まとめ:雅ちゃんがももちの胸を触るセクハラ

398 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/05/29(月) 01:07:07.42 0

『ハワイのその6』最終回

翌日は2人とも、昼前まで起き出せなくて
明るい中、目覚めると、ももがこっちを見ていた。
「何時?」
「11時過ぎ」
「こんなダラダラしてていいのかな」って言ったら
「何言ってんの。ダラダラするのが休日じゃん」て言われた。
「まあ、予定がないっていうのもいいかもね……」もうちょっと寝たい気分。
「予定は、あるの」
「そうなの?」一気に目が覚めた。

支度して、コンドミニアムの玄関に立つと、熊井ちゃんが車で迎えに来ていた。
「どこに行くの?」
「着くまで内緒だよね。ももがさ、みやをどうしても連れていきたいって言ったんだよ」
「まあまあ、乗ってよみや」小さく欠伸しながらももが言った。

街中を抜けると、車は住宅街に入っていった。そこからしばらく
生い茂った林の中をどんどん走っていく。
どれくらい走ったのか「着いたよ」と熊井ちゃんに言われて、すっかり眠っていたことに気付く。

「じゃあ、お2人行ってらっしゃーい」
「熊井ちゃん来ないの?」
「ウチは他に用事あるから、また迎えに来る」
「ありがとくまいちょー。またあとでね」
……どこ、ここ?
まるで人っけのない、林の中にいた。
ももは手招きして、そこから伸びている小道に導き、どんどん歩いて行く。
「ハワイでこんなとこ初めてきた。全然人いない」
「そーそー、穴場ってやつですよ」

抜けた、と思ったら
そこは小さい入り江。真っ白に輝く砂浜の向こう、青い青い海が遠く空に繋がっていた。

「えっ、なにここ、ビーチ?」
「すごくない?独り占めだよ」
「すごい、ここどこって感じ。すごいキレイ」
「いい景色でしょう」
「ここに連れてきたかったの?」
「そうだよ」
ももは両腕を広げて海の方に歩き出した。

399 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/05/29(月) 01:12:49.06 0

光がキラキラしていた。高い空と、打ち寄せる波の音。
ももはどんどん波打ち際まで歩いていくと、振り返った。

「今度ね、ここで式を挙げる二人がいるんだよ」
「なにそれ最高」
「そう思う?」
「教会ももちろんいいけど、こんな自然だけの、海が最っ高にキレイな小さな場所で式とか素敵。思い出に残る」
「そうなの。海で挙げたいって言われてさ」
「探しに来たんだ」
「や、まあ……あの、いろんな条件に合うとこ探したのも仕切るのもくまいちょーだけど」
「えー、いい場所見つかって良かったじゃん」
「そう……今後も考えたらどーしても一回現地を見ておきたかったんだ」
「まあ、ハワイ挙式多いもんね」
「海外挙式とかさあ、ウチはアットホームなブライダルやってるんでちょっと、とか思ってたんだけど、機会損失とかも思い始めて、くまいちょーがいたの思い出して」
「うん。いいと思う」
「来て良かった。いい場所がいっぱいあった。どうしてハワイがいいかもわかった」
「パンケーキ美味しかったでしょ」
「……すっごい美味しかった」ももが笑った。

波打ち際で遊んだ。子どもみたいに追いかけっこした。
服が濡れないようにしてたのに、ももが水かけようとしてくるから
お返ししたら、林の方まで逃げていった。足が砂だらけになった。
サンダルを脱いで、透明な波に足を浸して、揺れる影を眺めていたら飽きなかった。

「ももが、ここに連れて来てくれて嬉しい」
「そう?良かった」
「みやを連れて来たいって思ってくれたんでしょ?」
「うん。この景色見たら、そう思った」
「それって愛じゃん」
「うん」
「それが嬉しい」
ももは、ちょっと言葉に詰まったみたいで
ちょっと照れたように笑って
それから、数歩歩いて立ち止まってから
みやの方に向き直った。ゆっくり唇が開く。

400 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/05/29(月) 01:17:02.27 0

「みや、結婚しよう」
「する」
即答したら、ももの目がこれ以上ないってくらい見開かれて
時間が止まった。
ゆるい風が吹いて、ももの長い髪が舞った。毛先がさらさらと揺れている。

「え、なんで黙る?」
「……や、あのぅ、返事早いなぁ。って、思って」
「あっちょっと待って。籍入れるってこと?」
「えっ、ううぅん、そこまでは。そだね、そういうのはまた、追々……」
ももの黒目がくるくる動く。「えっと、引っ越す?」
「みや、今の部屋が好き」
「だよね」
「そういうことじゃないんだ。でも、そしたらもう一緒に住んでんじゃん」
「ん」
「じゃあ、今と、何か変わる?……結婚てどういうこと?」

「……互いの人生に責任を持つってことかな」
ももは、私をまっすぐに、柔らかく見ていた。

「もうみや以外の人のとこに行ったりしないってこと?」
「えっ今、私そんな話した?」
「だって、結婚ってそういうことじゃん?」
「まあ……そう、そういうことに、なるのか」
そう言ったももの目に、突然涙がいっぱい溜まっていった。

え、なんで、なんで泣くの。
ももは顔を歪ませると片手で口を覆った。目の端から涙がこぼれ落ちるのが見える。
慌てて言った。
「わ、私に縛られるのが嫌で、泣いてるんじゃないよね」
「ばか」
口を覆ったままももは笑った。ふふって小さい声が聞こえて
俯いたももの顔から涙の粒が落ちて、砂に吸い込まれていく。

「ももってわかんない」
近づいたらももが顔を上げた。ハンカチを出して頬を拭ってあげると
ももは苦笑いしてから、目を閉じ、ん、って上を向いて
それは、目元も拭けって言ってるようにも思えたし
上がってくる涙を堪えてるようにも見えた。目の縁を優しくぽんぽん拭いてあげてる間
時々口許を尖らせ、肩で小さくしゃくり上げていた。子どものように。

「なんで泣くの」
「みやが可愛いから」
「バカにしてるでしょ」

401 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/05/29(月) 01:22:27.43 0

不意にももが抱きついてきた。
背中に回ってきた手が服をぎゅっと掴んで、みやの肩に顔を埋めてくる。
想いが、流れ込んでくるようで、胸が詰まって
立ち尽くしていたら
「なんで抱きしめ返してくんないのよ」って苦情が来た。
だって、抱き返したら、泣きそうなんだもん。
「みーや」
ももがねだってくる。
背中に腕を回して、抱き寄せた。ほら、泣いちゃうじゃん。こんなの。
お腹が何度もひくっとした。ももが髪をやさしく撫でてくる。
「ねえ、もも、ここで今式挙げたい」
「何もないよ。牧師さんもいないし」
「なんとかしてよ、プロでしょ」
「言ってくれるね」
腕の中で、小さく笑うももの肩が揺れた。

それから2人で辺りを探した。
指輪になるもの。小枝とか葉っぱとか
「落ちてるやつだけだよ、摘んじゃだめだよ」って言われて
ようやく結べる細い草を見つけて
お互いの指のサイズを測った。
「みや指細いね〜」
「ももやっぱ手ちっちゃいわ」
海岸からももが白い石を拾ってきた「これをリングピローにしよう」
窪んだ石の上に結んだ草を乗せた。
「これ風吹いたら飛んでっちゃう」
「指で押さえとこ」

ハワイで式を挙げた。
素敵な青い海のビーチで。
誓いの言葉、指輪の交換をして
砂浜でキスをした。

いいでしょ。こう聞くといいでしょ。
実際はみやが誓いの言葉つっかえて蹴られたり
指輪はめようとしたら緩んで飛んでっちゃって2人で呆然と風が吹いてった方を眺めたり
誓いのキスのときはももがずっとニヤニヤしてた。
「うん。すごい、最高の、思い出になったと思う」
含み笑いでももが言った。

402 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/05/29(月) 01:27:30.08 0

迎えに来てくれた熊井ちゃんの車に乗るなり
ももが「式挙げてきた」と言った。
「ほんと!?やったねー!hau'oli male'ana!」
熊井ちゃんがみやの方振り返って祝福してくれた。
「熊井ちゃんそれってハワイ語?」
「そうだよ。結婚おめでとうって言ったんだよ」
「ありがとう。嬉しい」
「くまいちょーもすっかり現地の人だね」
「何年いると思ってんの。2年だけど」
エンジンをかけて車を発進させると、熊井ちゃんは
「うちが祝福したカップルはみんな幸せになるんだよ」
と言った。

あ、だめだ、なんかニヤニヤしちゃう。
バックミラーごしに熊井ちゃんと目が合った。
「みや、パーティーは呼んでよ」
「え、ぜったい呼ぶ。来てくれる?」
「もちろん!」
助手席のももが熊井ちゃんとみやを交互に見た。
「え、なに、パーティーって」
「やるでしょウエディングパーティー」
「ぜったいやりたーい!みんな呼んで。ね、もも」
「いや、あの、パーティーとかそういうのは」
「いいフレンチレストランあるんでしょ、ももに聞いた。そこでやってよ。食べたい」
「あ、すごいいいとこだよ。熊井ちゃんに来て欲しい」
「ねえ……」
「ドレスとテーブルデコレーションはみやにおまかせだね」
「あーそう考えるとやりたいこといっぱいあるかも」
「2人ともさ」
「やるよねもも」
「やるでしょもも」
2人掛かり。どうだ。目を泳がせていたももが、小さい声で言った。
「ぅ……はい」
ミラー越しに熊井ちゃんがウインクしてきた。やったね。
ああ、もう熊井ちゃん大好き。またぜったい会いたいって思った。

406 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/05/29(月) 01:34:00.95 0

気付けば車は街中に戻ってきていた。椰子の並木を抜けて、高いビルもたくさん見えてくる。
もう長いこといるみたいに、景色が目に馴染んでる。
「帰りたくないなぁ」
「東京に帰ったらすぐ仕事?」
「あっ……お留守番りーちゃんに頼まれてたお土産、買うの忘れてた」
「アラモアナまで行こうか」
「くまいちょー助かる……お願いしたい」
「やった。最後にまたショッピングできる」
「みやの買い物じゃないからね」
「もも愛してる」
そう言ったら、ももが黙り込んで、熊井ちゃんがケラケラ笑った。

行きと、気持ちが全然違う。
何が違うのかって、うまく言えないけど
あんな、子どものおままごとよりダメダメな式だったけど
私たち、結婚したんだよ。

帰りの飛行機のシートに座って、ももの片手を握って
「まさか結婚するとは思わなかった」って言ったら
「最初からプロポーズするつもりで来た」とかももが言うからビックリした。

「みやの速攻の返事に引いちゃってそのあとグダグダだったけど」
「なに、みやのせいって言いたいの」
「ううん。準備不足」
「準備不足だよね。だってハワイまで来てるんだから式挙げたくなるじゃん」
「うん。そーかもしれない。正直言うとやりなおしたい」
「うちららしくていいじゃん。良かったと思う。忘れない」
「私も」

あの時、ももは私に誓った。

健やかなるときも病めるときも、喜びのときも悲しみのときも、富めるときも貧しいときも
愛し、敬い、慰め遣え、共に助け合い、命ある限り真心を尽くすことを誓います

忘れない。あの時のももの顔。それまで笑ってたのに
すごい緊張して、みやの目を見ながら、言ってくれた。

機体が浮いて、ももが痛いくらい手を握ってきた。
大丈夫。みやがずっと傍にいてあげる。
もうきっと、2人とも、怯えることを怖がったりしないで、一緒に生きていけるの。

『ハワイ編』おわり

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