まとめ:雅ちゃんがももちの胸を触るセクハラ

697名無し募集中。。。2018/03/11(日) 10:12:27.410

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雅はリハーサルの休憩室にいた。
テレビで流れているのは、胸を締め付けられるような痛ましいあの光景だった。


コンサートやイベントで訪れたことのある地方で起きた信じられないような地震の大きな爪痕。
それによって人生の一部をえぐられるように奪われた人達の悲嘆と悔しさ。
それでもそれは実際に被害を受けた人や物のほんの一部だったんだろうと、雅は唇を噛み締めながら思った。
 
特に目の前で肉親を津波にさらわれた人の悲しみは胸を打った。
そんな時は自分かそれとも一緒に流されたほうが幸せなんだろうか?
桃子はもし雅とカントリーの子達とどちらかを選ぶとしたら、どちらを選ぶんだろうと、ふと三月の海の水のような冷たい場面が頭をよぎった。

・・

「みや」

後ろからいつも聞いている高くて甘い彼女の声がする。
彼女が入ってきたということは後は誰も入って来ないということだ。

「喉、大丈夫?」

昨日の電話で喉の調子が悪いと言っていたのだ。後ろを通り隣にどさっと座った彼女のやわらかい香りがふわっと自分を包む。
一昨日泊まったホテルの中に灯ったアロマキャンドルのゆらめく明かりが脳裏にフラッシュバックした。
そして彼女の手の感触や唇の濡れた香り、キャンドルの明かりを受けた髪の艶の色も。

忙しい合間にも雅の声や手を欲しがり、専用電話にプロポーズのような言葉を並べてくる。
最近はずっとカントリーの子達とばかり会っているからか尚更あからさまな情熱にさすがの雅も少し苦笑いが出た。


「のど飴もらったから」

印象的な薄い唇を開けて桃色の舌に乗せた黒い飴を見せた。
その同じ唇で、彼女は雅の胸元に多少の時間では消えない情事の跡を付けた。

「浮気封じのおまじないだよ」

少しだけ汗で湿っぽい体を離した彼女が耳元で悪戯っぽく囁いた。


こんなに長く一緒に仕事をしてきても、同時に普通以上の付き合いをしてきても、総てをさらけ出さない雅の胸の中を探るように。
二人の本当のプライベートを言わないのは、昔からの暗黙の了解だ。
なぜならお互いこそが真のプライバシーでありプライベートだから。
そしてそれが雅の女のとしての、歌手としてのそしてメンバーとしての鎧であり砦だった。


活動停止後も実力人気ともにハロープロジェクトのトップであり続ける長年の恋人を、常に脇に置く自分のささやかな歌手としてのプライドや誇りは、深く深く胸に沈め素知らぬ顔で過ごすことに慣れすぎたような気がする。
それを悪戯っぽい瞳と明るい笑顔で、桃子は長く外に閉じ込められていた雅の喉元を軽やかに開いていった。

雅にとっては知らない感覚に戸惑う自分と、新しい世界を感じる透明な自分を感じた瞬間だった。
あれから地面に立ちながら軸を変えずに、視野が飛躍的に大きくなりまた受け止める枠か広がっていったのを雅は感じている。
 
いつも十分現実も感情も理解していながらも、どこか不安で孤独な思いを抱きながら歩いてきた月日を遠くに見れる今が不思議だった。
またそれと同時に直接自身が選び挑んだ仕事が成果をあげ、評価を上げたことがこんなにも強い自信と度量を連れてくるとは雅は思わなかった。
眩しいくらい輝いているから、いつもどこかで横から伏し目がちで見ていたアイドル嗣永桃子と今なら真正面から目を合わせられる気がする。
雅にとってはその確信が今は何より大事だった。

698名無し募集中。。。2018/03/11(日) 10:15:37.340

・・

「ねえ、もも」

雅はふと先に思い付いたことを口にした。昔なら聞けなかったが、今なら聞けるような気がしたのだ。
 
「みやとカントリーの子達が目の前で津波にさらわれそうなら、どっちを助ける?」

こちらを見ている桃子の大きな目がますます大きくなった。
時々雅の意表を突く行動に慌てた時の顔だ。
長いような短いような間があった後、長くなった襟足に手をやって首を回した彼女が呟くように言った。
 
「…きついね」
雅は黙っていた。

「…まずカントリーを助ける」
ああやっぱり、でもそれが自分の好きな桃子だと雅は思う。
 
その時彼女の手が雅の茶色の髪の隙間から見える耳元にすっと手を伸ばしてダイヤモンドのピアスに触れた。

「いつもしてるんだね」
それはそうだ、二人でペアで揃えた石でペンダントとピアスにした代物だ。

「でもこれ見るたびにあの人の顔もチラつくんだよね」
桃子がちょっと唇を前に突き出しながら、小さい指で艶めくピアスを弄ぶ。
これを作る時の雅の知人である店長の愛想のいい笑顔がチラつくのだろう。

お互い絶対的に愛しているのに甘えた依存も支配も好まない。二人の関係に野暮な束縛は似合わないと雅は思っている。
しかしそれらの暗黙の了解が胸の中で、こうして多忙で会えない時には津波のように総てを覆い奪い壊すような衝動に変わるのだ。
女として歌手としてのプライドを隠した、雅の白い胸から桃子に向けて。


「時間だよ」

桃子が艶やかなピアスを離して立ち上がる。
そして歩いて雅の後ろに立った。

「あの子達を助けたら」

雅の胸に桃子の声が響く。
一昨日彼女が付けた胸の跡が熱くなる気がした。

「後はみやと一緒に流れるよ」

いきなり強い力が雅の後頭部を掴み、背中を引っ張られ天を仰いだ。
そして顎を掴まれて、少し開いた雅の唇に、後ろから桃子の官能的な唇が重なり、甘い味の唾液とともに小さな丸い塊が口の中に滑り込んでくる。
口の中で呻くともっと強く唇が押し付けられてきて、入ってきた舌が何度も絡んだ後やっと離された。
目の前でキラキラと輝く光芒を讃えた明るい光彩の瞳が、無言のままじっと見ている。
雅は何も言えずに見返した。
何年もこうして見続けてきても、まだお互いに底が見えない瞳。
それほど愛情も嫉妬も情熱も、有り余り絡み合う。
口の中の黒い甘い飴が溶けて喉をねっとりと流れた。

きっとこれからも過去も未来も総て薙ぎ倒して叩き潰すような、激しい津波のような激情が見えなくなくてもいつも二人を包んで離さないだろう。
雅は黒く甘い飴の味を苦く心に感じながら、離れてスタジオに向かう桃子の背中を感じていた。

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