まとめ:雅ちゃんがももちの胸を触るセクハラ

243名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/04/30(日) 01:59:56.63 0

なんでこんなことに。
何度目かの言葉を心の中でくり返したところで、風呂場のドアが軋んだのが聞こえた。

「みや、あがったよ」
「ん。ちゃんとあったまった?」
「うん、おかげさまで」
「よかった」

じゃあ、うちも入ってくるわ、と雅はゆるりとソファから立ち上がる。
振り返りざま、桃子が視界に入りそうになって雅は目を逸らした。
お風呂上がりな上に、雅の貸した寝巻きに身を包んでいる桃子なんて、見てしまったら。
床の木目に視線を逃したまま、雅は足早に桃子の脇を過ぎ去った。

「ドライヤー借りてもいーい?」

呑気な声が、雅の背中にぶつかった。
ひとの気も知らないで、とこぼれそうになった息を押しとどめて。
好きにしな、と一言、何とか投げ返した。

なんで、こんなことに。

脱衣所のドアノブに手をかけながら、雅は再びそう思った。

初恋は叶わない、なんて言葉は、少女漫画や恋愛ドラマで、何度となく耳にしてきた。
今までそんな漫画やドラマを楽しめていたのは、きっと心のどこかでそれを他人事だと思っていたからだ。
桃子に告白をした日の夜、枕に顔を埋めながら雅は初めてそれを実感した。

ごめんね、ももちはみんなのアイドルだから。

桃子は珍しくそんな真剣な表情で、たった一言、返事をした。
簡潔な言葉ではあったが、雅にとっては十分だった。
笑ってしまうほどのプロ意識。
でも、そんなところだって好きなのだから始末が悪い。
その場は軽く流したものの、家に帰ってから食欲がないことを自覚した。
心が体に追いついた時、ようやく振られたことにショックを受けていることが分かった。
けれど、嫌でも時間は過ぎて行くし、落ち込んでばかりもいられない。
桃子が桃子なりのアイドルを貫くならば、せめて自分も自分を貫こうと決めた。
それさえもできなければ、きっと桃子と肩を並べられなくなる。
ない知恵なりに考えた、それが雅の結論だった。

244名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/04/30(日) 02:00:33.08 0


それから数年間、雅の思いは募りはすれど薄まりはしなかった。
活動停止の後、新しいグループでの活動を経て、アイドルから卒業。
アイドルという存在ではなくなった桃子に対し、今ならば、という下心がなかったわけではない。

彼氏ができた。

だから、ある日何気なく送られてきたメールに、内臓を冷たい手で握り潰されたようだった。
間違いではないかと優に10回は読み返したところで、それが現実であると理解した。
なぜ、自分に報告してくるのだろう。
そう思いはしたものの、下手に聞くこともできない。
考えた末に、返信は祝福の言葉を一言。
桃子からは、ありがとうとだけ返ってきた。
まだ、本格的に蝉が鳴き始める前のことだった。

良かったじゃないか、これですっぱり忘れられる。
そう思う自分とは裏腹に、桃子への思いにしがみつく自分もいて。
ここまで執着する女だったのか、と今更ながらに自嘲する。
そんなある日、再び桃子からメールが届いた。
内容はたった一言、元気?とだけ。
どうしたのだろうと首を傾げつつも、近況を短くまとめて報告してやった。
よくある気まぐれだろう、くらいに捉えていたが、次の日には返信があった。
珍しいこともあるものだ、と桃子のメールにまた返事をする。
次の日も、その次の日も、大体1日おきにメールは返ってきた。
昼ごはんは焼きそばだっただの、帰り道に猫に出会っただの。
ごくごくありふれた日常が、一行に詰められて雅の端末に送り届けられる。
特に意味のあるやり取りには思えなかったが、桃子にとっては大事なのだろう。
その頃には、北からの風が窓を揺らすようになっていた。

245名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/04/30(日) 02:01:11.88 0


軽いインターフォンが、雅の部屋に響いたのはたった数時間前のことだった。
もう、街の明かりも徐々に消え始めるような時間帯。
夕方から降り始めた雨も、今ではすっかり雪に変わっていた。
こんな時間に、と訝しながら外の様子を伺って、雅は言葉を失った。

「もも……?! え、は? 何してんの?!」
「あー……えへへ」

半ば咎めるような雅の言葉に、桃子は決まりが悪そうに頭を掻いただけだった。
誤魔化すように笑う彼女の口から、白い靄が漏れる。
しっとりと濡れた髪の毛や、変色したコートから、何やら事情があるらしいとは察したけれど。

「とりあえず、あがりなよ」

玄関先で問答をしても仕方ない。
そんなことよりも今は、冷え切った桃子を温めることが最優先だ。
強引に桃子を風呂場に押し込んで、そして、今に至る。
熱いシャワーを浴びると、少しだけぐるぐると回っていた思考が断ち切れた気がした。
風呂からあがると、リビングに桃子の姿は見えなかった。
そうっと寝室を覗くと、ベッドにくるんと丸まった毛布の塊が一つ。

「ももー……?」

その塊はぴくりとも反応しないまま、呼吸に合わせてゆるく上下するのみだった。
耳を澄ますと、すうすうと子どものような吐息が耳に入る。
勝手に他人の家に押しかけて風呂まで借りた上に、今度は勝手に他人のベッドの上で寝てしまったらしい。

「ったく、勝手すぎない……?」

思わずそうつぶやいていたが、叩き起こそうという気持ちにもならない。
自分の甘さに笑いながら、しまっておいた毛布を取り出して雅はソファに向かう。
明日はどこか寝違えているかもしれないな、なんてことを思いながら雅も毛布にくるまった。

399名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/05/01(月) 02:41:28.200

不意に意識が覚醒したのは、虫の知らせというやつだったのかもしれない。
何気なく薄眼を開きかけて、目に飛び込んだ光景に雅はついつい声を上げていた。
その勢いで跳ね起きたせいで、ぐらりと体の重心が揺らぐ。
そういえば、昨夜はソファで寝入ったのだったと思った時には遅かった。

「いっ、たぁ」

したたかに腰を床に打ちつけて、鈍い衝撃が体を貫いた。

「ご、ごめん、だいじょうぶ……?」

叱られた子どものようにソファの向こうから顔を覗かせるのは、雅を驚かせた張本人。
その様子から、桃子に悪気はなかったのだろうと察しがついた。
だからといって、薄暗い室内で人の寝顔を覗き込むのは止めてほしい。

「大丈夫だけど……寝てたんじゃないの?」
「そう、なんだけど」

悪い夢、見ちゃって、と言いながら桃子が頬をぽりぽりと掻いたのが分かった。
人寂しくなって雅の元へやってきたは良いが、寝ているために様子を伺っていたというところだろうか。
起こしてくれても良かったのに。
そんな言葉がよぎったが、それを口にする権利は自分にはないと思った。
その代わり、じんわりと痛む腰をさすりながら立ち上がる。
きょとんとする桃子の手を取って、寝室へと導いた。

そんなに長い時間寝ていたようには感じていなかった。
おそらくは日付が変わったくらいだろうか、それならば寝なくては明日に響くのは間違いない。
桃子をベッドに押し込み、丸められていた毛布を解いて掛けてやった。
全て消灯されていた状態から、常夜灯のみを点灯させる。
室内を包みこむ、主張の少ない柔らかな橙。
これで少しは安眠できるだろうかと桃子を見やると、当の本人はどこか居心地悪そうにもぞもぞとベッドの上で転がっていた。

「……どした? 寒い?」
「ううん」
「じゃー何?」
「えっと、ね」

ぼんやりとした視界でも、桃子の表情は何となく分かった気がした。
何か頼みごと——あるいはおねだり——を言い出す前の、こちらを伺うような瞳が鮮明に浮かんだ。

400名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/05/01(月) 02:42:25.680

「早く言ってよ。うちも眠いんだけど」
「あ、ごめん、そうだよね」
「で、何?」
「ももがね、寝るまで、隣、いてくんないかなーって」

なんちゃって、と付け足された言葉が中途半端にぶら下がる。
桃子がこんな風に言う時は、口調とは裏腹に本気なことの方が多い。
寂しがり屋め、と心の中で息を吐きながらも、雅はベッドの側にしゃがみこんだ。

「じゃ、ここいるから」
「そこなの?」
「他にどこがあんの」
「隣。その、こっちの」

わずかに震えた語尾になど、気がつかなければ良かったのに。
こと桃子に関しては妙に聡い自分に、半ば呆れ、半ば恨みながら雅はゆるりと立ち上がった。

「……そこ、入ればいいの?」
「ん」

桃子がずりずりと壁際に移動して、少し狭いが一人分の空間がベッドの上に現れる。
そこにするりと滑りこむと、桃子が毛布の端を少し分けてくれた。
毛布に残る温もりが生々しくて、雅は小さく深呼吸をした。

なんでこんなことに。

仰向いて二人で並ぶと、一人用のベッドは少し窮屈だった。
しかし、背中を向けるのも違う気がして、桃子の方を向くのはもっと違う気がして、結局仰向けているほかなかった。
肩から肘、指の先に至るまでの肌に、桃子からの熱がじわじわと侵食していく。

401名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/05/01(月) 02:42:54.520


風呂に入って同じ石鹸を使ったはず。
着ているものだって雅のものであるはず。
それなのに、なぜ桃子の香りは芳しく雅の鼻をくすぐるのか。

「寝れそう?」
「たぶん」

下手に身動きすることもできないまま、首の角度だけを変えて桃子の様子を伺う。
ゆっくりと瞼を閉じた桃子の横顔に、一瞬息が止まった気がした。
先の自分の質問に答えるなら、ノーだ、ノーしかないと思った。

「……じゃあ、おやすみ」
「あり、がと……」

桃子の呼吸が徐々に深くなるのを音で感じながら、雅もそっと目を閉じる。
寝られるはずもないのは明白だったが、どうにか煩悩には打ち勝たなければならない。

どれほどの時間、そうして格闘していただろう。
その瞬間は、不意に訪れた。
桃子の側に投げ出されていた雅の腕に触れる、ふにゃりとした感覚。
それが何であるかに思い当たった瞬間、体温が2、3度は上がったような気がした。

なんで、こんなことに。

思い悩む雅をよそに、桃子は甘えるように雅の肩先へと頭を擦り付けてくる。
寝ぼけている桃子の行動に意味などないと言い聞かせても、体は勝手に期待をしていた。

誰かと間違えているのかもしれない。

その可能性に行き着いた瞬間、ぷつりと何かが切れる音を聞いた。
桃子と付き合っていたという何者かは、こうして桃子と一緒に夜を共にしたのだろうか。
桃子はこうして、雅の知らない場所で、知らない誰かと、ベッドで過ごしたのだろうか。
一度スイッチの入ってしまった思考は、ゴロゴロと転がりながら雪だるま式に膨れ上がる。

もう限界だ。
そっと上半身を起こしたところで、桃子の指先が雅の服に引っかかっているのに気づいた。
他人事のような顔をして、眠り続ける桃子を眺めていると下腹のあたりでどろりと熱が渦巻いた。

「ちょっとは、危機感持てよ」

未だ夢の世界にいるであろう桃子に向けて、届くはずのない言葉を吐き捨てる。
呑気な寝顔は、あまりにも無防備だった。
だが、翻って考えれば、そういう対象であると、全く意識されていないということでもある。

「……ばーか」

桃子に向けたつもりの言葉は、くるりと方向を変えて雅の心臓に突き刺さった。

682名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/05/02(火) 16:58:20.310

少し頭を冷やしたい。
引っかかったままの桃子の指先を慎重に外し、雅は体の向きを変えようとした。

「みや……?」

へにゃっとした声が、雅にまとわりつく。
警戒心のかけらもないどころか、微かな甘ささえ匂わせる声。
抑えつけていた感情が、ぐらりと揺さぶられる。

「なに?」
「ん……」

どうにか絞り出した返事に、果たして明確な返事はなかった。
ただ単に、雅がそこにいることを確かめたかっただけなのかもしれない。
すう、と吐かれた息の深さに、桃子が再び夢の世界へと吸い込まれていったのが分かった。
服に捕まってきたことも、名前を呼んだことも、桃子にとっては何気ない行動なのだろう。
だが、その一つ一つに顔も知らぬ男が臭った気がして、雅は微かに顔をしかめた。

あんたにとって、うちってなんなの?

雅の心中とは対照的に、桃子は安らかに眠り続けている。
そんな今の状況に、部屋中を滅茶苦茶口にして喚き散らしたくなった。
桃子の肩を押しやって仰向けさせ、覆いかぶさるように手足をつく。
まだ意識は浅いところにあったらしく、桃子が小さく呻くのが聞こえた。
そのまま桃子の顔の脇に手をつき、視界を囲い込む。

「……もも?」

呼びかけた音は、自分でも驚くほど色のないものだった。

「ん、ぅ……? み、や?」

寝ていたところを邪魔されたせいか、桃子の眉間に皺が寄る。
構わず顔を近づけていき、ふっと頬に息を吹きかけた。
突然のことに驚いたのか、桃子は体を小さく跳ねさせた。

「ももってさ、告ってきた男の部屋にのこのこ上がりこむわけ?」
「な、に……いきなり」
「答えてよ」

まだ完全には覚醒していない様子で、桃子が顔を背ける。
逃すものかと露わになった耳に唇を触れさせると、桃子の体は先ほどと同じように跳ねた。

「……しない、と、おもう」
「ふぅん?」
「どしたの、みや……」
「なんでしないって言えんの?」
「なんで、って……」

桃子の語尾に戸惑いが滲むのを聞きながら、目の前にある耳の穴に言葉をねじこむ。

683名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/05/02(火) 16:59:04.020

「相手が男だから?」
「っ! わかん、ない」

分からないわけはないだろうに、どこまで無知なふりを続けるつもりなのだろう。
下腹に渦巻いていた熱は徐々に広がり、体中を侵食しようとしていた。

「ももにとって、うちって何?」
「へ、なに……」
「ももが今やってるのは、そういうことじゃないの?」

うちが女だから大丈夫だと思った?
ばっかじゃないの。

「もっとはっきり言った方がいい?」
「みや、やめ……」
「襲われても仕方ないって言ってんの」

たとえ無意識だったとしても、誘うような行動を取ったのは桃子の方だ。
そんな責任転嫁をしながら、雅は桃子の呼吸を奪うほどに深く口付けた。
こじ開けて入り込んだ先で、怯えたように縮こまる舌に出くわす。

「……ふっ……ん、ぅ」

絡め取って引き寄せると、耐えきれなかったのか桃子が声を漏らした。
ささやかではあったが、その音はくっきりと雅の耳に響いた。

「は、ぁ、みや……っ!」
「何? もっと?」
「ちがっ、んん」

聞こえそうになった否定の言葉は遮って、再び桃子の中へと入り込んだ。
舌に絡みつき、上顎をくすぐって、歯茎をなぞる。
桃子がそちらに集中している隙を見て、雅は片手を桃子の胸元へと下ろしていった。
自分が貸した衣服だ、構造は完璧に頭に入っている。
手探りでボタンを外していき、はらりと前面をはだけさせた。

「ふ、ぁっ、なに」

上半身を起こして距離を取ると、桃子が両腕で顔を覆うのが見えた。
先ほど触れた時に察した通り、晒される素肌を覆うものは何もない。
許可など取る気はさらさらなく、柔らかな膨らみに指を雑に食い込ませた。

「っ! つぅ、ぁ」

684名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/05/02(火) 16:59:54.000

初めて触れる、他人の体だった。
こんなにも構造が違うのかと密かな感動を覚えながら、雅は指を動かした。
その度に、形を変える胸の膨らみ。

「……んっ」

不意に、その先端を弾くような格好になった時、桃子が漏らす声の色が変化したのが分かった。
どうやら揉むのは大した刺激にならないらしいと察し、雅は触れ方を変える。
既に硬くなっている先を弾き、摘み上げ、すり潰して。

「あ、あぁっ、ゃっ、んっ」

それぞれの刺激に対して、漏れる声は少しずつ違った色をしていた。
ぎゅっと枕の両脇を握りしめて耐える様子は、この世の何よりも扇情的だった。
そんな桃子に煽られて、雅は下の寝間着へと手をかける。

「みや、ちょ、まっ……ぁっ」

弱々しい抵抗を押しのけ、ぐっとずり下げていく。
無理矢理ずらしたせいでゴムが伸びてしまっただろうが、どうせ自分の服だ。
最後は足で乱雑に脱がしてしまうと、桃子の太ももがぎゅっと閉じられた。
そんな風に抗ったところで無駄なのに。
強引にその間に指先を差し込むと、ぬちゃりとしたものに触れた。

「こんなんで濡らしてんの?」
「や……」
「すごいよ、ここ」

手のひら全体で、濡れて熱を持ったそこを覆う。
入り口で指先を上下させると、ぬるりとしたものが更に溢れた気がした。
勘違いしそうだ、と雅は強く奥歯を噛んだ。

「誰にされてもこうなんでしょ?」

そう口にしながら、自分で自分の首を締めたような錯覚に陥った。
雅が特別だからではない、誰に触れられたって同じ結果になるはずだ。

こんな行為に、何の意味もない。

どろどろと溢れ出す感情に突き動かされ、ぐっと両膝を割り開く。

「あっ、だっ、だめっ」
「何が?」

焦ったような桃子の言葉は受け流し、雅は桃子の足の間に収まった。
てらてらと光るそこに視線を向けると、茂みの向こう側がひくついているのが分かった。
誘われるように中指と薬指をあてがうと、力任せに押し入った。

「っ、いぃ、あ」

新たな刺激に耐えるように桃子の背中が反り上がり、小柄な体が緊張しているのが分かった。

あいつだったら、違うのだろうか。

そう思った瞬間、居ても立ってもいられなくなった。

685名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/05/02(火) 17:00:17.990

ぐいと桃子の体を抱き起こし、二人で身を寄せ合って座る。
二人の間に挟まれて、寝間着の布がザラザラと肌に触れて不快だった。
ずぷりという感覚があり、差し込んだままの指が更に奥へと触れたようだった。

「もも、そのままね」
「ん、ぇ……?」

きょとんとしたままの桃子を残し、雅は後ろへ体を倒す。

「あ、ゃっ、やだ」

支えを失った桃子の両手が、雅の腹に触れた。
ぎゅっと瞑目する桃子の表情も、ふるふると揺れる胸も、そして雅とつながっているそこも。
全てが、一望できる体勢。
それは、目眩がしそうなほど官能的な光景だった。

「ぅ、あ、みや」
「動いて?」
「……っ、むり、ぃっ、あっ!」

首を振る桃子をよそに、指を突き上げる。
ぎゅう、と二本の指が締め付けられるのを感じた。

「ほら、はやく」

雅が促しても、桃子は首を振るばかり。
じれったくなって下からの動きを早めると、それを拒むように桃子の中が収縮する。

「あ、ああぁ、んっ! ぃ、いたっ、ぁ」

何度目かの往復の後、嬌声の合間に混じった言葉に雅ははっとした。
動きを止めると、くったりと雅の上に降ってくる桃子の体。
その弾みでずるりと抜けた指に、その体がびくりと震える。

「……もも?」

重なった胸のあたりから、どくどくと脈打つ桃子の鼓動が伝わった。
ちょっとごめんと断りを入れ、桃子の体をゆっくりと脇に横たえる。

「……まじ、で」

ゆっくりと体を起こすと、薄闇の中でもくっきりとシーツの色が変わっているのが見て取れた。
さっきまで桃子の中にあった二本の指は、赤黒く濡れていた。

916名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/05/04(木) 05:42:32.670

血の気が引くとはまさにこのことだ。
指先が冷えていき、体が芯から凍りついていくようだった。

なんで、こんなことに。

指先にまとわりつく粘液が、固まりかけて嫌な感じに軋む。

「あ、う」

頭がぐらぐらして、思考が上手くまとまらない。
できることなら時間を巻き戻したい。
数分前の自分に殴りかかりたい。
だが、どんなに現実から目を逸らしたところで、起きてしまったことは戻ってはくれなかった。
からからと空回る雅の思考は、不意に太もも辺りに触れた何かに断ち切られた。
雅の勘違いでなければ、桃子の指先がこちらに伸ばされている。
なぜ、と思ってしまうのを止められなかった。

「も、も?」

ゆるゆると差し出された桃子の手を、戸惑いながらも受け止める。
きゅっと雅の手を握りしめたまま、もぞりと桃子が身を震わせたのが分かった。
先ほどまでの行為の余韻を呼び覚ますような仕草。
何かの間違いでなければ、桃子はまだ雅に身を委ねようとしているらしい。

ばかじゃないの。

勢いで桃子をひどい目に遭わせた自分も、こんな自分にまだ心を寄せているらしい桃子も。
そっと距離を詰めると、桃子の体を仰向けさせる。
薄く開いた唇へと、でき得る限り慎重に、まっすぐに口付けた。
唇に伝わる、想像以上の柔らかさ。
とくとくとさざめくように速まる脈拍は、握りしめられたままの指先を包む熱に加速させられた。
戯れるように鼻先に触れ、頬に触れ、首筋に触れ、鎖骨へとたどり着く。
一つ一つに震えながら応えてくれる桃子に、喉の奥がぎゅうと狭まったような気がした。
視界が滲みかけるのを抑えながら、雅は緩やかな動作でキスを降らせる。
桃子の鼻にかかった甘い声が耳に溶け、脳髄まで蕩けてしまいそうだった。

「……いい、の?」

桃子が小さく頷くのをしっかりと確かめ、恐る恐る下腹の先へと指を添える。
ぬるりと滑った感覚に小さく安堵しながら、ひときわ熱を持つ突起を覆うと桃子の腰が先を誘うように微かに浮いた。

「痛かったら、ちゃんと、言って」
「ん、ぁ……み、や」
「なに?」
「……ぎゅー、して、ほし」

917名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/05/04(木) 05:42:54.690

切れ切れに囁かれた言葉に、じんわりと温かいものが満ちていく。
桃子の求めに応じて小さな体に片腕を回すと、背中に回ってきた桃子の腕に引き寄せられた。
布越しに感じる桃子の体温はひどく場違いな温かさで、押し潰されてしまいそうだと思った。

「もも……」

やっぱり好きだ、なんて。
今の自分が言えたことではない。
ぐっと噛み潰した言葉を無理矢理呑み込んで、雅は緩慢に指先を動かし始めた。
十分に潤っているのを感じながら、全体に塗り広げるように広い範囲を撫でる。
時折、敏感な場所を掠めると、その度に桃子の吐息は甘さを増していくようだった。

「みや、まっ……あ、ぅ」

くしゃりと髪の毛に差し込まれた指が緊張したのを感じて、雅は静かに動きを止める。

「もも?」
「なん、か、おなか……へん」
「変? どこか、痛い?」

ふるふると首が横に振られる様子に、ほっとして。
では何だろう、と巡らせた思考が行き着いた先を、少しだけ信じてみようと思った。

「……だいじょうぶ、だから、みやに任せて?」

先ほどの行為を鑑みるに、これほど信頼できない言葉もない。
内心ではそんなことを思いながら、それ以外の言葉が見つからないのもまた事実。
こくり、と一度だけ桃子が頷くのを見た。

「ふ、んぅ」

動きを再開する前に、丁寧な口づけを桃子の唇へと落とす。
微かにほどかれた桃子の表情に支えられ、雅は指先に意識を集中させた。

「きゃっ……ぅ、あ」

わずかではあるが、指先に触れる突起はとくとくと脈打っていた。
そろそろ限界が近いのだろうということは、容易に察しがつく。
桃子の吐息を頬に受けながら、雅は指先の動きを徐々に速めた。

「あっ、あ、ああぁっ……!」

桃子の背筋が弧を描き、つま先までが一本の糸のようにぴんと張り詰める。
雅の体を包む桃子の腕の力が増して、雅自身の呼吸も詰まってしまいそうだった。
そのまま何度か痙攣した後、桃子の体はぱたりとベッドに沈んでいった。

918名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/05/04(木) 05:48:34.950


「あの、もも……大丈夫?」

雅がおずおずと声をかけると、首肯の代わりだろうか、桃子の手のひらにパタリと背中を叩かれた。

「えーっと、何かほしいものとか」
「……のど、かわいた」
「あ、そう、だよね! まってて」

慌てて冷蔵庫まで走り、ミネラルウォーターを取り出す。
ひんやりとした冷たさが肌に刺さって、雪のちらつく外を思った。
冷たい方が良いだろうか、それとも温かいもの?
一瞬だけ迷って、ちらりと視界に入った牛乳もついでに手に取った。
マグカップに注いで温め、砂糖も溶かし込んでホットミルクの出来上がり。
ペットボトルとマグカップを両手に寝室へと戻ると、桃子はまだベッドの上に身を横たえたままだった。

「体、起こせる?」
「ん」

まだきちんとは力が入らないらしい様子だったが、どうにか桃子が起き上がる。
ヘッドボードに体重を預けさせると、ようやく体が安定したようだった。
ホットミルク? それとも水?
選択肢を示すと、どっちも、と答えが返ってきた。
とりあえずとミネラルウォーターを渡すと、あっという間に中身は半分程度に減らされた。

「ありがと」
「どういたしまして」

雅が横に腰を下ろすと、こてんと肩にもたれかかってくる桃子。
その重みに気が緩みそうになって、雅は待ったと首を振った。
甘い雰囲気に流されてしまいたいところだが、今は向き合わなくてはならないことがある。

「もも……マジで、初めてだった、の?」
「……うん」

静かな肯定を聞きながら、雅は思わず頭を抱えた。
最中の桃子の反応を見ていれば、その答えは分かっていたも同然だった。
けれど、心のどこかで少しだけ否定してくれることを期待していたのも本音。

「ほんっと、ごめん」
「……だいじょぶ、だから」

一言、二言、謝ったぐらいでは足りるはずがない。
それこそ、一発や二発は殴られても良いぐらいだ。

919名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/05/04(木) 05:50:48.370

だが、そこでとある疑問が雅の頭に浮かぶ。
そもそも、桃子には恋人がいたのではなかったのか。
男であれ女であれ、そういった行為は付随するものだと思っていた。
それが、全くなかったなんてことがあり得るのか、と。

「んー……どこから話したらいいかな」
「何、そんなフクザツな話なの?」
「そういうわけでもないんだけどね」

んー、と意味ありげな声を発しながら言葉を選ぶのは、昔からの桃子の癖だった。
整った横顔を眺めながら答えを待っていると、やがて、ふっと小さく息を吐く音がした。

「なんか、そのさ。あんまり、そういうのはない人……っていうか」
「は?」

そういうの、とは、つまるところそういう欲求ということだろうか。
雅がその意味を測りかねていると、ちらりと桃子の視線がこちらに向けられる。

「そのまんまの意味。必要な時は頑張るけど、みたいな」
「マジ?」
「うん、マジ」

聞いたことがないわけではないし、そういう類の人間がいることだって想像に難くはない。
だが、身近な人がそういう人間と付き合うことは全く想像したことがなかった。

「男の人の、なんて言うの? がつがつした感じ、やっぱりちょっと怖くて」
「だから、そういうのが薄い人にしたってこと?」
「まあ、それだけじゃないけどね」

それはあくまで、おまけだよ。
桃子はゆるりと笑いながら、マグカップを手にする。
温かいね、なんてつぶやきを挟みながら、桃子の言葉は続いた。

「本当に、いい人だよ。研究室の先輩だったの」
「……だった?」

小骨が喉の奥に引っかかったような違和感があった。
どうしてそこで、過去形が出てくるのだろう。
次に出てくる言葉が、自然と脳内をよぎる。

「別れた。ちょっと前に。」
「え、は? 初耳なんだけど」
「まあ、初めて言ったからね」

桃子の声はからりとしていて、特に何の感情も込められていないように響く。
少々ショックを受けている自分がいる一方で、浮き足立つ自分がいた。
整理ができないまま、感情が玉突き事故を起こしたようで。

920名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/05/04(木) 05:53:09.240

「……何があったか、聞いても良い?」
「いいよ」

ホットミルクを一口すすると、桃子はゆっくりと視線を持ち上げた。

「まあさー、ももってば人気者だから? 週刊誌とかそういうので、追っかけがひどくて」
「ちょ、は? 何それ」
「ごめん、初めて言ったね」

雅の言葉に構わず、淡々とした口調で桃子は続けた。
それはやがて、付き合っていた相手にも及ぶようになったこと。
道を歩いていたらつけられている気がすると言い出した彼が、目に見えて疲弊していったこと。
桃子もまた、気が抜けない日々の中で、寝つきが少し悪くなったこと。
あえて重たい空気にならないよう、言葉の端々に意図的な苦笑が挟み込まれていたけれど。

「そこでさ、『あー、私この人を巻き込んじゃったんだな』って思って」

それで、別れたの。

そう告げた瞬間だけ、桃子の声がぎこちなく揺らいだのを雅は聞き逃さなかった。
桃子の胸中を察するに、辛くなかったはずがない。
追っかけをしていたとかいう輩を、片端からはっ倒してやりたいと思った。
ついでに、桃子がそんな状況に陥っていたとは露ほども知らなかった自分も。

「……別れた後は?」
「彼とは連絡とか取ってないから、分かんないかな」

研究室も変わってしまったらしい彼とは、メールさえもやりとりしていないらしい。
今は全く関係がないと知って、安堵しそうになった自分がいた。
また一つ、感情が事故を起こす。

「でもさ、借りてたアパートもたぶん知られてて嫌な感じだし。どっか、避難したかったんだよね」
「それで、うちに来たの?」
「まあ、そんなとこ、かな」

女性の友達の部屋を訪ねるなら不自然に取られないと考えた、と桃子は語った。
確かに、その状況で記事を書かれたところで、今でも関係が続いていることが知れ渡る程度だろう。
桃子の思考も分からないではないが、それではまるで。

924名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/05/04(木) 06:14:17.870

「それ、別にキッズとかなら誰でも良かったじゃん」
「そう、なんだけど……誰でも良かったかもしれないけど、みやが良かった」
「は?」

穏やかにそう語る桃子に、ささくれだっていた心を突然撫で付けられたようだった。

「……真っ先に浮かんだの。みやが」

自惚れてしまいそうになる。
勘違いしてしまいそうになる。
桃子は、自分に気があるのではないかと。

「だから……ごめん、ね」
「え?」
「私ね、たぶんあの時……みやから逃げたんだなって思って」

「みんなのアイドルだから」という決まり文句に嘘はない。
だが、そこに本音が全て詰まっているかといえば、それもまた真ではない。

「みやのこと、たぶん好きだった」

桃子から打ち明けられた言葉に、一気に体中を熱が駆け巡るのが分かった。
雅のことが好きな気持ちはあったが、お互いに同じグループで、しかもアイドルで。
感情のままに自分の気持ちを認めてしまうことは、桃子にとってひどく恐ろしいことだった。
だから、「アイドルだから」という理由で蓋をして、心の奥底にしまいこんだ。

925名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/05/04(木) 06:14:55.900

「本当は、私も真剣に向き合わなきゃいけなかったのに」

すとん、と静寂が二人の間に満ちた。
数年越しに明かされる桃子の心は分かったが、それでは今はどうなのか。
返ってくる答えに怯える心を抑えつけ、雅は尋ねた。

「今ねえ」
「……やっぱいい」
「なんで?」
「なんで、って……」

ごめんね、と桃子が改めて口にするのを聞いた。

「みやの気持ち、軽く見すぎてた」

襲われてから気づくって、遅すぎだよねえ。
雅が思うよりずっと和やかに、何でもないことのように桃子は言う。
そんな風に軽い態度を取るのは、桃子の優しさだと知っていた。
本当は怖かっただろうに、痛みだってあっただろうに。
思い描けば描くほど自己嫌悪に苛まれそうになって、雅はベッドへと視線を落とした。
変色しているシーツはほんの一部ではあるが、生々しくその光景を蘇らせる。
沼に落ちていきそうになった思考は、不意に引き止められた。

926名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/05/04(木) 06:15:53.920

「でも、怖かったけど、ヤじゃなかった、から」
「え? …………は? 本気?」

まあね、と桃子が微笑んだのを見て、また一つ、心の中で事故が増えたようだった。

「初めて彼と付き合うってなった時、いろんなこと考えた」

同じ時間を共有すること。
同じ空間で隣にいること。
その手を取ること、歩みを合わせること。
一緒にご飯を食べること、一緒に眠ること。
体を、重ね合わせること。

「彼とはさぁ、もー笑っちゃうほど想像できなくて」
「そんなんで、つきあってたの?」
「ものは試しって言うじゃん」

この人だと入れ込むほどにピンときたわけではなかったけれど、マイナスになる点もなかった。
案外そういう人の方が、一緒にいて長く続くものかもしれない。
その思考は理解できたが、桃子がそういう道を選んだことは少し意外だった。
だが、次に飛び出た言葉の方が、ずっと意外なものだった。

「でも……でもね、みやとなら、想像できたの」

今まで交わしてきた会話の中で、きっとそれが最も重たさを持っていただろう。

みやとなら、想像できた?
そもそも、そういうことを想像する対象として、自分が含まれていた?

考えれば考えるほどにこんがらがって、知らないうちに雅の表情は険しいものへと変わっていた。

927名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/05/04(木) 06:16:14.550

「はは、みやってばヘンな顔ー」
「や、だって! ちょっと待って……想像、したの?」
「うん」
「……なんで、今更そんなこと言うの」
「…………ごめん、ね?」

謝罪を述べる桃子の横顔は、落ち着いていた。
昔から、この横顔が好きだった、なんて口が裂けても言えやしない。

「だったら、最初から」
「うん」
「……うちのとこ、来とけよ」
「やっぱり?」
「ばっかじゃないの」
「私も、そう思う」
「…………ほんと、ばか」
「ほんとね」

ぽんぽんと投げつけられる雅の感情を受け止めながら、桃子はゆるりと笑ったように見えた。

なんで、こんなことに。
でも、悪くない。

桃子が、ホットミルクの最後の一口を飲み干す。
ごくごく自然に手渡されたマグカップは、まるで昔からそうだったと錯覚するほどにカチリとはまった。
ことりとベッド脇のテーブルにマグカップを置くのを待っていたかのように、桃子の両腕が雅をベッドへと誘う。

「うち……一つ、ももに言い忘れてたことあった」
「……?」
「……やっぱり、好き」

囁く言葉に、桃子はひどく嬉しそうに顔を崩した。
返事の代わりに桃子がくれたキスは、これ以上ないほどに優しく甘く唇に溶けた。

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