今は亡き耳かきコリッの避難所

バンコクの耳掃除屋

僕がタイのバンコクに旅行に行った時のことだ。
僕が好きなのは街をぶらぶら歩くことだった。
ルンピニー公園の前を通りかかった時、
色黒のオヤジが向こうからやってきた。
オヤジの腰にぶら下げたものが
ジャラジャラと鳴っている。
オヤジは「オニイサン耳掃除」と
たどたどしく呼びかけてきた。
そして、ぼろぼろの手帳を取り出した。
手帳には「気持ちいいのでぜひ耳掃除を
してもらってください。」とか、
「めっちゃ気持ちイイ〜!」などと書いてあった。
その他の文字も書いてあったようだが、
黒く塗りつぶされていた。
「怪しい…」と僕はつぶやいた。
突然、オヤジが僕にのしかかって来た。
「何をするんですかっ!」
なにがなんでも耳掃除をするつもりだ。
抵抗したが、青い芝生の上に押し倒された。
まあいいか…
僕は諦めて掃除をさせてやることにした。
耳掃除屋のオヤジはそわそわしながら、
僕の耳たぶを引っ張って耳穴を見た。
我々、男二人を遠くから見ると
まるでノミをとる猿同士に見えたことだろう。

ジャラッジャラッ..オヤジの腰の仕事道具が鳴った。
いろいろな大きさの銀の耳かきが
銀の輪でくくられていた。

バンコクの4月は蒸し暑い。
僕の耳には汗ばんだ垢が
たっぷりと詰まっていることだろう。

オヤジは、たくさんある耳かきのなかから
中くらいの大きさのを選んだ。
僕の耳穴に差し込んだ。
コリッコリッ...コリッ......コリッ......コリッ..コリッコリッ...
繊細な動きだった。

コリッコリッカリッカリッカリッ......

こんどは小さい耳かきに持ち替えた。

クリックリッ.......クリッ.....クリッ....クリックリッ
少し強めに掻いている。

くぐもった音しか捕らえなかった耳が
すっきりして涼しくなった。

耳穴の壁のすべてを極細の耳かきで
強めにマッサージされていた。

神経がピリピリと心地よい。
肩こりでこわばった神経が揉みほぐされている
ような感覚だった。
頬の神経がジンワリと熱い。

オヤジは藁を取り出した。
これを耳に入れるらしい。
なぜなのか?と聞いたが、
「大丈夫、大丈夫。」と答えるだけだった。

藁の細い部分を耳穴に差し込んだ。
直後、こそばゆい感覚がゾワワッと来た。
耳の壁の毛とこすれあってガサゴソ鳴っている。
差したり入れたりを繰り返した。
こそばゆくて、涙が出てきてやめてくれ!と
叫ぼうとした瞬間、耳かきで掻いた。

…安堵する。

カリカリカリカリ.....コリコリコリコリコリ......

これらを何回も繰り返すうちに
僕には体力が無くなって来た。
どうにでもしてくれと思った。

少しずつ脱力から快感に近づいていった。

ごにょごにょ、とオヤジが言った。
オヤジは僕の腕に耳垢を乗せた。
ありえない!それは大量の耳垢だった。
「ほらこんなに取れたぞ!」と
オヤジは得意げな顔だった。
「ますます怪しい…」と僕は思ったが、
まぁいいか、気もちよかったから。
勘定が120バーツだと言う。高すぎる、
値切って80バーツにした。
僕は手帳に「このオヤジはぼったくるので注意」と
書いておいた。

このページへのコメント

9r8Brf Major thanks for the blog article.Thanks Again. Awesome.

0
Posted by awesome things! 2014年01月23日(木) 18:13:14 返信

この話が一番好きだw

2
Posted by shui 2013年04月03日(水) 03:08:35 返信

バンコクじゃなくて、なんかインドっぽいね

1
Posted by 猫 2012年12月05日(水) 23:18:53 返信

ぬいた+.(・∀・).+★ http://jn.l7i7.com/

0
Posted by age 2012年02月03日(金) 17:32:39 返信

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