まとめ:雅ちゃんがももちの胸を触るセクハラ

706 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/01/23(月) 09:42:11.77 0

フェルト裏・断片-1

手芸材料のお店には、ただ買い物したくて来ちゃったけど
もしかして、みやもアクセサリーならと思ったら、当たり。
パーツを見て喜んでるみやを見たら、嬉しくなった。
デートだってみやは言った。知らなかったよ。恋人同士なの?かわいい。
初デートならさぁ、ももだって何かいろいろ考えたのに。

みやが寝坊してきた上にあんまりにもノープランだったから、思わずいろいろ文句言っちゃったのは誤算。
でもいっぱい話したいって言われたのは嬉しい。
それをストレートに伝えてくるみやが。なんか、羨ましくも思ったり。
やっぱりさ、みやってももの事好きなんじゃないの?

刺しゅう糸買ってきていい?って聞いたら上の空で返された。
可笑しい。もしや置いてって平気かなこれ。
戻ってくるね、そう言って離れたんだけど。

糸を選んでいる最中に着信。
電話してくるのも珍しい。
「ももごめん、今いいかな」遠慮がちに舞美が切り出した。

大学生っぽい人たちと連れ立っている佐紀ちゃんを見たという。
「どこで」
「見たのはいつもの駅のホームなんだけど、反対方面で」
「……わかった。ありがと」
「私も、ホントは嫌なんだ。佐紀が大学生と遊んでるの」
「うん。告げ口したなんて思わなくていいからね」

電話を切った。……うー、わかってたけど。キツいな。
反対方面で電車っていうなら。センセーを見た、あの店がちょうど同じ方面。
今のところ他に知ってる場所もない。ダメ元だっていい。行ってみる。
佐紀ちゃんにメールしてみようか。一瞬そう思ってケータイを開く。
この際、嘘を吐いたって、そこまで思ったけど
なんて送ったらいい?

気配を感じて顔を上げると、みやがちょっと離れたところに立ってこっちを見ていた。
そうだ。みやと、デート中だった。

ごめん、ごめんね。今は、行かなきゃいけない。
昨日つくったフェルト、いらないって言いながら、受け取ってくれたみや。
そういうところ好きだな。
誤摩化せたなんて、思ってない。


707 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/01/23(月) 09:43:12.22 0

断片-2

すっかり夜も更けていた。ホームの端っこに空いているベンチを見つけて座る。
どーしようかな。
さっきのがももだって佐紀ちゃんにバレてないならその方がいい。
そう思うと迂闊に連絡も取れない。
危機は脱した、なんて思ったけど
すぐに帰る気にもなれなくて途方に暮れた。
落ち着かない。
メール着信が鳴って慌ててポケットに手を突っ込む。店長だった。
「やつら今ウチで遊んでるし、おともだちは無事に帰ったみたいだよ」
今頃気がついた。そっか。服がそのままじゃ見つかると思って着替えさせてくれたんだ。
あのまま逃げ切れずに掴まっていたら。想像して身震いする。
とりあえず、無事で良かった。のかな。
佐紀ちゃんもさすがにヤバイことに気付いただろう。
あの人たちは、引いてる境界が違いすぎる。

気付いてくれてるといいけど。
佐紀ちゃんは、ももよりずっと大人になってる。それはわかってる。
だけどまだ過信するのは早いよ。
これ以上はムリ。これ以上は
ももだって知りたくもない。

ケータイを仕舞おうとして、急に思い出す。
ねえ。今日はみやと遊んでたのにね。
ちょっと言い合ったりもしたけど、気を使わなくてもいい
思いがけない自由さもあった。

真逆だと思ってたけどな。何が合うんだろう?

一日が長過ぎた。待ち合わせしたのがすごい前のことみたいに思う。
初デート、なんて言ってたのにね。さすがに、なんかなぁ。悪い事したよね。
帰ったらすぐ連絡しよう。うん。ちゃんとメールしよう。
今はアドレスだって知ってるんだもんね。

今、みやと連絡が取れるんだ。そう思ったら、ふっと頬が緩んだ。
すごいな。すごい、近くなってる。
不意に、電車の到着を知らせるアナウンスが耳に飛び込んできて
車両がホームに入ってくるのが目に入った。

うん。帰ろう。


708 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/01/23(月) 09:44:06.96 0

断片-3

佐紀ちゃんは最早、ももに嘘を吐くことも厭わない。
そのことが伸し掛って潰れそうになる。
なんでよ。腹が立って握りしめた手が震えた。
「私だってそこまでバカじゃない」佐紀ちゃんそー言ってたじゃん。
ももだってそう思ってたよ。
だけど

何度も反芻する。センセーはももに言った。
「みーんなちょっと遊んで大人になってくもんなの」
そんなことない。言い返してやりたかったけど
本当にそれが、世の中の大人なのだとしたらどうする?
バカなのが、ももの方だったらどうする?

ゆっくり息を吸ってみた。わからない。
大人が何なのか、わからない。
わかってるのは
今、泣きそうな気分だってことだけ。
もも一人でカラ回りだ。

駅に辿り着いてから、家に帰るバスを何本見送っただろう。
乗っちゃえばうちなのはわかってるんだけど。
柱に寄りかかるとそのまましゃがみこんだ。
寒い。何度もゾクリと寒気が這い上がってくるから、ぎゅっと体を抱きしめて顔を埋める。
早く、自分を納得させなきゃならない。
佐紀ちゃんの自由なんだって。

携帯が鳴った。
バッグから取り出して発信者の名前を見る。
バックライトが手元を温かく照らした。

みや。
今ね、世界一情けない気分なんだ。今話したくないんだ。
何にも楽しい話できない。会いたくない。
今優しくしないで。お願いだよ。

みやが優しいから、行かないでって、思っちゃったじゃん。

709 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/01/23(月) 09:45:10.35 0

みや優しいの。そんなの昔っからそうなの。知ってる。言い訳にもならないか。
さっきまで思ってたことの真逆。

一緒にいて欲しい。

なんでそんなこと思っちゃったんだろ、我慢できなくなった。
割れそうな頭の中、膨れ上がる気持ちを捕まえ損ねる。押さえ込めない。
いつももうちょっと上手くやれんのにな。イライラする。ケータイをきつく握りしめた。
どうしよう、抑えなきゃ、堪えて……

「じゃあ。みや行くからね」
うん。それでいいよ。ももは大丈夫。
嘘。大丈夫じゃない。
お友達と約束してるなら、そっち行ってよ、当たり前じゃん。
違う。電話なんかしてくるから……

「いっちゃやだっ!」
リミッターが吹っ飛んだ途端、一気に展ける視界にびっくりする。
叫んで、初めて、酷く興奮してることに気がついた。
道の向こう側、みやが凍り付いたような様子で固まったのが見えた。

行っちゃやだ、だって。何言ったの。
ほら、みや困ってんじゃん……
自分のやってることに腹が立つ。
でも「こっちに来なよ」って、みやが言ってくれたんだ。
そのまま寄りかかったら、みやの手があったかすぎた。

「いこ」
軽く、手の平でももの背中をぽんぽんしながら、みやが言った。

熱あるってみやが言う。心配そうに覗き込まれた。
そうか、だからか
じゃあしょうがないやって……
思い切って、甘えてみたんだ。

みやはずーっと優しかった。ごめんね。


710 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/01/23(月) 09:46:19.69 0

断片-4

みやの顔見たら、ちょっと泣きそうになったのは内緒。
今日は楽しく過ごそう。そう思った。

今回はちゃんと待ち合わせもできて、お目当てのケーキ屋さんもすぐ見つけられて
美味しそうなケーキは我慢しない、飲みたい!って思ったジュースも買っちゃった。
ちょうど寄り道できる公園があって
みやとはしゃいで。本当にデートみたいな、くすぐったい気分。

「ももケータイ鳴ったよいま」みやが言った。
メールが来ていた。……佐紀ちゃん。
どうして。
これだけは、すぐに見なければいけなかった。
みやに断って、ケータイを開く。

“先生とはもう会わない。それだけ”

その一行を何度も何度も目でなぞって、やっと落ちてくる。
全身の力が抜けた。
この、言い訳も何もないぶっきらぼうなメールは
今後あの人たちと一切関わりを断つっていう宣言だろうと思った。
こんな風に、ももに知らせてくれる佐紀ちゃんの強さを、知る。参った。
こんなことされたらももの完敗だよ。
ね。佐紀ちゃんはやっぱり、ももよりずっと大人なのかもしれない。
ももがバカみたいに走り回らなくたって
最初っから佐紀ちゃん1人で処理できたのかもしれない。
かっこいいね。

……そんなこと、わかってたような気もする。

「何があったのか、訊いてもいい?」
みやが恐る恐る言ってきた。
「みやが知らなくていいことだよ」
バカなももの事なんて知らないでいて。
訳知り顔で嫌な大人たちの事も知らなくていい。
みやは今の、柔らかくてキレイなみやのままでいて欲しいって
そう、思う。

「みやがいてくれてよかった」

本当だよ。ずっとずっと、みやがいてくれて良かった。
もものこと見て、笑ったり、怒ったり
心を傾けてくれるみやに何度も助けられてた。

「つらいことがあったら、いつだって来ていいよ」
どうしてこんなに優しいんだろ。みやって何でできてんのかな。
肩にそっと寄りかかったら、そのまんま受け止めてくれる空気があって。
こんなの初めてだ。いいのかな、こんな幸せなの。

711 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/01/23(月) 09:47:11.72 0

「一緒に強くなればいいじゃん?」
みやがそう言った。
そう、そうだね、みやのそういう強さに憧れもした。
ももが持ってないものばかり、いっぱい持ってる雅ちゃん。
せつない。

みやの顔が近づいてきて、唇が、触れた。

ギュって、心臓が止まりそうになった。
何これ?待って、これって
キスしてんのかな。触れてる、少し濡れた唇が
困る。違うの、嫌じゃないんだけど

……嫌じゃないって、なに。

そう思ったら、さらに強く唇を押し当てられた。ふわっと口の中に甘い香りが広がる。
イチゴとクリームが混じり合った甘くてとろける香り
「……ん」
体の芯を掴まれて揺さぶられるような、初めての感覚に目が眩んで

柔らかい唇が、あったかい手が、くっついている体全体が
ももの全部、許してくれるような気がした。
気のせい?

ねえ、ももでいいの?
唇を触れ合わせたまま、みやの体を強く抱きしめたら、気持ち良くて
喉の奥から声が漏れた。
みや。

これ、全部預けちゃうことになるんだけど……
あ、だめだ、わかんなくなる。だめ、少なくとも、こんなの全然強くなれない
どんどん甘えて、どんどん弱くなる。

唇が離れた瞬間、ふっと吐息がかかって絡み合った。
何が起きたの
ぼーっとしたまま、みやに寄りかかってしまう。
ねえ、弱く、なるんだけど。

気がついたら、みやが泣いていた。キレイな涙。
弱いももが嫌なの?
でもさ、仕方ないじゃん。みやのせいだ。

全部みやのせい。そう思ったら愛おしさに胸がぎゅっと詰まった。
これは。これって。なんてやっかいな感情だ。笑っちゃう。

「ももね、みやのことが、好き」
「んっ……み、みやも」

沸き上がった感情があったかくて胸が詰まる。もう1回、キスしながら、思う。
みやを、手に入れてしまった。
もしかして

いくらだって弱くなれる強さを手に入れたのかな。


712 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/01/23(月) 09:48:22.95 0

ーーー
epilogue

みやを護らなきゃいけない。思いながら焦るばかりで
できればずっとキスして、キスし続けてこの危機を逃れられたら。
必死に体を掻き抱いたのに、みやが何かに気付いたように、ふっと唇を離した。
駄目。みや、回りに気付かないで!ももの目を見て!
みやはじっとこっちを見つめて、そしてこう言った。
「大丈夫。みやはせーらーむーんだから」
「えっ、みやがせーらーむーんだったの!?」
「うん♡」
みやはそう言うと、肩から手を離してベンチの上に立った。
「これで変身できるんだよ」
みやはポケットから何か小さいものを出すと小指の先に取り付けた。
それ違う!それ、私があげたやつじゃん!それ変身できない!
「いくよ!みや・びーーーーーーーーーーーーーーーーむ!」
「みや……!」
恥ずかしくて涙が出そうになった。違うそれじゃムリなんだってば!
それだけじゃ駄目なの。バカバカ!
一緒につくったみやの指人形と一緒にしないと変身できないんだよ……っ

目がふわっと開いた。そのまま、起き上がる。
あれがないと、だめなんだってば。
のそっとベッドを降りるとクローゼットまで這っていく。
そっと扉を開いてバッグからお財布を取り出した。カードホルダーに指を突っ込むと
ぺっちゃんこのフェルトが指に触れた。あった。あった、よかったぁ。
ほら、みや、これがあれば大丈夫、これがあればせーらーむーんに……
そう思いながら振り返る。

カーテンの隙間から朝日が差し込んでいた。
ベッドの奥の方に寝ていたみやの足がお布団をはね除けて飛び出している。
「……変身……しないよねぇ」

うんうんうんうん。頷きながら全てをもとに仕舞うと
ぼーっとしたまま、またのそのそとベッドに戻る。
飛び出しているみやの足をそっと戻してやると、隣に潜り込んだ。
「んー」ってみやは唸ると寝返りを打って、しがみついてくる。

ベッドサイドのスマホを片手に取ると、もう起きてもいい時間だった。けど
もうちょっと。ぬくぬくしよう。顔に乗っかってきたみやの腕を取ると
手のひらにキスしてから、肩のところに潜り込んで頭を寄せた。

愛してる。

ーーー

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