まとめ:雅ちゃんがももちの胸を触るセクハラ

395 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/07/10(月) 13:16:25.65 0

雅が事務所で桃子に会ったのは、卒業ライブの10日後だった。
色々と事務処理のためになんだかんだと慌ただしい、と笑って言う桃に違和感を覚えた。

あの日、終演後ステージ裏で会った時にはなかった筈の違和感。
思い返せば、その後参加してくれたベリキュー打ち上げの時にはすでにその違和感を感じていた。不自然ではない程度にだが少ない会話、あまり合わない視線。気持ちが高ぶっているのだろう、と流してしまった違和感。

「みや、どうしたの?疲れてる?」
10日前を思いだし、つい黙りこんでしまった雅に、桃子は不思議そうに首をかしげてくる。
この違和感はなんだろう。10日前と何が違うのだろう。
目の前にいるのは、紛れもなく桃なのに。
きっと他の人達では分からないだろう、この強烈な違和感。
目の前にいるのは、本当に桃なんだろうか。

「あー、ごめん、ちょっと疲れてるみたい。
桃こそお疲れ。なんか、桃に会うの久しぶりに感じるね」
「ちょっとみや、大丈夫?今大切な時期でしょ?」
心配そうに見つめてくる瞳。

足りない。

卒業前には確かにあった筈の何かが足りない。

目の前にいるのは、誰?

桃は、いつからこんな風に自分を

647 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/07/11(火) 04:06:49.43 0


雅はその日の仕事を表面上は完璧にこなし、帰宅した。
次の仕事があるから、と逃げる様に立ち去った自分を桃子はどう思っただろう。
それとも、なんとも思わないのだろうか。

相棒だった筈の自分達。
相棒だった筈の桃子が、果てしなく遠く感じた。
あの日あのライブを境に桃子が自分に境界線をひいた。
そして雅に背を向けようとしている。
あの違和感はきっとそういうことなんだろう。
雅は確信していた。
きっとここを読み間違えたら桃子を失ってしまう。
頭のいい桃子のことだ。自分がどう感じるか、どう行動するかまで読んでいるに違いない。

ねぇ、もも。みやのことちょっと甘くみすぎじゃない?
今更手を放してなんかやんないよ?
悪いけど、逃がしてあげられないから。
ごめんね、もも。みや、ももが欲しいんだ。
ずっと前から。ももだって知ってたでしょ?
ももだってみやのこと本当に手放せるの?
昔から最後に頼るのはお互いだった。
時折感じていた熱を孕むももの視線。
過剰に求めてしまうみやのスキンシップ。
繰り返される、ももちは皆のアイドルだからという言葉。
みやに、もも自身にも言い聞かせてるみたいだったよね。
皆のアイドルはあの日で卒業したんでしょ?
みやだけのももになってよ。

648 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/07/11(火) 04:50:50.37 0

二人にとっての転機はいくつもあった筈だ。
久々に呼び出された桃子のマンションで告げられた言葉。
あれはもう10か月ほど前のことになる。
二人隣り合って話していたのに、体ごとこちらを向いて痛いほどまっすぐみやを見て、張りつめた顔で桃子は言った。
「みや、もも卒業する」
「そっか。決めたんだ。卒業後はどうするの?」
「もう一度ね、勉強したいなって思って」
「応援するよ」
応援する、その言葉を聞いた瞬間に緩む口元。。
「それでね、あの、みやにお願いがあるんだけど」
「なによ?言ってみ?」
「あのね、発表をね、カントリーのイベントでするんだけど、みや見に来てほしいなって。見届けてほしいの、みやに」
あぁ、まただ。昔から自分はもものこの顔に弱い。
緊張ではりつめてる癖に自分の言葉や態度、行動でちょっとだけ緩む口元。
そう言えば、自分が他人の口元を見るようになったのはももの口元を見る癖がついちゃったせいだっけ。
「わかった。いいよ。絶対見に行く」
「ありがと、みや」
そう言ったももの顔はとても綺麗な笑顔で。
きっと一生忘れられないだろう。
いつの間にか握りしめられていた手はとても冷たくて。
いつも暖めてくれていたその手が冷たくて。
今度はみやが暖めてあげたい、強くそう思ったんだ。

649 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/07/11(火) 06:08:00.27 0

そしてあっという間にやって来た桃子の卒業発表の場。
約束通りに雅は見学に来ていた。

慌ただしい楽屋裏。
笑顔で後輩たちと話している桃子。
既に泣いてしまいそうな後輩もいる。
「絶対に泣いちゃダメ!見に来てくださるファンの皆様に笑顔をお届けするのがアイドルだよ!」
「はいっ!」
後輩全員の気持ちよく揃う返事。
満足そうに笑う桃子。
「ももち先輩、私達だけでちょっとだけ話し合い、させて下さい」
「うん、りさちゃん、よろしくね」
そう言って桃子は見ていた雅の方へとやって来た。

「お疲れ。いい子達だね」
「自慢の子達だもん。いいでしょー」
ふんわりと笑い優しい視線を子供たちへ向ける桃子。
顔をそちらへと向けたまま、そっと雅へと伸ばされる手。
思わずそっと繋ぐと、とても冷たくて。
言わないでいようと思ったのに。
「大丈夫だよ。みやがいる」
ちらっとこちらへ向けられた目は頼りなさげに揺らいでいた。
「ステージには、いないじゃん」
ギリギリ聞こえた声は微かに震えていた。
「でも、見てるよ。もものこと。一緒のステージにはいられないけど。ずっと見てるから」
「足りないよ、みや」

「みやがたりない」
繰り返すようにそう言ってちょっと拗ねた顔をする桃子。
「みやの愛が伝わんない?」
ニヤリと笑いながら両手で桃子の手を思い切り握りしめる。
途端に痛いよ!酷いよみや!とギャーギャー騒ぎだす桃子。
ほらほらみんな見てるよーと言いつつ優しく手を離した。
膨れっ面になりながらも細められた目。
その目はもう自信に溢れていた。
「もう、みやってば、ほんとにももちが好きなんだから」「まあまあね」
「ももちは皆のアイドルなんだよ?」
あぁ、もうだめだ、気持ちをおさえていられない。
ももにもきっと伝わってしまっている。
「ありがと、みや。来てくれて嬉しい」
「約束したじゃん。見てるからね」
「カッコいいももの姿、見てて」
「はいはい」
握手するよう伸ばされ、繋いだ手は暖かかった。

イベントが終わり、珍しく撮らせてくれたツーショット。
「卒業も発表されたことだし、もういいよね」
自分に言い訳をするように漏れた独り言。
自分のキャラは解っている。
添えたスタンプだってみんなどうせ意味も分からず使用したと思うに違いない。
ネット界隈ではあれこれ憶測が飛び交うだろうが、構わないだろう。
自分は、ずっとももが欲しいんだ。
「覚悟してね、もも」
そう呟きながら、そっとインスタをアップしたんだ。



655 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/07/11(火) 09:54:12.09 0


さて困った。
みやのインスタを見た私の正直な感想。
あのスタンプ、意味解ってあげたんだろうか。
妙に幼く感じる二人のツーショット。
それだけならまあよかった。
バラのスタンプ?フレーム?もまあいいだろう。
バラの本数の意味?そんなん知らん。
問題は英語のスタンプなのだ。
直訳しようと意訳しようとそこに込められている意味は変わらず。
ねえ、みや。私、卒業するんだよ?
もうみやの手を暖めてあげられなくなるんだよ?
どうして手を離そうって決心した途端に近づこうとするの

みやの手を暖めるのは私じゃなきゃ嫌だと思ったのはいつだったろう。
15年だよ?
そろそろお互いの手を離した方がいいんじゃないのかな。
私たちは、相棒で、女の子同士だから。
お互いが近づきすぎてしまわないように冗談めかして言う、ももちは皆のアイドル、みやはももちが好きなんだから。
本当はそれらを聞くたびにみやの目が揺れるのが判っていた。
私の目も揺れていたのはばれていたんだろうか。
近づきすぎてしまわないように。
離れてしまわないように。
山嵐のジレンマみたい。
15年掛けて築き上げてしまったこの気持ちは、きっとみやを縛ってしまうから。
だから、卒業と同時に私から手を離そう。
ごめんね、みや。



782 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/07/11(火) 21:29:56.13 0

あのインスタ後、初めて会った時桃子の態度は変わらなかった。
インスタ見たよー、の一言でさらっと流されてしまった。
むしろ、ベリキューの他の面子からの突っ込みの方がよっぽど厳しかった。

ところが、卒業を控えどんどん忙しくなっていく桃子のスケジュールと比例するように、桃子からの連絡が増えてきた。
返信を必要としないようなちょっとした一言のLINE。
滅多になかった筈の桃子からの電話。
約15年間で一番連絡をくれている状況。
雅がそれらに戸惑ううちに、Buono!リハが始まった。
桃子との最後のライブが近づいていた。

「もも近い」
「えー、普通だよぅ」
「愛理との距離の差わかる?近い」
「相変わらず二人はラブラブだねぇ〜」
「いやん、あいりん、わかっちゃうー?」
なんだろう、ももが近い。近すぎる。
てか、スキンシップも多い。
どうしよう。嬉しくて困る。

雅は近すぎる距離、多すぎるスキンシップに戸惑いを隠せなかった。
嬉しいけれど、勝手に赤くなってしまう顔。
にやけてしまう口元、上がってしまうテンション。
愛理も桃子もとんでもないハードスケジュールになると解っていた筈。
もちろんオトナの事情という部分だってあるだろう。
それでもBuono!ライブを行う事を決心してくれた。
なんだろう、この幸せな感じ。
神様のくれたご褒美なんだろうか。
ももと立つことの出来る最後のステージ。
幸せすぎて、泣いてしまいそう。
今の三人で出来る最高のステージ、一生忘れられないライブにしよう。

785 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/07/11(火) 21:31:28.50 0

ついにやって来てしまったBuono!ライブ当日。
リハーサルの前から雅の手は冷たかった。
いつもならば本番前にやって来る筈の手の冷え。
雅は控室を抜け出して、人気のない場所までやって来ていた。
自販機の影に隠れるようにしゃがみこんでいると、目の前にいつの間にか桃子が立っていた。
「何してんの?みや」
「せーしんしゅーちゅー」
そう答えた雅に微笑み、同じようにしゃがんだ桃子の手が雅の手を包み込んだ。
「相変わらず冷たい手だねぇ」
「うっさい。  でも、ありがと」
「相変わらずのツンデレさんだねぇ」
「ツンデレじゃないし」
赤くなる顔を隠すように雅は下を向いた。
「ねえ、みや。最後だね」
「まだリハすら始まってないじゃん。やめてよ」
「ももね、Buono!があって良かったよ。
こうやって最後にみやとライブができたもん」
「だから。まだ始まってないじゃん。
終わったみたいに言わないでよ」
「ごめんごめん。言いたくなっちゃってさ」
桃子の声に違和感を覚え雅が顔をあげると、穏やかに笑いながら、桃子は目に涙を浮かべていた。
「ねぇ、もも。みやいるよ。今日はステージにいる」
思わず言ってしまった言葉。
数ヵ月前、卒業発表前みやがいないといった桃子が思い出された。
「うん、みやがいる。愛理もいる。もも、幸せだよ」
「最高に幸せなライブにしようよ。
みや、きっと一生忘れない」
「もう充分幸せなステージだよ」
包まれた手はとても暖かくなっている。
雅は桃子の手を包み返した。
「暖かさのおすそわけ」
「元々はももの暖かさじゃん」
「いーの。お返しだから」
見合わせた顔。桃子の涙は消えていた。
立ち上がり、雅は手を離そうとした。
「あ」
「何?そろそろリハ行こっか」
「あのね、もうちょっと手暖めて?」
照れたように言う桃子が可愛くて、控え室まで手を繋いで帰った。

787 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/07/11(火) 21:32:28.19 0

本番が終わり、桃子とのステージも終わってしまった。
コメント撮りも終わり、着替えを終えると愛理は慌ただしく帰ってしまった。
℃-uteも解散ライブを控え、忙しい真っ最中だ。
寂しく思いながらも愛理を見送り、残った雅と桃子は顔を見合わせた。
「お疲れ、もも」
「みやもお疲れ様。ねえねえ、教えてほしいんだけど」
ニヤニヤしながら言う桃子に雅は非常に嫌な予感に襲われた。
こんな顔をする桃子には嫌な予感しかしない。
「みや、ももになんて言ったの?」
ほら来た。嫌な予感は当たるんだ。
「ない」
「嘘だね。教えてよぉみやびちゃーん」
これはももじゃない、ももちだ。
「だからないの。うちがラストって決まったじゃん。
だからももへのコメントはないの」
嘘。桃子への感謝を吹き込むつもりだった。
スタッフさんから雅のコメントがラストだと聞いてああいう形にしてもらったのだ。
「そっか、そーなんだ」
ちぇーと呟く桃子の唇が尖っていて、可愛くて。
「鈍感はそっちだし」
桃子に聞こえないように小さな声でぼやいた。

826 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/07/12(水) 03:12:34.56 0

6月30日。
朝、桃子からLINEが届いていた。

みや、見ててね
カッコいいももの姿
最後まで見届けてね

「朝から泣かせないでよ、ばかもも」

必ず見届けるよ

精一杯の応援する気持ちを込めて、返信をした。
天気は正直不安だけど、ベリーズが揃うんだから晴れるに決まってる!

そわそわそわそわ心が落ち着かない。
雅は予定していたより早めに会場へと向かうことにした。
ステージ裏には現役メンバー達がいて、わいわいがやがやとなんだかハロコンみたいで懐かしい。
さて、今日の主役はどこだろう?
雅は後輩たちに声を掛けながら桃子を探すことにした。
リハーサルが終わってスタンバイには早い空き時間。
いつもならばあちこち行けるけど、今日は特設会場。
大人しく楽屋にいるはず。

「あれ?みや?」
「もも。楽屋じゃないの?」
「流石にちょっと人数的にねー。
集中したくて出てきちゃった」
あははーとか言いつつ苦笑する桃子。
顔には隠しきれない緊張や疲れが見えていて。
「そっか。みやも遠慮する?」
「せっかく来てくれたんだし、ちょっと話そうよ」
雅を押し込むように機材用の人気のないテントへと桃子は入った。
「さすがだね、もも。雨やんだし」
「流石でしょー。いやぁー持ってるわぁ」
そんな言葉を交わしながらも桃子の表情は冴えない。
「あー。 んー。 んー」
「なに、どしたのもも」
「あー、最後だからかな。落ち着かなくてさ」
見て、と言いながら差し出された桃子の両手。
微かに震えていた。
そっと手を伸ばし、両手を繋ぐ。驚くほど冷たかった。

827 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/07/12(水) 03:17:09.70 0

「みやの暖かさのおすそわけ」
「いつもと逆だね」
「たまにはいいもんでしょ」
「今日はデレびちゃんだねぇ」
「別にデレてないし」
そんなお約束の言葉たちを交わす。
もも、もも。見てるよ。最後まで見届けるよ。
「ありがと、みや。私、幸せだよ。
今朝LINE送ったでしょ?
ちょっとだけ、早く来てほしいなって思ってたの。
無理かなーって思ったし書けなかったけどさ」
「今更なに遠慮してるのさ。もう15年の付き合いだよ?
素直に言えばいいのに」
「だって今日で卒業だから」
桃子が困ってる時にする口元をフニャッてさせる笑い方。
「卒業する時くらいワガママ言いなよ。寂しいじゃん」
うつむかないで、もも。笑ってほしいの。
みやの大好きな、全開の笑顔のももが見たいよ。
「ほら、シャキッとしな、本日の主役っ!」
「うんっ!ありがとね、みーやん」
「ずいぶん懐かしい呼び方だね、つぐさん」
「そこはももちって言ってよ!」
「はいはい、ももちももち」
「言い方に愛がない!」
「はーい、ももち先輩」
「同期でしょ!」
二人で笑う。うん。いい笑顔だよ、もも。

828 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/07/12(水) 03:18:17.59 0

「手。暖まったね」
「ありがと。あの、もひとつだけワガママ言ってもいいかな」
「もちろん」
「えーっと、ハグ、したい」
「はい?」
「だからね、ハグ。だめかな」
「あー、いい、けど」
なにこれ、どうしたのもも。え?だいじょうぶ?
「ひとつ確認いい?みやとももがハグするんだよね?」
「違うよ?私がみやをハグするの」
?ハグに違いとかあったっけ?
「えっと、みやはどうしたらいいの?」
「目をつむって、立ってて」
「はいはい。もも様の仰せの通りに」
目をつぶり、その場でじっと待つ。
桃子の近づいてくる気配を感じ、体に力が入ってしまう。
そっと抱きつかれ、あっさりと離された。
「おわり?」
「うん、ありがとう。パワー貰っちゃった」
「ふーん。じゃあ、これはおまけね」
「ふぇっ⁉」
おまけでみやからのハグ。
そっと離して覗きこむと見事に真っ赤な顔。
「じゃっ、じゃあ、ももそろそろ行くね
ありがとみや。見ててね、ももの卒業」
「おー、見届けるよー」
バタバタと走り去る桃子。
雅はクスクス笑いながら見送った後、そっとため息をついた。
雅の大好きな歌う桃子の姿を見ることが出来るのは、今日が最後なのだ。
もう、桃子と一緒にステージに立つことはない。
今更のように実感してしまった。
実感してしまったら、もう駄目だった。
冷たく凍えていく手。
暖めてよ、もも

829 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/07/12(水) 03:19:46.07 0


卒業ライブで歌い踊る桃子は凄かった。
関係者席から見守りながら、雅は改めてアイドル嗣永桃子に見惚れていた。
一人で15分以上のメドレーを歌いきるエネルギー。
懐かしい曲ばかりで関係者席で皆でめっちゃ盛り上がってしまった。
ジンギスカンで煽るとか、ズルいよ桃子。
本音を言ってしまえばもっと一緒にステージに立ちたい。
歌っていてほしい。桃子の歌が好きだから。
でも、桃子の決心を後押し出来る自分でいたい。
桃子の望む人生を歩んでほしい。
出来れば雅の事も望む人生の中に入っていてほしいけれど。
VERY BEAUTY を聞きながらそんな事をぼんやりと考えていた。
I NEED YOU の前奏を聞きながら、横浜アリーナで3人で歌った時の事を思い出していたからだろうか。
桃子の歌声が聞こえてきた瞬間、強い焦りを感じた。
あの時よりも更に思いが込められた歌声。
夕日の中で歌う桃子が何処かへ行ってしまいそうで、消えてしまいそうで雅は泣いてしまった。
ステージ上で、曲中に涙をこぼす桃子なんていつ以来だろう。
最後のMCでも、きっちりアイドルももちで。
小指をたたみ、力強く握りしめた拳には桃子の決心が宿っているようで。
雅の相棒は、やっぱり最高のアイドルだと思った。

830 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/07/12(水) 03:21:35.95 0


終演後、ベリキュー皆で桃子のもとへ向かった。
ベリーズ7人で写真を撮って、ベリキューでも写真を撮って。
皆素敵な笑顔だった。
ツーショットを順番で撮りながら一人一人桃子と言葉を交わしていった。
雅は一枚撮った後、どうしても、とお願いしてみやビームこゆビームでも撮らせてもらった。
「ねぇ、今さっき小指たたんだんだけど」
「一生のお願い!」
もう小指復活かよとか言われるじゃんとかぶつぶつ言いながらもやってくれるもも、優しい。
「見届けたよ。ももちお疲れ様」
「ありがとう。かっこよかったでしょ?ももち」
「最高にかっこよかったよ。
やっぱみやの相棒は凄いと思った。
ねぇ、ベリキューの打ち上げ、大丈夫そう?」
「かなり遅くなっちゃいそうだけど、顔出すよ」
「じゃあまた後でね」
「じゃあね、みや」

831 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/07/12(水) 03:22:49.34 0

あ。決定的な違和感。
そうだ、あの時桃子はじゃあねって言った。
いつもならまたねとか後でねって言うのに。
そういう言葉のチョイスを桃子は間違えない。
それにあの曲。I NEED YOU
あの時にはもう雅の手を離そうとしていた?
思い出せ。いつから?
いつから桃子は決心していた?

836 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/07/12(水) 05:59:45.84 0

桃子は卒業コンサートにはすでに決心していた。
いつ?いつ決心した?
思い出せ夏焼雅。

横浜アリーナのBuono! ライブ?
そのリハーサル期間?
違う。だってその頃には桃子に戸惑いを感じていた。
雅はももちとしてはあり得ない距離感に戸惑っていた。

桃子からの連絡が増えだしたのは?
カウントダウンコンサートの時には?
卒業発表の時の桃子はどうだった?
卒業を決めた、と打ち明けられた時?
あのはりつめた顔、痛いほどの眼差し、綺麗な笑顔。

ここだ。ここが桃子が決心した瞬間。
根拠はない。直感だけれど、絶対に間違っていない。
雅は確信する。

15年掛けて積み上げてきたのだ。
この気持ちは無かったことにはできない。
別のものにも変えられない。
一度自身の中でこう、と決めたら頑なな桃子も知っている。
きっと事務所で会った時に、桃子には気付かれた。
雅が桃子の決心に気が付いた事。

ねぇ、もも。みやの手を離すって決めたんでしょ?
どうしてみやにあんなに近づいたの?
今日の違和感の正体、みや分かっちゃったよ?
みやの欲しいももはあんな顔したももじゃない。
同期です相棒ですってすましたももなんかいらない。
みやに近づいたのは、思い出がほしかったんでしょ?
同期じゃない、相棒でもない、ももだけのみやが欲しかったんでしょう?
みやはももの思い出だけじゃ満足できない。
ももは15年分の気持ち、みやと一緒に手放す決心したんだね。
そんな決心、みやがひっくり返してあげる。

さて、どうしよう。
まず、桃子は頭がいい。
言葉のやり取りだけではあっさりと言いくるめられてしまう。
直接会って話さなければ、相手にもしてもらえないだろう。
しかも桃子は頑固である。
相当な事がない限り自分というものを曲げようとはしない。
思いきって好きなんだとすがってみようか。
今更捨てるのか、と泣き落としでもしてみようか。
どれもうまくいく気がしない。
きっとチャンスは一度だけだ。
失敗したら、本当に桃子は雅から離れていく。
「あーもう。めんどくさい境界線引きやがって」
? 境界線? 思い付いた。これしかないかな。
ももの引いた境界線なんて何回だってみやが飛び越える。
もものへたくそな愛し方なんてみやは認めない。
だって、約3万人の中でぶつかって、15人の中に選ばれ、8人のメンバーになったみやともも。
ぶつかったあの時、きっと運命がそこにあったんだよ。
だからもも、みやを諦めるのを諦めて。
あとごめんね、もも。うちらの間にあった暗黙の了解。
みやはもう守らないからね。

838 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/07/12(水) 08:11:36.97 0

事が事だけに、桃子との話し合い?をどこでするかはかなり悩んだ。
何せ時と場合によっては実力行使に訴えるつもりなのだ。
結局は桃子のマンションへで話がしたい、とお願いしたのだが。
まずその時点で桃子の了解を得るのに苦労した。
先が思いやられる。

「お邪魔しまーす。はい、これお土産」
「わざわざいいのに。ありがとう」
「たいしたものじゃないし」
「先座ってて。飲み物持っていくから」
リビングへ入ると、そこは10ヶ月前卒業を告げられたあの日から何も変わらないように見えた。
思わずあの時座った場所へと腰を下ろしてしまう。
アイスティーのグラスをもった桃子は、雅を見て一瞬、ホンの一瞬だけ動きを止めた。
雅へとグラスを渡し、桃子もあの日と同じ場所へと腰掛け、自分のグラスへと目を向けたまま雅へと問いかけた。
「それで、みや。お外で話せない話って何?」
「その前にさ、まずこっち見てよ、もも
みや、ちゃんとももの顔見て、目を見て話したい」
仕方なく、というようにゆっくりとこちらを見る桃子。
ちょっとだけ揺らいでいる桃子の目を見つめると、一度だけゆっくりとまばたきをした。
ねえ、もも。今みやはどんな顔してる?
あの日のももと同じ顔してる?
決心を決めた顔、ちゃんと出来ているかな?

839 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/07/12(水) 08:12:36.90 0

「ねえ、もも。みや決めたんだ。みや、ももがほしい。
ももちは皆のものだけど、ももはみやのものでしょう?
みや、ももの手を離したくない」
「みや。ももはもものだよ。誰のでもないよ」
「誰のでもないなら、みやのももになってよ。
15年だよ。今更他の人なんて欲しくない。
ももがいい。ももじゃなきゃやだ。
卒業と同時にみやの手を離そうと決めたんでしょ?
10ヶ月前にここで」
桃子は答えず、ただ一つ大きなため息を漏らしただけだった。
「どうして決心したのに、その後みやに近づいたの。
みやは、みやだけのももがほしい。
思い出だけのももじゃイヤ。これからのももだってほしい」
「ずっと離れないように、近づきすぎないようにお互いしてたよね。
みやは子供で、ずっとももが手を握っててくれた。
ももちは皆のアイドルだから。
みやってばももちの事が好きなんだから。
そう言って二人の距離をコントロールしてたよね
ももがそれ言い始めたきっかけ覚えてる?」
「みや...」
「みやが中学生の時、ももにキスしてからだよね。
それ以来、ももはみやが近づき過ぎる度に言うようになった。
ねえ、もうももはももちじゃないよ。
みやがもものこと好きなんて何年も前から知ってるでしょう?
みやはもっとももに近づきたい。
ももをみやのだって言えるようになりたい」
「ねえ、ももだって決心して卒業したんでしょ?
決心した理由とか気持ちとか一人で抱えてないで、隠さないでみやに教えてよ。
じゃなきゃももの決心をみやが納得できない」

840 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/07/12(水) 08:17:26.77 0

何度か躊躇うように開けては閉じる唇。
辛抱強く雅が待ち続けると、一つため息をついて、ようやく桃子は口を開いた。
「みや、もう手を離そう?15年だよ。
お互いにそろそろ一人で立てるようにならなきゃ駄目なんだよ」
「違う。そんな風にごまかさないで。
一人で立つのと気持ちを切り離すのは違う。
みやにだって分かる」
「みやに近づいたのだって卒業前で感傷的になってただけだよ。
人生の半分以上過ごしたこの世界から離れる前に寂しくなっただけだよ」
「じゃあ何でみやだったの。
なんであんなお仕事でもプライベートでも見せたことないような顔でみやに卒業を伝えたの。
卒業発表の時、何でみやに見届けてなんて言ったの。
なんでみやがたりないなんて言ったの。
なんであんな忙しいスケジュールの中で今までなかったくらいちょこちょこ連絡してきたの。
なんで幸せなステージだなんて言ったの。
なんであの日、みやに幸せだなんて言ったの。
なんでみーやんなんて呼んだの。
なんでハグしたの。
近すぎるよ、もも。
なんで卒業発表以来、あの台詞言わなかったの。
認めてよ。みやのこと欲しかったんだって認めてよ。
みやに近づきたかったんだって、ももだけのみやが欲しかったんだって認めてよ、もう」
良かった。泣かずに言い切る事が出来た。
目線だって逸らさなかった。
みやから見えた、卒業までのももの姿を伝える事が出来た。
どう見たってみやのこと欲しがってるでしょ。
お願いだから、認めてよもも。
泣かないで、もも。泣かせたいんじゃないんだよ。
離れたくないんだよ。

841 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/07/12(水) 08:19:31.90 0

「だって、いま、はなさなきゃ、もう、むりだから」
ももは暫く泣いてからあの時とおんなじ、痛いほどはりつめた顔をしてそう言った。
「何が無理なの?」
「みやのこと、はなして、あげられなく、なる」
「何で離さなきゃダメなの?」
「みやが、すき、だから」
「ももはみやが好きじゃダメなの?」
「だって、もぉは、そつぎょう、したから。
いままで、みたいに、みやのて、あたためて、あげられない。
ベリーズが、かつどうていし、したころより、もっと、とおくなっちゃう。
みやは、みやからは、きっと、てをはなして、くれないから、もぉが、みやのこと、じゆうにして、あげなきゃ、だれが、みやのてを、あたためるの?」
「ねえ、もも。みやはももがいいんだよ。
みやの手を暖めてくれるのは、ももがいい。
他の人じゃイヤだよ。
確かにベリーズの頃よりお互いの距離は離れちゃった。
ステージに上がる前には必ずももに会えてたあの頃とは違うけど。
ももがそこにいなくたって、みやの手を暖めてくれてたのはいつだってももだよ。
事務所ですれ違うだけだって、離れてたって頑張ってるももの姿を見てきた。
本番前に冷たくなるみやの手はももを思うと暖かくなったんだよ」

842 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/07/12(水) 08:20:24.19 0

「ももはさ、案外愛し方が下手くそだよね。
I NEED YOU ホントももにぴったりだよ。
お願いだからさ、今度は気持ち全部伝えて。
もしこの先にまた、ももがみやとの間に境界線引いたとしても全部飛び越えるから。
ねえもも。うちらの出会い、覚えてる?
オーディション会場でぶつかってさ。
まさかお互い合格するなんて、ましてや同じグループになって、15年経っても同じ人のことが好きなままだなんて想像もしなかった。
あの曲じゃないけどさ、きっと運命はここにあるんだし、ももなしでは生きていけないよ、もう。
だからもも。みやの手をとってよ」
「ホントにみやはももでいいの?」
「ももがいいの。諦めて。みやは諦めないから。
みやがももを諦めるのを諦めて」
あぁ、やっとももが笑ってくれた。
みやの大好きな笑顔。
「もぉ、みーやんってば、ホントもぉのことが、大好きなんだから」
「もももみやのこと大好きでしょ」
二人で笑って、そっとキスをして。
あぁ、やっとももはみやので、みやはもものになれた。


おわり

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