まとめ:雅ちゃんがももちの胸を触るセクハラ

780 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2016/11/25(金) 20:24:15.12 0

シューッという音と共に、漏れ出る白煙。
さながら漫画のような光景だったけど、目の前で起こってるんだから信じるしかない。

「あわ、わ……」

腰から下に力が入らなくて、あたしはただ、それを見守ることしかできなかった。

「ね、ねえ、愛理……まずくない、これ」
「だ、だよねぇ」

そんなあたしの後ろで縮こまっているももは、あたしよりも怯えているようだった。
いやいや、あなた妖怪じゃないですかって思ったけど、そんなやり取りをする余裕はない。
その間にも、白煙は量を増していた。その発生源は、あたしたちの目の前に横たえられている棺。
ぎぎ、と何かが軋むような音がする。
後ろのももと目が合って、二人で"何の音だろう……?"って顔。
少なくとも、あたしの空耳でないことは確かだった。

「な、何か動いてない……?」
「ややや、やっぱり?」

そう、動いている。
あたしの見間違いでなければ、棺の蓋が。つまり、何かが中から蓋を押し開けようとしている――?!

「ひっ、ひゃああああ」
「やだあああああ」

不吉な想像が頭に浮かんだのは、ももと同時だったみたい。
どうしようどうしようどうしよう!

「も、もも、何とかしてよぉ」
「む、無理に決まってんじゃん! もも、悪戯するか家栄えさせるくらいしかできないのっ」

ですよね、だってももはいわゆる座敷童。
どうせならもっと殺傷力の高い妖怪に住み着いててほしかった……。

「愛理、なんか失礼なこと考えてない?!」
「かかか、考えてな――」
「うるっさい!!」

781 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2016/11/25(金) 20:24:40.57 0

その時。ぎゃあぎゃあと騒ぐあたし達の会話は、第三者の叫びによって強制的終了させられた。
……って、それはつまり。

「「ああああああっ?!」」

濛々と立ち上る煙の向こう側に浮かび上がる、人間のようなシルエット。
知らぬ間に蓋らしきものは全開になっていて、つまりその人は中の人ってやつで。

「ふーん、あんたがみやのご主人サマ?」
「は、え?」

聞こえてきた声は女性のもの。
ゆらり、と人影——みやっていうのかな——がこちらへと歩いてくる。
現れたその人は、明るい金髪に透き通るような水色の瞳。
やけに赤い唇に、目が釘付けになる。

「ね、答えてよ?」
「や、その……」
「そうだよね? あんたからニオイ、するし」

ニオイ?って思った瞬間に匂い立つ、華やかな香り。
すっと近づいた頬に熱さを感じた気がして。
温かいってことは、この人生きてるの?そう思った時。

「わっ?!」

がく、と肩に降ってくる重さ。
うそ?!って見たら、その人は糸の切れた人形みたいにぐったりと動かなくなっていた。

「な、なんなの……?!」

戸惑っていると、ふわりとその重みが離れていく。

「まじで何、こいつ?」
「もも……」

完全に意識を失った女の人を両手で抱き上げるももの姿。
女性とはいえ、人ひとりを軽々抱えあげちゃうももはやっぱり妖怪なんだって変なところで感心した。

「どうする、ちょっと外に捨ててくる?」
「や、それはさすがに……」

とりあえずどこか、目立たないところに……とお家の地図を広げて、まああそこだろうな、離れだろうなって提案すると、ももが渋い顔をした。

「ももの部屋……」
「ちょっとだけだから! お願い!」

さらにお願い、と両手を合わせてももをチラ見。
しょうがないじゃん、他に良さそうな場所ないんだもん。
そう言ったら、ももは仕方ないっていうように肩を落とした。

782 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2016/11/25(金) 20:25:45.51 0


我が鈴木家は由緒正しいお家なわけで、家も立派な日本家屋。だからまあ、母屋も離れも、もっと言えば蔵もしっかり備えられている。
そして、ももがいつもいるのは離れの一室。
小さい頃、あたしとももが初めて会った場所。

「布団とかないけどいいよね」
「ん、いいんじゃない?」

畳の上にその人を寝かせて、ようやく一息つけた。
それにしても、純日本家屋に超西洋風の外見の女性が横になってるってちょっと面白い。

「で、どうするの?」
「どうするって言ってもねえ……」
「ていうかそもそも、あれ何なの?」
「え? 棺?」

そりゃわかるよ、と言いたげに、ももから軽いパンチが飛んでくる。
だってこの家、どこ見ても畳だし、ふすまだし、障子だし。
和風すぎてちょっとつまらないって思う気持ち、分かってほしいなあ。
純和風すぎて、ほとんど生きた化石みたいな。生きてないか。でも本当化石みたいなもんでさ。
そしたら、ちょっと刺激がほしいなって思っちゃったんだよね。
そこでこの鈴木、ちょこっと輸入してみたわけです。棺をね。
寝るのに良さそうって思ったんだけど、まさか中身入りなんて思わなかったよね。

「いや、チェックしようよ、中身入りかどうか」
「だって、普通に棺注文して中身入ってるなんて思わないじゃん」

その中身さんの胸は微かに上下していて、どうも呼吸してるらしいと分かった。
やっぱり生きてるんだな、この人。っていうことは普通に人間なのかな、この人。

「……にしては、着てるものが時代遅れじゃない?」
「ももに言われたくないと思うよ」

そう、この女性が着ているのは、このご時世に不似合いなゴシック調の洋服。
や、でも、ももだって赤いちゃんちゃんこなんだから人のこと言えないでしょ。

「ん……」

ぴく、とその人のまつ毛が動いて、やがてゆっくりとまぶたが開くのが見えた。
ガラス玉みたいな瞳が、ぐるりとあたしをとらえたような気がして——捕まった、と思った。

「あんたら……本当、うるさいね」
「あ、ごめ——ぅわぉっ」

うるさいって言われたらついつい謝っちゃうのは人間のサガってやつかなあ、ってのんびり考えててる場合じゃない。
ぐっと驚くほどの力で手首が掴まれて、バランスを崩してやばい、と思った時にはその人の上に倒れ込んでいた。

「ん、いーにおい」
「は、え?」

にやり、とその人の唇が釣り上るのが見えた。
その中に、八重歯が光るのが見えた。

「なっ——」

食べられる。
そんな言葉が浮かんで。

783 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2016/11/25(金) 20:26:18.86 0

「だめーーーっ!!」
「いったっ!」

今度はものすごい力で突き飛ばされて吹っ飛ぶ。
壁にぶつかって、息が詰まった。

「あ、う……」
「何? あんた」
「愛理に、何すんの!」

何かよく分からないけど、ももにアタックされたらしい。
そんなももは、謎の女性の上にのしかかっていて。
なぜか、バチバチって火花が見えたような気になった。

「みやさ、お腹空いてんの。長旅だったしさ、荷物の扱い方ひどいし」
「そんなの関係ない」
「ん、そう?」

あ、じゃああんたでもいーやって。
女性——みやの牙が、光るのが見えた。

「ぁっ……?!」

ももの白い首に、噛み付く紅の唇。
くた、とももの体が沈むのが見えて、逆にみやが体を起こす。

「ん、悪くないんじゃない? 人間っぽくない味だけど」
「……は、何、を」

なぜか一瞬にしてももは息も絶え絶えになっていて、本人も何が起きたか分からないらしいと察しがついた。
でも、あたしは知ってる。その行為。

「吸血、鬼……?」
「あー、そうそう。よく知ってるね」

みやの口角が上がって、口の端から一筋、赤いものが伝っていく。
その様子がなぜかひどく色っぽくて、どきどきして。

「うち、みやっていうの。ご主人さまは?」
「あ、えーと、愛理……?」
「ふーん、いい名前」

みやが立ち上がる。
一歩一歩と、距離を詰められる。
すっと、その顔が近づいてきて、こぼれた微笑みは花が咲いたようで、別の意味でどきどきして。

「ま、いいや。よろしくね、愛理」
「ちょっと! もものこと無視すんな!」

こうして、あたし達の奇妙な生活は幕を開けたのだった。

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