まとめ:雅ちゃんがももちの胸を触るセクハラ

732名無し募集中。。。2018/12/06(木) 07:23:45.530

往復の交通費と宿泊代で合わせてひとり1万5千円くらい。
っていうのは、何かの間違いだろうと思っていた。
目的地まで長距離普通列車で行くんだよ。ともーさんは言った。
在来線の終点で列車に乗り換える。
私たちは、ノスタルジックなボックス席に並んで腰掛けた。
窓が開く列車だ。寒いから絶対開けないけど。窓の外は、もう深い山並だ。
もーさんは紺色の長いダッフルコートを着ている。
パディントンベアみたい。と私は思った。
赤い眼鏡が妙に似合って、マスコットみたいだった。
私の茶の革のコートを眺めて、もーさんは
「こっちの方がいっこ上なのに、子供みたいで嫌になるね」と言った。
「今は同い年じゃん」と言うと「それにしてもだよ」と笑う。
駅で買ったお弁当を食べてやっと人心地ついた私たちは
初めて互いに、普通の友人のように、自分の話などした。
もーさんは妹の文句を言う。意外にも説教ばかりされてるらしい。
「お母さんからのLINEちゃんと読んだ?」とか「たまには実家にも帰りなよ」とか「そんな服前も買ってたじゃん」とか。
「……また言い方がキツくてさぁ。でもりーちゃん本当は、私のことすっごい好きなの」
なんて言ってにやけるから笑ってしまう。まあそりゃお姉ちゃん、ずいぶん甘やかしてんだろうね。
どうしてだろう。
求めていたのは、こんな関係だったのに
求めているのは、こんな関係じゃなくて。
向かいに掛けていた女性が降りていったタイミングで、私は言った。
「お返事は?」
「そうだね。でもちょっと待って。なんかね、今、いい感じじゃない?」
耳の奥で言葉が溶ける。自分だけが急いてるみたいで、ちょっと恥ずかしくなった。
確かにそう言われると、この、女子旅みたいなのも、すごい幸せなんだよね。
平和そのもの。
車窓のガラスを通した陽の光は、ぽかぽかと温かく、明るく
並んで座る、私たちを照らしていた。
もーさんが、口を開いた。
「聞きたいんだけどさ、片思いとか、両思いとかそういうことじゃなくて
私がうんって言ったら、私たち、付き合うってこと?」
「そう」
「デートしたり?」
「そうだよ」
「こんな風に、旅行したり?」
「うん」
あれ?うん。それでいいはず。そう思いながら、私の頭の中にもやがかかった。
「その、先は?私たち、どうなるのかな」
「そんなこと」
ものすごく、ものすごくつまんないこと言われる予感に、私は体を硬くした。
そして、それは、実際、そうだったんだ。
「私たちに、未来はあんのかな?」
そう聞かれて、私は、あるよ。と、即答できなかった。

733名無し募集中。。。2018/12/06(木) 07:26:44.860

「素敵な男性と出会って、結婚して、家族親戚友人に祝福されて式挙げて
いい奥さんねなんて言われたり言われなかったり
子供何人欲しいとか、苦労しながら育ててとか、いずれ孫に囲まれてとか
それ、捨てる?捨てる気ある?
それってさ、必死で掴みに行くのに値する、未来だと思うよ。
だったら今……こういうことで足踏みしてる暇ないと思うんだけど。私たち」
もーさんが並べ立てる、面白くもなんともない言葉の響き。
なにその、すごい現実み。
一言一句に打ちのめされて、私は返事ができなくなる。
そう、このまま、独身ずっと続けたら
きっと何か問題あるんだろうねとか、残念な人だなんてこっそり思われ
まあそんなのは構わないけど
このまま、腕に自分の子を抱くこともなく、親をいつまでも安心させられなくて
……そんなこと考えるのも嫌だ。
甘ちゃんだと思われようが、実際、私は甘ちゃんだった。
「私だって、そうだよ」ともーさんは言った。
「平々凡々で何が悪い。私だって、いいご縁があったら、早く結婚したいもん」
真っ当すぎて、笑うしかない。
どこを見ていいかわからなくなって、私は窓の外の流れる景色を眺める。
こんなこと考えなくていい、10代のうちに出会いたかった、なんて
言いそうになったけど、バカみたいだから言わなかった。
大人になってコントロールできるようになった自分の熱量を思う。
もーさんもけっこうな熱量を抱えてそうだ。
きっと、喧嘩ばっかしてあっという間に終わってただろうね。
もーさんが不意に、私の手を握ってくるから、切なくなる。
「私たちは大人だからさ」
「そう、だね」
「一緒に、この気持ちを捨てに行きませんか?」
私は目を見開いた。なんつー提案だよ。これってそういう旅かよ。バッカじゃない。
「……参ったな」
「お互いに思いっきり感情を叩きつけてみたりとか、どうですかね」
私は笑った。そんな失恋の仕方、初めてだ。いや、まだ、始まってもいないのに。
まだ、あなたのこと何も知らないのに。
「私も、なっさんもね、もう充分、傷付くとこまで来ちゃってんだよね」
どきりとして、顔を見ると、こちらを見ているもーさんの目はキラキラと輝いていた。
私は確信した。もーさんは絶対どっかにマゾの気がある。
ゆっくり、呼吸する。
「いいよ。お互い好きにしていいってことでしょ」
絶望の中にあるその予感は、あまりにも甘美で、我慢できそうにない。
もーさんが『一緒に』って、言ってくれてるのが嬉しいって今の気持ち、なんなんだろうね。
私はもーさんの手を握りしめる。
2人で決めて、2人で終わらせるなら。どこからも文句なんて言わせない。
「誰にも知られないところに行こう」ともーさんは言った。
それは、つまらないビジネスホテルのツインルームだったけれど。

734名無し募集中。。。2018/12/06(木) 07:29:33.090

「ムードもなんもないお部屋ですねえ」
バッグを置きながら、軽やかな声でもーさんは言った。けど
その声と、こっちを見る瞳と、その小さな体。この狭い部屋の空気の中
2人きりでいるだけで、充分だと思った。
未来なんてどうでもいい。今、欲しいものと、今、思い切り吐き出したいものがある。
すぐにでも抱きすくめたい気持ちを堪えると
堪えた分だけ痺れが上がってきた。
互いの気持ちを確認した上で、触れた瞬間に変わってしまうものが、怖い。
そうか。
そうか。もーさんも、これが怖かったんだ。
確かにね。すごく怖いね。
傷付いても、傷付けたくない。それって大切な想いじゃないのかな。
私は目を伏せると小さく笑った。
「ここに来たこと、後悔、しない?」
2人分のコートを掛けながら、少しためらいがちに、もーさんが聞いてくる。
そんなの聞くんだ。勇気あるなあ。
私が強がって笑顔をつくり
「後悔しても構わない」と言うと
もーさんも笑った。ちょっと泣きそうな顔で。なんだよ。
もったいつけて、もーさんってば、めちゃくちゃ私のこと好きじゃんか。
バカヤロウ。
ねえ、いつから?
なんでLINE教えてくれたの。
なんで私からのキスを許したの。
なんで私からのハンカチを受け取ったの。
なんで私の涙を拭いてくれたの。
なんで最初から正直だったの。
もーさんのスマホ拾ったの、ついこの間みたいな気がするんだけど。
そこから全部繋がって、予想もしてなかった、こんなところに来ちゃった。
どうしようもなくなった想いを抱えて、電車で数時間の地の果てだ。
好き。
「ティーバッグあるけど、あったかいお茶いれようか」
小さなガラス棚を見ながら私が言うと、もーさんは「うん」と答えた。
ポットを洗って、お水を入れて、コンセントに挿す。
もーさんはユニットバスで、2つのカップを洗っている。
狭いデスクの上に私はソーサーを並べた。
すぐ目の前の大きな鏡に映る、自分の顔を見た。
今、わざわざ、互いを傷付けておくために、私たちはここにいるのかな。バカなんですかねぇ。
決めた。絶対に私は泣いたりしない。
タオルや着替えを手に、バスルームのドアを開けようとした私にもーさんは言った。
「髪は洗わないで」
私が振り返ると、もーさんは奥のベッドに腰掛けてこっちをじっと見ていた。
「乾かす時間、待てないから」

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