まとめ:雅ちゃんがももちの胸を触るセクハラ

328名無し募集中。。。2018/11/28(水) 22:27:53.930

それは、通り過ぎる一瞬手前に、ちらりと目に入ったもの。
あれ?あー、まあいいか。
多分私の頭の中はそんな感じ。だったんだけど、なぜか足は勝手に歩みを止めた。
いや、よくない。
振り返ると、植え込みの中、やっぱりスマートフォンが落ちていた。
ピンク色のつるんとしたケースの背が、引っかかった枝の隙間から見えていた。
ここは会社のA館とB館を繋いでいる狭い小道で、公道から入れるから誰でも通れるんだけど
まあ、間違いなく会社の人しか通らない。
近付きながら、何でこんなとこに落としたんだろう、と思って
それから、誰だろう、と思った。
とりあえず、こんなケースは社内で目にしたことがない。
当たり前か。うちの社員は300人からいるし、この場所じゃA館の人の物なのか、B館の人の物なのかもわからない。
手を伸ばしかけて、引っ込める。
これ、拾っていいのかな。
落とし主を探して回るような暇はないんだけど。
だったらこのままにしておいた方がいいのかな。
こんな大事なもの落としたなら、すぐに気づいて戻ってくる可能性も高いし。
そこまで考えて、私は思いついた。
そうだ。総務に届けよう。
すぐに社内のイントラ経由で掲示が出て、落とし主のもとに戻るだろう。
私は手を伸ばす。
小枝が当たったりして傷付かないよう気をつけながら、そっとスマホを拾い出した。
ちょうど総務のあるA館へ向かうところだ。ついでに届けてやればいい。
ポケットからハンカチを出して、スマホを包んでいると、A館の方からぱたぱたと足音が近づいて来た。
私は上げた顔をそちらに向けた。
小道に入る角に現れたのは、見知らぬ社員だった。
見たことない若い女の子。何年目だろう。自分より後なら入社式とかで顔くらいは見てるはずだけど。
彼女は立っている私の姿を認めると、大げさに肩をびくっとさせて立ち止まり
それからぺこりと会釈して、道に入ってきた。
顔をきょろきょろ動かしながら、石畳や植え込みに視線をやっている。
間違いないだろう。
私は笑顔をつくると「お疲れ様です」と声をかけた。

330名無し募集中。。。2018/11/28(水) 22:29:34.540

「あっ。お、お疲れ様です」
肩くらいの黒髪。眼鏡の奥の黒目がこちらを見て瞬きした。
紺色のパンツに黒いパンプス。グレーのカーディガンを羽織っている。
この地味さ、真面目っぽさは間違いなく新人だ。
私が「これかな?」と言いながら、スマホを見せると
彼女は大げさなほど深く息をついて「それですぅ」と言いながらホッとしたように口許を綻ばせた。
「なんでこんなとこに落とすの」
思わず笑いながら言うと
「さっきここを走って通り抜けた時、落としたのかもしれないです」
そう言いながら、彼女はカーディガンのポケットを撫でた。
「そんなちっちゃいポッケに入れとくからだよ。気をつけな」
手渡すと、彼女はスマホを大事そうに両手で挟んだ。
「戻るの?」
私がA館を指さすと、彼女は頷いた。
並んで歩き出しながらどこの部署か聞こうとして、私は彼女が胸に下げている名札の色に気が付いた。
社員証じゃない。
「派遣さんかな?」
「そうです。10月から」
「何やってるの?」
「営業事務で」
「そうなんだ。見たことない顔だなーって思った」
「どちらの方ですか?」
「私?企画部」
「あ、じゃあB館ですかね」
「そうそう」
通用口に社員証をかざし、ドアを開けて、私はどうぞと彼女を先に通した。
恐縮したように小さい体を丸めながら中の廊下に立つと、彼女は振り返って
「ありがとうございます」と頭を下げ、にこっと微笑んだ。
営業なら廊下を右へ行ったエレベーターだ。
私は彼女に手を振ると、左の階段へ向かった。

333名無し募集中。。。2018/11/28(水) 22:32:20.680

私は社内でなっさんと呼ばれている。
いつからそう呼ばれ始めたのかももう思い出せないが
周りから親しみを込めて呼ばれるこの渾名を、私はけっこう気に入っていた。
A館の用事を済ませて自分の部署に戻ると、私はパソコンのブラウザを立ち上げ
イントラから内線表を表示した。
なんとなく、さっき会った彼女の名前を知りたくなったのだ。
しかし、内線表には派遣の営業事務の名前など、載っていなかった。
「なっさん、これ、注文してたクリアファイル届いてるよ」
声をかけられて横を見ると、くまいちゃんが立っていた。
くまいちゃんは私と同期で、仲良しだ。
モデルのように背の高い美人だが
おしゃべりしていると、いろんなことがどうでもよくなってくる癒し系女子だ。
「ね、先月営業に入った派遣の子って知ってる?」
私は試しに聞いてみることにしたが、返ってきたのは「知らない」という答えだった。
「何?知りたいなら営業のインフォでも見てみたら?」
「んー」
各部署のインフォは階層が深い上にトピックが多い。
そこまでするのは面倒だった。
「先月のお知らせに載ってるんじゃない?」
「ううん、いいや。どうしてもっていうようなことじゃないし」
私はブラウザを閉じると、クリアファイルを受け取り
隣に座ったくまいちゃんと他愛ない雑談に入った。

これは、後になってから思ったことだけど
もしあの時頑張って営業のトピックをさらってみたところで、見つけた苗字は読めなかっただろう。
実際、名前を教えてもらった以降も、私はその苗字をすぐに忘れた。
今度こそ覚えたような気がするのに、思い出そうとすると読み方を忘れている。そんな苗字だった。
別に苗字なんて何でも構わなかったのだ。
後日私は彼女をもーさんと呼ぶことになる。
この日は、私ともーさんが出会った日だった。

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