まとめ:雅ちゃんがももちの胸を触るセクハラ

266名無し募集中。。。2018/12/14(金) 02:13:26.55

みやはテレビを見ていた。毎週楽しみにしているお料理バラエティである。
アシスタントのゆるキャラが最近ツボにはまりすぎ
週で一番のストレス解消タイムにもなっている。
今日もみやは手を叩いて笑っていた。
「ちょっと今の動き!見た?」

ソファの上、ももはみやの腰に両腕でしがみつき、膝に頭を乗せていた。
「なに?」
「今!お鍋にキャベツ入れた時に一緒に跳んだの!」
「ああ、見た見た」
「可愛いー!マジたまらん」
ももが腰をくすぐってきて、みやは体を捻った。
「ちょっと」
腰に回っているももの手を強引に除けると、今度は背中からニットをぎゅーっと引っ張られる。
「ちょっと引っ張んないで。今テレビ見てるの」
「テレビなんていいじゃん」
「え、へー、ここでお醤油入れるんだ。そんなに入れるんだ」
「みやー」
「あっはは!後ろでバタバタしてヤバイめっちゃかわいい」
下から伸びてきたももの手が、みやの顎をがっしと掴んでぐにゃぐにゃ揺らした。
「ちょっ……」
両手で手首を掴んで引き剥がそうとしていると、テレビからドッと笑い声が聞こえ
みやは慌てて顔を上げたが遅かった。
「えっ、今なにあった?」
「知らない」
「見逃したー!もー、ほんとやめて」
「みやこっち見てよ」
「やだ」
「なんで」
「今テレビ見てるから……おっぱい触んないで」
視線をテレビに向けたまま、みやはももの両手を片付ける。
「別にいいじゃん減るもんじゃなし」
「むしろ増やして欲しい」
ももは黙った。そこで黙るのか。

まあいい。
ようやくおとなしくなったのを幸い、みやは膝の上にあるももの頭に両腕を乗せ
テレビ視聴を続行することにした。

267名無し募集中。。。2018/12/14(金) 02:15:53.720

旅行から帰って以来、もものひっつきがひどい。
もともとくっついてくる方ではあったが、度を越している。
料理番組が終わると、みやはももの体を起こして隣に座らせた。

「テレビの邪魔しないで。ついでに言うと家事の邪魔もしないで」
「もものこと嫌いになったの?」
「違います」
「みやに触ってると安心するだけなのに」
幼児退行でも始まっているんじゃないだろうか。みやは心配になった。

「ねえ、わかる?毎日毎日ひっついて来られたら何もできなくなっちゃう」
「新婚旅行から帰ってきたばっかじゃん」
斜め上の返事な上に、ももの顔が真剣そのもので、みやは困惑した。
「あれ、あれ別に……新婚旅行っていうわけじゃ」
「だって、教会で式挙げて」
「挙げてないよね」
「教会で生涯を誓ったよね」
「教会……の前ではあったけど」
「そういう細かいことはいい。教会で愛を誓い合ってそのまま新婚旅行に行ってさ。
今、みやとももは蜜月なんだよ?テレビなんてどーだって」
「テレビが見れないのは困る。そんな蜜月は嫌だ」

よし、言えた。あぶねー。危うく何かに惑わされそうだった。
今、みやが何に困ってるのか、そこブレないようにしないと。
ももは唇を尖らせた。
「わかったよ。じゃあ……我慢、する」
「なんなのその顔マジで。このまま、みやが死ぬまでくっついてるつもり?あり得なくない?」
ももは少し考えるような顔をした。おい何考えてる。違うよ?
「おかしいじゃん」
両肩を掴んで顔を覗き込むと、ももは目を細め、視線を横に流した。
「だって、他にすることもないし」

そんな言い方アリなのか。いや、ナシだ。
みやは頰をヒクつかせながら言った。
「ああ、そう。……退屈なら、働きにでも出れば」
「え?」
みやは両手を合わせた。
「あ、いいんじゃない?社会勉強。人が何されると邪魔なのかとか学べるかもしれないし」

268名無し募集中。。。2018/12/14(金) 02:18:07.420

「だったら、ケーキ屋さんがいい!」
「ちょっと待って」
急に前のめりになったももから体を引き、みやはこめかみに手をやった。
「そっか。正規ルートで雇ってもらうとか無理か。無理だよね」
「ケーキ屋さんなら働いてもいい」
「だからちょっと待てって言ってんだろ」
「働けってみやが言ってんじゃん!」
片手でももの口を塞ぐと、みやはそのまま、うーん、と考え込む。

外には出せるようになった。
この間の旅行の感じからすれば、人とも普通にコミュニケーション取れるみたいだし
もしかして本当に何かうまいこと、人の役に立つような、させられることがあるの、かも?
そんなに、そんなに退屈だと言うんなら。

口から手をはずしてやると、ももはその手を握って揉み始めた。
「前は、別にみや放って一人でなんか勝手に部屋にこもったり本読んだり寝てたりしてたよね」
「そういやそうだね」
「なんでこんなことになっちゃったの?」
「わからん」
埒があかない。
ももの気を紛らわせる何かが必要だ。
すぐには思いつかないけど、ももが外に仕事に出たりできるなら
多分、それはいいことだし。人に悪さしたりしないって、今信じられるし。
すごくない?信じられる。
みやはちょっと感動した。

「ちょっと、みやの方で考えます」
「ほう」
「ケーキ屋さんじゃないかもしれないけど」
「ねぇ、みやはそんなに、ももを追い出したいの?」
手にキュッと爪を立てられる。
「違います」
それだけ言って、みやはももに片手を預けたままテレビに視線を戻したが
ニュース番組になっていてがっくりした。
好きなテレビを見たい。たったそれだけのことなのに。

269名無し募集中。。。2018/12/14(金) 02:20:49.480

翌日、ももを言い含め、留守番させることにして、みやは買い物に出た。
昨夜はあれからもずーっとべったりだった。
怖い。体がもたない。
それに、急激に甘え度の増した反動が、いつかドーンと来るんじゃないかと思うとそれも怖い。
『ごめんみや。飽きちゃった』と言って、出て行くももの姿を想像する。
いやいや、そんな挨拶あったらマシな方、何も言わずにぷいと出ていくことだって。
みやは両手を口に当て、胃がひっくり返りそうなほどの動揺に耐えた。
本当にお仕事でもしてもらって、この蜜月は散らかしたい。
だって、人生はまだまだ長いのだから。

商店街に向かう視線の先に、見たことのないお店の可愛いフラッグが立っていた。
アイスのイラスト。いつオープンしたんだろう。
近づくと、横にあるメニューの立て看板には、色とりどりの美味しそうなアイスが描かれている。
小さいお店だ。ガラス扉ごしに中を覗くと
狭い店幅いっぱいにアイスのショーケースと、店員さん2人の後ろ姿が見えた。
お客さんはいないようだ。
みやは興味を惹かれて、ガラス扉の金色の取っ手に手をかけた。

「「いらっしゃいませー!」」
同時に振り向いた店員2人の笑顔。みやは棒立ちになった。
「まいちゃん……やなみん……」
ストライプ柄の可愛い制服に身を包んだ、悪魔2匹が、そこに立っている。
「あんたたち、こんなとこで何やってんの」
「先日は、大変失礼いたしました」
みやの言葉を無視して、やなみんが頭を下げる。
「すごい、こんなとこでまた会えるなんて!アイス買いに来たんですか?」
まいがいそいそとメニューボードを差し出してくる。
「まいのおすすめはコレです!」

「いやそんなことはいいから。ここって悪魔のお店ってこと?」
そう言うと、2匹はぷるぷると首を振った。
「どうしてもアイス屋さんで働いてみたくて」とまいは言った。
「何も悪いことはしてないですよ!」とやなみんが畳み掛ける。
「っていうか、どうやって」
どうやって潜り込んだ、と言いかけて、みやは黙った。
いやこれは、これはあれだ。このお店のオーナーを悪魔の囁きでたぶらかしたに違いない。
そう思いながら見ると、まいは小首を傾げ、にっこりと笑った。
いつの間に、こんな大人びた微笑みを浮かべるようになって。……黒い。微笑みが黒い。

「このお店は、これからみやが定期的に監視するから」
そう言うと「「えーーー」」という2匹の声を無視してみやは店を出た。

270名無し募集中。。。2018/12/14(金) 02:23:13.620

悪魔どもめ。ストライプの制服にサンバイザーが可愛かった。
あんなのももにも似合いそう。
いけない。仕事させるからといって、間違ってもこんな方法をももに取らせるわけにはいかない。
やっぱり、こっちの都合だけで、他人様を巻き込むわけにはいかないよね。
せめてももが悪魔だってことがわかってる人とか。
……あの人とか?
みやは立ち止まり、ポケットからスマホを取り出すと、連絡先を見た。
確かあの人は何かお店をやってるって、聞いたことがあった気がする。

「みやびちゃん?やだ久しぶりー。元気だった?」
「ええまあおかげさまで。しげさんの方はどうですか?」
さゆみが黙ったので、慌ててみやは「さゆちゃん」と口にした。

「……で、どうしたの?電話してくるなんて何かあった?」
「何かっていうほどのことでもないんですけど」と言うと
がっかりしたようなため息が聞こえてくる。
さゆみは、ちょうど自分の店に行くところだからそこで落ち合わないか、と言ってきた。
渡りに船。それほど遠くないようで、都合もいい。
みやは住所を聞くと、さゆみの店に向かうことにした。

「いいんじゃない?ピンクのメイド服着て、うさちゃんオムライスを作ったりするだけの簡単なお仕事だし」
とさゆみは言った。

「接客も桃子ちゃんなら安心。腐っても夢魔だし
お客さん誘ってその気にさせて喜ばせるなんてお手の物だもんね」
「ま、まあ。……そうかも。そうかな?」
相変わらずちょっと引っかかる言い方をする人だけど、それは置いといて。
さゆみがオーナーの店ならこっちも安心と言えば安心。接客。接客どうなのかな。
ピンクのメイド服は、似合いそうだけど。
「体験入店とかから始めたいんですけど」とみやが言うと、さゆみは大きく頷いた。
「でも初心者でも大丈夫だから。うちは支配人がしっかりしてるの」

さゆみがそう言った途端、奥のドアがバンっと開いて
奥からメイド服の女の子が泣きながら飛び出して来た。
みやがビビっている間にメイドちゃんはそのまま走って事務所を出ていき
後から、黒ベストに黒ズボン、白シャツの女の子がのそっと現れた。さゆみが声を上げる。
「ちょっと愛佳。あんまり厳しくするのやめてって、さゆみいつも言ってると思うんだけど」
「仕方ないですやん。仕事できひん子にはキツく言うしかないんです」
「あの子可愛かったのに〜。また辞められちゃう」
「ええんです。働かざるもの食うべからずですわ」
「可愛いだけで働いてるのと同じだもん」
「オーナー。人連れて来はるのは構わないんですけど、うちの仕事ばっかり増やすのやめてください」

愛佳がチラっとみやの方を見てきて、みやは視線を逸らした。
このいろんな意味で厳しそうな職場に、ももを放り込むのはちょっと
いや絶対無理かも。

272名無し募集中。。。2018/12/14(金) 02:25:49.190

さゆみの店を出て、みやはドッと疲れを感じた。焦りすぎたかもしれない。
やっぱり悪魔にさせられる仕事なんて、そう簡単には探せないんだろうか。
とろとろ歩いているとLINEの通知に気づき、みやはスマホに目をやった。珍しい人からだ。
ーー聖油入れの古いの譲れるけどどうする?
それは欲しい!みやはすぐに返事を入れた。

れいなのマンションは電車で数駅だ。
部屋の中央に通され椅子に座ると、みやはちょっと相談してみることにした。
「仕事?桃子に?」
「なんか、難しいかもとは思い始めてるんですけど」
「うーん……」れいなが考え込み、みやが半ば諦めかけた時、部屋のチャイムが鳴る。
「あ、そういや来るの今日か」れいなは立ち上がった。
「誰ですか?」
「大丈夫。悪魔バスターやけん」
そう言われて、みやは頷いた。
今、師匠についている悪魔バスターなら、一度会ってみたいとも思っていた。

まりん。と紹介された悪魔バスターは、両手の指を立て
みやの目の前で、長い腕をぬるっとクロスさせた。美人なのに。
なんていうか負のオーラが強い。いや、弱そうだけど。
「ミヤザワールド覚醒……ッ」
虚ろな目はどこを見ているのかわからない。そして少しの間が空いた。
「まりん、悪魔に紹介できる仕事なんか知らん?」
れいなが水を向けると、まりんは顔を歪めた。
「悪魔に……仕事?」
「この子が今、悪魔を更生させるための仕事探しとうと」
「ああ、なるほど。それなら、まあ」
ボソボソと喋るまりんの周りで、黒い瘴気がとぐろを巻いている。ううん気のせい。
「悪魔の仕事といえば……闇バイト。心当たりなら、ないこともありません」

「いや別に闇じゃなくても」
慌てて答えたが、まりんは少し興奮したように、声のトーンを上げた。
「国の許可を得ず行われている、非合法薬の治験……とか」
みやは、検査服を着せられてベッドに寝ているももを想像した。かわいそう。ももかわいそう。
れいなはソファに深く腰掛けたまま、ちらりとまりんの方を見た。
「別に非合法は構わんっちゃけど、悪魔が献体しても何の役にも立たんやん」
「まあそれもそうですけど……なら、可愛いところで
SMクラブの女王様はどうでしょう。秘密厳守の裏クラブで報酬はかなり」
れいなが黙ったままこちらを見てきたので、みやも黙って首を振った。
すんごい悪い顔をして鞭を振るうももを想像してしまった。アカンて。

没薬をぶら下げ、ユラリと部屋を出て行くまりんを見送ると
みやは「せっかく聞いてもらったのに、すみません」といちおう言った。
れいなはじっと顔を見て
「も一人にも聞いてみるからちょっと待っとって」
と、どこかに電話をかけ始めた。
そっけないようでいて、やっぱり師匠は優しい。

メモしながら、何度も相槌を打つと、れいなは電話を切り、みやの方を見た。
「知り合いのカニ漁船なら乗せれるみたいやけん、おかまりが話つけてもいいって」

274名無し募集中。。。2018/12/14(金) 02:28:19.500

「おかえりなさいあなた。お仕事見つかったの?」
出迎えたももの首をみやは締めた。おまえの仕事だ〜おまえの〜。

ぐらぐらと頭を揺らされながらももは言った。
「ないなら、別に、やらなくてもいい、しっ」
ぱっと手を離し、けほっと咳き込んだももの顔にみやは鼻を寄せた。
「ももの仕事決めて来た」
そう言って、口の端を上げる。
「え」
「どうせ探してこれないだろうって、バカにしてたでしょ」
間近に、ももはものすごく嫌そうな顔をした。

もちろん、カニ漁船ではない。ゴム長靴は似合いそうだが。
れいなのマンションからの帰り道、通りかかった駅のモールで
聞いたことのある声が耳に飛び込んできたのだった。

「この後は、ご当地ゆるキャラと楽しい撮影会がありますよ〜」
設えられた小さいステージに目をやると、そこにはマイクを持った梨沙ちゃんが立っていた。
どうやってこんな仕事を得たのかは聞かないでおこう。
しかし、梨沙ちゃんはとても生き生きとしていた。

「お母さんにできるお仕事ならありますよ」
さらりと梨沙ちゃんが言い、思わずみやは食いついた。
これまでの誰よりも、梨沙ちゃんが健全に見える。おかしい。
「明日もこのイベントあるんですけど、ゆるキャラちゃんの中の人が一人が来れなくなっちゃって
イベント会社の方がバタバタして困ってるんです。ちょうど!まるで仕込んだかのように!」

うまいこと派遣会社通しの体は取る。集合時間に来てさえくれればいい。と梨沙は言った。
「働いた分のお金は派遣会社に入るわけですけど、まあそこは話つけて
私のとこに乗せてもらうようにするんで後ほど手渡しでも振り込みでも」
口座あるのかよ!とみやは思ったが、今突っ込むのは控えておいた。

ここに来てあまりにスムーズに話が進み、みやは急に心配にもなる。
「もも、ちゃんとやれるといいけど」
「お母さん、なんでもできますよ?」
梨沙ちゃんは目を細めると、にっこり笑った。
「やるかどうかは別として」

276名無し募集中。。。2018/12/14(金) 02:30:55.920

「というわけで、明日きぐるみのお仕事があります」
「……イヤ」
「イヤじゃない!」
「行かない」
リビングに逃げていくももを追いかけ、後ろから首根っこを捕まえると
みやはそのままももをソファに座らせた。
「働かざる者食うべからずって言うの」
目を見ながら言うと、ももはふいっと顔を逸らす。
「別に、食べなくたって生きていけるし」

みやはすぅーっと息を吸った。
「あ、そう。じゃあもうみやのことも食べれなくなるけど」
「……」
「それでも、い」まで言ったところで
みやは手首に思い切り噛み付かれ、うっ……と呻き声を上げた。
油断した。
2階へ駆け上がっていくももの足音を聞きながら
みやは手首を押さえ、痛みに耐える。久しぶりに噛まれてしまった。
大丈夫。これもテレビの、ううんこれも2人の未来のためだから。

翌朝は薄曇りだった。
「いってらっしゃいあなた、お仕事がんばってね」
みやはももの首にすっぽりとスヌードを被せた。
ピンク色のリュックを背負ったももが、門のところでくるりと振り返る。
「いってらっしゃいのチューは?」
「しょうがないなぁー」
両頬を挟み優しくキスすると、みやは言った。
「なんかみや、新妻みたい♡」

ももはふんっと息を吐いた。
「だから蜜月だって、言ってんじゃん」
あれ?
突然、ぐるんと世界が回転したような気がして、みやは狼狽える。
「早く、早く帰ってきてね」
「ももがいないと寂しい?」
「……寂しい」
「蜜月も悪くないって思ったでしょ」
「…………うん」

顔を赤くしたみやを見て、ももは満足げに笑う。
「可愛いー。マジたまらん」
みやの顔に向かって小さく手を振ると、ももは上機嫌で坂道を下って行った。

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