まとめ:雅ちゃんがももちの胸を触るセクハラ

157名無し募集中。。。2018/09/17(月) 01:39:57.410

その日、雅の目覚めは最悪だった。

久しぶりの休日で、目覚ましもかけずに寝た次の日。
自然と覚醒したのは、まだ朝は少し遠くにいた。
ゆるりと首を巡らせると、薄暗い中で桃子の寝顔が目に入った。
昨晩、体を重ねた後で横着をして服を着なかったから、ブランケットからは素肌の肩が覗く。
浮かび上がる肌の白さに、どくどくと早まる心臓。

「……ん?」

ふと、違和を感じて雅は起き上がる。
強く律動する左胸と——下半身。

「はぁっ!?」

思わず大きな声が飛び出そうになって、慌てて飲み込んだ。
隣の彼女の安眠を妨げるわけにはいかない。
一度、落ち着こう、夏焼雅。
そう考えて深く息を吸った雅の鼻に、くん、と甘い香りがよぎる。
香りの源は、「ん……」とやけに色づいた声を漏らしながら寝返りを打った。
するりとずれたブランケットから、ふっくらとした太ももが露わになる。
それだけで、足の間の"ナニカが震えたのが分かった。
心なしか、桃子の香りもいつもより濃く感じる気がする。
このまま、寝室にいるのはまずい。
そんな予感に後押しされて、雅はキッチンへと向かった。

冷たい水を喉に通すと、頭は完全に覚醒した。
それはつまり、自分の身に起きていることが現実であることに他ならない。
いやいや、まさか、ありえない。
祈るような思いで股間に触れてみたが、そこには確かに何かが存在した。

「まじ……?」

それが何であるか、さすがの雅も知らないわけではない。
だが、それは生物学上の男性が有するもの。
そんなものが、雅の身体に引っ付いているはずはないのだ。
いや待て、そもそも実際にこの目で見たわけでは——。

「わああぁっ!?」

恐る恐る下着の隙間からチラ見したそこには、確かにそいつが収まっていた。
実物なんて、母親が弟のおむつを替えている時に見たっきりだ。
悪い夢であってくれ、と頬をつねってみるが、ただただ痛いだけだった。
混乱する雅の耳に、きゅるる、と胃袋が鳴くのが聞こえる。
どんなことがあっても、腹は減るようにできているらしい。
その事実は、なぜか雅をひどく安心させた。

158名無し募集中。。。2018/09/17(月) 01:41:11.650


目玉焼きとベーコン、それに作り置きのピクルスとトースト。
朝食の準備は、雅の心につかの間の平穏を与えてくれた。
そろそろ桃子を起こしに行こうかというタイミングで、リビングのドアがゆっくりと開く。

「おはよぉ」
「お、おはよ」

まだ半分くらい夢の中にいるのか、ふにゃふにゃした動作で桃子はソファに滑り込んだ。
おおかた、食事の匂いがしたから引き寄せられてきた、なんてところだろう。

「ももー」
「うー……」
「ご飯食べれるよ?」
「……ぅん」

返事はあれど、桃子が動く気配はない。
本当に眠たいのか、あるいは雅が近づいてくるのを待っているのか。
まったく、と呆れながらも雅が覗き込むと、桃子はちらりと視線をよこした。
何かを、期待されている。
この前の休みは、「王子様のキスがほしい」なんて言い出したが、今日は果たして。

「もも?」
「んー?」
「起きてんでしょ?食べよ、ご飯」
「だっこ」
「ムリ」
「じゃあおんぶ」
「自分で歩きな」
「えぇー」

やだ、と言うのと同時に、桃子の腕が伸びてくる。
その瞬間、桃子の肌からふわりと立ち上る甘い香り。
普段は、ホットミルクの湯気のように柔らかいはずが、今日は練乳のように濃厚だ。
慌てて雅が身を引くと、桃子はいかにも不満だというように口を尖らせた。

「えーん、みやびちゃんが冷たぁい」
「冷たく、ない、から」

下腹部に、どろどろとした澱のようなものが溜まって行くのを感じる。
もし、今、自分の身に起こっていることを桃子が知ったら、何を思うだろう。
不意にその可能性に行きついて、雅はハッとした。
あんなものが生えてしまった、なんて、言えるわけがない。

159名無し募集中。。。2018/09/17(月) 01:41:50.280

「早く、食べよ。冷めちゃう」

桃子の匂いから逃れるように距離を置くと、背もたれの向こうから桃子がじろりと睨んできた。

「みや?」
「な、なに」
「なんか、あったの?」
「え?何もないよ?」
「嘘だ」
「嘘なんて」
「じゃあ、何か隠し事?」
「何言って」

だって、と言いながら、桃子が立ち上がる。
俯く横顔の輪郭は、ぞっとするほどに美しかった。
どうしてこんな時ばかり聡いのか。こんな時だから、聡いのか。

「言わないと……こうだっ」
「わっ、ちょっ!?」

驚くほど軽やかな動きで雅に飛びつくと、桃子の指先は脇の下に差し込まれた。
やばい、と思ったのも一瞬で、思考はすぐに奪われた。

「おりゃおりゃおりゃーーーっ」
「ひゃっ!ははははっ、あっ、はぁっ、ははっはははっ」

口を割らないなら実力行使だ、と桃子は雅の弱いところばかりを責めてきた。
自分の意思と関係なく、くすぐったさから逃れようと体が大きく跳ねる。
そんな中、テーブルが雅のそこを直撃したのは、偶然の出来事だった。

「い゛っ——!」

鈍器で腹を一突きされたような痛みが走り、雅は思わずその場にうずくまる。

「え、ちょ、みや……!?」

桃子の声が一気に狼狽する。
普段の雅なら「大丈夫」と笑みを浮かべてみせるところだが、今はそんな余裕など全くない。

「あ、ぅ……だい、じょぶ」

どうにか絞り出したが、弱々しい声しか出てこなかった。
じわ、と視界が滲む。
男性はここをぶつけると激痛を覚えるのだ、ということがふと思い出される。
まさか、こんなに痛いなんて知らなかった。

「みや、ごめん……悪気は」
「わか、ってる」

ちょっと、お腹痛かっただけだから、と嘘でも本当でもない言い訳。
桃子を椅子に押し込めて、急かすように手を合わせる。
しばらくは桃子も心配そうに——あるいは疑うように——雅を見ていたが、やがて朝食の味に注意は向いたようだった。
ひとまずはうやむやになってくれたが、問題はこの後だ。
どうしたものかと途方に暮れながら、雅はトーストに噛り付いた。

350名無し募集中。。。2018/09/22(土) 15:31:54.570

何より一番の問題は、仕事の間そいつをどうするかということだった。
ダボッとした部屋着なら誤魔化せた膨らみも、衣装となるとそうはいかない。
更に困ったことに、雅に与えられた今回の衣装はホットパンツときた。

「や、ムリっしょ!」

早めに楽屋入りして試着してみたものの、鏡に映るシルエットはあまりにもワイルドであり。
アイドルにとっては、全くもって必要のない要素である。

「おーい?みやー?」
「ぎゃっ!!」

不意に声をかけられて、雅は文字通り跳ね上がった。
バクバクうるさい心音が、体の全部を駆け巡る。

「なな、なに?びっくりしたぁ」
「ごめん」

雅が振り返ると、佐紀が胸のあたりを押さえて立っていた。
丸くなった目を見るに、かなり驚かせてしまったらしい。

「いつから?」
「声かけたじゃん」
「……気づかなかった」

どうしちゃったの、と佐紀が笑う。雅も同じ気持ちだった。
本当に、どうしちゃったと言うのだろう。
そこそこ広い楽屋だというのに、佐紀は雅の近くのソファに座った。
かすかに、甘い花の香りがした。佐紀の柔軟剤だろうか。

「早かったね、しみちゃん」
「みやもでしょ?いつもギリギリなのに」

佐紀が、自分の隣に空いたスペースをトントンと叩く。
座ってと言われていることは察したが、今この格好で腰掛けるのはまずい。
曖昧に笑ってそれを受け流すと、佐紀の視線が一瞬尖ったような気がした。

351名無し募集中。。。2018/09/22(土) 15:33:23.730

「みやってばどうしたの?今日」
「どうもしないけど」
「うそ。何か隠してる」
「か、隠してなんか」

佐紀に手首を掴まれ、雅の体はよろめいた。
ぐいっと引っ張られて、堪え切れずにソファへ不時着する。

「みや?」
「はい……」

見上げた佐紀の表情にはほんのりと厳しさが漂い、雅は思わず体をすくめた。
誰かを叱るなんてことを、佐紀は普段なかなかしたがらない。
だからこそ、たまにこうして年上の顔をされると雅は弱かった。
幼い頃、母親にいたずらを見つかった瞬間のような気まずさが喉の奥に広がる。

「ももと喧嘩でもした?」
「してない、です」
「じゃあ、なに」

佐紀の視線がじっとりと重たくなった。
答えようによっては、さらにこじれてしまいそうな予感がする。
だが、本当のことを打ち明けるわけにもいかない。

「言わなきゃだめ?」
「そんなに言いたくないの?」
「まあ、ちょっとね」

白旗を振りながら、勘弁してよと上目遣いで懇願する。
佐紀が年上の顔をするならば、こちらは年下の特権を使うまで。
うっと言葉に詰まって、先に視線を逸らしたのは佐紀の方だった。

「わかった。深くは聞かない」
「ありがと、しみちゃん」

手首をやんわりほどかれて、雅はゆるゆると立ち上がった。
変な姿勢で固まっていたものだから、背中がかすかに軋む。
ぐいっと背中を逸らし、筋肉をほぐそうとして——雅はハッとした。

352名無し募集中。。。2018/09/22(土) 15:34:04.750

「み、みや……?」
「……あ」

佐紀の視線が注がれているのは、雅の股間に他ならなかった。
慌てて背を向けたが、全ては後の祭り。

「ま、待って!隠さないでよ!」
「隠すわ!」
「だって、みや、その」

素早く腰から回される佐紀の手は、滑らかに雅の下肢へと潜り込む。
取り押さえようとしたが、佐紀の動きは俊敏だった。
佐紀の指がそれを捉え、遠慮がちにふにゃりと握られる。
遠慮がちな刺激に、つま先からぞわりとしたものが這い上がった。

「み、みや……うそでしょ?これって、」
「だから言いたくなかったのに」

膝から下の力が抜けて、雅はずるずると床に崩れ落ちた。

「ホンモノ……なの?」
「うん」
「……いつから?」
「今朝から……なんか……いて」
「あの、ほんとごめんね?誰にも言わないから」

佐紀にバレてしまったショックと共に、誰にも言えなかったことを打ち明けられた安堵が全身に広がる。
みるみるうちに視界が滲んで、自ずと鼻をすすっていた。

「だから、衣装やばいかもって、……思っ、て」
「それでか」

佐紀が背中を撫でてくれる感覚があり、鼻の奥がチクチクと刺激される。
ソファに誘われ、差し出されるペットボトルを素直に受け取った。
まだ佐紀の目は戸惑いに揺れていたが、その手は雅の髪の毛を優しく撫でる。

「衣装、交換しよっか?」

佐紀の提案に、雅はこくこくと頷いた。

89名無し募集中。。。2018/10/15(月) 02:01:17.210

——

その日、桃子の胸中は複雑だった。

原因は、まさに今、佐紀と楽しげに話をしている彼女に他ならない。
そんな彼女の目の縁がほんのり赤いことに、桃子はすぐに気がついた。
個人の仕事を終え、楽屋入りをしたのは桃子が最後。
既に楽屋はがやがやと温まっていて、笑い声がそこかしこから飛んできた。

「……別にいーけどさ」

桃子のつぶやきは、誰にも拾われることなく床に転がった。
雅の軽やかな笑い声を聞き流し、桃子は壁際のソファに陣取った。
適当に持ってきた本を開き、ずらりと並んだ文字を適当に追いかける。
内容なんて入ってくるはずもなく、桃子の思考は自然と今朝のことへと向かっていた。
思えば、朝の時点で雅の様子はおかしかったのだ。
雅は腹痛だなんて言っていたが、それが嘘であることは桃子も承知。
ただ、そんなもので誤魔化そうとするくらいだから、無理に聞き出すつもりもなかった。
この楽屋のドアを開けるまでは。

「ちょっともー!」

何を言われたのやら、佐紀が雅の肩を叩く。
じゃれ合いなど日常茶飯事だが、今の桃子には少々堪えた。
今朝の嘘の裏にあるものを、キャプテンには晒せるのだとしたら。
じわじわと濁り始めた桃子の考えを、明るい声が遮った。

90名無し募集中。。。2018/10/15(月) 02:09:38.340

「もーもっ!」
「わっ」

勢いよくソファに飛び込んできた体重に、ソファが大きな音を立てて軋む。
何事かと桃子が考えより速く、頬に何かが突き刺さった。
ちくりとした刺激に顔をしかめていると、満面の笑みの千奈美が視界に現れる。

「……なに?」
「お、しゃべった」
「痛いんだけど」
「あはは、ごめん。いる?」

持っていたスナック菓子の袋をガサガサと振って、なぜか得意げに千奈美が笑う。
桃子の頬に刺さったのは、どうやら目の前に差し出されたその袋の角らしい。

「……いらない」
「えっ!?いらないの?」

いらない、と繰り返すと、千奈美が大げさに目を見開いた。
千奈美の反応も無理はない。普段の桃子なら、断ることなどありえないからだ。

「じゃーしょうがない、とっておきをあげよう」
「いや、いいって、」

言い終わる前に、桃子の頬へとひんやりと濡れた感触があった。
予想外の感触に小さく体を震わせた後、視線だけで頬に触れた何かを確認する。
薄いピンクのパッケージの上に、鮮やかな「いちごみるく」の文字の紙パック。

「え、これ」
「元気出せ! 張り合いないから!」

勢い良く押し付けられるいちごミルクにぽかんとする桃子をよそに、千奈美は騒がしい足音を立てていなくなってしまった。
いらないと断ったはずのスナック菓子も、テーブルに置いていかれたままで。

「……バレてたか」

まだうっすらとしか汗をかいていない紙パックは、きっと買ったばかりだろう。
すっきりとした冷たさを喉に通すと、ざわついていた胸が少しだけ落ち着いた。

「ももー、そろそろ行こー」

のんびりとした友理奈の声が、桃子を呼ぶ。
千奈美と話している間に、雅も佐紀も楽屋から出て行ってしまったらしかった。

91名無し募集中。。。2018/10/15(月) 02:19:10.010


仕事中はやけに千奈美が絡んできたこともあって、雅に対するもやもやを少しは忘れていられた。
だが、それも数時間程度のこと。

「一緒に——」

帰ろうよ、と振り返ると、既に雅の姿はなかった。
正確には、茉麻と友理奈が呑気にソファでくつろいでいるだけだった。
仕事終わりの楽屋には、賑やかな空気の余韻だけが残る。

「なんで、こうなるかな……」

明日は仕事が早いからという理由――恐らく半分以上は口実――で、雅は桃子の部屋に泊まりたいと言っていた。
桃子もそれを快諾したから、今日は雅が桃子の家にやってくる。
それならば、一緒に帰宅しない理由はないだろうに。

「みやならさっき帰ったよ?」

桃子がきょろきょろしていると、茉麻がそう教えてくれた。
手には某名探偵が表紙に描かれた単行本。
今日が発売日だとかで、仕事の休憩中もその話で持ちきりだった。
普段ならノリノリで聞くが、今日の桃子はそれどころではなかった。茉麻には申し訳ないが。

「ちょっと前?」
「うん。だよねえ、熊井ちゃん」
「え? あー、そうかも?」

ゆるゆるとスマートフォンから時計に視線を移し、友理奈がぼんやり頷いた。

「さっき、ももがいなかった時だよね」
「ああ、そうそう。……たぶん」

茉麻の言う"さっき"とは、桃子が飲み物を買いに楽屋を離れていた、たかだか数分程度のことだ。
いつもの雅なら、絶対に待っていてくれるはずなのに。

「あんにゃろ……」

考えれば考えるほど、今日の雅は桃子を避けているとしか思えなかった。
そんな結論に至ってしまったら、さすがの桃子でもアイドルらしからぬ言葉が口をついてしまうというもの。

「ありがと、ももも帰る」

二人分の「お疲れ様」に見送られ、桃子は楽屋の扉をばたりと閉じた。

98名無し募集中。。。2018/11/12(月) 19:23:21.480

「あ、もも」

事務所を出たところで、思いがけず出くわしたのは梨沙子だった。
簡単な挨拶で通り過ぎようとした桃子は、「あのさ」と呼び止められた。

「みやなら、さっき」
「あーうん、茉麻たちから聞いた」
「……そっか」

普段ならそこで会話は終わるが、今日は歯切れの悪い梨沙子が気になった。
「どーかした?」と桃子が踏み込むと、「いや、別に」と梨沙子は瞳を揺らした。

「てか、ももこそ」
「もも? 別に何もないよ?」
「うそ」
「いや、嘘って」

間髪入れずに食らった否定。
梨沙子の勢いが可笑しくて、桃子はついつい吹き出した。
どうかしたのは確かだけれど、それは桃子ではなく雅に聞くことだ。

「何もないよ、ももは」
「……そう」
「強いて言えば、みやには何かあったかもだけど」
「みや?」
「まあ、考えすぎかもしれないし」

みやのことは信頼しているし、時が来れば言ってくれるだろうし。
そんな言葉を付け加えると、梨沙子の表情がうっすらと曇った。

「もも……ちょっと、どっか寄ってこ」
「へ?」
「時間ないなら……」
「いや、あるある! あるけど……珍しいね?」
「……悪い?」
「そんなことはっ」

茶化したつもりはないのだが、いつもの調子で口が滑った。
桃子の余計な一言に梨沙子はますます顔を曇らせ、すたすた歩き始めてしまう。
出遅れた桃子が呆気に取られていると、振り向きざまに梨沙子が視線を投げてくる。

「早く」
「あ、うん」

一瞬だけ、緩む歩調。優しいねとは口にせず、桃子は梨沙子に駆け寄った。

99名無し募集中。。。2018/11/12(月) 19:24:01.550


事務所から少し歩いた場所にある喫茶店。
二人して頼んだアイスティーを前に、会話はあまり弾まなかった。
半分ほどに減った紅茶をすすりながら、桃子は正面に座る梨沙子を目をやる。
先ほどから、彼女がこっそりと店の柱時計を気にしていることは知っていた。
ただ、焦っている様子でもないので、時間に追われているわけではないらしい。

「りーちゃんさ、何かあったの?」
「え、なんで」
「いやいや、誘ったのりーちゃんじゃん?」
「……何かなきゃ誘っちゃダメなの?」
「そ、そうは言ってないけどさあ」

綺麗に描かれた眉の間の皺が深まり、桃子はそれ以上踏み込むのを諦めた。
事務所で会った時から、梨沙子はずっと不機嫌さ——あるいは苛立ち——を滲ませていた。
時折、何かを思い出したように小さく息を吐くものだから、楽しい空気にする隙もない。
店内に貼られた古びたポスターを眺めながら、桃子はなんとか話題を探した。

「りーちゃんと二人きりって、久しぶりかも」
「そりゃ……だって、ももにはみやが、」
「ちょっと、ここ外」
「あ、ごめん」

周囲にほとんど人はいないが、どこで誰が聞いているやら分かったものではない。
そう焦る一方で、少し浮かれてしまったのも事実。

「だって、仕事終わったら二人ともさっさと帰るじゃん」
「えへ。まあそうだね」

ひょんなことからグループ内に知られてしまった二人の関係も、今や当たり前のように受け入れられている。
それを実感するたびに、桃子の頬はひとりでに緩んだ。

100名無し募集中。。。2018/11/12(月) 19:24:11.900

「何その顔」
「ん? 可愛い?」
「……ウザい」
「ひっどーい!」

桃子の抗議を「はいはい」と受け流し、梨沙子はストローに口をつける。
かつ、と乾いた音がして、柱時計が低く鳴いた。
それが合図だったかのように、梨沙子の表情が真面目なものになった。
真っ直ぐな視線に射抜かれて、桃子は落ち着かない気分になった。

「えっと……もう、帰る?」
「あのさ」

梨沙子の硬い声に触れ、桃子は思わず姿勢を正す。
二人の間の沈黙を、梨沙子の深い呼吸が揺らした。

「みやのこと、責めないであげて」
「へ? ……何か、知ってるの?」
「詳しくは知らない、けど……なんか、あるんだと思う」
「……そっか」
「ももにだから、言えないことも、あるんだと思う」
「えー、そうかなあ?」
「そうだよ。だってみや、カッコつけだし」

梨沙子が気にするほどには、客観的に見ても雅の態度はおかしかったのだろう。
わずかに体が軽くなった気がして、存外に雅のことが引っかかっていたらしいと桃子は自覚する。

「ももが、みやのこと嫌いになるって思った?」
「それはないけど……二人が別れるとか、ヤだ」
「りーちゃんって、優しいよね」
「……あ、そ」

ぶっきらぼうな梨沙子の横顔には、清々しさが漂っていた。

374名無し募集中。。。2018/11/19(月) 01:02:49.640

桃子が家に帰ると、窓からは光が漏れていた。
屋外にいても漏れてくる夕飯の空気に、桃子の胸は素直に躍る。
恋人が夕飯の準備をしながら帰りを待ってくれているなんて、またとない状況。

——いやいや、そんなのじゃ誤魔化されないし。

そう思ってはみるものの、鍵を取り出す指先は自然と逸る。
ドア一枚隔てた向こうで、軽やかな足音を感じた。

「おかえり!」
「あ、あー……ただいま」

勝手に開いたドアの先で、雅が満面の笑みで迎えてくれた。
水仕事の途中だったのか、腕まくりをした手には布巾が握られている。
ふわっと漂ってくる匂いに、正直な桃子のお腹が小さく鳴いた。

「ちょうど今できたとこ」
「あ、りがと」

早く、と雅が目を輝かせる。
何かが上手くできた時や、褒めて欲しい時の表情。
そんな顔をされては敵うはずもない。
高揚する気持ちのままに、桃子はバタバタと靴を脱ぎ捨てた。

375名無し募集中。。。2018/11/19(月) 01:04:04.490

「オムライス?」と桃子が尋ねると、「当たり!」とはしゃいだように雅が答えた。
ホカホカと湯気を立てる黄金色の丘には、でかでかとしたハート。
もうそんなことで照れるような時期は過ぎていて、でも毎度欠かさずハートを描く雅を可愛らしいと思う。

「食べよ食べよ、冷めちゃう」
「うん、いっただきまーすっ!」

スプーンを差し込むと、ふわりとした手応えと共に中から蕩けた卵が溢れた。

「今日はトロトロ系なんだ?」
「前に、ももが食べたいって言ってたから」
「そうだっけ?」
「うん。まあ、ちょっと上手くいかなかったけど」
「えー、十分だよ!」
「うーん……うちで作った時はもっと綺麗にできたのに」

出来栄えに納得いっていないらしい雅に、桃子はいやいや、と被せる。
多少の亀裂やシワはあるものの、それは手作りの味というもの。
それに、と桃子はもう一口頬張ってから思う。
ほんのりとバターの香りが残るチキンライスは、トロトロとした卵がちょうどよく絡む。
小難しいことを考えるまでもなく、美味しいの一言だった。

「えっと……、ごめんね? 先、帰っちゃって」
「ん? いーよ、気にしてないし」

心底すまなさそうに下がる眉を目にして、今日の態度についての文句はすっかり奥に引っ込んだ。
どういう風の吹き回しかは知らないが、きっと何かしらサプライズをしたかったのだろう。
そう考えれば、今日のあれこれにも多少は納得がいく。

376名無し募集中。。。2018/11/19(月) 01:06:07.330

「あー……あとさ、デザートもあるんだけど」
「えっ!? な、なんで?」
「なんでって……なんとなく」

いらないならいーよ、と拗ねかける恋人に、いるいる!と慌てて付け加える。
桃子の慌てぶりを見て満足したのか、雅はふっと表情を崩した。

「何買ってきてくれたの?」
「んー? ショートケーキ」
「えっ! ほ、ほんとに?」
「嘘ついてどーすんのさ」

雅の言葉通り、食後のゆったりとした時間にショートケーキは現れた。
純白の生クリームに、つやつやとして真っ赤ないちごが鎮座する。
カロリーなんてものを気にするのは無粋というもの。
別腹だよね、と二人で顔を合わせて、ふわふわのスポンジにフォークを落とした。

「どーしたの、これ」
「衝動買い」
「オムライスは?」
「作りたくなったから……特に、なんかあったわけじゃないってば」
「ああ、そう……」

ケーキの甘さに舌鼓を打っていると、浴室の方から軽やかな電子音が響いた。
まさか、と雅を見やると、得意そうな顔をして雅が鼻を鳴らす。

「お風呂まで、入れてくれたの?」
「そ。先にどーぞ」
「あー……どうしよう」
「何が?」
「いや、みやが可愛すぎて……ね」
「へ?」
「ううん。大好き」
「え、あ、うん……」
「あはは、照れたぁ」
「そりゃっ、照れるわ! もう早くお風呂入っちゃってよ」

染まった頬を誤魔化すように、雅が空になった皿を持って立ち上がる。
台所へ向かう後ろ姿さえも愛おしくて、桃子の顔はだらしなく緩んだ。
こんなにも雅が尽くしてくれたのだから、相応のものを返さなければ。
今日は存分に可愛がってあげよう、と桃子は決意を固くした。

377名無し募集中。。。2018/11/19(月) 01:07:05.010


——はずだったのだけれど。

「先、寝てて」

風呂から上がった桃子にそう言い残し、雅はそそくさと浴室へ向かってしまった。
これは、どう捉えるべきだろう?
静まり返ったリビングで、桃子は一人首を傾げる。
完全にデレびちゃんモードだと確信していたのに、床には雅用の布団が整えられている。
これはつまり、今日は一緒に寝るつもりがないという意思表示。

「そんなぁ……」

一か八か、布団の中で待っていようかとも思ったが、スルーされたら心が持ちそうにない。
雅が風呂から上がったタイミングで誘ってみようか、まだその方が可能性はある。

「ぃ、っくしゅ」

ざわっ、と肌の表面を走った冷たさに、桃子は小さく体を震わせる。
気が急いていたせいで、髪の毛を乾かすのを忘れていた。
まだ浴室からは流水音が響いていて、微かに雅の鼻歌も聞こえてくる。
ドライヤーを取りに入るくらいならば良いだろうと踏んで、桃子はそっと脱衣場に入り込んだ。

378名無し募集中。。。2018/11/19(月) 01:07:28.170

目指すものは、鏡の横にかかっている。
雅が来るようになって新調した、濃い桃色のドライヤー。
桃子が前に使っていたものでは、風量が足りないからと雅に説き伏せられたのだった。
懐かしさに浸りながらそれを取ろうとした桃子の目は、別のものに奪われた。
洗濯機の上に置かれた着替え類の一番下。

「……え?」

思わず声を漏らした後で、ハッとして浴室の向こうの気配を伺う。
ご機嫌な歌声は途切れておらず、桃子はほっとしながらそれに目をやった。
指先でつついてみると、化学繊維特有のシャリシャリした感触がある。
赤や黒が織り交ぜられた派手な柄は、明らかに女性用のものではない。
これは、見ても良かったものなのだろうか。
痛いほどに脈打つ心臓を押さえながら、桃子はそろそろと浴室を抜け出す。
どうにかソファまでたどり着くと、力が抜けてぺたんと座り込んだ。

「あれって……ボクサー……?」

声に出してみると、じわじわと現実味が這い上がる。
弟用では、と思考を巡らせてみたが、それならば封を切ったりはしないだろう。

「やっぱ……みやの……?」

それ以外にないでしょ。
自問自答しながら、桃子は頭を抱えた。
雅があんな下着をつけているなんて、全く知らなかった。
いや、でも待てよ。最近の雅は、マニッシュなファッションが多い。
中身までしっかり揃えるのが、雅なりのオシャレってやつなのではないか?
明後日に飛んでいく思考の中で、桃子はぽんと膝を打つ。

「あ、だから……?」

今日はその気がないというサインの理由は、きっとこれに違いない。

——みやがどんなのつけてても、気にしないよ?

雅が出てきたら、ごくごく自然に言ってやろう。
決意を新たにした桃子の背後で、脱衣場のドアが開く音がする。
ソファに正座したままで、桃子は完璧な笑顔と共に振り返った。

432名無し募集中。。。2018/12/01(土) 18:08:18.610

――

まずい、これはまずい。
桃子と目が合った瞬間、雅は直感した。

桃子がこういう目をしている時は、大抵"そういう時"だ。
"そういう時"の桃子はひどく優しく、大層熱心に雅に奉仕をしてくれる。
めったにない気まぐれにいつもなら胸を踊らせるのだが、今日ばかりはそうはいかない。

「みやびちゃん」

幼児を前にした時のような、お姉さんぶった声で呼ばれた。
桃子の白い——風呂上がりでほんのりと桃色だった——ふくふくとした手が、ゆらゆらと雅を手招く。
おいで、と期待のこもった視線を痛いほどに感じた。
その後、何が起こるのかも大体想像がつく。
だが、ここで拒否して桃子の機嫌を損ねるようなことはしたくなかった。
結局、少しだけ迷って素直に桃子の元へと近づく。
桃子がすっと腕を広げたので、雅は彼女の膝の上に体重を落とした。
背中にぎゅっと触れる手に応えるように、雅も回した腕に力を込める。
隙間なくぴったりと重なって、パジャマ越しに伝わる桃子の体温がじんわりと温かい。
桃子は、何も言わなかった。
肩口のあたりに、桃子の額が擦り付けられる。
ふわっと香ったミルクのような甘さに、下腹がきゅっと縮まった。
寂しい思いを、させてしまったかもしれない。
テディベアのように抱きしめられながら、雅はそんなことを考えた。

434名無し募集中。。。2018/12/01(土) 18:14:29.570


――今日、ももん家行くの?

そう尋ねた佐紀の顔には、やめといた方がいいと、でかでかと書かれていた。
佐紀の懸念ももっともで、雅だって同じことを危惧していた。
だが、だからといって「今日は自分の家に帰る」なんて今更言いだす訳にもいかない。
朝の時点で、桃子が何かしら怪しんでいたことは確かで。
さらに悪手を重ねれば、その分だけ桃子にバレるリスクも高まるはずだった。

「二人って……その、泊まった日は、絶対、するの?」

佐紀の言わんとすることを感じて、雅はさっと頬を染めた。
そんなことを想像させてしまった罪悪感と、佐紀の頭に浮かんでいるであろう想像への羞恥心。
落ち着かない気分のままで、雅は「まあ」とだけ答えた。

「なんか……今、みや達が付き合ってんだってようやく実感したかも」
「い、今?」
「だって、二人とも仕事の時は普通だし。あの子、わりと誰にでもベタベタすんじゃん?」

佐紀の言う通り、桃子は誰かにくっつくのが好きだ。
逆に、他の誰かがいる時に、わざわざ雅を選んでひっつくことはあまりなかった。
ある意味では、仕事中にバレる可能性は低いとも言える。

「でもさ、なんとかしなきゃじゃない?」
「なんとかって」
「行かない選択肢はないんでしょ?」
「そうだけど……」

今日はナシで、と言ってみるか。ちょっとあれがそれで、とか。
いやダメだ、と雅は息をつく。
なまじっかお互いのことをよく知っているだけに、下手な嘘はすぐに見破られる。

「……さっさと寝かしつけるとか?」

ご飯食べたら眠くなるだろうし、ご機嫌のまま寝てもらったら良いんじゃない?
佐紀の言い出した作戦はシンプルだが、悪くはなさそうだった。
作戦の詳細を練ろうとしたところへ、楽屋のドアが開く気配。
勢いよく顔を上げると、二人分の視線の先で梨沙子が怪訝な顔をしていた。

「え……なに?」

なんでもないとはぐらかすには、挙動不審だった自覚がある。
雅が次の言葉に迷う間に、佐紀の言葉が前に出た。

「そうだ。みやがさ、梨沙子に頼みあんだって」

は?と飛び出そうになった声は、佐紀に小突かれて飲み込んだ。
盗み見た横顔は満点の微笑みで、自信さえ感じさせる。

「みや、サプライズを考えてるらしいのね」
「……で?」
「梨沙子にさ、ももの足止めしてほしいんだって」
「えー……熊井ちゃんとかに頼んでよ」
「他の人だとバレちゃいそうじゃん? 梨沙子が適任かなって思って」

436名無し募集中。。。2018/12/01(土) 18:17:41.110

嘘をつき通せないなら、ちょっぴりと真実を混ぜ込んでしまえば良い。
ついでに、共犯にしてしまおうというわけだ。
佐紀のこういう一面を見るたびに、雅は彼女の底知れなさを思い知る。
1時間くらい2人でお茶でも飲んできてよ、と雅が付け足すと梨沙子は渋々頷いてくれた。
少し離れた机で荷物を整理し始める梨沙子に、どうにかやり過ごせたと雅は安堵する。

「どうせならさ、下着も買いに行く?」

がさがさとした物音に紛れて、佐紀が小声で提案してきた。
いいの?と目で問うと、気にしないで、というように笑いかけられる。

「……ごめん、ほんとありがと」
「良いってば。たまには頼ってよ」

小さく胸を張る佐紀が、今の雅にはとても頼もしく映った。


そんなわけで、雅の股間は今日の夕方に購入したばかりのボクサーパンツに守られていた。
仕方ないとはいえ、こうなったら好きなものを履こうと手に取った赤と黒の派手な柄。
桃子にだけは、絶対に見られるわけにはいかない。

「みや」

艶の増した桃子の声が、ねっとりと雅の耳を撫でる。
次の行為を予感して、雅は小さく喉を鳴らした。
桃子に後ろ髪をかきあげられて、あやすように弄ばれる。
やはり、自分が先に風呂へ入っておくべきだっただろうか。
風呂上がりのタイミングなんて、桃子が一番その気になりやすいというのに。
桃子曰く、風呂上がりのしっとりとした肌や、ちょっと湿った髪の毛の匂いが好きらしい――それは雅も同じだった。
キスを誘うように桃子の瞼が閉じたのを見て、雅は一瞬にして心を決した。

「ひゃっ?!」

桃子を抱きしめたまま、リビングに敷かれた布団めがけてくるりと体を回転させた。
雅が見下ろす先で、桃子が丸い目を白黒させる。

「——みやが、したい」

押し付けた両手を握りしめながら、雅は一息に言い切った。

824名無し募集中。。。2018/12/07(金) 20:27:01.170

「なあに? そういう日?」

そう問いかける桃子の声は、まだ年上ぶった余裕がうかがえた。

「だったら、いけない?」
「ううん。むしろ――うれしい」

ふわっと和らいだ桃子の表情に、雅の中で渦巻いていた熱が頭のてっぺんまで突き抜けた。
脱力した桃子の体に抱きつくと、桃子が穏やかな手つきで背中を撫でてくる。
不意に、雅は自分が飼い主にじゃれつく大型犬になったような錯覚を覚えた。
もしも尻尾が生えていたら、ちぎれんばかりに振っているところだ。

「もも……すきだよ」

振り回す尻尾はないから、代わりの言葉を桃子の耳に送り込む。

「もも、も」

続きの言葉を聞く前に、堪らなくなって口づけていた。
布団の上にいるせいか、桃子の唇の弾力をいつもよりも強く感じた。
せっかちな指先は、忙しなく桃子のパジャマを探り出す。

「んんっ、は……」

落ち着いて。なだめるように背中を叩かれて、雅はハッと唇を離した。
ほんのりと上気した桃子の頬が、なんだか美味しそうにも見えた。
肩で息をしながら、桃子はしょうがないなあと笑った。

「ゆっくり、ね? せっかくだから」

そう言いながら、ぎゅっと頭を抱きかかえられる。
桃子の胸に顔を埋めるような格好になって、雅はそっと目を閉じた。
頬に、瞼に、桃子の鼓動が伝わってくる。
もうすでに、とくとくと速い。

「うん……わかった」

雅の返事に満足したのか、桃子が雅の頭にぽんぽんと触れる。
やっぱりお姉さんぶってる、と感じたけれど、悪い気はしなかった。
そっと膝立ちになり、桃子と向き合う。
布団越しに伝わる床の固さに、ようやくいつものベッドと違うことを意識した。
桃子と、目が合った――合わせたと言うべきか。
すでに若干潤んだ瞳が、期待するようにゆらりと揺れた。

「……いい?」
「でんき」
「あー……わかった」

普段と違うシチュエーションに、このまま突き進みたくなる一方で。
必要以上の明かりは、不都合なものまで晒してしまうかもしれないと思い至る。
手探りで掴んだリモコンに指を引っかける。
ライトが落ちる刹那、熱っぽい桃子の瞳がぼんやりと焼き付いた。

825名無し募集中。。。2018/12/07(金) 20:28:03.930


キスは深く、念入りに。
そうするのが好きだと桃子が言ったから。
最初はライトなキスでも息ができないと言っていたのに。
いや、今も息ができていないのは同じか。
唇が離れた隙に、桃子は大きく胸を上下させた。
ゆっくり、と言われたけれど、ボタンを全て外してしまうともう止まれなかった。
柔らかな綿の肌着をめくり上げ、素肌を手のひらで大きく撫でてみる。

「はぁっ……」

桃子が満足げにこぼした吐息に、雅の胸は容易く弾む。
湧き上がる感情を抑えながら、丹念に桃子の柔肌を味わった。
みやの手、すべすべしてていいよね。
いつだったか、桃子にそう言われたことがあった。
こうして体を重ねるたびに、彼女の滑らかな肌に触れるたびに、その言葉が頭をよぎる。

「んっ!」

狙いをつけて突起を弾くと、桃子の声が一瞬で甘くなった。
すでにそこは固くなっていて、雅に触れられるのを心待ちにしているようだった。
乳房に指を食い込ませると、張りのある手応えが返ってくる。
雅は、カッと頬が火照るのを感じた。
つまんで、ひっかいて、おしつぶす。
舌全体で包むようになめる。唇でちゅう、とすう。

――ゆっくりって言ってたもんね。

心の中でつぶやきながら、雅は何度も何度も両方の先端を可愛がった。

「んあぁっ! もっ!」

一際甘い声を上げ、桃子がびくんっと大きく仰け反る。
なおも雅が動こうとすると、ぐいと頭を押しのけられた。

「まっ、て」

素直に雅が手を休めると、桃子は荒い呼吸を整えるように息をした。

「もういい?」
「っ、まだ」

大好物の餌を前に、おあずけされているような気分だった。
雅が不服を込めて小さく唸ると、ばか、と言うように頭をはたかれる。
本当は待ってなんていられない。
仕方がないから、額や頬や、晒された肌に数え切れないほどのキスをした。

「てかさ……ちゃんとぬいでよ」
「やだ」
「やだって……ちょっと!」

826名無し募集中。。。2018/12/07(金) 20:28:30.560

抗議するように掴まれた服の裾を無視して、桃子の下半身に手を伸ばす。
ゆっくりと言われたことなど、もう忘れてしまった。
そんな顔をしながら、一点を服の上からぐっと押しつけた。

「ひゃんっ」

反射的に閉じられた太ももなど構わず、入り口と思しき場所を指でなぞる。
かりかりと爪でひっかくと、良いところに当たったのか桃子の体に力が入った。
雅が動きを緩めた途端、桃子の腰がゆるゆると上下し始める。
あ、あ、とこぼしながら、桃子は一層強く抱きついてきた。

「も、やぁ……」

ぐいっと雅の手首が掴まれて、無理矢理に引っ張られる。
早く、と浅い息で桃子が言った。

良いって言ったのはももなんだから。
もどかしい気持ちで、へその先、ぴったりと守られた下着の中へ忍び込む。
薄い茂みに触れた指先は、ぬるりと滑った。
溢れんばかりに濡れた入り口が、雅を待ちわびてひくつく。
とろとろ、と思った途端、雅の下腹部も切なく疼いた。
きゅ、と自分自身が固くなっていくのが分かる。
未知の感覚に戸惑いながら、雅は指先に意識を集中させた。
桃子の腰がゆらめいて、雅は中へと誘われる。

「っ、あ……」

根元まで飲み込まれた、と思ったら、桃子が息を詰まらせた。
好きなところへ導きたいのか、温かな内壁がにゅるにゅると形を変える。
雅が手伝うように指を曲げると、桃子はきゅうきゅうと締め付けてくる。
ここ?と雅が短く問うと、返事の代わりに抱きしめられた。
もう待てない、と、背中に爪が食い込む感覚。
それを合図に、雅はゆったりと動き始めた。
最初は慣らすように、段々と速く。

「んぅっ、あっ! ……ああぁっ!」

もみくちゃにされながら、瞼を閉じて蕩けそうなほど甘い声に聞き入る。
この瞬間は、寂しい。雅はいつも、そう思う。

827名無し募集中。。。2018/12/07(金) 20:29:00.890


雅が水を取りに行っている間に、桃子の呼吸は少し収まったようだった。
薄闇の中で、ぐったりとしていた体がゆらりと起き上がる。
ぼやけた視界の中で、桃子の両手にコップを収めてやる。
ありがと、と聞こえた声は掠れていた。

「おやすみ」

そっと投げかけてみる。あわよくば、このまま寝入ってくれと祈る。
けれど、返ってきたのは拗ねたような低い音だった。

「ねえ、今日ほんとどうしたの?」

え?ととぼけてみたものの、桃子の反応は薄い。
むしろ、やんわりと伝わってくる気配は刺々しくなったようだった。

「ま、言いたくないならいーけど」

突き放すような言い方をされて、すっと心細くなった。
布団の上で、桃子がくるんと膝を抱える。
その指は意味もなくコップの縁をいじり、足はぱたぱたと布団を叩いた。
雅がソファの上から動けないでいると、ふらふら遊んでいた指先がぴたりと止まった。

「……佐紀ちゃんには言えるくせに」
「え、なんで……あ」

うっかり反応してしまった。
自分の迂闊さが恨んでも遅い。

「やっぱり何か隠してんじゃんか!」

桃子の厳しい声が額に飛んできて、雅は首を竦めた。

「そうじゃなくて、」
「じゃあ何さ?」
「……それ、は……」

828名無し募集中。。。2018/12/07(金) 20:30:14.670

ガラスのコップが、甲高い音を立ててテーブルにぶつかった。
どんな言葉を重ねても、事態が悪化させる想像しかできない。
飼い主に叱られて尻尾を垂れる犬のように、雅は静かにうなだれた。
部屋の空気がどろりと重たくなり、呼吸するだけで苦しく感じる。
沈黙。飛び交う気配。頭の中でぐらつく天秤。
やがて、細やかな衣擦れの音が空気を動かした。
ざわざわとゆらめく視界の中で、桃子が立ち上がる。

「……みやに隠し事されてるのが一番やだよ」

髪の毛を撫でる手つきは優しい。
ぽんぽんと頭のてっぺんに触れられて、雅はますます俯いた。

「……分かんないじゃん」
「何が」
「一番やかどうか……分かんない、じゃん」

耳に届く自分の声は、駄々をこねる子どもそのもの。
せっかく桃子が大人になってくれたのに、その分だけ自分が幼稚だった。
やんなっちゃう、と雅は思った。
自分も大人になるということを選べない自分も。
この期に及んで、桃子が何か言ってくれるのを待っている自分も。
果たして期待した通り、ももが、とかすかな声がした。

「……ももがさ、みやのこと、どんだけ、好きか、分かってんの?」

語尾が震えた。桃子の中に抑え込まれた、荒々しい感情の一端。
それに気づいてしまったら、いっぺんに世界が変わった。
自分の中だけで滞っていた感情が、ぐちゃぐちゃに渦を巻く。
溢れそう、と思って、目を見開いた。
みやが泣くのは、違う。
きつく唇を噛んで抑えこむと、代わりに肺が引きつった。

「……いやって言うほど、分からせてやる」

桃子の声に滲んだ熱が、雅の肌をひりつかせた。
薄暗い中でも、桃子の目がギラついているのが分かる。

「ちょっと、まって」

ソファに押さえつけられながら、どうにかそれだけ絞り出した。
肩にかかる重たさが、ふわりと軽くなった。

61名無し募集中。。。2018/12/09(日) 01:32:38.250

雅がほっとしたのもつかの間、桃子の両手で強制的に仰向けさせられた。
唇に柔らかいものが触れる。
息を継ごうとしたらそれも封じられた。
鼻先に感じる桃子の呼吸も、荒い。

「まって、って」

――言った。その続きさえも奪われて、次第に思考がぼやける。
念押しのように湿らされた唇に、下腹が切なく疼いた。
むくむくと一点が堅くなっていくのを感じ、雅は慌てて太ももをきつく閉じた。

「待ったでしょ? じゅうぶん」

耳の穴にぴちゃりと舌をねじ込まれる。
しつこく何度も繰り返されて、耳が溶けてしまいそうだと思った。
雅が肩をすくめてみても、桃子の動きは弱まらない。

「みやびちゃん、余計なこと気にしてんでしょ」
「――に、してな、」
「うそ」

耳たぶを前歯で軽く挟まれて、あっ、と声が押し出された。
ぐにゅぐにゅと這い回る舌。ちゅうと吸い付く唇。
本気だから、と桃子が全身で伝えてくる。

「みや」

桃子の声は熱っぽく響く。
知らぬ間に開かれたパジャマは、プレゼントの包み紙のように剥がされた。
荒っぽい指先に、息が詰まった。
桃子の体重が腹に降ってくる。頭の脇は桃子の両手に封じられた。
狭いソファでは、もう逃げ場がない。

63名無し募集中。。。2018/12/09(日) 01:36:07.870

「キス」とささやかれた。顎を持ち上げて、桃子の唇を迎えに行く。
よくできましたと褒めるように、くしゃくしゃと撫でられた。
それだけで、ぽかぽかと体が温かくなる。
キャミソールも、と求めるように引っ張られたので、上半身をくねらせて手伝った。
えらいね、と言いながら、桃子は雅の髪の毛をもみくちゃにした。
持っていた物をぽいと放り投げると、露わになった鎖骨に桃子が頬をすり寄せる。

「下も、ね」

膝頭に、桃子の指が引っかかる。
その感触に、ふわふわした幸福は一瞬で消え去った。
膝を割り開こうとする桃子に、とっさに雅は逆らっていた。

「ふーん、まだそういうことすんの」

数分前まで、雅より随分と大人だった桃子なのに。
今は、おもちゃを取られて苛立つ子どものようだった。
言葉のあちこちに生えた棘が、ちりちりと皮膚を痛めつける。

「ねえー、本当にさあ、怒るよ?」

ざらつく声は、危険信号。
けれど、体は言うことを聞いてくれない。
そういうことなら、と低いつぶやきは独り言だっただろうか。

「あっ?!」

膝にかかる力が緩んだ、と思ったら、がら空きの脇腹に桃子の指が食い込んだ。

「ひっ、ちょっ、やだ、ひゃあっ」
「隙ありっ」

侵入を許してしまった桃子の指にズボンのゴムが攫われる。
ちょうどよく腰が浮いてしまっていたから間が悪い。
鬼の首を取ったように、桃子がパジャマを掲げるのが見えた。
一瞬にして晒された太もも。すーすーする、と頭の端で雅は考えた。

65名無し募集中。。。2018/12/09(日) 01:39:12.710

「なぁんだ」

聞こえてきた桃子の口調は、慎重に作られた明るさだった。
まるで、前々からこうすると決めていたように。

「わりとふつーじゃん、ね?」
「ふ、ふつう……?」
「なんだっけ、ボクサーパンツでしょ? 悪くないと、」

ぷつんと途切れた桃子の言葉に、雅は両手で顔を覆った。
恐る恐る、股間が覆われる。
ややあって、桃子は戸惑いのままを声にした。

「え……と?」

手に触れたものの形状を確かめるように、桃子の指がつつつっと下に移動する。
そこに桃子が触れていると言うだけで、何かが飛び出てしまいそうだった。

「何かの冗談?」
「だったらよかったね」
「……マジ?」
「…………」
「うそでしょ?」
「だったらもっとマシなうそつく」
「ホントに、ホンモノ?」
「知らない。……勝手に、いた」
「さ、さわっても、いい?」
「は?」

嫌だと言う暇も与えられず、桃子の手が素早く差し込まれる。
ボクサーパンツの裾が広く開いた構造を、今ほど恨んだこともない。
手探りで掴まれたのを感じて、いやでも熱がそこに集まる。
桃子の片手に、先っぽまで包み込まれてしまった。

「……す、ご」

それが血の通ったホンモノであることを確かめるように、桃子の指先が角度を変える。
先端を桃子が掠めた瞬間、全身を強烈な甘さが駆け抜けた。

「んんんっ!」
「あ、ごっ、ごめんっ」
「……もう、やだぁ」

その刺激は確かに快感であるのに、脳みそが激しくそれを拒否する。
腹からむかむかとせり上がる不快感。
芋虫のように丸まって、ソファに顔を埋める。
二人で買いに行ったソファカバーがじわりと濡れたのも、今はどうでも良かった。

217名無し募集中。。。2018/12/13(木) 07:56:02.270

リビングに敷かれた布団の上で、桃子はぺたんと膝を崩した。
丸まった素裸の背中が、目の高さにある。
それがゆっくり上下するのを眺めながら、桃子は胸の高鳴りを感じていた。
雅の気持ちを思えば、まずは慰めるべきなのだろうけれど、高まる体は正直だった。
ぐずついた子どもみたいに弱さを曝け出す雅に、どきどきしていた。
体内で暴れる荒々しい衝動のまま、雅を押し倒してしまいたい。
落ち着け。息を吸って、初めて酸素が足りないと気づく。
手のひらにはナニカの感触が残っていた。握って、開いて、確かめる。
生々しい温度を想起した。桃子はくらりと目眩を覚えた。

「……みや」

ぽこぽことした背骨のシルエットを、愛おしいと思う。
雅は駄々っ子のように首を振ったように見えた。
慎重に手を伸ばし、背中の真ん中に触れてみる。

「大丈夫、ね?」
「……何がさ」

つっけんどんな声に、ご機嫌斜めな表情が容易に浮かんだ。
桃子は静かに呼吸しながら、なだめるように雅を撫でる。
優しい手のひらの内に潜む、オオカミの牙。
気づかれるにはまだ早い。

「一番やなのは、やっぱりみやに隠し事されてることだったよ」

雅が小さく身動いだ。
手のひらに伝わる、滑らかな肌の弾力。

「ちょっとびっくりはしたけどさ、でも、それだけだから」

努めて穏やかな口調で、あくまで優しく紳士的に。

「気にしないよ。みやが、どんなでも」

ダメ押しの一手。そんな気持ちを込めて、はっきりと言い切る。
雅が顔だけ振り向くのが見えて、すかさず視線を捕まえた。
まだ、雅の瞳は潤んだまま。
桃子はひっそりと唾を飲み込んだ。

218名無し募集中。。。2018/12/13(木) 08:00:54.810

「……ほんと?」
「うん」
「だって、こんな……うぅ」
「だぁいじょうぶだってば。おいで?」

雅に微笑みかけながら、大きく腕を広げて雅を見つめる。
雅の瞳が躊躇うように揺れたのも一瞬のこと。
膝に降りてくる熱っぽい重たさを、桃子はぎゅっと受け止めた。
肩に顔を埋めるのは、雅の恥じらいの印。
ぴったりと合わさる上半身に反して、雅の腰は控えめに浮いていた。
気にしなくて良いのにな。
腰骨をぐっと引きつけようとすると、うっすらとした抵抗が返ってくる。
そんな反応すらも全て、桃子の中で甘い疼きに転化した。

「安心してよ。大丈夫だからさ……たとえ、みやにおちん――」
「ぎゃあああああっ!」
「何! びっくりすんじゃん!」
「考えないようにしてたのに! その……なに? はっきり言わないでよ」
「え、でもそれ以外に言いようが、」
「アイドル!」
「今そういうこと言うのやめよーよ」

さらっと桃子が言うと、まん丸にした目で雅が覗き込んできた。
アイドル嗣永桃子に抱いて欲しいのか? そんなわけないだろうに。

「ね、ちゃんと、見せて」

すりすりと腰骨をさすると、雅の背筋がぴんと伸びた。

「絶対ヤ」
「もう触っちゃったし」
「そういう問題じゃ、」

分かってるよ。
にっこり笑いかけながら、桃子は雅をソファに押し上げた。
雅がきょとんとしている隙に、パンツのゴムをひっつかむ。
桃子が邪魔な布をずり下げるのと同時に、雅の両手が股間をガードした。

「ももっ!」
「いーじゃん、二人しかいないんだし」
「良くないから!」

股間を押さえ、太ももをきつく封じながら雅が叫ぶ。
一番弱いところを必死に守る姿。
それが桃子を更に昂ぶらせるなんて、雅は知りもしない。

219名無し募集中。。。2018/12/13(木) 08:03:00.530

「みや」
「やだ」
「みやびちゃん」
「や、だ」
「みーやん?」
「い、や、だ、っ!」

押せば押すほど強まる拒絶も、桃子の予想の範疇。
一呼吸置いて、桃子は「そっか」としおらしくつぶやいた。
じりじりと後ずさり、雅に背を向けて乱れた布団に潜り込む。
かすかに、雅が鼻を鳴らすのが聞こえた。
心細さに揺れる雅の表情を想像した。
「もも」と呼ぶ声に滲む不安。
桃子の唇の端が勝手に震えた。

「……ねちゃうの?」

反応はしない。
再び聞こえた「もも」という声が、くしゃりと歪む。
もう一押し、と桃子は息を潜めた。
雅に「いいよ」と言ってほしい。あわよくば、自らの意思で開いてほしい。
自分にしか見せない姿を、見せてほしい。
そこまで考えて、桃子はふと立ち止まる。

「……ねえ、みや」
「なに?」

しょんぼりとした声音に、思考を持っていかれそうになる。
いやいや、その前に確かめなければならないことがある。

「もしかしてさあ、佐紀ちゃん知ってんの?」

雅が、あれほど頑なに隠そうとしていた秘密を。
ややあって、雅が気まずそうに「……まあ」と返事をした。
だからか、とようやく桃子は腑に落ちた。
楽屋での佐紀との様子も、帰宅してからの態度も。
佐紀が雅の事情を知っていたとしたら、一本に繋がる。

「……見せたの?」
「ばっ! まさか!」
「ほんとにぃ?」
「……さわられは、した」

か細いけれど正直な返事。
桃子の中でぐらついていたスイッチが、一気に吹っ飛んだ。

「ひゃっ、ちょっ?!」

肩を抑えつければ、簡単に雅の体はソファに沈む。
ぽかんと開いた唇に、無理矢理舌を押し込んだ。
呼吸も、意識も、全て自分の――自分だけのものにしたい。桃子は欲した。

220名無し募集中。。。2018/12/13(木) 08:04:09.530


もともと高まっていた熱だ。蘇らせるのは容易いことだった。
雅が、くったりとソファにもたれかかる。
たっぷりと愛でてやったせいで、ぷっくりと固くなった胸の先端。
ふにゃふにゃと柔らかい腹に散る、いくつもの赤い痕。
既に蕩けた雅の体は、じっとりと熱っぽい。
それでもまだたりない。たりないたりないたりない。
全身に巡る甘い毒に、どろどろと冒されているような心地。
やおら下ろした桃子の視線が、堅くなって震えているそれを捉える。

「みや、」

続けるべき言葉は浮かばず、どうでも良くなって桃子は続きを放棄した。
そんなことよりも、いじらしく桃子を待ちわびるそれに触れたくて仕方がない。
ひとつ、深呼吸をして、そっと両手で包んだ。
雅がぴくっと体を強張らせる。
桃子が握ったそれは、とくとくと律動していた。

「かわいい」
「……ゎ、いく、なっ、あ……っ」

ぬるりと先っぽが滑る。
ここも濡れるなんて、知らなかった。
液体をすくって塗りつけると、雅の腰がびくりと逃げる。

「きもちい?」

ぬるぬると繰り返すと、そのたびに雅は切なげに戦慄いた。
その声を聞く限り、きっと喜んでくれているのだろうとは思うけれど。

「ちゃんと教えて? 痛くしたらやだから」
「……い、ぃ」
「そーなんだ。ちゃんとつながってんだねえ」

221名無し募集中。。。2018/12/13(木) 08:05:33.490

満たされる。けれど、もっとと思う。
片手で先を撫でながら、片手でそれを扱いてみる。
あっ、と雅が声を上げた。
ばたばたと彷徨っていた雅の指が、桃子の髪の毛をぐしゃぐしゃと掻き乱す。

「ぅああっ、やっ!」

きゅーっと頭の真ん中がしめつけられた。
みやのおなかが、ふるえてる。
かたい、やわらかい、むにゅむにゅで、ひくひくしてて。

「ももっだめだめっ、だめぇっ、それっ!」

びくびくびくっと雅が全身を痙攣させる。
ぶるぶると小刻みに震えるそれから、ぴゅるっと何かが飛び出るのが見えた。

「わっ?!」

傘にぶつかる雨のように、何かがソファを打つ音がする。
その音と共に、桃子の思考がすっとクリアになった。

「てぃ、てぃっしゅ!」

桃子がソファを拭く横で、雅はぐったりと両手で顔を覆う。

「なんか、もう――」

疲れた、と息だけが聞こえた。

222名無し募集中。。。2018/12/13(木) 08:06:09.160

―――

目を開けると、天井がいつもより遠かった。
背中には、布団越しにしっかりとした床の感触。
もたもたした思考が、ようやく昨晩の記憶にたどり着く。
あの後、どうにか二人で布団に潜り込んだのだろう。
よく見れば、前開きのパジャマのボタンは一つずれていた。
腰周りはじんわりと怠く、他の筋肉も何となく突っ張っていた。

桃子は、雅の腕に抱きつくようにして寝息を立てている。
もったいない気もしたけれど、そっと腕を抜き取った。
桃子がかすかに眉をひそめたので、お詫びに頭をゆるく撫でてやった。

自分のパジャマをめくり――痕の多さに少し驚きつつ、ズボンのゴムを引っ張る。
覗き込んだパンツの中で、そいつはしんなり萎れていた。

「……やっぱ、変わんなかったか」

独りごちて、そっとそいつを仕舞い込む。
一晩で変化が起こることをほんのり期待していたが、そう上手くはいかないらしかった。
下着を買い足さなければならないかと思うと、憂鬱さが増す。
盛大にため息をつく雅の背後で、ごそごそと音がした。

「おはよぉ……」
「おはよ、もも」

桃子が、半開きの瞼をこする。
昨晩の行為が嘘のように、今の桃子は三歳児だった。
可愛い!と湧いた感情に任せ、桃子の腰あたりをめがけて飛びつく。
はいはい、と桃子の手がぞんざいに雅の背を叩いた。
その時、ぱたぱたぱたぱたっ、と箒で何かを掃くような音が響いた。

「……ん?」

桃子の動きが、ぴたりと停止した。
雅が顔を上げると、桃子は別の意味で目をこすったようだった。

「かっ、鏡、みやっ」
「へ?」
「いいからっ!」

なぜか焦った様子の桃子に手を引かれ、全身鏡の前へ導かれる。

「一体何なのさ……」
「いいから見てはやく!」

鏡に映る、自分の姿。
寝癖のついた髪、一つボタンのずれたパジャマ、ねじれたズボン。そして――。

「えええぇぇっ?!」

絶叫する雅の腰のあたりに、確かにそれは生えていた。
ふさふさとした艶やかな毛並み。
しば犬そっくりの茶色い尻尾は、くるんと丸まった。

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