まとめ:雅ちゃんがももちの胸を触るセクハラ

860 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/03/06(月) 23:05:41.14 0

それは、二人がまだ付き合う前のこと。
桜が咲いていたと思う。

なんでもない帰りの電車。
その別れの間際。
ぽいっと、いかにもぞんざいに投げて寄越したのだ。

「わっ、なに?」
「…………あげる」

不意のことに驚きながらも桃子は何とかキャッチした。
それは、雑誌のふろくに付いてきそうな、小指くらいの大きさのキーホルダーだった。
つるりとしたアクリル製で、可愛く顔の描かれたネコの形をしている。
しげしげと眺めて、どう見ても普通の、ただの、何の変哲もないキーホルダーだという事を確認する。
桃子はこてりと、首を傾げた。

「ありがとう?」

言外に、「なんで?」という疑問を滲ませる。
それを受けて、雅は居心地悪げにポケットに手を突っ込んだ。
何かを言いあぐねるように、口をまごつかせる。
雅にしては珍しい姿だ。とても。
夕日が眩しくて、表情はよく見えない。

「……誕生日、だったでしょ。別に、いらない物の処分ついでだし、ももがいらなかったら捨てていいよ」

ぱちぱちと、言葉を理解する時間をかせぐように、数度瞬く。


確かに桃子は誕生日だった。先月。
当日は普通にライブもイベントもないオフの日だった。
だから、翌日にメンバーがプレゼントを用意してくれたり、スタッフさんがジュースを奢ってくれたり、クッキーを貰ったりして、とても嬉しかったのを覚えている。

そういえば、雅だけは、何もくれなかった。
プレゼントも、「おめでとう」の一言さえ。

「ただの気まぐれだよ。……じゃ、ばいばい」

何も言わないまま動かない桃子に、一瞬寂しそうな顔をした。
そして、ちょうど着いた最寄りの駅で、雅はそのまま背を向けて電車を降りてしまった。

その後ろ姿が見えなくなるまで、桃子は呆然と窓の外を見ていた。

861 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/03/06(月) 23:08:42.54 0


だって、凄くびっくりしたから。
凄くびっくりして、そして、凄く嬉しかったのだ。

要らない物でも、気まぐれでも、いつも桃子に対しては素っ気ない態度の雅が、誕生日だからと言ってプレゼントをくれるなんて、夢にも思ってなかった。
ラッピングも何もされていない、どこにでもありそうな、何の変哲もないキーホルダーでも。
それでも、それは、桃子にとっての、宝物になった。


だって、好きな子から、初めて貰ったものだったから。




     § § §



(なんてことが、あったなぁ…)


随分汚れて、所々塗装も剥げてしまった、あのネコのキーホルダーを手ですりすりと撫でながら、桃子が懐かしい感慨に浸る。
その横顔は、中学生の姿より高校生の姿より、落ち着いた雰囲気を纏っていた。
あの頃よりずっと髪が伸びた。今も伸ばしている真っ最中だ。

忙しい生活は何も変わらないけれど、あの日から七年の時が経っていた。
Berryz工房の活動を停止し、新しいグループで後輩と一緒に活動している。


こんな日が来るなんて、想像もしていなかった。
今日は、新居への引っ越し作業を行っているところだった。
――雅と、一緒に。


(懐かしい……)

桃子と雅は、桃子が高校二年になった冬から交際を始めていた。
想いを通じ合せるまでも然り、手を取り合ってからも、互いの不器用さや、焦りや、すれ違いから、たくさんの壁にぶち当たって来た。
進む道がバラバラになって、なかなか会えない日々を強いられ、桃子など、何度悩まされたか知れない。


色々な事があった。
本当に色々な事が……
それでもこうして、二人で一緒にいることができている。

明日から、同じ家に帰るようになる。

それが桃子には、とんでもない奇跡のように思えていた。
そしてその始まりはきっと、このキーホルダーだったのだ。


862 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/03/06(月) 23:11:21.55 0

桃子の宝物。
失くしてしまわないところ、かつ、いつでも思い出す事が出来るところ。

どこにしまおうか、と、新しく買い揃えたタンスの引き出しを調べていたところで、隣の部屋からにゅ、と雅が首を出してきた。
こちらは思い出よりも少し身長が伸びている。バランスの整った顔立ちはそのままに、気分でコロコロ変わる髪色は、落ち着いた色でしばらく安定していた。

「あ、みや」
「やっぱり。もも、手とまってるし。この部屋の段ボールくらいは今日中に片付けてよ」

やれやれ、というように嘆息しながら、雅が部屋に入ってくる。

「何持ってんの、それ」
「んー?」

怪訝な声を出す雅に、桃子はにひっ、と笑ってキーホルダーを掲げて見せた。
「覚えてる?」と。
あの青くて小っ恥ずかしい思い出を共有したくて。

けれども数秒睨むように目を眇めて眺めた後、その持つ意味を理解した雅は、みるみると目を真ん丸に見開いていった。
驚愕に声も出ない、という様相をしながら、よろめくように桃子に近づく。

「は、え? な、何で、それ、嘘でしょ?」
「懐かしいでしょ? ちょっとボロボロになっちゃったけど……」

すり、と指先で撫でながら、本当に大切そうに目を伏せて見る桃子の姿に、雅は狼狽えているようだった。
その態度に、何かまずい事があっただろうかと、桃子はあの日のように、首をこてんを傾げた。

「どうかした? みや」
「どうって……もも、こんなおもちゃみたいなの、ずっと持ってたの? こんな、色が褪せるまで?」

バツ悪そうに言う雅の心が分からず、桃子が元気よく頷いた。

「当たり前でしょ? みやから初めて貰った誕生日プレゼントなんだから。もも、すっごい嬉しかったんだよ? 多分、ずっと忘れない。ずっと大事に持ってる」

きゅ、とキーホルダーを握りしめて、桃子がにこにこ笑う。
その姿を見て、雅は、「勘弁してよ……」と、暗い声で呟いた。
苦々しい顔をして、頭を抱えながら。

「みや?」
「やめてよ、そんな……どこで買ったかも覚えてないような、安物のキーホルダーなんて大事にするの……
 ……――恥ずかしい」

「え、」と桃子の口から無意識に、掠れた音が落ちる。
新しい生活に向けたわくわくした気持ちと、大切な宝物を見つけて舞い上がった気持ちが音を立てて萎んでいく。

863 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/03/06(月) 23:13:38.48 0


恥ずかしい。
恥ずかしい?
こんな子供の頃に貰った、ボロボロのキーホルダーなんて持ってたから?

でも、桃子にとっては本当に、大切な物だったのだ。


自転車の鍵につけて、毎日持ち歩いて、何だ、それ、本当に使ってるの、なんて。
ぶっきらぼうに言いながら、意外そうに小さく笑う、雅の表情だって覚えていた。
安物でも、捨てても良いって言われても、桃子は持っていたかったのだ。

「い、今は使ってない、けど、しまってるだけ……」

『断捨離』という単語を覚えていた。
いつかに出た番組で、紹介されていた。
本当に必要な物だけを選別する事で、生活に調和をもたらす、という考え方。
物に執着するのをやめて、もっと別の事へ目を向ける、というような。

雅は、どちらかというとそういうタイプだ。
物はため込まない。
必要なものと不要なものの線引きがはっきりしていて、
自分に必要ないと判断したものは結構あっさりと切り捨てる。
それを少し寂しく思うことはあっても、その方が自分に合っていると理解していた。


「……やだ。捨てたくないもん」


でも、他のものは良くても、これだけは手放したくなかった。

……うん、やっぱり駄目だ。
雅から貰ったものはどれも、全部、捨てたくなんてない。

870 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/03/07(火) 00:51:17.86 0

不安げに思いを巡らせる、桃子の瞳が揺れるのを見て、雅ははっとした表情を浮かべた。
額に当てていた手をあわてて離して、桃子の手を引きそっと抱き寄せる。

「もも、その…違くて」
「え?」
「そういう意味じゃなくて……あー、くっそー、またこれだ。なんでこうなっちゃうかなー。そうじゃなくて……」

甘えるように、雅が桃子の肩に頭を乗せる。
その頬に触れる髪の感触が優しくて、桃子は少しほっとしながら、「みや?」と、もういちど名前を呼んだ。

「あの頃は……子どもだったし。みやは素直になれなかったし……だから……」

しばらく言葉を選びかねていた雅が、横目にちらりと桃子の顔を覗き見て、丸めていた背中を起き上がらせた。
桃子の握りしめたキーホルダーをそっと持ち上げて、複雑そうな眼差しを注ぐ。

「……うちとしては、ももを好きになってから初めての誕生日だし、もっと、何か特別な物をあげたかったの。
……でも、それまでももに冷たくしてたメンバーが、急に本気な感じのプレゼント贈ったらきもいでしょ。
だから、貰っても違和感なくて、それなりに使えて、喜んでもらえそうな、何か……良い物がさ、ないかって……」

ふう、と、雅が溜め息を挟む。

871 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/03/07(火) 00:55:54.06 0

「探したんだけど。思いつかなくて、その内に当日が来ちゃって……そしたら、メンバーがみんなプレゼントあげてるし、
別にみやなんかがあげなくったって、……って、拗ねたんだよね。つまりは。
それで、おめでとうも言えなくて、プレゼントすらあげられなくて。
でもそんな自分がやっぱり嫌で、ぐるぐるした結果買ったのが、そのキーホルダー」

ガキでしょ、ほんと。
雅が、呆れたように言う。
あー、イヤな頃の記憶思い出したわ、と、おどけるように笑った。

「それにしても、よく持ってたね、ほんとに……。キーホルダーくらい、もっと良いもの、いくらでもあげるのに」

雅からキーホルダーを返してもらいながら、桃子は、7年来の真実に静かに驚いていた。
最後の、ある一点に関して。

「…………買ったの?」

もう、ネコなのか犬なのかも判別しかねるキーホルダーを手の平に乗せて、桃子が雅を見つめた。

「え? うん……」

意味が分からないというようにそのまま頷いた雅に、桃子は目をまるくした。

「もも、みやの家にあった物なんだと思ってた」
「は? なんで」
「だって、いらない物の処分だからって言ってた」
「え、うちそんなこと言った? うわ……」

雅が顔を真っ赤に染める。
桃子は構わずに重ねて聞いた。

「買ってくれたんだ? ももの誕生日だから?」
「そうだよ。まあ、一応、だけど……」

買ったなんて内にも入んないけど……と、言い募る雅に、桃子はにまあーっと、嬉しくてたまらない、という表情をして笑った。
ふふ、と声を漏らして、雅へ両手を伸ばす。
「ぎゅーってして」とおねだりをする桃子に素直に応じてやると、その腕を首に絡ませて、柔らかく潤った唇を桃子のそれに押し付けた。

872 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/03/07(火) 01:00:20.03 0


「んー……っ」

突然の桃子からキスに、一瞬だけフリーズした雅は、すぐに口を開いて応じた。
ちろちろと舌先だけを絡める戯れのようなキスを交わして、「ふはっ」と桃子が息継ぎをした。
薄らと桃子の頬にも朱が走る。


「……そんなに前から、もものこと考えてくれてたなんて、知らなかった」


うれしい。

うっとりと蕩けた瞳をして、ちゅうちゅうと唇を押し付けてくる桃子を、雅はこみ上げる何かを堪えるような表情をして見つめていた。
もう一度背伸びをして口に吸い付くと、その体を強くぎゅっと抱きしめる。

桃子は唇をくっつけたまま、雅のお腹をぐいぐいと押した。
ちょうど雅の後ろにあった、配置を決め兼ねているソファまで追いやる。
足がソファにぶつかって、雅がぼふん!と荒くソファの上に腰をついた。
桃子はその足を跨いで、ソファに膝立ちになる。

雅が確信のある期待に熱い息を吐いて、桃子を見上げた。
恋人同士である二人の間だけで通じるアイコンタクト。
二人とも”スイッチ”が入っていることは明白だった。

こんな体勢でしか出来ない、雅を見下ろす格好から、その首筋に指をはべらせて、桃子がゆっくりと舌を伸ばす。
濡れた舌先がぺろ、と雅の下唇を舐めたのを合図に、激しく口付けた。

「んっ……! ん……ぅ、」
「もっと、舌伸ばして、もも……んっ」

ぴったりと合わさった唇の隙間から、時折のぞく絡み合った赤い舌がいやらしい。
より深く粘膜をすり合わせようと、忙しなく二人の頭が角度を変える。
雅の肩に手を置く桃子に対して、雅は明確な願望を見せて桃子の腰を撫で回した。
時々、そのズボンのゴムに指を僅かにひっかけて少しだけずらしたり、いたずらに脇腹に指をはしらせる。

873 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/03/07(火) 01:02:29.57 0


「あっ、みや……ぁ、ん、」

首に腕を絡ませてキスを続ける桃子に、雅は“同意”と受け取ってその体を反転させた。
ぼすんっ! と二人暮らしには少々大きなソファに桃子を仰向けに押し倒し、続く手の動きでシャツを首までたくし上げる。
期待に揺れる瞳で雅を見上げる姿は、もはや今が陽も高い昼間である事を完全に忘れさせた。

「んっ! ん、ぁ……! みやっ、あっ、片付け、は……?」
「後で、良いよ……ん」

舌を絡ませ、お互いに触れ合いながら、「あっ」と、桃子が意識を逸らした。
手から滑り落ちたネコのキーホルダーが、フローリングに落ちた音が聞こえたのだ。
咄嗟に、それを追おうとする桃子の手を、雅が捕まえる。

「もも……今年の誕生日は、期待してて。とびっきりを、贈るから」

「だから、」雅が獰猛に目を光らせて、声だけは罠のように甘く湿らせる。


「――今は、みやだけ見てて」


思い出にある、可愛い意地とプライドで、子供の様に拗ねる雅はもういない。
耳から腰に響く声と、最奥の甘さを知った指を這わせる、成熟した大人になってしまった。
可愛い雅も好きだったけれど、大人になった雅も、桃子はもちろん大好きだった。
大好きな手が肌を撫でる感触に、うっとりと息を吐く。


今年も、来年もずっと、きっと桃子の宝物は増えていく。
そんな未来がずっと続いていくのだと、桃子は幸福に笑った。




おわり

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