まとめ:雅ちゃんがももちの胸を触るセクハラ

700 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/06/28(水) 22:31:59.78 0

ハウスキーパー雅ちゃん〈最終回〉

最後の朝。
朝食の皿を並べ終わったダイニングで、須藤から「今日までお疲れ様でした」と言われて雅は瞬きした。モモはお醤油に手を伸ばしていた。
「こんなめんどくさいとこに連れて来られて大変だったよね」そう須藤が言うと
「みーやんは面倒がらずずっと真面目にやってくれてたよ」と横からモモが言い、思わず雅の胸はちょっとジンとした。

モモはずっとご機嫌で、良く喋り、穏やかな笑みを振りまいていた。ならば最後までそれを壊さずにいようと雅は思った。モモにかける特別な言葉も思いつかなかった。
食器を下げてくれたモモにさりげなく声をかけた。「頑張ってね」それだけ。すぐに「うん」と返ってきた。
モモのはにかんだ振りで伏せられた視線は、合わなかったように思う。

支度など何も要らなかった。

クリーニングされた衣服を須藤から渡された。この島に来たときに来ていた服。
ここに居る間、自分のために用意されていた服はどうするのだろうと雅は思い、なにげなく聞いてみると、須藤は少し言い淀んでから
「ももが、仕舞っておくって、そう言ってたよ」と答えた。なんとなく恥ずかしくなって、雅は少し顔を赤くした。
着替えて戻ると、テーブルの上に雅の持ってきていたバッグ、その隣にお財布とスマホが置かれていた。
電源の切れているスマホを手にとり、しげしげと眺める。
リアルだ。そう思った。たった一ヶ月間、切り離されていただけで、今こんなにもリアルが遠い。お財布を開けてみると、コンビニのレシートが入っていた。それだけで雅はめまいがした。
振り返ると、モモがこちらを見ていた。

その、力強い目の色に、安堵した。
あの日聞かされた、途方もない話だって、きっとこの子ならなんとかできる。それを今、心から信じてあげられる。
雅が微笑むと、モモは近づいてきて、雅の目の前に手を出してきた。指を絡ませて握る。
本当、言葉なんて要らなかったんだ。

桟橋は穏やかな風が吹き抜けていた。ボートに乗り込む直前、雅は振り返った。
ほんの少しだけ滲んだ視界、深い緑の森と、その下、桟橋のたもとに並んで立つ二人の姿が見えた。手は振らない。そう決めていた。雅は顔を戻すと、そのままボートに乗り込んだ。

703 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/06/28(水) 22:35:59.11 0

遠ざかって行くボートをずっと目で追いながら、須藤は隣に立つモモに言った。
「あの子で、良かったね」
「そう思う?」
「こんなにあっさり帰すとは思わなかったよ」
「なにそれ。帰してやれって言ったのはまあさじゃん」
「そうだけどさ、こうして見送ってると寂しくなるね」

遠ざかって行くボートの影が点になって、消えていく。微動だにせず、水平線を見ていたモモが、口を開いた。
「ねえまあさ、いっこ思いついたことがあるんだけど、今聞いてくれる?」

「セキュリティを解除して〈対象〉に私を発見させるっていうのは、どうかな」
「それは……」
「びっくりするだろうね。明らかに地球上のものではない信号を、発見するんだよ。
きっと、ダイレクトに、私自身に干渉してくる、その瞬間に〈対象〉が持っている地球のデータを全部、抹消してあげるの」
モモの言葉に須藤は息を呑んだ。
「そんなことが、できるの」
「記憶を消す。……あれあれ?それって〈魔法使い〉の一番の得意分野じゃーん。って」モモは両手を前に出し、小指を立てた。
「ずーっと準備しかしてなかったけど、初めて魔法らしいものを行使しようと思う」
モモは得意げに笑った。

「……待ってよ、直接干渉させるって。ももは無事でいられるの」
「まあさが言ってたみたいに、ぶっ潰すわけじゃないから期待はずれかもしれないけど、まあ、いいよね」
「どうなると、見積もってるの」
「CPUが焼ききれちゃうみたいになるんじゃないの。わかんないけど」
「もも」
「筐体は無事だよ。そう見積もってる。なんたって欠片込みのマルチコアなんだから、どれか生き残ってる可能性もある」
「……最悪を想定しないわけにはいかないね」
「そしたら、ピンクのベッドの上で、眠り続けるの。ロマンティックだなぁ」
モモは須藤の顔を見上げるように覗き込み、腕を取った。
「言ったら眠れる森の美女?なんていうか、私にぴったりっていうか?……ねえ、やる価値はあるよまあさ」モモの顔から笑みが消える。
「それで全てが収束する、か……」
「やる価値はある」
「サーバの、森」言いかけて須藤は俯いた。「だけど、だけどさ……起こしてくれる王子様がいないじゃない」
須藤の肩に、モモは体を寄せた。
「やだなぁ、泣かないでよ」
「そんなことにはしたくない」
「まあさはずーっとこの島から離れられなくなっちゃうね」
須藤はモモの背中に手を置いた。
「……いいよ。ずっと居てあげる。あたしだって、帰る場所はないんだからさ」

704 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/06/28(水) 22:40:09.27 0

雅は窓に貼り付いて、遠ざかっていく島をずっと見ていた。まだ、まだ海の上にいる間は、もものことを考えていたい。雅は鳩尾に広がる鈍い痛みに手をやった。
これは、モモから貰ったものだ。

最後の、優しい夜。
入ってきたモモの指が、力任せにぐっと押し込まれ、雅の一番奥を捉えた瞬間「お願い」とモモは言った。聞き返す間もなく、体重をかけられ動けなくなる。鈍い痛みがズキンとお腹の中に広がって雅は呻いた。
「我慢して」雅の耳を噛むようにモモは言った。
増すばかりの痛みに雅は気が遠くなりかけながら、耳に滑り込んできたモモの声を聞く。
モモは確かにそう言った。

「みーやんに、魔法使いの欠片を分けてあげる」

お腹に手のひらを押し当てたまま、雅は思い返す。あれは一体どういう意味だったのか。
もし、魔法を使えるようになるなら、ももを自由にして、呼び寄せるとか。アリかな。そこまで考えて雅は一人クスと笑った。そういうことじゃないよね。
ももは、私を忘れないで。って、そう言ってくれたんだよね。
雅の視界から、遂に島が消えた。ただの水平線になっても、雅は目を離すことができなかった。

「一つ頼みたいことがあるの」
モモは須藤の顔を見てから、置いてある車の方へ踵を返した。須藤は海の方を再度見送ってから、モモに着いて歩き出す。
「頼みって、何」
「考えたんだけど、もし私なら、もし大勢に反逆して地球にヒントを与えるなら、たった一人の女の子だけに託してあと放置、なんてことにはしないと思うんだよね。もうちょい保険欲しくない?」
「他にも何か痕跡があるかもしれないってこと?」
車の助手席に乗り込むと、モモは言った。
「そう……もし、私が起きなかったら、他にもいるかもしれない〈魔法使い〉を探して欲しい」
「今のところ、そんなものは見つかっていないけど」
「そうかもしれないけど、もう一度、探してみて欲しい」
「いいけど」
「その、二人目の魔法使いからの干渉で、私が目覚めるってストーリーはどう?」
「……悪くない想像だね。わかった。その時は探してみるよ」
須藤の言葉を聞いて、モモは口角を微かに上げた。
うまくいく確証なんてないけど。最後の最後まで、私は何も諦めたりしない。

706 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/06/28(水) 22:44:18.29 0


〜Epilogue〜

どれくらい振りだろう。ついこの間のような気もするし、随分前のような気もする。

雅は桟橋に降り立つと、目の前の山を見上げた。森の入り口に須藤が立っているのを見つけて、サングラスをはずす。須藤は雅の方に歩いてくると、前と変わらぬ笑顔で雅に手を振った。
「もともとオシャレだったけど、さらに垢抜けて華やかになっててびっくりするよ」
「一回、戻ったら、やっぱりもう都会から離れられないなって思っちゃう」
「セレクトショップやってるんだってね。商才もあるなんて素晴らしいことだよ。よく、こんな辺境のバイトなんかに来てくれたなって思う」
「ううん、ここに来てなかったら、今の私じゃないし」
そう言って、雅は立ち止まった。二人、顔を見合わせると、どちらからともなく笑い合う。
「そう。やっと気づいたよ。ももは、あなたに全てを教えていたんだね」

建物の外観は雅の記憶のまま、何も変わっていないように見えた。須藤は玄関からは入らず、そのまま建物の裏手に回ると、張り出している一角の扉を開けた。階段を降りると、エレベーターがあった。
「あー、コレだ」と雅は口にしていた。
「車で山の上まで上がっといて、エレベーターで降りるというね」
「これ乗りたかったぁ」
「それは良かった」

須藤が扉を開けると、雅は中に目を凝らした。「真っ暗……」一歩入るとその場を見上げ、思わず呟いていた。
あの時無数のライトを点滅させていた機械は、今全て動きを止めていた。しんとして果ての見えない空間が上に向かって抜けている。
「もうサーバの電源入れとく必要ないからね」須藤はそう言い、踏み出すと辺りをフットライトが柔らかく照らした。
前方にぼんやりと浮かび上がって見える、ベッドに向かって須藤は声をかける。

「もも、王子様を探して来たよ」

駆け出した雅を、須藤は見送る。
気取ってる場合かよ。雅は心の中で独り言ち、ベッドの横に立った。
もも。
その姿を確認すると、雅はため息を漏らした。枕元に跪いて、手を伸ばす。

ねえ、初めての魔法、もものために使ってあげる。ももの望む通りに。

息を詰め、指を伸ばす。
このことは一生、恩に着せるつもり。
雅は眠っているモモの頬に手を置いて
ゆっくり、顔を近づけた。

ハウスキーパー雅ちゃん
〈終わり〉

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