まとめ:雅ちゃんがももちの胸を触るセクハラ

253 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/06/26(月) 00:54:20.06 0

「……は?」

電話の向こうから聞こえてきた言葉に耳を疑って、雅は思わず聞き返していた。
けれど、もう一度聞こえてきた言葉は先ほど聞こえてきたものと変わらなかった。

「だから、明太子。1kgも届いちゃったんだってば」
「なんでそんな状況になってるわけ?」
「いやー、うちのパパとママがさ、久しぶりに旅行行ったらはしゃいじゃったみたいで」

今の今まであの明太子一腹分が何gくらいかなんて、真面目に考えたこともなかった。
しかし、1kgなんてきっとかなりの量に決まっている。
そうでもなければ、あの桃子が助けを求めてくるなんてありえない。

「事情は理解したけど……うち、どうすればいいの?」
「とりあえず、うちに来てくれる?」


桃子の部屋に着くなり、当たり前のようにぽんと手渡されるクリーム色のエプロン。
桃子はといえば、すでに色違いのおそろいを身につけて準備万端といった様子だった。
そういえば、二人で買い物に行った時にテンションが上がって買ったんだっけ、と記憶が蘇って。
同時に、その後1、2回程度しか出番がなかった、ということも思い出す。

「で、何作ればいいの?」
「それをみやに頼もうと思って」
「は?」

そこは人任せなのかよ、と呆れる気持ちがそのまま声になった。
けれど、てへへ、と桃子におどけられてしまっては返す言葉もない。
訳分かんないし、などとぼやきながらも、結局雅は桃子が喜ぶ道を選んでしまう。

「とりあえず、生では食べたいなーって思ってて」

それだけじゃ寂しいでしょー、と桃子の人差し指がぴんと立ち上がる。
炊飯器がセットされているところを見るに、炊きたてのご飯と明太子を一緒に食べたいということなのだろう。
正直なところ、白ご飯と明太子がそろえばそれだけでご馳走な気もしたけれど、他の方法でも食べたいというのなら仕方ない。

「待って、食材は?」
「あ……」
「あ、じゃねーよ」

ぺしん、と軽く前髪をはたくと、桃子が慌てたようにそれを直すのが見えた。
その一連の仕草がちょっと可笑しくて、少しだけ雅の気分は上向いた。

254 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/06/26(月) 00:56:38.98 0

「どうせ冷凍食品とかすぐ食べられるものしか入ってないんでしょ」
「よく分かったね」

それなりにお高い冷蔵庫のはずなのに、調味料や冷凍うどんなんかを冷やすためだけに使われているなんてもったいない。

「料理習ってんじゃないの?」
「いやいや、それとこれとは話が別だよ、みや」

基礎がどうの応用がどうのと始まった面倒くさい屁理屈を聞き流し、雅は冷蔵庫の中身を物色していった。
スライスチーズに卵、海苔、豆腐とパックのもずく。他には調味料や冷凍食品がいくつか。
もっとも、調味料に関しては雅が買えと言ったものなのだけれど。
本当にこの人は一人暮らしができているのだろうか、と雅の頭に不安がよぎる。

「野菜ないんだけど」
「あ、あるよ、あるある」
「え、どこ、」

雅の言葉は、ぐいっと引っ張る桃子の腕に遮られた。
そのままベランダまで引っ張って行かれて、雅は目を見開いた。

「ほれ、どうよ? ももちゃんの家庭菜園だよー」
「え、ちゃんとしてる……」
「失礼な! こういうのは結構得意なんだからね」

ベランダに並べられたプランターには、生き生きとした緑の葉が茂っていた。
よくよく見れば、実のようなものがなっているのも確認できる。

「……ナス?」
「そう! あと、ネギとシソ」

薬味ばかりだね、なんて感想が雅の頭に浮かんだが、何はともあれナスがあるのは心強い。
少しはどうにかできそうな兆しが見えてきて、雅は、よし、と気合を入れ直した。

「だいたい分かった」
「おおー! さすがみやび様」
「そういうのいらないから。ほら、手伝って」
「はーい」

ちゃんと両手を挙げて答えるあたり、桃子は分かってやっているのだろうか。
可愛いなんて言えば調子に乗るのが想像できて、雅は代わりにほら早く、と桃子を急かした。

255 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/06/26(月) 00:59:16.70 0

桃子の育てたナスとネギ。加えて、冷蔵庫からチーズと卵。
何を作るの?という質問に、雅は唇に人差し指をあててウインクして見せた。

まずはナスを一口大に切り、水にさらして灰汁抜きを。
途中、ちくりと指に触れたヘタが、新鮮さを物語っていた。

その間に、次は卵をボウルに割り入れ、砂糖とめんつゆ、それに料理酒を少々。
それらをさっとかき混ぜると、雅は網を取り出した。

「おおっ、卵こすの?」
「そう。よろしく」
「まっかせといて」

一緒に習ったこともあってか、これには桃子もぴんと来たらしい。
鼻歌交じりに桃子が卵液をこしてくれている横で、雅はフライパンの準備に取りかかった。
本当は四角い卵焼き器があればよかったのだけれど、桃子にそれを期待してはならないだろう。
むしろ、片手鍋とフライパンがそろっているだけでも良い方だと言えるかもしれない。

「何作るの?」
「見りゃ分かるでしょ」
「卵焼き?」
「まあ、そんなとこ。ほら、できたら貸して」

あと明太子も、と追加でお願いすると、料理の完成図が浮かんだらしい桃子がぱあっと顔を輝かせる。

「あ! そういうこと?」
「いいから早く」

卵というものは厄介で、数秒の間にすぐ火の通り方が変わってしまうのだ。
しかも、今回はさらに厄介なことに卵だけよりも水分が多くて扱いづらい。
桃子が冷蔵庫から大きな箱を取り出すのを横目で確かめ、雅はボウルと木べらを手に取った。
十分に温まった鉄板の上で、黄金色の卵液がじゅわりと音を立てた。
まだ少しサラサラとした状態で、手早く四方を巻き上げて奥の方に明太子をそっと着地させる。

「おっ! なんかすごい!」

桃子がよく分からない歓声を上げたが、今はそれどころではない。
熱されて固まった部分を破れないようにして、奥からくるくると手早く巻いていく。
と、一部が決壊して液体がさらりと流れ出た。

「あ、漏れてる! 漏れてるよ!」
「っさい! ちょっと黙ってて」

幸いにも、崩れたのは一箇所だけ。
これなら何とかなりそう、と木べらで押さえて固まるのを待つ。
その間に、出汁と卵の混じった香ばしい匂いがあたりに漂い始めた。
その匂いにすっかりおとなしくなった桃子が、ごくりと喉を鳴らしたのが分かった。
追加の卵液も同じようにどうにか四角くまとめると、桃子からぱちぱちと拍手が起こる。

256 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/06/26(月) 01:01:05.15 0

「すごーい。前はフライパンに卵引っ付いてたのに」
「……ほんとうるさい」

そうは言いつつも、桃子がじっと自分の作っただし巻き卵を見つめているのは悪い気分ではなかった。
どうにか、大きな失敗はしなかったようだ。少し表面に茶色い焼き跡がついてしまったけれど、それはご愛嬌というもの。

「……美味しそう」
「後でね」
「ちょ、ちょっとだけ」
「だーめ。後でちゃんとあげるから」
「ちぇー」

唇をつんと尖らせているのも、きっとポーズだけ。
そんな桃子をよそに、雅は先ほど水にさらしておいたナスに手を伸ばした。

「今度はどうするの?」
「これは明太子とは関係ないけど」

ナスに関しては、どちらかというと雅が食べたいだけ。
いつだったか、一人暮らしの先輩である二瓶に教えてもらった、いわゆる手抜き料理というやつだった。
丁寧に水気をふき取ると、ナスの表面にごま油を染み込ませていく。
後はラップをかけてレンジでチンするだけという、簡単お手軽メニュー。

「へえー……あ、いい匂いしてきた」

雅のすることをぼんやりと見ていた桃子が、くんくんと鼻をならした。

「ポン酢あったっけ?」
「あー……ない」
「ま、いっか。醤油と酢はあるでしょ?」
「うん」

桃子が出してきてくれた調味料を混ぜ合わせていると、タイミングよく電子レンジが終わりを知らせてくれた。

「あとはこれをかけて……ネギものっけようか?」
「あ! それすごくいい」

ラップを剥ぐと、ごま油の香りがふわりと立ちのぼった。
正直、この匂いはずるいと思う。

「たまんないねえ」
「もも、おっさんみたいなこと言ってる」
「いやいや、思ったこと言っただけじゃんか」

実際、乾き物や珍味が好きなわけだから、こういう酒の肴にぴったりな料理が嫌いなわけがない。
こういう時、いろいろと正反対だけれども食の趣味だけは近くてよかったと思う。

「あと、どうしよ。冷奴とかでいいかなって思うんだけど」
「いいよいいよ、全然いいよ」

桃子は、それよりも早く食べたいと言わんばかりの勢いだった。
それに苦笑しつつ、雅は出来上がったナスの皿をほいと手渡す。

「はい、ももはテーブルの準備」
「はーい」

258 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/06/26(月) 01:02:34.24 0

小学生のような良い返事を残していく桃子に、緩みそうになった頬をぐいと持ち上げた。
冷奴は切って皿に盛ればいいだけだが、上にのせる具材で味の可能性が無限に広がるのが面白い。
さっき見た中に海苔があったことを思い出して、今日はそれと明太子にしてみようと決めた。
ほぐした明太子の上に、キッチンバサミで細く刻んだ海苔をはらりと振りかける。
なかなかそれっぽいんじゃない、と雅はその出来栄えを自画自賛した。

「わっ! 美味しそう!」
「でしょ。はいこれも運んでー」
「やったあ」

るんるんとスキップでもし始めそうな勢いで、桃子がそれをテーブルへと並べていく。
あら熱の取れただし巻き卵に包丁を入れる時だけは少し緊張したけれど、慎重に包丁を震わせたおかげかどうにか上手く切ることができた。
後は、それらを皿に並べたものと、炊きたての白米、それに新鮮な明太子をテーブルの上へ。

「わあー、ちゃんとした晩ご飯」
「ちょっと見た目は悪いけどね」
「あのねみや、料理は味と愛情だよ」

ということで、早く食べようよ!と桃子は今にも箸を握って食べ始めてしまいそうな雰囲気だった。
心が逸っているのは雅だって同じこと。
二人でいただきます、と声をそろえると、桃子がだし巻き卵を食べたいと主張したので二人で仲良くそれを口に運んだ。

「ん! あふっ、ふごい……すごい、ジューシー」

桃子の言葉通り、一口噛むと出汁が溢れて口の中を覆った。
微かな砂糖の甘さと明太子の塩辛さが、ちょうど良い比率で混ざり合う。
以前、どこかの居酒屋で食べたものを真似したものだったが、初めてにしては上出来だと思いたい。

「ナスも食べていい?」
「どうぞ」

ナスもちょうどよく瑞々しさが残っていて、ごま油と醤油のこってりとした旨味をさっぱりしたと酢が締める。
あっさりとした冷奴は、ごま油で少しくどくなった口の中を一新してくれた。

259 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/06/26(月) 01:04:46.03 0


さてそれでは、とそこで今日の主役に二人で箸をつける。
ぴんと立った白米に、ふわふわの明太子の組み合わせ。
口に含んだ瞬間に、磯の香りと塩辛さ、そしてご飯の甘さが混じり合う。
ん!と桃子が眉毛を持ち上げ、目をまん丸にした。
そのまま少し咀嚼をすると、しみじみとその味に満足したのか、桃子はうんうんと頷いて。

「いやー、やっぱり美味しいねえ、ご飯と明太子がダントツだね」
「本当、美味しいね、これ」

ご飯も、と付け加えると、桃子はふふんと大げさに胸を張った。

「くろっきの直伝だからね」

聞けば、米の研ぎ方から炊き方に至るまで、いちから黒木料理長に叩き込まれたのだとか。
鍋で炊く方法を教えてもらったらしいのに、結局炊飯器を使っているのが桃子らしいといえば桃子らしい。

「だって、炊飯器だったら間違いないでしょ?」
「ま、ね」

ひとしきり感想を言い終えると、後はしばらく食器と箸の音が響くだけになった。


お腹も満たされて、ごちそうさまをして。
二人してついた吐き出した息には、幸せが満ちていた。

「ありがとね、みや」
「どういたしまして」

結局のところ、美味しいものを食べている桃子の表情が見たいがために、料理をしているところはある。
その点で言えば、今日はこれ以上ないほどに満足していた。

「今夜は? 泊まってく?」
「泊めてくれるもんだと思ってたんだけど」
「え、ほ、本当?」

雅の言葉に、今まで背もたれに身を預けていた桃子が跳ね起きる。

「そんなびっくりすること?」
「や、だって……みやが自分から言うとは思わなくて」

確かに、今まで雅の方から泊まると言ったことはなかったけれど。
桃子の反応が予想以上に大きくて、じわじわと言葉の意味が身に沁みてくる。
思いつきの言葉だったから、大した理由があるわけではなかった。
ただ、明日の朝もまた、桃子の美味しそうにしている顔を見るのも悪くないと思っただけだ。

「ダメなら帰るけど」
「ダ、ダメじゃないよ!」

ぽっと熱を持ち始める頬をごまかすように言葉を続けた。
慌てたように手をわたわたと振り回す桃子は、やっぱりどこかコミカルで可笑しくて。
冗談だよ、と桃子の腕を引き寄せながら、明日の朝食は何にしよう、なんてことを考えた。

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