まとめ:雅ちゃんがももちの胸を触るセクハラ

241名無し募集中。。。2019/03/08(金) 00:15:14.300

桃子のスマホが軽い通知音を立てたのは、3月6日の夜11時過ぎだった。
ソファでのんびりと本を広げていた桃子は、ゆるりとスマホを手に取った。
予想通りのメッセージが目に入って、桃子はふっと目を細めた。

"あと30分くらい"

雅からのメッセージは、そっけなく短い。
だからこそ、その向こうに雅の逸る心が透けて見えるような気がした。
遅くまでお疲れ、と桃子が送ったメッセージには、すぐに既読が表示された。

「まぁだかな」

不意に口を突いた心の中身。桃子は一人でふふふと笑いをこぼす。

雅の帰りが遅いのを責めるつもりは全くなく、むしろ桃子はその姿に小気味よささえ感じていた。
雅が仕事熱心であることは知っているし、何より仕事をしている時の雅は活き活きと輝いているから。
それに、雅が今日だけは、と頑張って空けようとしてくれていたことも風の噂で耳にしていた。
とはいえ、小さじ一さじ程度の寂しさが胸にあることも事実。
こればっかりは、雅がそばにいない以上、どうすることもできない。
リビングの時計を見上げた桃子は、小さく息を吐いて本に目を戻した。

何度見上げても進まない時計にほんのりと焦らされながら、待つこと30分。
本を読むことを諦めた桃子は、ぼんやりとテレビを眺めていた。
深夜のノリで展開される空っぽの内容が、桃子の目や耳をするすると通り過ぎる。
そんな桃子の意識を断ち切るように、インターホンが鳴り響く。

「おっ」

その音に、桃子はソファから飛び上がるようにして立ち上がった。
素足でペタペタと玄関へと向かう間にも、桃子の表情は勝手に緩む。
鍵を持っているくせに、雅はたまにインターホンを鳴らすことがあった。
いつだったか、その理由を尋ねると、「なんかいいから」と当たり前のように雅は言った。
最初は笑ってしまった桃子も、何度か鍵を開けてやることが積み重なって今ではその理由を実感している。
なんかいい。開けてもらう側も、開けてやる側も。
逸る気持ちで鍵を回し、桃子は一歩後ろに下がった。
いつもなら、雅がドアを開けて、満足そうな顔をしながら入ってくるはず。
だが、今日はそのドアがぴくりともしない。
桃子が不思議に思っていると、「あけてー」と聞こえてきた。

「みやー?」
「はやくーももあけてー」
「はいはい」

ドア越しに響いた雅の声は、どこか平坦だった。
こういう時の雅は、ふざけているか苛立っているかのどちらかだ。

「おかえ――」
「ただいまぁ」

243名無し募集中。。。2019/03/08(金) 00:15:46.370

桃子がドアを開けようとすると、雅がドアの隙間からぐいっと体をねじ込んできた。
その両手に抱えられた、大量の紙袋。
道理でドアを開けないわけだ、と桃子の脳内で繋がる。

「あーっ、おっも!」

よろよろとした足取りでソファにたどり着いた雅が、豪快に両手の荷物をソファに下ろす。

「うわっ、すごい荷物。どうしたの?」
「どうしたんだと思う?」

分かってんでしょ、というように雅の眉がぴくりと動く。

「えぇ、なんだろ?」

桃子が本気で首を傾げると、雅の眉がきゅっと真ん中に寄った。

「みや、今日事務所行ったわけ」
「うん」
「そしたら、可愛い可愛い後輩ちゃん達がいたわけ」
「うん」

雅の言葉に従って展開された想像の中で、後輩達に囲まれる雅が浮かぶ。
ふわふわのひよこ達に囲まれてタジタジのオオカミみたい。
そんなことを雅に言えるはずもなく、桃子は「それで?」と先を促す。

「……分かんないの? 本気で?」
「……うん」

桃子が小さく頷くと、眉間に皺を寄せたままで雅が「それ」と指差した。
ソファに転がる紙袋の一つ。
よくよく見れば、紙袋には可愛らしい付箋が貼り付けられていた。

"嗣永さんへ"

その文字列を認識して、桃子はようやく合点がいった。

「これ私宛? え、全部?」
「そ。帰り道大変だったわー」

コートから袖を抜きながら、雅が演技がかった仕草で肩を回す。

244名無し募集中。。。2019/03/08(金) 00:16:16.800

「てかさー、もうみやよく知らない子とかもいんのよ」
「よく受け取ったね」
「いやいや、突っ返せないでしょーが」
「そっか」

コートをハンガーにかける雅の横顔を眺めながら、優しいよねえ、と桃子は思う。
引き受ける義理より、断る理由の方が大きいだろうに。
あるいは、名も知らぬ後輩であっても頼られたことが嬉しかったのか。
きっとどっちもなんだろうな、と桃子は眉を下げた。

「一個もらっちゃったら引っ込みつかなくなっちゃって。気付いたらめっちゃ持ってたよね」
「電車とか大変だったんじゃ」
「ほんとそれ。あー疲れたっ」

すっかりラフな格好になった雅が、紙袋をかき分けてソファに腰を下ろす。
てきぱきと髪の毛を一つにまとめる雅を眺めていたら、雅がちらりと桃子目をやった。
期待のこもった、キラキラした視線。
仕方ないなあ、と桃子が笑うと、雅はしらばっくれるように口をすぼめた。

「どこ? 肩?」
「と、首」
「はいはい」

ぺたんとソファに体を預けた雅が、背もたれ側に回る桃子を目で追いかける。
雅は自然と、桃子を見上げるような格好になっていた。
整然と上向いた雅の睫毛が、桃子の目に飛び込んでくる。
まっすぐにこちらを見つめてくる雅の瞳に耐えきれなくなって、桃子は雅の顔をひょいと持ち上げた。

「ちゃんと前見てて」
「えー」
「揉むんでしょーが」

何がおかしかったのやら、けらけらと笑いながらも雅は大人しく姿勢を正す。
衣服を着ていてもきっちりと形を保つ雅の肩が、桃子の前に差し出された。
かりかり、なんてからかうこともあるけれど、雅の肩の骨格は彫刻のように美しいと桃子は思う。
その骨格の上に誂えられたしなやかな筋肉と、薄いけれど柔らかな肌。
桃子は雅の肩に手をかけると、その筋肉をほぐすように力をかけた。
そこそこ、というように雅が頷く。

245名無し募集中。。。2019/03/08(金) 00:16:42.740

「あーこれはこれは、お客さん凝ってますねぇ」
「ちょっと今日、嗣永桃子さんって人のせいで荷物重かったんで」
「それはそれはお疲れ様です」
「ホントですよー。あ、その人、今日誕生日なんですけどね」
「わーめでたい! あの、実は私も今日誕生日で」
「えっ、ぐうぜーん! おめでとうござ……ていうか! すみません、誕生日の人に揉ませちゃって」
「ほんとーですよね」

なにこれ、という桃子の苦笑と、雅が吹き出す音が重なる。
首の付け根あたりに親指を押し込むと、雅が「ひゃあ、」と間抜けな声を漏らした。

「てかさ、ケーキ。買ってないんだけど明日でいい?」
「いいけど。ケーキなくても良いよ?」
「ケーキは食べたいでしょ。みやも食べたいし」
「あ、後半が本音だ」
「バレたか」

桃子の指を絡め取った雅が、ゆるりと桃子を見上げる。
ちらりと歯を覗かせてにやりと笑う雅が、桃子の目にはほのかに幼く見えた。

「ということで、さっさと寝よっか」
「え、もう?」
「明日、早いし」

ぽろりとこぼれて聞こえた言葉に、桃子はぴくんと指先を震わせた。

「それって」

3月7日は雅がオフの日だから、二人で過ごせるね、なんて話は少し前にしたばかり。
誕生日の次の日になっちゃうけど、ごめんね、と雅がしょげていたのも記憶に新しい。
ともすれば、桃子よりも雅の方がしょんぼりしていたのではないか、と思うほどに。
立ち上がった雅が、軽やかにくるりとターンを決めて桃子を振り返る。

246名無し募集中。。。2019/03/08(金) 00:17:06.980

「ま、期待しといてくれてもいーよ」
「ハードル上げるねー」
「その方が燃えるし」

そこらの子達には負けないから、と宣戦布告をするように、雅は紙袋達を指差した。

「わー、みやの誕生日に返せる自信ないなー」
「別にももにはそういうの期待してないから」
「ちょっ、ひど、」

抗議しようとした桃子の体は、真正面から雅の腕に包み込まれた。
まとめきれていない雅の髪の毛が、桃子の頬をふわふわとくすぐる。
雅は鼻先を擦り付けるようにしながら、桃子の肩に顔を埋めてきた。

「……ちゃんと、毎日返してもらってるし」

うっかりしていると聞き逃してしまいそうなほど、ささやかな声量。
聞き返そうとする桃子を遮るように、背中に回された雅の腕の力が増す。
仕方がない。桃子はそっと雅の背中を撫で上げ、首の後ろに手を添える。
手のひら全体で触れた雅の肌は、さっきよりも熱っぽく思えた。

「もー、自分で言っといて照れないで?」
「っさいなー」

拗ねたような雅の言葉の奥に渦巻く、とろとろとした甘さ。
それに気付いた途端、体の芯からじんわりとした熱が全身に広がっていくのを桃子は感じた。

「分かった、早くベッド行こ」

雅の背中をあやすように叩きながら、桃子はそう言った。

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