まとめ:雅ちゃんがももちの胸を触るセクハラ

846名無し募集中。。。2017/11/07(火) 17:16:25.910

アルミホイルを剥ぐと、真っ白な湯気がふわりと広がった。
同時に溢れ出た香りには、香ばしさと仄かな甘さが入り混じる。
ぱくりと縦に割った実は見事な黄金色で、口の中に唾液がわっと湧き出した。

「このまま食べちゃいたいね」

あちっ、と言いながら桃子が別のアルミホイルの包みをつまむ。

「食べてもいいけどさあ、作るって言い出したのももだかんね」
「わーかってるって」

裂けたアルミホイルの隙間から、白い湯気が細くゆらゆらと立ち上った。


お裾分けだと桃子が抱えてきたのは、紙袋いっぱいのさつまいもだった。
鮮やかな紅に染まって、丸々と立派に育ったいもが袋からこぼれ落ちそうになっていた。

「まだあと1袋あんの。娘を何だと思ってるんだろーね」

聞けば、桃子の母親がまた謎の張り切りを見せたのだとか。
上等なさつまいもを手にいれたのだ、と嬉しそうに娘の部屋に置いて行ったがこんなに食べきれるはずがない。
よって、そのうちの一部が雅の部屋に運ばれてきたというわけ。
てっきり明太子の時と同じ展開になるのかと思っていたら、当たり前のような顔で桃子が台所へと向かった。
勝手知ったる他人の家、とは言うけれど、まさか桃子が率先して料理をするなんて。
ちゃっかり持ってきたらしいエプロンを身につけ、後ろで髪を一つにまとめるとピースサイン。
つくづく形から入るタイプだよね、とは思っても桃子には言わないでいる。

「何か企んでんの?」
「なにそれ。私だってたまには料理もしますぅ」

ぷくっと頬を膨らませる桃子はいつもと変わらない。
だから、きっとただの気まぐれなのだろうと思うことにした。

847名無し募集中。。。2017/11/07(火) 17:18:25.720


台所に向かった桃子は、スイートポテトを作ると宣言した。
焼きいもを作り、それらを潰して牛乳やら砂糖やらを混ぜこんで焼くスイーツ。
手始めに、焼きいもを作るためにさつまいも達をグリルの中へと放り込む。

「なんかさあ、強火でパーッとやりたくなるよね」
「ももこさん?」

じょーだんだって、と言いつつも、桃子の指先がコンロのつまみに向かおうとしていたことを雅は知っている。
さすがは、イチゴジャムに片栗粉を混ぜようとした女。

「ちゃんとレシピ通りにやってよね」
「大丈夫大丈夫、ちゃーんと検索してきたから」

桃子が取り出したスマートフォンの画面には、雅もよく知るレシピサイトが表示されていた。
そのレシピによれば、焼きいもの皮を剥いた後は裏ごしをするらしい。
雅が棚の奥から裏ごし器を取り出してくると、桃子はわずかに目を丸くした。

「こういうの、ちゃんと持ってんのみやらしいよね」
「そう?」
「だって普通使わないでしょ」

確かに、裏ごしなんて丁寧なことをするのは、数えるほどしかない。
その大半が、桃子にスープなんかを振る舞う時だった。
さらに言えば、粉をふるう時に使っている頻度の方が高いかもしれない。

「ももの家にはないの?」
「実家にはあったけど最近は全然」

思い出せるのは、母親が弟の離乳食を作る時に使っていたのが最後だとか。
たまにつまみ食いをするのが好きだったのだ、と桃子は遠い目をする。
桃子の母親は、きっと桃子にだって同じように手間をかけてくれていただろう。
そして、いずれは桃子自身も。

848名無し募集中。。。2017/11/07(火) 17:20:14.460

金属の網にいもを置き、木べらで押しつぶして滑らかにしていく。
積まれた焼きいもが半分くらいになったあたりで、木べらを握る桃子の手がぴたりと止まった。

「……疲れちった」
「ももこさん?」
「わかってるってば。ちょびっと休憩してるだけだから」

そんな言い訳と共に、まだ潰されていない焼きいもへと桃子の指が伸びる。
仕方ないな、と雅が見て見ぬ振りをしている隙に、桃子の口の中へ焼きいものカケラが消えていった。


*  *  *


あの日もまた、桃子は今日と同じように紙袋を抱えて現れたのだった。
違っていたのは、袋の中身がすでに焼かれていたということ。
そんなにどうしたの、と尋ねた雅に、おまけしてもらった、と桃子は得意げに眉を持ち上げた。
可愛いからおまけだって。桃子の言葉がどこまで本当かは知りようがないが、桃子が持ってきた焼きいもは本物である。
あつあつの焼きいもを半分に割ると、ほくほくとした断面が雅を誘った。
いただきますと声を揃えて、一口。見た目に違わぬ甘さが口中に満ちて、優しい甘さが鼻へと抜けた。

「おいひぃ、ね」
「うん」

でもさあ、と桃子の瞳がいたずらっぽく光る。

「みーやんのが甘そう」
「変わんないでしょ」
「分かんないじゃん。ほら、」

言うが早いか、雅の手ごと焼きいもは引き寄せられて。
雅が気づいた時には、桃子にパクリとかじられた後だった。

「ちょっと!」
「んー! 甘いっ」

目的を果たして満足したらしく、桃子はニヤリと笑った。
言ってくれれば、少し分けてやるくらいどうってことはないのに。

「ごめんごめん、ほらももちのあげるから許して?」

眉を顰めた雅の表情を、桃子はどうやら別の意味で解釈したらしい。
差し出された桃子のそれに、どぎまぎしてしまうのはなぜなのか。
試すように光る瞳が、雅の視線を縫いとめる。
どうぞ、と誘うように揺れる焼き芋に、選択肢はないようなもので。
意を決して雅が口を開くと、少し湿り気のある感触が唇にあった。

「関節ちゅー、だね」
「はっ? ち、が」

頬が熱くなる理由が分からず、雅は近くにあったクッションを桃子に投げつけた。
どっちが甘かったか、考える余裕なんてあるはずもなかった。

849名無し募集中。。。2017/11/07(火) 17:20:31.680

*  *  *


裏ごししたさつまいもに、砂糖や卵黄、生クリームなどを混ぜこむと滑らかな生地の完成である。
それをラグビーボール状に成形して、アルミ箔の上にのせていく。
艶出しのための卵黄を塗ると、あとは予熱しておいたオーブンにお任せ。
焼けるまでの間ゆっくりしようとソファに移動したところで、雅のスマートフォンが震えた。

「あ、しみちゃんだ」
「ふうん、なんだって?」
「『今忙しい?』だって」
「超忙しい、大忙しって送っときなよ」
「何それ」

桃子の言葉はあっさりと受け流し、雅は佐紀に今の状況を説明してやった。
ももがスイートポテトを作ってくれてる、と送ると、笑い転げる猫のスタンプがぽっかりと表示される。

「『ももが料理してんの(笑)』だって」
「(笑)は余計でしょーが、(笑)は」

ツンと尖った唇から、ねーえ、と甘えるように響く声。
隣から伸びてくる指先が、雅のスマートフォンをつまみ上げた。
膝の上にやってきた温もりに、雅は大人しく指の力を緩めた。

850名無し募集中。。。2017/11/07(火) 17:21:01.740


香ばしい匂いが部屋に充満した頃、オーブンが終わりの時間を告げる。
床に丸まったエプロンはそのままに、桃子が弾かれたように立ち上がった。
オーブンのドアを開くと、バターと甘さの混じった香りがより強くなる。
引き出した天板に並ぶスイートポテトは、部屋のライトを反射してピカピカと光っていた。

「ももにしては美味しそう」
「ももにしてはじゃな、」
「超美味しそ」

出来立てで湯気を立てているスイートポテトをそっと皿に移すと、スプーンでひとすくい。
少し冷まして口に入れると、滑らかな舌触りと一緒に自然な甘さが広がった。

「あ、美味しい」
「え! 待ってよ、ももも食べたい」

小皿を渡してやると、桃子の表情は真剣なものに変わる。

「そういえばさあ、ももが焼きいも持ってきたことあったよね」
「あー、あったっけ?」
「忘れちゃったの?」
「……うん」

スイートポテト選びに気を取られているらしく、桃子からの返事はぼんやりとしていた。
雅はそれを横目に、持っていたスイートポテトをすくい取った。

「はい、あーん」

雅がスプーンを差し出すと、微かに桃子の肩が跳ねる。
それを指摘するより前に、スプーンは桃子の口に含まれていた。

「どう? 自分が作ったスイートポテトのお味は」
「まあ……美味しいん、じゃない」

するりと逃げていく視線は、整列するスイートポテトに向けられていた。
さらりと流れた髪の毛が、桃子の赤くなった頬を覆うのが見えた。
仕事の時はスイッチが入るせいか、雅が赤面させられることもしばしばなのだけれど。
普段の桃子が実は照れ屋であることを、雅はちゃんと知っている。

「で、どっちが甘かった?」

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