まとめ:雅ちゃんがももちの胸を触るセクハラ

138 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/06/04(日) 16:57:04.48 0

ハウスキーパー雅ちゃん〈4〉

玄関のチャイムが鳴った。時計を見ると午前十時だった。
「明日クリーニングが来るよ」とモモが言っていたので、それだろう。雅は玄関に向かうとドア横のモニタを見た。健康そうに日に焼けた、細い女の子が満面の笑みで手を振っていた。
ドアを開けると、女の子は思ったより背が高かった。抜群のスタイル。ストライプの半袖のシャツにショートパンツを穿いている。視線を下にやると、腰のあたりまでの高さの、短い脚のロボットがいた。

雅を見て、女の子は目を丸くした。
「あれっ。まーさは?」見た目通りの幼い声音だった。
「須藤さんは一ヶ月いなくて」
「あ、そーだそうだった。わたし千奈美。よろしくね」
差し出された手を握る「夏焼です」
「下の名前は?」
「みやび」
「何て呼んで欲しい?」
「えっ?えーっと」考えながら、ニコニコと笑っている千奈美の顔を見た。
「みや、で」
「りょーかいっ」
千奈美は大股で家の中に入ってきた。後ろからロボットが着いてくる。
「こっちのことは好きなように呼んでいいよ。千奈美でも徳さんでもちなちなでも」
とくさん、がどこから出てきたのかわからなかったが、千奈美と呼ぶことにした。
「これ、差し入れ」と千奈美が差し出した紙袋を受け取ると、ずっしりと重く、顔を近づけるとりんごの香りが強く立ち上ってきた。
「みやが食べてね」
新鮮な果物はこの上ない差し入れだった。

玄関ホールの中央、千奈美はロボットの前にしゃがみ込んで、何やら端末を弄っている。ショートパンツから伸びる長い脚に目がいった。
「よくこの家でももなんかと暮らせんね」と端末に目を落としたままで千奈美は言った。
「えっ」
「アイツほんとムカつくんだよね」
それって、どういう意味。尋ねようと雅が口を開いた時、階段の上から声が響いた。
「ちーーなーーーーみーーー」
吃驚して声の方に目をやると、モモが階段をバタバタと駆け下りてくるところだった。

139 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/06/04(日) 17:01:42.21 0

モモは立っている雅に何故か得意げな顔を向けてから、千奈美のすぐ横に屈んだ。
「ねぇ千奈美」
「仕事中だから話しかけないで」
「みーやんとは喋ってたじゃん」
「あーもうほんとうるさいなぁ。なに」
「きて」
モモは千奈美の片腕を取ると引っ張って無理矢理立たせた。千奈美がその手を乱暴に振り払うのを見て、雅はハラハラとした。
「仕事中って言ってんじゃん」
「いいから」
モモは千奈美の背後に回ると背中をぐいぐいと押して、階段の方へ向かっていく。雅は口を挟むこともできず、ただその様子を見ていた。
ふたりが階段の上へ消えてしまうと、玄関ホールには雅と、ロボットが残された。
「いつもあんなんだからキにしなくていいですよ」
急にロボットが流暢に喋り出して、雅はリアルに飛び上がった。「さぁて」とロボットは言い、モーター音をさせながら移動すると、玄関ホールの窓拭きを始めた。

なるほど、高いところの窓をそうやって掃除するんだ。ロボットが高く伸ばしたアームは吹き抜けの天井まで届き、窓が端から素早く拭き上げられていく様は、見ていて飽きなかった。
「ふたり何してるんだろう」雅が誰にともなく呟くと、アームを動かしながらロボットがまた喋った。
「ナニじゃないですかね」
「えっ」
それきりロボットは喋らなかった。

キッチンで千奈美からもらったりんごを一つ取り出し、皮を剥く。本当に香りが強かった。ふたつに切ると密がたっぷりで、雅はさくに切った一欠片をつまんで口に入れてみた。
甘い果汁が口の中に広がった。「おいしい!」
一個の残りを全部切って皿に並べた。ふたりは今食べるだろうか。聞いてから切れば良かったかな。
呼びに行こうか迷っていると、パタパタと足音が近づいてきた。
「あ、ここにいた!」千奈美がキッチンの入り口から顔を覗かせた。
「みやちょっと来て手伝って。あ、リンゴ食べた?おいしいでしょ」
「そう、今ひとかけだけ食べてた。すっごくおいしい。ありがと。……と、何すればいいの」
「一緒に外の草むしり。奴に時間取られた」
何をしていたのか、とても気になった。
「これリンゴ切ったの、ももに持ってってあげた方がいいかな」
「いいよやんなくて。そこに置いといたら勝手に食べるよ。行こう」
千奈美は駆け出すように外へ向かう。皿はそのままに、慌てて追いかけた。

140 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/06/04(日) 17:05:18.26 0

「はいチェック長靴OK、アームカバーOK、手袋OK……みやエプロン似合ってんね」
建物の裏手に回ると、千奈美は雅の全身を見て、無邪気に笑った。
「このハーブ取っちゃうってこと?全部?」
「だって勝手に生えてんだもん。放っておいたら大変なことになっちゃうよ」
そこには青々としたハーブが広く自生していた。

「あのロボットも草むしりはできないんだ」千奈美と一緒にしゃがみ込み、根こそぎ摘んだハーブをビニールに突っ込みながら雅は言った。
「ちっがうの!」千奈美の声が裏返った。「聞いてよ」
千奈美はブチブチと辺りを手当たり次第に毟りながら言った。
「奴が壊したんだよ、草刈りマシン」
「もも?」「そう!」
千奈美は憤懣やるかたないといった面持ちで、手にしているビニール袋を振り回した。
「あの、でもきっとわざとじゃないだろうし壊れちゃったなら」「わざとだよ!絶対わざと壊したの」
勢いに気圧されて雅は黙り込んだ。
「もう、ほんとやだ」千奈美はぶつぶつ言いながら「これで三回目だからね」と雅に言った。
「な……なんで」
「草だって生きてんだから生やしとけって」千奈美はポツリと言った。

「納得いかないよね」と千奈美は雅に同意を求めた。
「だってさ、自分の今の生活だってどんだけ自然の犠牲を払ってると思ってるわけ?」
「まあ、確かに」
「ここだって放っておいたら草ボーボーになっちゃって、裏手にも抜けられなくなるってのにさ」
「……裏手に抜けると何があるの」
「下に降りる道だよ。歩いて降りれる最短の道」
「そんなのあるの?」
「そのまま桟橋まで降りれる裏道だよ。教えといてあげようか」
悪戯っ子のような顔をして千奈美は言った。
「みやがいつでも逃げ出せるようにね」

「いや、あの、そういうつもりはないけど。逃げるなら車道からだって逃げれるわけだし」
「車道はセキュリティかかってるよ」
「え」
「聞いてないんだ。誰でも簡単に車で上がって来られたら困るからね。まあ、一ヶ月のバイトじゃそこまでは知らされないか」
「ねえ、千奈美、教えて」
「何?」
「機密って、なに」
さすがに千奈美も一瞬黙って真顔になる。下を向き、ため息混じりに「はぁ、どうしよっかな」そう言ってから、顔を上げた。
「……いいよ、教えてあげる。草むしり手伝ってもらったからね」

〈5〉へ続く

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