まとめ:雅ちゃんがももちの胸を触るセクハラ

87名無し募集中。。。2019/07/28(日) 21:53:24.680

「…まあ、か。……ね」

ボソッと呟いた桃子の声はうまく聞き取れなかった。
ただ苦笑混じりなのだけはわかった。

「今なんて言ったの?」
「なんでもなーい。でもみやも相変わらずだねぇ」
「何が?」
「色々と?……特にその…」
「特に何?」
「えっ?」

口から出ていた自覚がなかったのか不意打ちを食らったかのような反応で。
それでもすぐ合点がいったというようにあぁと声を漏らした。

「…あんまり素直じゃないところ?」

そう言って静かに笑う桃子はまるで知らない人のようで言葉に詰まる。
きっと特にの後に続いたのは違う言葉。
でも、本当は?なんて昔みたいに言える程の確信はもう持てない。

「そういえばいつだっけ?嫌いじゃないってみやが言わなくなったのって」
「そんなの覚えてないし」

急になんでもない事のように聞いてくる桃子に反射的にそう返してしまって失笑してしまう。

本当に変わってない

自分でも把握できない何かがぐっと込み上げてくる。

ああ、まずい

抱えていたクッションで桃子から見えないように顔を隠す。
うまく表情が作れないなんて何年ぶりだろう。
おかしく思われないように早く早くと気が急くばかりで処理できない。
何か言わないとと開きかけた口は喉の奥に音がつっかえて何も出てこない。

88名無し募集中。。。2019/07/28(日) 21:54:40.410

「ほんとはみや覚えてるんでしょ」

少し低めの静かな声で問われる。
肯定も否定もできなくて落ち着かない沈黙。

「…素直じゃないって言ったからって、もおみやったら」

一転、嘘くさいほど明るい声で急にそう桃子は言い放つ。
よいしょなんてババくさい掛け声の後にギシッとベッドの軋む音がして僅かにベッドが動く。

「相変わらずツンデレなんだから」

ツンっと表現するには少し強い力で突かれた驚きに埋めていた顔を少しあげると立ち上がった桃子がしたり顔でこちらを見下ろしていた。
それに助かったと思いつつ見慣れたはずのその顔にどこか違和感を覚え、その正体のわからない違和感にまた黙り込んでしまいそうになる。

「みやどうしたの?…まだ眠い?それとも体調が悪い?」

声と共に伸びてきた手のほんの少し。
指先が触れた瞬間、思わずその手を払いのけていた。
明らかな過剰反応にしまったと半分あげた顔の先には戸惑いながらも心配そうに眉をひそめた桃子。
無理があるのは承知の上でなんでもなかったように昔の通りを装ってため息混じりに否定する。

「違うし、呆れてただけ。それとツンデレじゃないって」
「いやいやツンデレだよ。今も」

痛い痛いなんて全く痛くなさそうに言う桃子はニヤニヤしながら片手をベッドについて顔を覗き込むように近づけてくる。
その顔には変わらず心配の色が混じっていて、茶化しながらも顔色を確かめようとしているのがわかる。

「違うって。もうしつこい」

顔を見られたくなくて手に持っていたクッションを思わず桃子の顔に投げつけていた。

89名無し募集中。。。2019/07/28(日) 21:56:15.480

思った以上に力のこもってしまった一撃にぐらりと桃子の体勢が揺らぐ。
まずいと思ったのも束の間、倒れてきた桃子の頭がお腹にぶつかった。
なんとも表現し難い声をあげ腹部に顔を埋める桃子の手は肩と胸に。
桃子の手に、あたる息に年甲斐もなく戸惑い、頬が紅潮していくのがわかる。
ゴツっと鈍い音。
意識した途端に勢いよく動かしてしまった足が桃子の顎に思い切りぶつかった。
お互いあまりの痛みに声が出ずに固まる事、数秒。

「ごめん、大丈夫?」
「大丈夫じゃなーい」

ほらと見せてきた桃子の舌にはうっすらと血が滲んでいた。

「もー凶暴なところも相変わらずなんだから」

痛そうに口付近を抑えながらも何故か楽しげな桃子。

「顎も痛いし、怪我もしたので慰謝料を請求します」

真面目くさった顔でそう告げる桃子の表情は一瞬で崩れ今にも笑い出しそう。

「じゃあみやはセクハラで慰謝料もらおうかな」
「冤罪だぁ」
「しっかり胸触られましたけど」
「わかんなかったなぁ。そこも変わんないねぇ」
「はぁ?喧嘩売ってんの?」
「そんなヤン…あっ元か、に喧嘩なんてそんな」
「ほんとそれやめてほしいんだけど」

そのやりとりに同時に吹き出すように笑ってしまう。
桃子の笑う顔にはさっきまであった違和感が見受けられない。
よく知ったそれにホッとする。

「そういえばこのクッションも長持ちしてるよね。扱い雑な割に」
「雑じゃありませーんみやの扱いが雑なだけでーす」
「よく言うよ」

クッションを拾い上げ再度、桃子に向かって放り投げるとバフっと勢いよく即座に投げ返され面食らう。

90名無し募集中。。。2019/07/28(日) 21:57:51.630

「ほらももも雑じゃん」

また落ちたクッションを拾い上げていると今度は枕。

「もう、ちょっとなんなわけ」
「えっ?やられた分やり返そうかと思って」

当たり前の事のように言う桃子はいたずらな笑みを浮かべていた。
ボフっと握っていたクッションを当て返す。
先程までの妙なぎこちなさがあるのなくなったようでクッションと枕の応酬は微かな笑い声とともに何度も繰り返される。
お互いクッションと枕を手にどちらともなくベッドにもたれかかる。
少しだけ息が上がっていてやっぱり年かななんて思っていたら静かに声をかけられた。

「ねぇみや」
「ん?」
「八年前に言った事覚えてる?この部屋で二人で飲んだ日、みやが三十路になったらって話」
「何それ?全然知らないんだけど」
「そっか。それならいいや」

全く覚えがないその話は桃子の中では即座に終わったのかちょうど通知を知らせてきたスマホをいじりだす。

「良くないから、気になるじゃん。三十になったら何?」
「んー?」

返ってきたのは生返事。
この部屋で飲んだのなんて数回しかなくて、それも八年前は一回だけ。
それを最後に桃子の部屋で飲むこともなかったからよく覚えている。
あの時は桃子が貰ってきたお酒を飲みながら思い出話くらいしかした覚えがない。
どんなに考えても三十のキーワードで掘り起こされる記憶はなかった。
未だにスマホをいじり続ける桃子の手からそれを取り上げる。

「ねぇ三十になったら何?」
「なんだったろうねぇ、三十になったら何か約束したはずなんだけど思い出せないんだよね。だからみやは覚えてるかなと思って聞いてみただけだよ。だからそれ返して」

91名無し募集中。。。2019/07/28(日) 21:59:53.440

明らかに嘘。
スマホを盾に取りじとっと睨め付けること数分。
その間にも何度も鳴る通知音に観念したのかやれやれといった風に口を開いた。

「もらう約束をね、してたんだよ」
「何を?覚えてないっていうのは無しだから」
「ひ・み・つ」

戯けた口調でドヤ顔をする桃子。
軽く眉間にシワがよるのが自覚できた。

「で、何?」

図らずも厳しくなってしまった口調に観念したのか桃子は考え込むように目を瞑った。
その横顔はどこか寂しそうで。
暫しの沈黙の後、桃子はゆっくりと目を開けた。

「もう持ってないからもらえないものかな」

前を向いたまま呟くようにそう言う桃子に自然とため息がこぼれた。

「またそうやってごまかす」

横から小さく漏れた苦笑にそちらを向くと桃子と視線が絡んだ。
意外にもその目に嘘の色はないように見える。

「本当にもう無理なんだよ。それにあの時はすごく欲しかったんだけどね、今はもうわかんないや」

いつもの有耶無耶にする時とは明らかに違う声と顔に追及する気持ちが急速に萎んでいく。

「もも…」
「だからみやは覚えてないならそれでいいんだよ」

そう言い切る桃子に何も言えずに俯く。

「あぁでも残念賞って事でちょっとなら貰っていいのかな。ねぇ、みや?」

呼びかける声に顔を上げると息がかかるほどの至近距離に桃子の顔はあった。
それは簡単に詰めてしまえる近さで。
その距離に息を呑む。
普段の自分なら、息を吸うように自然にその唇に触れてしまっていただろう。
親愛のキスだと。
桃子じゃなければ、感情が抜け落ちたような表情じゃなければ。

92名無し募集中。。。2019/07/28(日) 22:05:01.470

「これ返してもらうね」

すっと手から抜き取られる感覚にはっとする。
得意そうな顔で取り返した事をアピールする姿に脱力する。
あの無表情が無ければまたからかわれただけと思うほどにそれは自然な姿。
この話はお終いとばかりにまたスマホのチェック。
何度かの通知音の後、着信音が響くと一言断り電話をしに桃子は部屋を出て行く。
廊下から聞こえるその声はかなり抑えられていて何を話しているかはわからない。
ただ相手が親しい関係である事だけは声の調子で伝わってくる。
数分で会話が途切れドアノブが捻られるもドアが開く前に少しの間が空く。
あれっとドアを見つめているとドアから半分だけ体を部屋に入れた状態で桃子は下を指して唐突に尋ねてくる。

「どうする?」

ドアが開いたせいか下からは親達の楽しげな話し声が聞こえてくる。

「参加する?」

参加した方がいいのはわかっていてもどうもそんな気分になれない。

「一旦家に帰ろうかな」
「今日はみやうちに泊まることになってるけど?」
「はっ?何で」
「母さん達が久しぶりだからその方がいいでしょって」
「今日は一人でゆっくりしたいから悪いけど…」
「ここ以外、寝るとこないよたぶん」
「は?」
「みやが寝てる間に愛理ん家の家族も来たから」

弟達の家族がみやの家に泊まって行くんだよと桃子は楽しげに告げる。

「じゃあ愛理も来てるの?」
「残念ながら愛理は仕事だって。来れるか確かめたら明日朝一で来るって。三人揃うのは久しぶりだから愛理すごいテンション上がってたよ」
「さっきの電話、愛理?」
「えっ?あぁうん…そう」

どこか引っかかりを感じさせる返事。
けれどそれを追及するよりも続いた桃子の言葉に意識は全部持っていかれた。

93名無し募集中。。。2019/07/28(日) 22:06:26.660

「三人揃うって事よりみやと会えるのが楽しみみたい。まあ私とはよく連絡してるから仕方ないんだろうけど」

拗ねたような口調で言う桃子に昔のように返す事が出来ない。
電話をしてもいつも忙しそうでやっと取り付けた約束も仕事でと直前に無くなるのが毎度の事。
帰省の時期もいつもすれ違って。
連絡を躊躇うようになり、気づけばここ数年は音信不通。
その桃子が愛理とは連絡を取り合っている。
確かに昔から妹のように愛理を可愛がっていたけれど。
仕方がないってただの幼馴染だから当たり前だって少しずつ諦めたはずなのに。
ごちゃごちゃに込み上げてくる感情が何か、知らないふりをするのが精一杯で。
こんなにもまだ桃子に心動かされるなんて、それがただただ苦しい。

「おーいみやーどうしたー?」

軽い調子のその声に微かに苛立ちも顔を見せる。
それをどうにか無理矢理飲み込んでなんでもないと愛理と会うのが楽しみだと返すべきなのに口から出てきたのは全然違うもの。

「…愛理とは連絡とってたんだ」
「うん、まあちょっと用があってね、最近のことなんだけど。で、みやどうする?」
「何が?」
「下、行く?」
「ももは?」
「みやが行くなら行こうかな。報告したいことも色々あるし」

まあ明日でもいいけどねと言う桃子の顔はどことなく諦観混じり。
良い報告とは思えないそれに他の感情より心配が上回って蓋をすることに成功する。

「何?良くないこと?」
「良くないってひどーい。良い報告だよ」

知りたい?と聞いてくる喜色混じりの声音はさっきの表情が見間違いだったのかと思わせる。

94名無し募集中。。。2019/07/28(日) 22:08:14.030

「なんと隣町でお店開く事にしました」
「えっすごいじゃん。表情が冴えないからてっきり悪い報告だと思ったじゃん」
「まあまだしなくちゃいけない事が山積みだからねぇ」

疲れが出たのかなぁなんて笑う桃子の表情はどこか空々しく、とてもそれだけとは思えない。
でも聞いたところで教えてはくれないのは明白で。

「ふーん。それで色々って他は?」
「もっと興味もってよ」

まぁいいけどなんてちっとも良さそうには思えない態度で呟く。

興味を持ったら全部教えてくれるの?

そう言いそうになるのをぐっと堪える。

「で、他は?」
「他も悪い報告じゃないよ。さっきのお店開くって言ったのに関係してる事とこっちに戻ってくるって事とまあ後一つあるけどそれはお楽しみね」
「そんなに良い報告なわけ?」
「ひみつー」

楽しそうに笑うその顔には先程感じた違和感がつきまとう。

「それ本当に良い報告なの?」
「なんでそんなに疑うかなぁ」
「だってなんかおかしい。いつも、そう…」

思い出した。
何かの転機の時いつもこの違和感を覚える笑みとはぐらかしはセットで、その度に少しずつ桃子との距離が変になる。
それがわかっているはずなのにいつも気付けた時には大体もう桃子は動いていてただの幼馴染の自分では何もできない。
だから今回もきっとそう。
6年前のあの時と同じようにまた。

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