの攻撃が鈍ってきたと伝えた。その一方で、ロシア軍将官が前線部隊に休養のローテーションが全くないことに不満を述べて解任されたと伝えられる。いよいよ南部戦線方面の兵站が詰まってきたということかもしれない。
7月下旬の停滞と打開
バハムート方面ではウクライナ軍が押し続け、東側の補給ルートを見下ろせる位置を確保したようである。ところが北に展開した13万ともいわれる増援が、スバトボ方面を中心に大きく土地を稼いでしまったようである。その後、補給や砲撃支援の追随が不十分で、ウクライナが押し返しつつあると伝えられる。https://understandingwar.org/backgrounder/russian-... https://grandfleet.info/war-situation-in-ukraine/r...
いっぽう、アメリカでの報道に押されるようにウクライナも公式に認めつつあるが、スバトボ方面の失地と差し違えるように南部戦線で温存されてきた機械化部隊が投入され、すでに触れてきたいくつかの地点で前進が見られている。 ゼレンスキー氏「前線で非常に良い結果」、近く詳細公表へ https://jp.reuters.com/article/ukraine-crisis-zele... ウクライナ軍、反攻で南東部戦線に新たな部隊投入 米分析 https://www.cnn.co.jp/usa/35207085.html @cnn_co_jpより
夏の総括
航空万能論GF2023.09.5「夏に繰り広げられたウクライナ軍の反攻作戦、忍耐力と適用力の戦い」(ロブ･リー氏とマイケル･コフマン氏による記事の和訳)https://grandfleet.info/us-related/the-ukrainian-a... によれば、ロシア軍はすでにHIMARS対策として頻繁に変わる積み替え地点からの小ロットな兵站に切り替えており、砲撃で物流を止めることは(バフムトなどでロシア側にとっても)限界に突き当たっているという。となれば物理的なクリミア大陸橋遮断を欠いてはクリミアは落ちず、いまロボーティネでほころびを見せているロシア防衛ラインの行方が注目される。
もちろん、本当のウクライナ軍の損害状況を世界にさらせと求めるのは馬鹿げているのだから、あとどれだけ攻勢を続ける余力があるかは、誰にもわからない。
凍り終えた大地(2023年11月末)
期待されたウクライナ軍反攻は、ロシア軍の守りに大きな破孔を作ることができず、明らかに目的を果たせないまま泥の季節を迎えた。もちろんそれは、航空戦力を中心に、ロシアに崩壊ドミノを起こさせるだけの支援がなかったということであり、同時に経済制裁下のロシアが、あらゆる手段とルートで物量を確保し、踏ん張ったということでもある。
ロシアが甚大に人的損失を出していることは明らかである。しかしもともとロシアとウクライナには大きな人口の差がある。人口比を超える損害比になっていないとすれば、案外じりじり削られているのはウクライナ側であるかもしれない。ロシア軍の損害に関するウクライナ側の発表は、米英が国内向けに訂正しない程度には正確であるとしても、ウクライナ側の損害に関する信用できる数字がない。だから、戦争が終わるまでこの件は藪の中であろう。
2014年以来ロシア側勢力が保持していたドネプロ川東側は、バハムト市周辺と並んで、ロシアが国内向けの面子の問題として大きな犠牲を払って奪回を目指し、総じて失敗してきた。このこと自体は、ウクライナ側の大きな状況好転につながる見込みは小さい。ドネプロ川東岸まで輸送トラックを継続的に送り込む手段がないからである。ウクライナはこの夏、世界の予想した通りクリミア大陸橋の切断を狙ったが、ロシアの防御が一番厚い部分を攻める結果になった。
ゼレンスキー大統領への日本経済新聞インタビュー記事が11月末に出たが、やはりウクライナが停戦を口にする基本的な条件は、占領地域の奪還である。少なくともそれに近い状態を作り出すためには、クリミアを丸ごとロシアからそぎ落とすしかなく、厳寒期に入っても両軍の対峙はこのまま続くのだろう。
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