まとめ:雅ちゃんがももちの胸を触るセクハラ

730 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/06/14(水) 23:47:31.45 0

「一度だけ」の約束は、しばらくは守られていた。あの夜がなかったかのように、お互いいつも通り過ごした。
初めて体を重ねた日の翌日、どんな顔で会えばいいのだろうと思い悩んでいた私に対し、にへはいつものように挨拶をした。
昨晩拗ねていたのが嘘のように、何の翳りもない笑顔で。おかげで、私も笑うことができた。
もう、私たちの中ではあの件は消化されたのだと、この時は思っていた。

楽屋で台本に目を通す。今日は、レギュラーでMCを担当している配信番組の撮影である。
ゲストの名前を見た瞬間に、とく、と心臓が跳ねる。好きな人の名前って、どうしてこんなにときめくのだろう。

コンコン。ノックの乾いた音を聞き振り返ると、ドアの隙間から中を覗き込む影が一つ。
その正体はももだった。ドアを開き、体を滑り込ませて、私の元へ近づいてくる。

「みや、あのね」
「ん?」
「ちょっと、話があるんだけど」

731 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/06/14(水) 23:48:20.36 0

−−−−

改まって話すことってなんだろう。告白ではないことだけは分かる。でも、全く期待していないわけではなくって。
0.0000001%くらい、そんな奇跡が起こることを想像している自分がいる。
今まで何度も、そんな奇跡を頭に思い浮かべては、現実とのギャップに打ちのめされてきた。
それでも何故人は懲りずに、誰かを想い続けていられるのだろう。

「話って?」

隣に座ったももに向かい合って、尋ねた。ももは少し緊張したような表情でこちらを見ている。その緊張が伝染してきたのを感じながら、そっと息を吐いた。
ももは、意を決したように息を吸って、

「私、引退しようと思う」

そう、告げた。

「……そっか。なんとなくそんな気はしてた」

口から出た言葉は、本心だった。なんとなくだが、ももはずっとアイドルとしてやっていく感じはしなくて。
誰よりも現実を見ている人だから、きっとどこかで区切りをつけて、新たな人生に向かっていくような気がしていた。
だから、驚きはしなかった。ただ、それがいつ頃訪れる未来かまでは想像していなかったので、ついに現実になってしまったという衝撃はあった。

「まだ何するかは具体的に決めてないんだけど……大学で勉強してたこと、もっとちゃんと学びたいなと思ってて」

Berryzとしての活動と、バラエティ番組への出演と並行して通っていた大学。
めまぐるしく過ぎていく日々の中では、課題をこなすのがやっとで、納得いくような学習は出来なかっただろう。素直に、良い決断だと思う。

「応援してるよ」
「ありがとう」

私がそう言うと、硬くなっていた表情が和らいで、ほっとしたように笑う。
その表情が本当に可愛くて、私は思わず見とれてしまった。
この笑顔を見られる機会も、ぐんと減ってしまうのか。そう思うと、胸をぐっと鷲掴みされたような感覚になった。

732 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/06/14(水) 23:48:59.53 0

−−−−

撮影が終わり、帰り支度をしていると、にへが跳ねるような足取りで楽屋に入ってきた。
汗なのか、少し髪が濡れている。ああ、今日はダンスレッスンって言ってたっけ。
ももは別の仕事があるということで、既に楽屋を出ており、今は私しかいない。

「お疲れ様でーす」
「おつかれ」
「……みやちゃん、何かありました?」

そう言いながら、下から覗き込んでくる。にへの方を見ると、何かを推し量るような視線とぶつかった。
何かあるといえば、大いにある。でもこれをにへに伝えることはできない。ももが引退するという事実は、まだ公開される情報ではないからだ。

「……なんにもないよ」
「うそだぁ。にへにはなんでも分かるんです」

そう、得意げな表情で言う。根拠はないのに自信ありげな姿がおかしくて、思わず笑みが漏れた。

「さすがだね。でもほんと、なにもないから」
「……なにもないのに、なんで泣きそうな顔になってるんですか?」

さっきとは一転して、真摯な表情へと変わる。その眼差しに、感情を閉ざしていた蓋が取り払われるような感覚を覚えた。
押さえがなくなり、想いがぶわっと溢れ出す。
私、悲しいんだ。そこで初めて自分の気持ちを認識した。ももが引退するのが、悲しい。
誰よりも応援してる自信があるのに、その未来が来なければいいのにって思っている。
ずっと、みんなのものでいてほしかった。そうしたら、私も変な期待をせずに済むし、誰かに取られる不安もないのに。
もっと一緒にステージに立ちたかった。一緒に歌っていたかった。ももの歌が聴きたかった。

いろんな感情が溢れて、制御できなくて。堪えきれずに、涙がこぼれた。
気付けば柔らかくて温かい感覚に包まれている。にへの腕が、私の腰へ回る。

「……うち、来ますか」

囁くような声で落ちてきた誘いに、にへの肩口で頷いて応えた。

"一回だけ"の約束を思い出すことはなかった。

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