まとめ:雅ちゃんがももちの胸を触るセクハラ

375 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/07/10(月) 02:23:04.36 0

「わー…何もなくなってるねぇ、当たり前だけど。」

ファンの皆様からの愛を受信する小指を折りたたみ、力強く拳を握ったあの日から一週間。
すっかり夏の茹だるような暑さに悩まされるような日々が続いていた。
みんなのアイドルを卒業した桃子は時折事務所で残った仕事の処理をしながらも
基本的には15年ぶりのお休みを満喫…というかお家でゴロゴロしていたらしい。
ゴロゴロに飽きてきたのか突然呼び出されたかと思えば、一週間前はピンクの海と化していたあの場所に連れて行かれた。
今はただの殺風景な駐車場で、つい先日のことが夢みたい。
隣に立ってやけに白い肌が眩しい桃子も同じようなことを思ったみたいで、
「なんか現実味ないな」なんて独り言のように呟いた。

「まだ卒業した感じしない?」
「んー、まだちょっと。ハロコンの準備しなくて良いんだーってなると違和感あるかな。」

楽だけど、と一言付け足して悪戯っ子のように笑う。

「ま、だから確かめたかったんだよね。私自身ちゃんと卒業できたかどうか。
犯人は現場に戻るじゃないけど。ちゃんとすべてが上手く行ったのか気になっちゃってさ。
こうやって元通りの景色になってるの見たら、あー無事に卒業できたんだなって実感できるかなって…
実際は違和感はまだあるけど、頭で納得はできたよ。」

そう言って遠い目をしながら駐車場を見つめる桃子の横顔を見ると、
あの日のことを思い出して胸が締め付けられた。

376 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/07/10(月) 02:25:13.59 0

雅にとってもあの日は特別な日だった。
同期として15年間走り続けた桃子がアイドルを卒業する日、という意味だけじゃない。
アイドルを卒業した桃子に想いを伝えた日でもあった。
いや、はっきりと言えば想いを伝えたつもりの日。
大人になると色んなことを考えて日和ってしまって、
正直真意が伝わったかどうかなんてわからなかった。

「そっか。」

絞り出した一言は暑さによる喉の渇きも相まって少し掠れていた。
それが気になったのか桃子からペットボトルのお茶を差し出される。
差し出すその右手の小指はぴっちりとペットボトルに沿わされていて、
そんなところで雅は桃子のアイドル卒業を改めて実感した。

「てか、そのためにうちをここに連れてきたの?こんな暑いのにさぁ」

桃子を想う気持ちとは別にアイドルももちのファンでもあったことに気付かされて、悪態をつきながら寂しさを誤魔化す。
そんな態度さえお見通しのように、桃子はふふっと笑って雅の腕に絡みついてきた。

「暑いって言ってるじゃん」
「みや、別に誰でも良かった訳じゃないよ」

桃子は諭すように優しく話す。
その声に、言葉に、雅の心臓はトクントクンと大きく拍動し始める。

「これ、の返事しようと思って。」

377 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/07/10(月) 02:26:46.60 0

桃子の見せた小さな手の平にあるのはあの日渡したピンキーリングだった。
雅が直接想いを伝える代わりにライブ終演後の桃子にそっと渡した、クラウン型のピンクゴールドのリング。

「ごめんね、あの日はドタバタしてて気持ちも落ち着かなくて返事できなかったの。」

桃子は手の平の上でコロコロと指輪を弄びながら本当に申し訳なさそうな声を上げる。
指輪は時折太陽の光を反射してキラキラと光り、雅と桃子の顔を照らした。

「みやはあの時何も言ってくれなかったけど、長い付き合いだし言いたいことはわかったよ…多分。」
「…もも」
「勘違いだったら嫌だなぁー、なんて」

絡ませた腕を解き、雅の正面に向き直った桃子は言葉とは裏腹に自信漲る表情をしていた。
いつかのライブで見たことのある、懐かしい顔のように感じて。
この顔好きだなと思いながら、雅は次の言葉を待っていた。
しかし言葉より先にあの日のように握り拳を作った右手を差し出された。

「え…?」
「と言う訳で…シャキーン!」

桃子の口から発せられた効果音と共に小指が立つ。
その小指にはいつの間にか渡したピンキーリングがはめられていた。

「本日を持ちまして夏焼雅からの愛を受信する小指が誕生いたしました!」

378 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/07/10(月) 02:31:05.21 0



「…バカじゃないの」
「な、失礼な!結構真剣に考えたのに!」

小指を立てて抗議する姿は滑稽で。
でもすっごく愛らしくて、愛おしくて。
さっきまで暑いと言ってた癖に、いつの間にか桃子を腕の中に納めていた。

「一週間考えてくれたんだ?」
「…そうだよ。バカにされたけど」
「嘘。ごめん、めっちゃ嬉しい。」

素直な気持ちを伝えるとさっきまでの自信はどこに行ったのか、桃子は急にしゅんと大人しくなった。
雅の胸に顔を押し付けて、うんうん唸っている。
その背中をそっと撫でれば、耳を真っ赤にしながらボソボソと話し始めた。

「…ももの勘違いじゃなかったんだよね?」
「勘違いじゃないよ」
「みや…ちゃんと、聞きたいよ。みやの気持ち。」
「…もものこと、好き。ちゃんと口に出せなくてごめん。」

あの日言えなかった癖に、こんなにも淀みなく言えてしまう自分にびっくりする。
そして勘違いじゃないかという恐れを隠し、強がってた桃子に一層の愛おしさがこみ上げた。

「ほんとだよ!めっちゃ悩んだんだからね!」
「ずっとゴロゴロしてるだけかと思ってた」
「ただゴロゴロしてた訳じゃないよ!色々考えながらゴロゴロしてたんだから」
「それ得意気に言うこと?」

抱き合いながら笑い合う。
さすがに周囲からの奇異の目が向けられ始めたことに気づき、パッと身体を離した。

379 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/07/10(月) 02:32:17.92 0

「…そろそろ、行こっか」
「そうだね」

二人して足早にその場を立ち去る。
普通に考えて駐車場で抱き合う二人とか滑稽だよね、と桃子が言うものだから
いきなり小指を立てるあなたもあなたですけど、と雅は軽口を叩いた。
そんなやり取りをしながらも、頬が紅くなってるのは日に晒されてたからだけじゃないことはお互い十分わかっていて。


冷静さを取り戻させるかのように、二人の間を潮風が通る。

それでも小指にクラウンが光る小さな手は、いつもより熱いその華奢な手に優しく包まれたままだった。

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