中世・近世ヨーロッパ史(だいたい西暦1155〜1857)の歴史の研究および考証(意見・情報交換、議論など)をする研究会のwikiです。歴史の情報共有の場として、あるいは、単なる情報交換の場として。歴史好きの方、お待ちしております。認証されれば誰でも編集可能です。

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中世・近世のヨーロッパの陸戦などのコンテンツについては随分書いてきたつもりですが、割と戦術・戦略ゲームでも使えて、どちらかといえば実戦的なTipsのようなものが欠けていたと思うので追加しておきます。基本的な、戦術の動きといっても中世近世の陸戦も現代のスポーツも同じで、戦線突破の稿で書いた戦線を突破すればゲームを展開できる、というセオリーに則るならば、とりあえず、戦いというかゲームで有利になるには戦線の突破のセオリーにもあるとおりまずは相手の戦線というか前線に楔を打ち込む動きをする、つまり相手の前線に割り込んで、相手側の戦線を分断する動きをするのです。軍勢というものは社会における人間でもそうなのですが、個々の関係性や位置的繋がりを分断されると、孤立して思うような身動きが取れなくなります。ましてや、無線機などない時代ですから、分断されるというのは戦場においては致命的以外の何物でもなかったわけです。戦争の戦場においては分断さえしてしまえばあとは十分な軍勢さえあればそれを屠るのは簡単ですから、いかに戦場において軍勢を分断するのが重要か、ということはよく覗えるかと思います。で、その戦線を分断する動きなのですが、サッカーなどの現代のゲームでは、相手の戦線に割り込む動きをすればいいわけですから、普通に相手の前線に入り込む、選手と選手の間に入り込むように位置取りをすればいいわけなのですが、実際の中世や近世の戦場においては動きが鈍るというのは致命的ですから、それを素早く動かさなければなりません。しかも、一人の選手、人間であればそれでいいのですが軍勢というものは数百数千人単位ですから、如何にそれを間断の隙間なく動かすのが難しいかが、よく想像できると思います。で、今度は相手の前線に楔を打ち込むように動いたら、味方の縦の動き、を重視します。ただ相手の前線に味方軍勢を楔を打ち込むように動かしただけでは、当然敵の第二線の前面と敵の第一線の側面に前方三方を囲まれてしまう形になりますから、奇角の項でもある通り、わざわざ楔を打ち込んだのにこれでは不利以外の何物でもありません。そこで、相手とがっちり組み合う形、味方の第二線を引っ張り上げて今度は敵の第一線(前線)の楔を打ち込んだ結果こちら側に突出する格好になった孤立した敵の第一線の軍勢を、こちらの第二線の前面とこちらの楔の軍勢とで三方を囲う形勢を取ります。どちらもがっちり歯車のように組み合っているので、一見互角のようにも見えますが、こちらのほうから仕掛けるので、この場合は味方側が若干有利になります。仕掛けたほうが勢いの上で有利な分だけ戦力が互角であれば相手側の前線を取ることができますが(戦線突破のセオリーではこの時点で勝ちは決まったようなものでもあるが)その際に重要なのが味方の縦の動き、です。横のつながり、だけでは当然味方が楔に入れば味方も分断された格好になりますから、そのままではゲームを展開できません。かといって、敵の第二線に面しながら敵の第一線を横から攻めることもできませんから、ここで縦のつながり、が重要になってきます。味方の第二線がそれに続いて上手く味方が密接に連携できれば、相手の突出した格好になった前線部隊を味方の第二線と三方を挟むことができます。横のつながりだけでは戦術を構築できなかったものが、味方の縦の関係も利用することによって、上手く連動して敵の前線を囲うことができるようになるわけなのです。どうです、この説明だけだと、さながら現代のサッカーの戦術解説のようにも聞こえてきませんか?笑 そうなのです、中世近世の陸戦の戦いといえど、現代スポーツといえど戦術の基本は同じ、なのです。縦と横でつながることで、相手の前線を翻弄する、戦線を飲み込む動きも可能になるわけです。また、中世や近世などの陸戦では、基本的には銃火器や飛び道具、大砲などの射撃する兵器の関係性から、弓矢のように上を飛び越える軌道でなければ、基本的に味方同士が特に縦に重なると、正面には射撃できなくなります。その関係性から、軍勢同士が縦に重なると部隊によっては不利なのでは、と思われる方もいるかもしれません。確かに、マスケットやアルケブス銃など銃火器が主装備の部隊では、ほぼそうなります。部隊同士が縦に重なってしまうと、後方の部隊は待機するだけで正面には射撃できなくなってしまいますから、そのまま死兵になってしまいます(無駄な、戦力を発揮できない位置にある戦力のこと)。そのため、銃火器が主装備になった近世にかけての戦場では、必ずその部隊がチェッカーボードのように、前後に交互、入れ違いに配置されるようになっていたわけで、そうすることで、前の敵にも横の敵にも素早く対応できた、わけです(個々の部隊は多くの場合当時は横隊か四方(四角)隊だった)。また、前後で入れ違いになることで、部隊が縦にも横にも重ならずに素早く退避など動きを取ることもできた、という理由も当然あるでしょうが、それともうひとつ、元々正面に対して100%の戦力を発揮できる中世近世の陸軍部隊をほぼ戦力の無駄なく配置できる、という利点も多いにあったでしょう。四方八方に密集していては、当然急な動きが取れませんから、陸軍として役に立ちませんし、なによりそんな陣形で行軍、あるいは戦闘の構えに入るようなことは誰でもしません。ということは、チェッカーボードのように配置していれば、上手く密集せずに、あるいは前述の楔を打ち込む動きをした際に上手く味方の第二線がはめ込む形になりますし、それのほうが陸軍としては上手く戦える、のです。つまり、縦と横の連携、動きを最重視すると、自然と結果的に中世近世の陸上戦力では個々の部隊同士をチェッカーボードのように入れ違いに配置する構図になるわけで、まぁ、その辺はユークリッド幾何学の美、というようなものでもあるわけですね。ちなみに、斜めと飛び横の動き、もあるのでついでにご紹介しておきますが、斜めは主に銃火器部隊の斜め前方への射撃、あるいは大砲または騎兵などの斜め前方への動き、ということになります。主に斜め前方への射撃と騎兵など機動力の高い部隊での前方へのカットイン(切れ込み)、という動きがベースになると思うのですが、斜め前方への射撃の場合は主に味方が縦に(間隔を置いてでも)重なっている場合での隙間を縫っての射撃、ということになりますし、騎兵などでの前方へのカットイン、という動きは、サッカーなどでも分かりやすいと思いますが、敵の前線を崩す動き、でもあります。戦線の間に入られても分断されて連携が取れなくなるのなら、当然敵の戦線内あるいは前線後方に切れ込む動きは、効率的に敵の戦線を綻ばせる、バラすことができます。この動きは、相手の戦線をもたつかせて崩す場合には、非常に有用な戦術のひとつになります。誰でも、味方の陣内を機動力の高い騎兵にうろつかれることは、指揮する上では嫌な事、ですし何より味方の前線を突破されることは戦場ではほぼ総敗北、を意味しています。ということから考えると、敵前線への集中的な射撃に有用な斜めの砲撃と、敵戦線への騎兵による斜めへのカットインの動き、は敵の前線を弄ぶ、のになにより有用な動き、となるわけなのですが、そしてさらに、飛び横の動きというものもあります。飛び横というとちょっと分かりにくいかもしれませんが、チェスのナイトや将棋の桂馬のような動きを想像していただけると分かりやすいのですが、すなわち、斜め前に飛んで動くような動きなのですが、これは動きの素早い軽騎兵のようなものを想像していただけると分かりやすいかと思います。普通は装備で動きの重い、戦場での歩兵や騎兵などの部隊なのですが、その中でも比較的軽装備の軽騎兵などは(まぁ、それを目的において構成配置された部隊でもありますが)戦場でも飛び抜けて素早い機動力を発揮します。まぁその分一度撃たれたり押されたりすると装備が軽くて鎧が薄い分大変打たれ弱い部隊でもあるのですが、それを見越してか中世初期の段階では弓やクロスボウ(弩)あるいはジャベリンなどの投げ槍や軽い槍で武装していたものが、中世末期から近世にかけてはアルケブス銃やカービン銃など、直接戦闘しなくても飛び道具で遠巻きに損害を与え続けられる、そんな装備で武装しているため、軽騎兵の基本戦術は飛び道具で武装している場合はヒットアンドアウェイ(撃っては逃げ、撃っては避け)になります。まぁ、これは飛び道具で戦う場合は基本中の基本戦術になるのですが、白兵戦になってはまずいことが分かっている場合は、とにかく敵との距離を常に最適に(こちらにも有用射程、というものがありますから)保ちながら、つかず離れず、でぺちぺちと敵に当て続けるのがもっとも有効に敵に損害を与える手段、になります。なのでこれが戦場の勝敗を直接決めてしまうことは珍しいわけなのですが、それでも、重騎兵にも対応できますし重歩兵にも対応できるので、中世近世ヨーロッパの戦場を歴史的に経由してきた中での、ひとつの答えのようなもの、にもなっています。つまり、直接戦わずに飛び道具だけ浴びせ続ければ、自ずと敵も戦わずとも戦力を削られてしまうわけで、逆にいえば向こうからすればそういう部隊に対しては、如何に素早く追い込んで、如何に素早く間合いを詰めるのか、が重要になってくるわけなのですが、それは置いておくとして、軽騎兵は基本的には剣や槍などで武装している場合は素早く動き、そして敵に素早く取り付くことができるので、文字通り戦場を飛んで場当たり戦力の弱そうな部隊や、士気の低そうな部隊、あるいは輜重隊(輸送部隊)など敵のもっとも重要でかつもっとも弱い部分を狙い撃ちするのに非常に有用な戦力になります。おそらくチェスや将棋でもそういう動きをすればかなり有用に敵戦力を削れるかと思うのですが、そこは実際の戦場の部隊でも一緒で、軽騎兵は基本的には敵の弱い部分を削るのに使います。また、サッカーなどでも分かりやすいのですが、足の速いサイドバックやウィンガーの選手、あるいは優秀なドリブラーといった選手はその動きで素早く敵陣を切り崩すことができるので、そういう意味では軽騎兵のようなもの、なのかもしれませんね。その軽騎兵がアルケブス銃やクロスボウで武装すると、さらに凶暴かつ優秀な戦力にもなるのですが、その装備の場合はどちらかというと動きの速い飛び道具、といった感じで、素早く位置取りし、効率よく敵に射撃を浴びせ掛ける、という点では優秀な飛び道具、ではあるのですが、近接装備で武装したほどの間合いを詰める上でのアドバンテージ、というものはありません。一方、重装備の騎兵でも素早く動けるように訓練されていれば、前方に、であれば素早く間合いを詰めることもできます。また重騎兵の場合のほうが装備が頑丈なので、より打たれ弱いことはありませんし、何より歩兵にしろ騎兵にしろ軽装備の部隊であれば、ほぼ突っ込むだけで一掃できてしまう、というほどの威力も持ち合わせています。まぁ、どちらにしろ、調達するのにはコストがかかるので、使いどころ、が重要になるわけなのですが、重騎兵など騎士が味方前線を担当できるのに対し、軽騎兵はいずれの場合でも味方戦翼(フランク)を担当することになるので、そういう意味ではフランキングや敵陣前方に切れ込む動き、など敵陣を引っ掻き回す動き、が中心になるのではないか、と思いますね〜。
まぁ、どちらの場合にせよ、最適な戦力を最適な場所に配置することが戦場では非常に重要になってくるわけなのですが、それにはそれぞれの兵科の動きを細かく把握した上で、ということと、それぞれの能力に見合う形で配置する、というのが重要になってくる、わけですね。ちなみに、歩兵は歩兵でも中世の斧やメイス(棍棒)、あるいは剣などで武装した部隊の場合は、縦に重なっていても波状攻撃という手段で次から次へと敵陣へ打撃を加えることができるので、そういう意味では縦に重なっていても常に戦力を発揮できるもの、なのですが例えば歩兵などが横で重なった場合も、それが前線を構築している場合は、基本的に前線では前進か後退しかないので、その意味では効率的に戦線を構築することもできます。必ずしも、横や縦に重なることが不利を招くわけではない、ということは心に留めておいてほしいこと、なのですが、それでも、まぁ総括すると、要はどんなものでも使い道、使い方次第だ、というわけなのです。

このページへのコメント

ちなみに、本稿のテーマにあわせるのであれば、戦術的な縦の動きとは、前述のPersingもしくはRaid、であり(基本的に、下方から上方へ向かって交差した、二本の矢印をイメージすると、わかりやすい)、またあえてここで戦術的な横の動き、を表現するとならば、すなわち右と左、のDietyである、風と水、である。すなわち、戦場における機動可能性や、補給や供給ライン、あるいはその供給線を指す風(Air)と、もうひとつは、戦術的柔軟性や、待ち伏せ戦術、あるいは飽和射撃、などのいわゆる柔軟性を象徴する、水(Water)である。なお、基本的に、パーシングは火・水から大地・風、対するレイドは、火・風から水・大地といった、いわゆる下方から延びる、対角の動き(いわゆる、パトリオットのモチーフを、イメージするとなんとなくわかりやすいか)の動きを、指す。

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Posted by  skywalker_laurence skywalker_laurence 2020年03月11日(水) 17:03:49 返信

さらに言えば、これは経済状況におけるスタグフレーション状態にも共通することなのだが、もし、仮に貴金属相場及び物流の流れがとどこおって、一般市場における相場の動きが止まってしまった場合(つまり相場流動性がなくなってしまった場合に)に、経済現況としては、その世界がその後世にも続くと仮定した場合に、いかようかにして動かす(あるいは、過去の世界でそうなった場合に、それぞれがそうしてきたように)ことに焦点が当たるため、例えばそういう状況では、生産(内地・内陸)での生産を強化することによって、資源の供給を行うことにより経済相場のいわゆる蘇生をはかる、ということが行われるのだが、それとおなじように、戦闘における戦術においても、どちらか一方の待ち伏せ勢力や不確定勢力によって、もう一方側の進撃勢力の進撃が滞った場合に、経済状況のそれと、おなじような構造で、戦況のスタグフレーション、ともいうべき戦線の停滞、が起こり得る。して、その状況では火と風というモチーフに代表される、奇襲・奇手戦術における突破戦術によって、戦況がふたたび好転するケースがよくみられるが、一方で、構造上のそれは、一般進撃勢力であるパーシング(上記記述参照)の進撃のいきおいを十分に止め得るものであり、またそれは四元素をイメージすれば分かることだが、対称軸であるレイド戦術によって、十分に打破し得る、ものである。しかしながら、それらの戦術的差し分が、もし仮になにかの戦場あるいは戦術的要素によって、変化もしくは変更をせまられるものである場合、前述のような戦況の停滞(いわゆる戦況のスタグフレーション)が発生し得るので、そういった状況では、既述のとおり、奇手・奇襲戦術によって、戦況の自軍にとって有利な状態での、突破が可能である、と記しておく。

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Posted by  skywalker_laurence skywalker_laurence 2020年03月11日(水) 16:53:14 返信

こっちにも、貼っとく。

戦闘における戦術の二大大綱として、PersingとRaidがあるが、Persingはいわゆる陣押しで、Raidはそれに
対抗する、いわゆる荒らし、つまり待ち伏せや奇襲などの戦術を持って、相手軍の進撃の勢いを衰えさせる、そういった奇手戦術、のことを指す。いっぽうで、Persingのほうは、自軍もしくは自勢力のいきおいを以て、相手の陣地をひたすらおせるところまで押す、といったようないわゆる進撃戦術、のことである。まぁ、ここまでいうと、進撃にかんしては最早戦術というよりあまりにも王道すぎて進撃する「選択肢」ともとれるのだが、それはさておいて。ちなみに、基本的に四元素でみると、パーシングは火・水から大地・風へと抜ける方向へ、対してレイドは、火・風から水・大地への方向へと抜けていくモチーフになるのがわかるとおもうのだが、パーシングは火・水の突撃戦術から、大地・風への陣地・拠点戦戦術、へと抜けていき、対して火と風の奇襲戦法に始まり、水・大地の待ち伏せ(当然、これはプロセスとしては逆も可)に終わるレイド、というよりかは、単純にそれらの二大方向性によって、戦闘における戦術が構成されている、と取ることもできよう。すなわち、一般的によくある戦闘とは、それら戦術的二大方向性、あるいはその戦術的選択肢の相互相性による繰り返し(当然、陰と陽のように)によって、成立しているものなのである。
      →続き

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Posted by  skywalker_laurence skywalker_laurence 2020年03月11日(水) 16:39:20 返信

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