まとめ:雅ちゃんがももちの胸を触るセクハラ

391名無し募集中。。。2018/01/04(木) 17:14:00.910

雅は自室に入ると、交換ノートを勉強机に広げて、桃子と出会った日を思い返していた。

今から約1年前。雅が高校に入学した日。

サイドを編み込みにした背の低い女の子が靴箱の陰からひょこっと顔を出していた。
「おーい、そこの1年生」
「お、おはようございますっ!…1年生、ではない…ですよね?」
「うん。一応今日から2年生」
その人はくるっと回って決めポーズをした。
「…あの何か用ですか」
「リボン忘れて来ちゃったの?」
指を差された胸元を見てみると、朝確かに用意したはずのリボンが・・・付いてない。
「うそっ……」
雅は愕然とした。今日初登校日なのに・・・!
リボン付けようとした時にママにゴミ出し頼まれて、そのまま忘れちゃったんだ。

「やっぱり忘れちゃったのかー。ドジだねぇ。仕方ないなぁ、ももの貸したげる」
「えっ…いや、いいです。このまま出るんで…」
「ダメダメ!新1年生が入学式で制服のリボンしてないなんて絶対ダメ!それに、1年生は式のあとクラスの集合写真と学生証用の証明写真撮るんだよ?ないと目立つでしょ?」
「あー…」
ほら、とリボンを渡してきた2年生の先輩は、初対面なのにぐいぐい詰め寄ってくる。何なんだろうこの人。優しいけど。

「リボンは帰るときにももの靴箱に入れておいてくれればいーよ」
「えっと…名前とか、クラスとか」
「そっか。んと、2年1組の嗣永桃子」
「ツグナガ…先輩」
漢字がぱっと思い浮かばなかった。
「ももって呼んでね。それで、あなたは?」
「1年1組の、夏焼雅です」
「じゃあ『みや』って呼ぶね。1組なら学祭の時の縦割り同じ!」
タテワリって何だろう、と思っていると後ろから千奈美の声がした。
「おっはよー。入学式に寝坊しなくてよかったぁー!……だれ?」
「あ……2年の先輩」
「どーもぉ。…じゃあ、もも行くね。入学式がんばって!」
パタパタと音を立てながら桃子は階段を駆け上がっていった。

「みや、今の人中学の先輩じゃないよね?見たことないし」
「うん。今日初めて会った」
「そんな風には見えなかっけど?」
「なんか、会った時からあんなだったんだよね」
「へー」
「今日みや制服のリボン忘れたんだけど」
「してるじゃん」
「これさっきの先輩が貸してくれた」
「ええっ!!!」
千奈美の声が玄関で響いて、近くにいた人が一斉にこっちを見る。恥ずかしくなって千奈美の手を引いて早足で教室に向かった。

393名無し募集中。。。2018/01/04(木) 17:17:22.700

入学式の間も、初めてのホームルームの間も、雅が考えていたのは桃子のことだった。
ももという人は一体いつから見てたんだろう。初日早々リボンを忘れたマヌケな新入生を哀れに思ったのだろうか。
ママに話したら「まったくあんたは」と呆れられるのは間違いない。こんな大事な日にやらかすなんて・・・ついてない。

教科書の配布や明日からのスケジュールを伝えられその日は午前中で学校が終わったが、同じクラスになった子達とメアドの交換をしているうちにお昼を過ぎてしまっていた。
リボン返さなきゃ。
みんなで一緒に帰ろうよと千奈美に誘われたが、用事があると言って雅は教室に残った。
そういえば、ホームルームの時に上級生は入学式の片付けがあると担任が言っていた。2年生はどうなんだろう。

玄関に降りてみると、もうひと気はなく部活の準備をしている上級生をちらほら見かける程度だった。
2年1組の靴箱から桃子の扉を探したが、なかなか見つからない。
ツグナガ、だよね。と自分の記憶に尋ねたところで、雅ははっとした。
ツグナガってどういう字書くのかわかんないじゃん。聞いておけばよかった。
ツグは置いといて・・・、ナガは長?
この学校の靴箱は男女で分かれてるみたいだから・・・女子のタ行だと・・・
『嗣永』
これ?嗣って読めないけど多分ツグでしょ、永をナガって読むのは知ってる。
とりあえず『嗣永』と書かれた靴箱の中にリボンを入れることにした。
靴箱の中にはブラウンのローファーが入っていた。ももって人まだ学校にいるのかな。

ふと奥の階段に目をやると桃子の姿を見つけた。
すっごい偶然。
桃子は雅を見つけると階段をドタドタと降りてきた。
「あれっ?みや?」
「あの、今朝はありがとうございました」
「もしかして待ってた?」
「いやっ、靴箱探してて…」
目の前にいる人の靴箱を勝手に開けるのもなんか違う気がして、「リボン入れました」と伝えた。
「ありがとー。あ、あとタメ口でいいよ?」
「え、でも…」
「いーの。1歳しか違わないのに敬語使われると、ももが先輩ぶってるみたいで嫌なの。みやって誕生日いつ?」
「8月25日ですけど…」
「もも3月6日だから半年くらいしか違わないよ。4月生まれと9月生まれならタメ口なのに、3月と8月だと敬語になるって、ももはおかしいと思う」
「そう、かな」
「そーだよ」
桃子は靴箱から取り出したリボンを付け、ローファーを履いた。
「じゃ、ここでバイバイかな」
「あ……ももは、今日一日リボンなくて大丈夫だったんですか、…大丈夫だったの?」
「そんなこと みやが気にしなくても良いよ。あ、もも33分のバスに乗らなきゃいけないんだ。もう行かなきゃ!また明日!」

桃子は重たそうなスクールバッグをリュックのように背負って走り去って行った。

394名無し募集中。。。2018/01/04(木) 17:19:00.370

雅は呆気にとられていた。
先輩にリボンを借りただけ。なのになぜか心がドキドキしている。

桃子は雅よりも身長は小さく、声も見た目も高校生より下に見えた。制服を着ていなければ間違いなく中学生に見えるだろう。

けれど桃子が身につけていたものは 雅が想像していた女子高生そのもので、眩しかった。

OLIVE des OLIVEのカーディガン。
第1ボタンを外した角襟のシャツ。
EAST BOYのスクールバッグ。
紺のハイソックス。
ローファー。

つい最近まで憧れていた世界を身に纏った人がすぐ目の前にいて、雅は心を強く惹かれた。自分も今日からは同じような格好をしているのにそれとは随分と違う気がする。
これが1年生と先輩の差かぁ。
おばあちゃんが「まだ制服に着られてるね」と言っていたその意味を今ようやく理解した。

新しい春のにおいのせいか、帰りの電車の中でも雅の心臓はまだ高鳴っていた。
また明日、という桃子の言葉がなんだかくすぐったい。今日たまたま会っただけの関係ではない、と言ってくれているように聞こえて嬉しかった。

友達もできたし、先輩の知り合いもできた。明日からはちゃんとリボン付けて登校しなきゃ。
次はもものメアドとケー番を聞きたい。

あの日の雅は始まったばかりの高校生活への期待で胸がいっぱいになっていた。

395名無し募集中。。。2018/01/04(木) 17:21:15.610

思い返せば、桃子との思い出なんてそれほどないような気がしてくる。

学校では誰もいないのを見計らって屋上とか空き教室でたまに話し込んだりする程度で、基本的にはメールか電話。
二人で遊びに行ったのは一度きりで、去年のクリスマスにプリクラを撮ったあとクレープを食べただけだった。

そう、二人はまだ出会ってから1年とちょっとしか経ってない。小学校から一緒の千奈美と比べたら、桃子と過ごした時間なんてほんの僅かだ。
だけど、リボンを貸し借りしただけの関係ではなくなっているという自負はあった。だから もうすでに開いてる扉のその更に向こう側に行きたい。

雅はピンク色のペンを手に取った。


Dear MOMO

突然交換ノートしようなんて言ってごめん。
でも、みやの前では無理した顔で笑わないでほしいって思ったの。
みやじゃ頼りにならないかもしれないけど、一人じゃ大変な時は頼ってほしい。
今日ね、昼休みにもも見つけて嬉しくなったの。
でもあんなの見たらさ、だまってるなんてみやにはムリだった。
話したくないなら話さなくていいけど、一人で抱え込んでるなら、言ってね。これに何でも書いてほしい。
あ!もちろんみやも書くよん♪

じゃあ次は、ももの番ね★

From MIYA

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