まとめ:雅ちゃんがももちの胸を触るセクハラ

520名無し募集中。。。2017/12/27(水) 18:57:09.670

「なるほど!じゃあ、急いでここから出なくちゃ」と、まいが言った。

最初はみやがここにいることに驚いていたものの
梨沙が説明するとすぐ、ちぃもまいも事情を飲み込んだようだった。
「ほんと良かった!降りてきたのがちぃとまいちゃんで。ほら、見上げてると逆光でわかんなくって」
すっかりリラックスした様子の梨沙が早口で言う。
「たまたまだけどね」
そう言いながらちぃは、まだ体半分をまいの後ろに隠していた。みやと目が合うと小さくはにかんだ。

「でもどうする?私たちが抱えていけば飛べるけど」
「だよね。上に出るのは無理じゃない」
まいとちぃの会話に、梨沙が「どういうこと?」と口を挟む。

「上、どんどん悪魔が集まってる。誰にも見つからずに出るの無理だと思う」
まいの言葉に、梨沙の表情が曇った。
「でもこの魔窟は、人間界と繋がってるゲートが唯一上空の一箇所しかないし
部屋から脱出できたらいずれにせよ、帰すのにちぃかまいちゃんの羽は借りようと思ってたんだけど」
「それはできるけど」とちぃが言った。「とにかく今、上がるのはむり」
「とりあえず下に降りる?」とまいが言い、みやの方を見た。
「抱っこしても大丈夫ですか?」
「えっ、う、うん。大丈夫」
「降りるしかないかぁ……」少し悔しそうに梨沙は呟く。
「でも急がないと、熊井さんが戻ってきちゃうかもしれないし」
まいは半開きの扉から顔を出し、上空を仰いだ。「今のうちに出ないと、ここも誰かまた降りてくるかも」
「降りるしかないよ、梨沙ちゃん」
ちぃがそう言って、梨沙の肩をぽんっと叩いた。

「仕方ない。行くしかないですね」
そう言いながら梨沙はみやの手を取った。
「……ありがと。梨沙ちゃんがいてくれて、本当に助かった」
「役に立てたか、あんまりわかんないですけどね」梨沙は少し照れたような笑みを浮かべる。
まだ、先行きは不安だったが、だいぶ肚が座ってきたような気がした。
みやは軽く伸びをした。体の痛みももうそれほど感じない。

「じゃ、一人ずつ……」まいが言いかけると
「ちょっと待った!」とちぃが叫んだ。
「何?ちぃ」
「え?何って、ここ、もとに戻さないで行くとか、ありえないんだけど」
振り返ると確かに、部屋の中はみやと梨沙に荒らされたまま、ぐっちゃぐちゃだった。

521名無し募集中。。。2017/12/27(水) 19:02:18.810

「しっかり、まいに捕まっててくださいね!」
大きな羽音をさせながら、まいが言った。まいにしがみついているみやの体は、すっかり宙に浮いている。
梨沙を抱きかかえたちぃとまいはそれぞれ片手を伸ばし
せーの!と声を合わせると、岩壁の扉を外側から閉めた。
ガチン!と何かがはまる音がする。
「これで、絵の中のスイッチも元に戻って、脱出部屋は元通りになったと思います」と梨沙が言った。
見上げると高く抜けた上空、真っ赤な雲を背景にたくさんの悪魔が飛び交う影が見えた。
「上で何かあるのかな」
みやが言うと、まいが一緒になって見上げながら「ミスコン始まるみたいです」と言った。
「ミスコン!?」
「はぁ……まいが出られれば、絶対一位だったのに」
ふと視線を感じて横を見ると、ちぃがじーっとこちらを見ていた。
まいちゃんと抱き合ってるからかな。そう思ったら可笑しくなった。

縦穴をゆっくりと降下していく。
「大丈夫?みや重くない?」と訊くと「大丈夫です!最近鍛えてるんで」とまいが言った。
「ねえ、ちぃ、この下降りたことある?」と梨沙が訊いている。
「ないない。このお城初めてだし、さすがに全部探検しきれないよね」
「さっきまで、私たちもクリパの準備で忙しくて、やっとちょっと時間ができたんでこのへん回ってたんです」
「何してたの?」
「テーブル飾ってました」
悪魔のパーティー会場って、どんなだろう。
想像してみたが、みやはすぐにゆるく首を振った。やめとこう。
あまり気持ちのいいものではなさそうだった。

薄暗さが増してくる。気温も下がっているような気がして、みやは小さく体を震わせた。
しかし何も見えないと思っていた、縦穴の底らしきものがだんだんと見えてくる。
「何もない、ただの地面かな」と梨沙が言った。
「ストップ!何か動いてない?」まいが言い、2匹は中空で降下を止めた。
みやには何も見えない。必死に目を凝らす。

突然「やばい……うけるし!」とちぃが笑いだし、みやはびっくりしてちぃの方を見た。
梨沙と目が合う。

梨沙は頬を緩ませると、みやを安心させるかのように頷きながら
「大丈夫です。あのー……むすぶと、やなみんでした」
と、言った。

523名無し募集中。。。2017/12/27(水) 19:08:06.050

「この穴の底から人間界に抜ける方法?まった無茶な。むりむり、むりですわ」
むすぶが顔の横で手を振った。
みやと5匹の小悪魔は、岩穴の底で車座になっていた。
「ここは出口もない底も底のゴミ捨て場ですし」と、やなみんが言う。
薄暗い中、辺りに目を凝らすと、端の方に何か高く積み上がっているのが見えた。

「ふたりはお掃除してたの?」と梨沙が訊く。
「……梨沙ちゃんが遊び呆けてる間な。ずっとな!」むすぶが顔を突き出すと
「まあまあ。いっぱい働いたからきっとご飯が美味しいんじゃないかって言ってたんだよね」とやなみんが窘めに入った。
「あの、積み上がってるやつ?」みやが尋ねると、むすぶはニッコリと振り返った。
「あれな、魔女が惚れ薬つくったカスなんやで」
「惚れ薬?」
「あの積み上げたカスでクリスマスツリー10コくらいできそう」とちぃが笑いだした。

「まあ、惚れ薬の需要が最も高まる時期なのは間違いない」そう言いながら、梨沙は小脇に落ちていた何かを拾い上げた。
「見てください。カエルの脚です」
「えっ」
「この尊い犠牲の上に、成就するニンゲンの恋があるってことです」
「まいは、薬とかに頼るのどうかと思うな」
「悪魔がそんなこと言ってちゃだめじゃん!またお母さんに怒られるよ」ちぃに肘で突っ込まれ
「そうだけど」まいは唇を尖らせた。

「で、ここからどうするかって話なんだけど」と梨沙が切り出した。
「私が隠れて聞いたところによると、熊井さんがお母さんを迎えに行くのは明日。
上のミスコンが終わるのをここで待って、上がるってことでいいかな」
「ダメだよ梨沙ちゃん」ちぃが口を挟む。
「ミスコンが終わったら夜通しキャンプファイヤーだって聞いたよね」まいが顔を見合わせた。

「ちょっと待って」思わず口をついた。
「クリスマスだよね。文化祭じゃないよね」
「決して文化祭ではなく、クリスマスですけど、何か」
やなみんが真顔で答え
みやは今それ以上、考えないことにした。

526名無し募集中。。。2017/12/27(水) 19:13:50.250

「でも、私たちが間に合わなくて、お母さんがここに連れてこられちゃったら、ほんとマズイと思う」
不意にちぃがぽつりと言った。それからしばらく沈黙があった。

みやの視線に気付いた梨沙が口を開いた。
「いやっ、あの、お母さんが来たら嫌だとかもちろんそういうんじゃないですからね」
「うん。そうは思ってないけど」
「嬉しいんですよ?嬉しいんですけど、多分城主に捕まりっぱなしになって」
「だろうね」ちぃが相槌を打つ。
「まい、聞いちゃったんだけど」
「聞いたって、何をですか?」
やなみんが顔を上げると、まいは俯き、震えながら言った。
「城主の部屋の前を通りかかったとき、声が聞こえた」
「なんて」
「『あ〜 いとしい桃子、お昼ごはん、なに食べたんだろう? 』って」
小悪魔たちは顔を見合わせた。
「これは何されるか……わからんで」
むすぶの低く掠れた声が響いた。
「そ、それ聞いただけだと、そこまでやばい感じもしないんだけど」みやが言うと
「いや絶対マズイですって!」とちぃが声を上げた。
「言ったじゃないですか。愛憎渦巻いてるって」梨沙が声音で不穏な空気だけを伝えてくる。

「ひとつだけ、思いつく方法があります」

やなみんの声だった。
すっと顔を上げてそう言ったやなみんの横顔を、みやは思わず見つめた。
小悪魔たちも全員、息をのみ、やなみんの次の言葉を待った。
「まあ、この方法でうまくおうちに帰れるかどうかは、ひとまず置いておいてですね」
「もうっ!やなみん焦らさないで早く言って」
「じゃあ、言いますね。あのですね、私たちを……召喚させるんです」

梨沙が手を打った。
「はぁーなるほどね!逆に」
「そう。ニンゲンの召喚能力を逆に利用して、人間界へのゲートを開けさせるというわけです」

528名無し募集中。。。2017/12/27(水) 19:16:50.750

やなみんはポケットからスマホのようなものを取り出し画面をくるくると指でなぞった。
「このマップを見ると、リアルタイムに悪魔を召喚したがってるニンゲンがどこにいるのかわかるんです」
「なにそれ、そんなのあるの」みやも画面を覗き込む。
「まあ使わんけどな」
「絶対やだ」
むすぶとちぃが顔をしかめたのを見て、みやは訊いた。
「なんでイヤなの?」

「それはですね、悪魔を召喚したがってるニンゲンっていうのは大抵が、すごぉーく、面倒くさいんですよ」
梨沙が言うと、むすぶが大げさな身振り手振りで話し始める。
「何回か行ったけどな。あれしてーこれしてーこれはイヤーあれはイヤー
そんなして散っざんコキ使っといて後になってから『そんな約束してない!』って……なんっっでやねん!」
「本当、往生際の悪いニンゲンには困ったものです」やなみんは眉尻を下げた。

「いやいやいや、みんなわかってない!往生際っていうのがどんなものなのか、わかってないわー」
立ち上がった梨沙が岩壁に片手をつき、もう片方の手を顔の前で振った。
「ほんとね!一回、目の前に聖剣振り下ろされてみなって。そりゃもぉ足掻けるだけ足掻こうって気にもなりますって」
「プロのバスターの素早さをリアルに体感したって梨沙ちゃん言ってたもんね」
「梨沙ちゃんさぁー、そっから帰ってきたことがすごいよ」ちぃが梨沙の肩に手を置いた。
「そんな気持ちも知らず、つい、わかったようなこと言ってしまいました。猛省します」
「よくってよ、よくってよやなみん」梨沙がやなみんのおでこをクルクルなでなでしている。
「このお姉さんはうちらのことも一瞬で見抜いたからな」
「あ、それはほんとすごいと思いました」

一斉に見つめられ、みやは思わず「いや、うん……それほどでも」と言いながら、顔が引き攣った。
これはもう、何か裏があるんじゃないだろうか。
みやを油断させておいて、最後にどーんと突き落とされるとか

まいがニコニコと笑いかけてくる。
「考えてみたら、今2人が一緒に暮らしてるのも、お母さんの往生際が悪かったからですもんね」

思わず吹き出していた。
「……ハハッ」
一度笑い出したら止まらなくなった。
「まあ、確かにね、確かにそうだけど」
口を覆って笑い出したみやを、5匹の小悪魔たちはきょとんと見つめ
一拍置いてから照れたような笑顔を見合わせた。

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