まとめ:雅ちゃんがももちの胸を触るセクハラ

150オメガバースみやもも2017/11/19(日) 16:44:16.870

珍しいことに、雅は自らの意思で県の図書館にやってきた。
きっかけは数日前、訳ありオメガのみを密売している、いわゆる“奴隷市場”に初めて足を踏み入れたことだった。
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友人に連れられて、雅はとある場所にやってきた。

「雅もそろそろ上手な遊び方覚えたら?無理に番作る必要ないし、安いとこ知ってるよ」
なんてありがた迷惑極まりない理由で、やや無理やり連れ出されたのだ。


件の場所は一見したところそれとは分からない、裏路地にぽつんと佇む普通のアクセサリ店にあった。
雅たちが店に入ると、一人しかいない店員がちらりとこちらを見やる。
友人はよく来ているのか、迷うことなく入って左側にある関係者以外立ち入り禁止の扉を開けた。勝手に開けたら店員さんに怒られるんじゃ、と思ったが、特に何も言われなかった。

長い長い階段が雅たちを飲み込むように地下へ続いている。
帰りのことを今から心配しつつどんどん潜ると、
徐々に剥き出しのコンクリートが目立ってきた。少し薄暗くて、よくよく耳を澄ますとどこからか小さな泣き声が聞こえる。階段を降り続けながら、なんかお化け屋敷みたい、とぼんやり思った。

降りきった小さな踊り場に鉄製の扉があり、眼鏡をかけたスーツ姿の女性が立っていた。
やはり友人は何度かここを訪れたことがあるらしい。軽く会釈するだけで、簡単に扉をくぐらせてもらえた。



そこは、地獄のような場所だった。映画やドラマの世界でしか見たことのない光景に、しばらく雅は呆然としてしまった。
狭い地下室の中、にやにやといやらしい笑みを浮かべた胡散臭げなおじさんがのっそりと立ち、部屋中にいる鎖で繋がれた少年少女を監視するかのように見つめている。
彼らは年齢も背丈もまちまちだが、いくつか共通していることがあった。
全員が痩せ細り、粗末な服を着て粗末な座布団に座らされていること。そしてみな一様に怯えたような目をしていること。
階段を降りている時に聞こえていた泣き声は、ここにいる何人かが漏らしていた声のようだ。

155オメガバースみやもも2017/11/19(日) 16:53:35.090

来た瞬間から不愉快ゲージMAXになった雅は、一刻も早く帰りたくて自分を連れてきた友人の服の裾をそっと掴む。
が、初めてでびっくりしているだけと勘違いした友人は、「だいじょぶだいじょぶ。あたしも初めて来た時はびっくりしたけど、何回か来てたらその内慣れるから」と見当違いなことを言うと、小さくなってきょろきょろする雅を置いて見て回りだした。

ちょっと待って、と小声で言ったが、聞こえなかったのか軽やかに奥の方まで行ってしまう。
仕方ない。目を伏せながら少し離れた背中を追う。
……こんなとこ来なきゃ良かった。みやはオメガとか別に興味ないし。よくわかんないし。運命の番とか知らないし、見つける気もないし。
…あーもう、なんでこんな暗いのよっ。電気つけろ、電気っ。

163オメガバースみやもも2017/11/19(日) 17:03:49.970

ちょっと、ねえ、と小さく呼ぶと、ようやく気が付いたのか振り向く友人。

「置いてかないでよ…怖いじゃん」
「ごめんごめん。ちょっと会いたいのがいて」
「会いたいの?」
「これ」

目線の、その先を見ると。
…自分とそう大して変わらないであろう年頃の、可愛らしい女の子が座っていた。この子は他の子のようにすすり泣きも、怯えた目もしていなかった。
ただ真っ直ぐ、こちらを睨み付けていた。雅は、その綺麗で強い眼差しに見覚えがある気がした。

「これがここの一番人気なの。でもその分高いんだよね」
「なんか……物みたい」
「そりゃ、普通のオメガにはそんな言い方しないよ?
でもこの市場にいるのはみーんな訳ありだし、言ってみれば使い捨て。雅だって、駅前で配られてるティッシュに丁寧な呼び方しないでしょ?」
「まぁ、そうだけど」

気になる。友人と話しながらも、目線はその子から離れなかった。いや、離せなかった。こういうの、何て言うんだっけ。
…第六感?みたいな。このまま帰っちゃいけないと思う。心がざわざわして落ち着かない。こんな感覚を味わうのは初めてだった。

「この子、連れて帰りたいんだけど」
ほぼ無意識の内に、そう言っていた。



どうやら、さっきのおじさんがここの店主らしい。値段を聞くと、嫌な笑みを返された。
若いからって馬鹿にされているのか。あの女の子のように思いっきり睨み付けて、ついでに軽く横の棚を蹴って帰った。

雅の頭の中には、あの女の子のことだけが残っていた。

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