まとめ:雅ちゃんがももちの胸を触るセクハラ

504名無し募集中。。。2017/11/13(月) 23:01:15.670

買い物の帰りだった。商店街を抜けると、角に出ている見慣れない看板が目に留まった。
最近できた店だろうか。セレクトショップのようだ。ここ、前は何だったっけ。思い出せない。
みやの目はすぐに、ウィンドウのドレスに惹きつけられた。
大胆なバイカラーのパーティードレス。
オフショルダーから落ちる豊かなドレープと細やかなレースの模様が気になった。
ウィンドウの前で立ち止まり、いっとき、みやは考え込んだ。

肩を揺らすと、腕に触れるスリーブの感触が心地良かった。軽くてすごく動き易い。
腰を捻るとスカートがぱあっと広がった。
鏡でもう一度、全身を見てみようと顔を上げる。
あれ?ここにあった、姿見は。
不意に、お腹がきゅうっと苦しくなった。
前屈みになり纏わり付くドレープを剥がそうとすると
あっと思う間に、ドレスがぐるぐる体に巻き付いてきた。
まるで意思を持つかのような素早さで、全身を締め付けられる。
息が苦しくなって、みやはもがいた。
……そうだ、このドレス、買ったりなんかしてない。ちょっと見ただけですぐ、おうちに帰ったのに。
背中が熱くなる。どんどん熱くなってくる。
あぁ……だめだ
……生えてしまう。
みやはその場にしゃがみこんで、両手で肩を抱いた。ほら、背中を、皮膚を突き破って
見えなくてもわかる。黒い、羽が、生まれてくる。
だめだってば!
自分の力のなさを呪う。転がるように床に背をつけ、押し付けた。
熱が喉元を駆け上がってくる。首を仰け反らせ、こみ上げてくるものを必死に押しとどめた。
お願い、堪えて。お願い。耐えきれなかったら

悪魔になってしまう……!

「……っ!」
引き攣るような自分の声に意識が戻った。全身が強張っている。
悪夢から開放されてホッとする気持ちと、またすぐに誘い込まれそうな恐怖に、みやは動けなかった。
空気を揺らさぬようにこわごわ息を吸うと
衣擦れの音、あたたかい気配にゆっくりと目を開いた。

505名無し募集中。。。2017/11/13(月) 23:05:15.200

ももの手が頬を触った。
「怖いの?」
言葉が出ない。
頭を撫でられた。
お願い、まだ寝かせないで。
今再び眠りについたら、さっきの場所に戻りそうだった。
眠りたくない。

手を伸ばして髪を掴み、引き寄せると、ももはビクッと震え、怯えたようにみやの顔を見た。
ようやく言葉が出る。
「怖い」
「え?」
「助けて」
背中を掻き抱いた。そのまま力を込める。
微かに息を吐いたあと、じっとしていたももは
少ししてようやく、強張らせていた体を解いた。
腰に手を這わせる。いま、みやの手が触れている、このリアルな体で、現実に引き戻して欲しい。
抱いたまま体を返し、ももを仰向けにした。耳の下に唇を押し付ける。

熱を出して寝込んだ夜から、ときどき一緒に眠るようになった。
どういう風の吹き回しか、わからない。わからないけど
潜り込んで来られると狭いベッドで窮屈だけど
悪い夢を見たときに近くに居てくれた
こんなに嬉しいことって、あるの?
このまま、みやを幸せにしてよ。

声を聞かせて。

パジャマのボタンをはずして手を入れる。
「声聞きたい」
「……や」
脇から膨らみを寄せて、頬擦りした。
「あったかい」

506名無し募集中。。。2017/11/13(月) 23:10:38.470

「ちょっと、なんなの、苦しそうにしてたから心配して」
「うん。うん、ありがと」
可愛らしい乳首を指先でそっと撫でた。
「みや」
ねえ、すっごく感じ易いくせに。
きゅ、っと摘んで尖らせた先端を舌先でつつく。そのまま唇に含むと舌を押し当て、揺らした。
「……っ!」
ちっちゃい悲鳴が上がった。逃げんなこら。

片手を腰に回して力いっぱい抱き寄せたまま
頭を両手で押しのけてくるのも構わず、ちゅるっと音を立て
硬くなりかけの突起を吸った。
「あんっ……んっ!……なに」
ちょっとだけ顔を上げる。
「甘えたら悪い?」
「なに……言ってんの、なに言ってんのみや」

腰に置いていた手をパジャマのズボンに潜り込ませ、お尻を撫でた。
「可愛い……暴れないの」
「やなの!こういうのやなんだってば」
「何がいやなの」
お尻の方から伸ばした指先がぬるりと淵に潜ると、ももは喉奥から鳴き声を漏らした。
探り当てた入り口から、カンタンに、指先が飲み込まれる。
「……あっあ……っ」
「すぐにこんななっちゃうくせに」
一旦指を抜くと、パジャマのズボンを脱がせにかかった。

膝から内腿にキスしながらずるずると片脚を引き抜く。
「うん……悪夢とかどーでもよくなるこれ」
「何の話……」
頬擦りしながら脚の付け根を吸い上げると、ももの腰が仰け反った。知ってる。ここ弱いの。
舌で濡らしてもう一度吸った。
「ん、あ……っ」
甘い甘い香りが、みやの鼻先をくすぐった。

510名無し募集中。。。2017/11/13(月) 23:16:55.690

もう二度と誰のことも誘わせないから。みやだけの
「ねえ、もっと、声」
「なんで脅すの、ねえ、なんでももが脅されなきゃなんないの」
うるさい。
ふっくらした丘を撫で、毛先を指に絡ませる。
「もさもさー」
「何が言いたいの」
「もさもさーって言いたい」

撫でながら指先で開くように引き上げるとちっちゃい桃色の突起が見える。
舌を伸ばした。触れるか触れないかのところで止める。
まるでご馳走を目の前にしたかようなときめきにみやはワクワクした。
ももの手が伸びてくる気配。
髪を掴まれるのと同時に、舌を掬い上げるように押し付け思い切り擦り上げた。
「やっっ……ぁっあっあ……!!」
甘ったるく甲高いももの声が耳を突き刺してきて、みやの胸は激しく高鳴った。

「ごめんね、もも」
枕に突っ伏したまま肩を震わせているももの頭を撫でる。
「……ふっ……うっ」
「ちょっと、怖い夢見ちゃったから、慰めて欲しかったの」
ももは鼻をくすんと鳴らした。
「何、怖い夢って」

駅から続く通りにできていた新しいお店とドレスの話をすると
ももは枕から顔を上げた。
「そう、そうなんだ」
「ドレスに絞め殺されるかと思った」
羽の話は、しなかった。
「夢……で、あんなにうなされるんだね。ちょっとびっくりした」
「通りすがりにちらっと見ただけなのに、夢に出てくるなんて、そんなに欲しかったのかな」
ももが体を起こし、みやの肩に触れた。
「もう一回見に行ってみなよ」
「え?」
「それさ、悪魔のドレスかもしれないよ」

512名無し募集中。。。2017/11/13(月) 23:20:28.600

憶えのないお店も、ウィンドウのドレスも夢だったんじゃないか。
翌朝、半信半疑訪ねてみると、お店は現実にそこにあり、昨日のままドレスが飾られていた。
昨日は気付かなかった足下に、金額の書かれたショーカードが立ててあり
みやの顔は引き攣った。
「たっか……」

「確かにこのドレスは高い!とんでもない金額や。ひいぃ……あかんあかん」
急に聞こえてきた声に驚いて右を向くと、みやの隣にちっちゃい女の子がしゃがみこんでいた。
ウィンドウに両手をぺったり付けて中を覗き込んでいる。
まるで気配に気付かなかった。半歩後ずさると左側にもう一人
つやつやのロングヘアにおでこが印象的な少女が屈み込んでいるのに気付いた。
「待って、むすぶ。お財布の紐を、しっかりと締めるのは、大事なこと。でも
運命的な出会いがあったなら、そこでさっとお買い上げするのも、スマートなレディのたしなみ……」
「ま、まぁ……確かにな。これは……あれや……美人しか着れないドレスや」
「美人しか着れないドレスですね。まさに、お姉さんのような」

2人に見上げられて、みやは困惑した。
「いっ、いやー嬉しいけど、高いよねー。手持ちもないし今回はいいかな」
右側のおちびちゃんが立ち上がり、ニコーっと笑った。
「いやいや、お財布の中に、魔法のカードがありますやん」
「分割払いという方法もありますね。だって、考えてもみて。この、美しいドレス……。
美しい者だけが着ることを許された、このドレスは、今を逃したらきっともう二度と、巡り逢えない……」
眉尻を下げて呟くおでこちゃんは、その幼い風貌に似あわぬため息をついてみせた。
「……このお店の子なの?」
「いえ、ただの通りすがりです」
「なんかおかしいよね」
そう言うと、みやを挟むように立っていた2人は少し慌てたようにトテトテと後退り、寄り添った。

「きみたち、さては悪魔だな」

2人は一瞬顔を見合わせた。
「いっ……いやいやいやいや、アクマ?そんなもんおるわけないやん。もぉ〜完っ全に漫画かなんかの読みすぎですわ」
「悪魔というのは宗教上、空想上の生き物であって、現実的ではありませんね。
お姉さんのような大人の方が口にされるのはちょ……っと、違和感……が」
みやが距離を詰めると、2人はさらにじりじりと後退る。
交互にそれぞれの目を覗き込んでやると、くりくりした目玉が激しく泳いだ。

その時、首を仰け反らせたおでこちゃんがハッと表情をこわばらせ、隣のおちびちゃんの肩口を掴んだ。
「ちょっと待って……!むすぶ、あれ見て!UFOじゃない!?」
「またまた〜ななみさんそんなわけ……ほっほんまや!!!」
その驚愕の表情に、みやは思わず2人の指差す方向へ首をひねり、空を仰いでしまった。
駆け出す足音。
あっと思って向き直り、猛ダッシュで駆けていく後ろ姿に向かって「こらー!」と声を投げたが
その姿は人波を縫うように見え隠れしながらものすごい勢いで遠ざかっていった。

みやは眉間に皺を寄せたまま、しばらくその方向を睨んでいたが
フッと笑いが漏れ、同時に肩の力が抜けた。
「いってみますか」
頭を掻きながら呟き、振り返ると、みやはウィンドウのすぐ横

OPENの札の下がった木の扉をゆっくりと押し開いた。

514名無し募集中。。。2017/11/13(月) 23:24:46.370

昔々の香水のような、不思議な匂いが微かに鼻をつく。
背後で扉が締まると、外の喧騒からは完全に遮断され、耳を塞がれるような静けさがみやの全身を包んだ。
窓がない。いや、天井近くの小さな窓から微かな光が差し込んでいるだけだった。
埃がキラキラと舞っている。
ようやく目が慣れると、狭い店内に置かれている古めかしい調度品が浮かび上がってきた。
作り付けの棚に何着ものドレス。ガラスのショーケースに置かれたアクセサリー。
大きな書斎机が目に入る。端にタイプライターと、インク瓶が並んでいる。

人の気配がまるでない。
狭い部屋の正面に扉があった。そっとノブを回して引くと、さらに奥へと続く廊下が真っ直ぐ伸びているのが見えた。

そんなわけはない。
この廊下が実在するなら、すぐ隣のクリーニング店をぶち抜いていることになる。
悪魔のドレスなんて半信半疑で来たけれど、これは本腰を入れた方がいいかもしれないと
みやはゆっくり呼吸してから、静かに一歩踏み出した。

足元に纏わりついてくる禍々しいばかりの気を
銀の剣先で左右に薙ぎ払いながら、先へ進む。
仄暗い天井や壁、そこかしこから感じる、悪魔と思しき息遣い。
聖剣に恐れをなして、身を潜めているのに違いなかった。
「出てこいっ!」
拳で壁をどんっと叩いてみたら、蠢いていた気配がぴたりと鳴りを潜める。
みやはちょっとうんざりした気分になっていた。
にへひか、少なくともどちらかを連れてくれば良かった。

突き当りの扉。真鍮のノブに剣を突き当てると、じわりと手の痺れるような感覚があった。
しばらく触れさせていると、ノブがガタガタと音を立てて震えだす。
そのうち、堪えきれなくなったかのようにノブはかちゃんと音を立て、扉は勝手に奥に向かって開いた。

517名無し募集中。。。2017/11/13(月) 23:28:10.110

もとの店内に戻ってきたようだった。棚、ショーケース、トルソーに着せられたドレス。
ぐるりと見回す。

「待ってたよ、みや」

不意に響いた声の方に目をやる。
お人形が喋ったのかと思った。大きな書斎机の上に腰掛けている黒いドレスの女性は
金色の髪をゆるやかに胸元に下ろしている。真っ白な肌、頬の赤みも、お人形に施したメイクのように人間味がなかった。
その美しい面差しの中にあるあどけなさは、みやに遠い記憶の幼馴染を思い出させた。
「……リサコ」
思わず漏らした言葉に、女性は小首を傾げた。
「どうして、私の名前を知ってるの?……やっぱり、みやと私は運命の糸で繋がってるのかな」
リサコは、書斎机の上で脚を組み替えた。

「外のドレス見てくれた?みやのためにつくったんだよ」

気付けば、足元にすさまじい瘴気が渦巻いていた。
右手の聖剣を握り直し、切っ先を足元に向けて少し動かしてみたが
この手応えは、生半可な力で打ち払えるものではない。
みやは両手で柄を握り直す。
「私に触りたいなら、その剣は下に置いてよ」
と、リサコが言った。みやは顔を上げる。
「ダメ」
リサコの真っ赤な唇が動く。
「なんで?どうしてそんなに怖がるの。みやは、一体私を何だと思ってるの」

みやの唇の端がピクと動くのを見ると、リサコは目を細めた。

悪魔。
そう言ったつもりだった。なのに。
「……天使」
みやの口から零れ落ちた言葉を、リサコは小さなはにかみで受け止めた。

686名無し募集中。。。2017/11/15(水) 20:29:17.070

リサコが書斎机の端に手を伸ばすと
真っ黒なガラス玉に見えていたランプが、グレーの灯をともした。
「そう、私は多分、天使だったんだけど」

かつては白を纏っていたと言うなら、どれほど愛らしかっただろう。
その漆黒のドレスも頬に落ちる影も赤い唇も美しいけれど。
みやは黙ったままリサコの話を聞いた。

「ーー傷つくくらいなら虚無を選ぶ。ある時私はそう言ったの。
気付いた時には天から落とされて、それからずっと、ここで暮らしてる」
「それでこんな風に、人を誘い込んで遊んでるの?」

ここまで来てしまったら、付き合わないわけにはいかないだろうな。みやは覚悟を決めた。
多分、みやの記憶にある梨沙子の姿を借りて現れた、こんなきれいな子に手をかけるのは気が進まないけど。

「私はこれまで人と取引をしたことがないし、人と関わったことがないかな。そんなつまらないことに興味はないんだけど」
「え、じゃあ、ここで何してるの」
「あのね、ドレスをつくってるの。みやが気に入ってくれるといいな」
リサコは目を伏せると、頬を緩ませた。

「月も出ない夜に、そこの鎧戸をそっと開けて外を見るの」
そう言われて見ると、隠すように積まれている椅子の隙間から、確かに窓枠が見えた。
「そこからみやを見つけたとき、まだ私にも天の導きがあるんだと思った」
「ね、この店って、いつからあった?昨日初めて見た気がするんだけど」
みやがそう言うと、リサコはあからさまに落胆の表情を見せた。
「前からあったわ」
「……みやを、どうしたいの」

「契約なんてどうでもいい。でもね、みやとだったら、してもいい。初めて、そう思ったの。
みやは私を受け入れてくれるただ一人の人間なんだってわかったから。それからずっと、ドレスを」
「残念だけど。わかってると思うけど、みやは悪魔バスターだから」
「……悪魔祓いなんてつまらないこと、どうしてみやがしてるのかわかんないな。
永遠の苦しみと向き合うような、そんなものを背負う必要ないと思う。みやはもっと幸せになれるよ。私みたいに、自由に」

「とても自由には見えないし、幸せにも見えないなあ」
「だとしたら、みやが幸せじゃないから、私が幸せに見えないのかもね」
「なんで。今、充分幸せだから」
「嘘。みやが強がってると、悲しくなる」
「強がってないし」
「だって、幸せじゃないって私にはわかる」

リサコが俯くと、そのうち小さなすすり泣きが聞こえた。
リサコは何度もしゃくり上げ、震える声で言った。
「傷ついているみやを見るのが、私にとってどれだけつらいか、わかる?
ねえ、みや、死ぬまで、悪魔祓いを続けるつもりなの?どんな罰で、そんな苦行を続けてるっていうの」

「ヘンなこと言わないで。つらくなんかないし、傷ついてもない」
「そう思い込まされている、みやが可哀想」
リサコは手の甲で目元を拭った。

688名無し募集中。。。2017/11/15(水) 20:34:41.350

「新しい物語が始まる方法があるの。視界が開けて悪魔退治なんてどうでもよくなる」
「いい。ごめんね。悪魔の提案は聞けない」

「みやの飼っている子を、私が人間にしてあげる」
リサコは、どう?と言わんばかり、目をきらきらさせながら身を乗り出してきた。
「……もものこと知ってるの」
「うん。回覧板が回ってくる。暇だから端から端まで読むの」
「そうなんだ。へぇ……なんて書かれてるの」
「教えて欲しい?」
「ううん、やっぱいい」

「みやの新しい物語。忠実な恋人と、死ぬまで幸せに生きていく人生はどう?」

みやの顔を見て、リサコは笑った。
「納得できないって顔してる。ふふ。でもみやにもわかると思うな。実際にそうなってみたらわかる。
人間になってしまえば、彼女の迷いも苦しみも一掃される。そうなれたらどんなにいいかって
そう、彼女が望んでいるのに、みやは目を背けるの?」
「そんなこと、思ってるはずない」

「バカじゃないの。思ってるに決まってんじゃん」

みやが一瞬、言葉を詰まらせると、リサコは皮肉めいた笑いを漏らし、畳み掛けるように続けた。
「あの子は人間になりたいって。みやと一緒に老いていきたいって。みやに責任はないの?
自分の望む姿のまま現に留め、羽を毟って、囲い込んでおいて、その思いは救ってあげないのかな」

すぐに返事ができなかった。目を閉じると、石畳の床から冷たさが這い上がってくる。
いつの間にか、屈み込むようにして自分の体を抱いていた。

「今すぐ、叶えられるのに。そういう、つまんない迷いがーー」
顔をあげると鼻先にリサコの顔があった。みやは息を呑む。
「ーーニンゲンを不幸にしてんだよ」

間近に見るリサコの瞳は、弱い燐光を放っているように見えた。
震えながら両手を下ろすと、頬に、リサコの冷たい頬がそっと当てられた。

「ありがとう。剣を置いてくれて」
いつ、どこへやったんだろう。振り返ろうと思ったが、首も肩も強張ったままぴくりとも動かなかった。
リサコの両腕が、背中に、腰に回ってくる。
「いいの。これで、刃を持って傷つけ、傷つけられる辛い人生とはサヨナラ」
細く柔らかいリサコの声が耳を叩くと、不意に溢れた涙がボロボロと頬を伝うのがわかった。
「……んっ。……ぅ……っ」
「子どもみたいに泣くのね。未来を見た?どう?幸せだったでしょう」
リサコの手が髪を撫でる。

「悪に与したなんて思わなくていいの。そもそも人生は、こんな風に与えられ変わるものなのよ。
自分で切り開いているだなんて、人の思い上がり」

リサコの声は静かで優しかった。そう、そうなのかもしれない。

689名無し募集中。。。2017/11/15(水) 20:38:08.640

「ねえ、みや?悪魔と魂の取引しちゃダメって、みやが決めたの?違うじゃん。
私を頼って欲しいな。みやが望んでくれるならいくらだって叶えてあげる。
あの子とふたり、幸せに生きていきたいんでしょう。そう願えば叶うのよ。そういう世界を手に入れたの」
「……望み」
「今、何を望む?」

「……幸せを」
声が掠れた。
「うん。いいよ。あの子を幸せにしてあげて」
できるだろうか。幸せにできるだろうか。
そうしてあげたい。固まっていた左手の指先が、緩んだ。

「心をくれるのは最期でいいから。みやが死んでもいいと思うその日まで、それまでここでずっと、待ってる」
みやは震える左手を伸ばして、リサコの背中を抱いた。
「それまで寂しくないの」
「寂しい。ずっと寂しかった。でも、今、みやがここにいてくれるから、待てるよ」
「……みやのこと欲しいなら、今欲しい、すぐ欲しいって、言っていいのに」
「そんなこと……言えないもん」

腕の中で、リサコの体が震えた。
呼び起こされた記憶。懐かしく甘い思いで胸がいっぱいになった。
いじらしく、愛おしかった。このまま、こうしていてあげたいけど。

ううん。ずっと、ずっと抱いていてあげる。

リサコの背中を宥めるように撫で下ろすと
背後で小さい金属音が響いた。
リサコがはっと顔を上げたのと同時に、みやの右手に聖剣の柄が吸い付く。
ぎゅっと握りしめると刃が大きく気を放った。渦巻いていた瘴気が吹っ飛び、散り散りになって空中を舞った。
すごいなぁ。思わず小さな笑みが漏れる。
戻ってきた。魔法の杖みたいに。
いつの間にここまで操れるようになってたんだろう。
みやの思うままに。強い思いのままに。

もう離さない。
「離れないから」
みやはそう言うと、抱き竦めたままのリサコの背中にその切っ先を向けた。
ランプの光がゆらめく。
「どうして」
「待たなくていいよ。今、リサコを幸せにする」
「なにそれ……バカ……みやのバカっ」
「悪魔と取引はしない。夢は自分の手で掴みたい。そう望んだっていいよね。みやの自由。
ももに許してもらおうなんて別に思ってない。全部、自分で引き受けるから」

目を細めたリサコの、その両頬を涙が零れ落ちるのが見えた。
その中には、口惜しいも、悲しいも、嬉しいもない。みやには、ただのきれいな透明の雫に見えた。
「感じて。絶対、虚無より、傷つく方がいいと思う」
すぐに目を閉じ、歯を食いしばると、みやは全身に力を込めた。

690名無し募集中。。。2017/11/15(水) 20:43:38.220

断末魔は、みやの鼓膜を切り裂いただろうか。
みやの四肢を引き千切るほどに、悪魔は最期、苦しんだんだろうか。
まるで記憶にない。
たくさんの痛みの残滓が全身をズキズキと疼かせていた。
悪夢の去った店内、その静けさの中、みやはしばらくの間立ち尽くしていた。

外に出る扉を開けると、街はすっかり夜になっていて、あっけにとられる。
そんなに長い時間だっただろうか。
「帰らなきゃ」
ウィンドウは振り返らなかった。

悪魔のドレス。みやのドレスが、消えていたら悲しいから。

玄関の扉を開けると、上がり框に膝を合わせ、ももが正座していたので
みやは飛び上がるほどびっくりした。
「なっ、なに、ただいま」
「遅いよ!」
飛んできた声が思いのほか強くて、みやはビビった。
いつもみやの帰りなんてまるで気にしていない風なのに。
何か怖いし、謝っておいた方がいいのかもしれない。

「ごめん」
玄関に突っ立ったままそう言うと、ももが唇を噛んだ。
「行かせなきゃ良かった」

「え、そんなことないよ、ありがと。行って良かった」
行って良かった。そう思う。
強く切ない寂しさをひとつ抱いてあげれた。そんな気がする。

ももがほとんど涙目で睨みつけてきた。
「かっ……帰ってこないんじゃないかって」
「何言ってんの、そんなわけ、ないじゃん!」
ももの目を見ながら言葉を重ねた。
「だって今夜は前から鍋パの予定で、にへひか呼んでるし、もも一人でおもてなしなんか無理だし
いやできるかもしんないけど、だって、やっぱダメでしょ、みやがいないと」
急にももが勢いよく立ち上がり、ぶつかるように抱きついてきた。

しがみつくように背中に回ってきた手がぎゅーっとみやの体を締め付ける。
「ダメ……っ。みやが、いないと」

頭のてっぺんまで駆け上がってきた何かが、みやをくらくらさせた。

692名無し募集中。。。2017/11/15(水) 20:47:08.590

「遅くなっちゃいました」
両手いっぱいに荷物を下げている、にへの息が荒い。
「ちょっと食材のお買い物が、ねー」ひかるがカウンターの上に重そうな袋を置く。
「すごい量だねー。何の鍋に決まったの」
そう言いながら、ひかるの置いた袋を覗き込んだ、みやの手が止まった。

「ちょっと待って。なんで揚げ物こんなに買ってるの。鍋だよね」
「そう、お鍋の具材買うのに商店街回ってたんですけど、お肉屋さんで」
「聞いてくださいよ!」

鶏団子入れたい!と意見が一致し、お肉屋さんのショーケースを見ていた時
すぐ横に積まれていた黄金色のクリームコロッケに、にへひかの目は釘付けになってしまったのだという。
『どうする?』『カロリーオーバー』『だよねえ』
あらためて、鶏挽き肉を注文しようと、ひかるが頭を上げたとき、初めて、二人の少女に挟まれていることに気付いた。
『うわぁーこんなん絶対コロモさっくさくですやん!』
『そして、一口かじれば中はトロットロですね』
にへひかを囲み、二人は口々にそう言った。

カウンターの上に鍋の食材を広げながら、ひかるが続けた。
「にへが『ダイエット中だしな〜』って言ったんだよね。そしたら……」

『あかん!それはあかん!そんな痩せていながら!そのスタイルで言いますか?』
『健康的なBMIというのがありまして。美容体重というのは今各国で物議を醸しているんです!
ほんのすこし、ふっくらしているくらいが、人に与える印象が抜群にいいという研究結果もありますし』
『お姉さんなら、ちょっと増えたとこでまだまだモデル体型。一般人泣かせのデルモはこれだから困りますわー』
『食べたいものを我慢するストレスからの、お肌の状態の方が気になりますね。
なによりこのコロッケは、ミグク味のホワイトソースに魚介の旨味が凝縮されて、間違いなく、とびきり美味しいわけですし』
『さくーっとしてとろーっとして、ふわぁ〜〜っと』
『あーん!むすぶがそんなこと言うと食べたくなっちゃうでしょ』
『アホ!むすぶちゃんも食べたいねん。けど我慢しぃ。うちらは今……ダイエット中や!』

「それで、ひかるが吹き出して、買って、いっこずつこの子達に分けてあげようってなって」
「はしゃいで帰っていったよね。可愛かったなー」
「……にしても、買いすぎじゃね?」
「10個買ったら、から揚げ1パックサービスっていうことだったんで、うっかり」
てへっとにへは笑った。
ひかると一緒に「運動すればいいよねー」などと言い合いながら、食材を手にキッチンの奥へ入っていく。
「そっ……そう」

キッチンを出ると、ドヤ顔のももが立っていた。目が合う。
「やられてやんの」
思わず首を締めていた。

思い上がりって言われてもいい。これは、みやが掴んだの。

「さてはももの子だな」
「ちっ……違うよ、しらんしらん!」
「本当のことを言え!」
「くるっ……しぃ……離して」
「ヤダ」
「にへちゃんとひかるが見てるってば」
「えっ」
思わず振り返る。力のゆるんだ隙にももはみやの両手を引き剥がし、廊下の方へ逃げていった。

『あの子とふたり、幸せに生きていきたいんでしょう。そう願えば叶うのよ。そういう世界を手に入れたの』
不意にリサコの言葉を思い出して、みやは両手を握り締めた。

そんな世界、もうとっくに手に入れていた。

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