ブランドショップ前 | |
---|---|
美玲 | ここか……わっ、行列……。 遅れてきたから、結構後ろだ……。 でも、珍しいな……そんな人気のブランドだったっけ? |
通行人女A | へー誰か来てるんだ?ストアイベント? |
通行人男A | 広告モデルのアイドルだってー。 |
美玲 | え、アイドルがきてるのか。 ふーん。誰だか知らないけど、人、多すぎだろッ。 限定のヤツ、ちゃんと買えるのかな……。 |
数時間後 | |
美玲 | か、買えなかった……。 なんでだよッ!そんなのありかッ!? 十分な数のご用意がありますってウソだろッ! |
少女が怒っている…… | |
美玲 | ……ん? 何だ、オマエ。いま、ウチのこと見てただろ。 ジロジロ見るなよ。女の子相手に失礼だぞッ!変なヤツ! |
【どうしたの?】 | |
美玲 | えっ、ウチか? ウチはここのブランドの新作を買いに来たんだけど…… もう帰るところだよッ!フンッ! |
【怒ってる?】 | |
美玲 | 怒ってる……わけじゃないけど……いーや、怒ってる! ここのG&Mってブランド、ウチの地元じゃ売ってないんだ。 地元はみんな同じようなのばっかで、面白くないし。 だから、おこづかい使ってここまで来たんだけど…… 買えなかったんだ! アイドルだか誰だか知らないけど、そいつのせいで! |
【ごめん】 | |
美玲 | なんでオマエが謝るんだよ。変なヤツ! ファッションのことなんか知らなさそうだし、 どうせ適当言ってるんだろッ。オトナっていつもそうだ! |
出演したアイドルが所属するプロダクションのプロデューサーだと説明した…… | |
美玲 | ……同僚のプロデューサーの現場を見学に来てただって? さっきのアイドルがなんとかってヤツか? けど謝る必要ないし……なんだか余計怪しいぞオマエ! |
【君もアイドルにならない?】 | |
美玲 | はぁ?アイドル? ウ、ウチがアイドルとかありえないだろ……。 何言ってんだ……。と、とにかくウチはもう帰るから! |
名刺を渡した…… | |
美玲 | あ、どうも……って、名刺なんか要らないってッ! アイドルとか興味ないからな! そいつのせいで新作を買えなかったんだから! |
【モデルとして着られるかも】 | |
美玲 | うッ……いや、気になってないぞ!ホントだぞッ! それよりもウチはもう帰るから! もー、なんでもいいからどけよーッ! |
レッスンルーム | ||
---|---|---|
美玲 | 今日から、演技のレッスンか……。 やったことないけど、ま、何とかなるだろ……。 で、何の演技をすればいいんだ? | |
【愛の告白シーンを】 | ||
美玲 | あ、あ、愛!? そ、そんなのできるわけないだろ! こっちは初心者だぞ!手加減しろよな!? | |
【何とかなるって言ったよ】 | ||
美玲 | 言ったけど!言ったけどさぁ…… うぅ、ハメられた……。 | |
それで、どうするんだよ。 どうすればいいのかわかんないんだから、 せめて演技の方針くらい教えろよッ! | ||
【ツンツンで】 | 【デレデレで】 | |
美玲 | ツンツンで告白なんかできるわけないだろッ。 オマエのことなんか、全然好きじゃないのにさッ! ほ、ホントだからなッ! | デレデレ……てか、告白って、もっとロマンチックなモンだろ。 そういうのは、相手から言ってほしいし……。 ……ウチのことじゃなくて、雑誌にそう書いてあったモン。 |
あぁ、もう!ニヤニヤするな! 言えばいいんだろ、言えば! | ||
……好きだ。 これでいいんだろ、これで。 | ||
【こっちを見て】 | ||
美玲 | なんでだよ。 言ったんだから、いいだろッ! | |
【気持ちを伝えるんだ】 | ||
美玲 | 気持ち、とか……そんなの、演技だから無いに決まってる。 だいたい、理解とか、されなくてもいいと思ってたし。 だから、伝えるのも、苦手だ。 | |
自分から伝えようって思うことなんかないし、 伝えたいこととかも、あんまりないし……。 だから、やり方とかわかんないんだよ。仕方ないだろッ! | ||
【まずは向き合うことから】 | ||
美玲 | 向き合う、ことから……。向き合って、それで…… す、す……好きとか、言えるか! 言いたくても言えないッ!恥ずかしいんだよッ! | |
【伝わったよ】 | ||
美玲 | へ?今のほうが伝わったのか? ちゃんと言葉にできなかったのに……ヘンだな。 | |
……でも、ちょっとだけ、 人への気持ちの伝え方、わかった気がする。 まずは向き合うことから、かぁ……。 | ||
な、なんか、ヘンだな!照れくさいし! 今のわかったっていうのも、演技! 演技だからなッ! |
撮影スタジオ | |
---|---|
美玲 | 宣材写真の撮影か。 さっさと終わらせるぞッ! ウチは、頼まれたから来てるだけなんだからなッ。 |
撮影が始まった…… | |
カメラマン | ん〜。その眼帯、必要? 顔が隠れて、表情がわかりにくいんだよね。 取ってくれない?それ、いらないでしょ。 |
美玲 | と、取りたくない……! 取ったらすぐに撮影が終わるのかもしれないけど…… でも、嫌だッ! |
カメラマン | 愛想もよくないし、表情も硬いし。 こっちがアイドルらしく撮影してやろうって言ってるのにさー。 |
【この子は、これでいいんです】 | |
カメラマン | アンタがそういうなら、それでいいけどさぁ。 はいはい。じゃあ、撮るよー。 |
撮影終了後 | |
美玲 | あ、あのさ。 さっきは……どうも。 眼帯、つけたままでいいって言ってくれて。 |
アイドルらしくはないかもしれないし、 普通ともちょっと違うかもしれないケド……これがウチなんだ。 そりゃ、他のヤツから見たら、ヘンなのかもしれないけどさ……。 | |
【たくさんの人に認めてもらおうな】 | |
美玲 | えっ……。 |
ほ、本気で言ってるのか。 今まで、そんなこと言ってくれるヤツ、いなかったぞ。 びっくりした……。 | |
【キミのPだから】 | |
美玲 | へへっ。やっぱりオマエってヘンなヤツだな! |
美玲 | っていうかオイ! なにほのぼのイイ話でした、みたいにしようとしてるんだよッ! ウチはアイドルなんかならないって言ってるだろッ! |
オイ!ウチの話聞けよ!オイ! スーツ!ネクタイ!オマエ! ……プロデューサー!って、ホントに聞けよ〜! |
TV局 スタジオ | |
---|---|
美玲 | なんだここ。 TVのセットってこうなってるのか……へー。 ……ま、興味ないけどな。 |
【初仕事だよ】 | |
美玲 | 何が初仕事だよッ。トークバラエティなんて。 知らないヤツと群れるとか面倒だし、ウチは一匹狼なんだ。 何も喋る気なんてないからなッ! |
【本気?】 | |
美玲 | 本気に決まってるだろッ! 無理に喋らせようとしたら、司会を引っかいてやるッ! ウチは強いんだからなッ。 |
【……勝手にしなさい】 | |
美玲 | ……フンッ。言われなくても、そうするモンッ。 |
司会者 | 今日集まってもらったのは、注目の新人アイドル10人! お題にしたがって、喋ってもらいましょう! まず、初めのお題は……ドン!『友達との話』! |
アイドル | はい、はい、はーいっ! |
美玲 | フンッ……。 |
司会者 | 続いてのお題はこれ! 『好きなモノの話』!そろそろ、喋ってない他の子からも お話を聞いてみたいところだけどー? |
アイドル | はい、はい、はーいっ! |
美玲 | え……あ……。 |
休憩中 | |
【大丈夫?】 | |
美玲 | 大丈夫じゃないの、見ればわかるだろッ! 全然喋れてない。やっぱり来なきゃよかったんだ……。 |
○○P | 強いのに逃げちゃうの? |
美玲 | くッ……。 逃げ……逃げるわけないだろッ!ウチは強いんだ。 ……オイ、オマエ。どうしたらいいんだ?教えろよッ! |
【自分の話をするんだ】 | |
美玲 | そんなの、できる場面、あるのか……? でも、甘く見られたままもイヤだし。 仕方ないから、やってやるよッ!見てろよッ! |
AD | 本番お願いしまーす! |
司会者 | では、次のお題は『自分のこだわり』! アイドルこだわりのアレコレを 語っていただきましょう! |
美玲 | は……はい!はい! |
司会者 | おっ、じゃあ、二段目に座ってる奇抜な ファッションの君!早坂美玲ちゃん! |
美玲 | う、ウチのこだわりは、ファッションだ。 眼帯もつけるし、ツメもつけるぞッ! 全部、お気に入りのブランドの服なんだ! |
司会者 | へぇ、攻撃力の高そうなファッションだねー。 |
美玲 | 強そうに見えたほうがカッコいいだろ! ウチはチャラチャラしたほかのアイドルとは違うからなッ! 強いんだッ! |
司会者 | え〜、ホントに強いの〜? |
美玲 | ム……そんなこと言うと引っかくぞッ! |
司会者 | うひゃー! |
収録は順調に進んだ…… | |
収録後 | |
【お疲れ】 | |
美玲 | ……お、おつかれ。 |
【強かったよ】 | |
美玲 | フンッ……そ、そうか。 |
【部屋を出る】 | |
美玲 | はぁ……。ひとりでいいと思ってたのに、 結局、ひとりじゃ何もできなかった……。 それに、人の意見も、たまには役に立つ……。 |
あと、一匹狼もいいけど、たまには引っかけるヤツが いるっていうのも、悪くないモンだな。 ……アイツ、悪いヤツじゃなさそうだし。 |
コメントをかく