まとめ:雅ちゃんがももちの胸を触るセクハラ

859 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2016/12/06(火) 00:24:15.70 0

はい、と差し出したそれを、五段は何も言いよらんと受け取った。
サングラスのせいであいつの視線の先はよく見えん。
けど、たぶんちゃんとうちが渡したそれを見てくれたんやろうと思う。
これは何だとでも問いたげに、片方の眉だけがぴくりと持ち上がったんが見えた。

「お守りや。見たら分かるやろ」

あいつの形のええ唇が薄く開く。
せやけど、そこからは静かな吐息しか出てけえへんかった。
それは分かるけど、と唇の先が尖る。
ああもう、そこから説明せんとあかんのか、この朴念仁は。
いや、朴念仁やったわ。知っとったわ。

「その……これから、何があるか分からんやん? せやから、お守り」

そんなんがホンマに効くんかは知らん。
単にうちの自己満足なんは、よう知っとる。
せやけど、何もせんと五段に何かあったらそれこそ具合悪いやろ。
ちゃんもものオタクやっていう五段のために、ピンクの布でわざわざ作ったんや。
世界に一つだけ、今月特製のお守りやで。
せやのに、あいつの反応は薄い。
もともと大して外に感情なんかを出さんのは分かっとるけど、それにしても反応なさすぎやろ。
なんや、気に入らんかったんやろうか。

「何や、不満?」

ちょびっとだけ胸がざわついて、思わずそう尋ねとった。
間髪入れず、あいつの頭が横に振られて、少しほっとしたんは内緒や。
せやけど、五段の雰囲気は素直に喜んどる風でもない。

「せやったら、なに?」

はっきり言うてよ。
うち、そんなに気長い方やないよ?
あえて棘を含ませて、五段の目の前に言葉を突きつけた。

「言いたいこと、あるんやろ?」

ほんの数ミリ、あいつの顔が俯くんが見える。
そうゆうとこが気に入らんのや。
この意気地なし。

860 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2016/12/06(火) 00:24:53.00 0

「貸して。いらんのやったらほかすわ」

五段が信じられん速さで、渡したそれを体の後ろに隠す。
気に入らんかったわけやない、と。
せやったら、なんでちょっと不満そうなん。
うちの驚異の察し力にも限界があるんやけど、五段さん?
そんな思いを込めて五段に厳しい目を向けたけど、サングラスに当たって跳ね返される。
ああ、ずるいわ。
いっつも、うちばっかり一方的に見られとる。
うちの視線がサングラスを突き抜けたらええのに。
そう思って見つめとったら、こっちへ来いと五段が手招きをする。
もう、なんやの。
こつ、こつ、と2歩分の距離を詰めて、ちっこい五段を見下ろす。
サングラスは相変わらずあいつの視線を覆い隠しとって、それがもどかしくて堪らん。
何かを言おうとしとるんか、それとも躊躇っとるんか知らんけど、五段の唇が震える。
教えてよ、五段。
もう一歩、踏み込んだら何かに触れるんやないかという、予感めいたものが渦巻く。
五段は結局何も言わんと、きゅっとその唇が閉じるのが映った。
なに?と言おうとしたんは、うちの喉の奥に転がり落ちた。
頬に一瞬だけ触れた、ひやりとした柔らかな感触。

「……え」

かと思えば、そそくさと離れていく五段。
ふわりと空気が揺れて、やけに甘いあいつの香りがした。
……は? なに? なんなん?
何をどう形にしたら分からんで、固まったうちをよそに五段はすっと顔を背ける。
ふと見下ろすと、髪の隙間から覗く五段の耳が赤くなっとった。
自分からやっといて照れんでや!
なんや、こっちまで恥ずかしなるやんか。

「なんの、つもりなん」

うちの声は聞こえとるはずやのに、五段はそっぽ向いたまま一個も動こうとせん。

861 : 名無し募集中。。。@無断転載は禁止2016/12/06(火) 00:25:28.29 0

「こんなんで、ご、誤魔化されんで!」

五段に人差し指を突きつけたら、あいつのほっそい指に掴まれた。
そのままゆっくりと指がぎゅっと握られて、人を守っとるとは到底思えん柔らかさに包まれる。
その柔らかさにカッと頭に熱が上がった気がした。
そんな時、五段の唇の端がゆるりと動いた気がして、あ、と思った。

「おまもり、です」

五段の口から聞こえた音は小そうて、普通の人やったら聞こえんかったと思う。
せやけど、うちの耳は地獄耳やから。五段限定やけど。
聞き逃すはず、ないやんか。

「それ……どういう意味?」

そのままの意味だとばかりに、掴んどった指先がくるりと返されて、五段の指に絡め取られた。
そこから強い意志みたいなもんが伝わってきて、さっきとは別の意味でどきりとさせられる。

「うちにくれるん?」

こくり、と力強い頷きは、一度だけやけどうちを満足させるには十分やった。
ふと、廊下の向こうから、チーフ、と呼ぶ声が耳に届く。
お仕事中やったっけ、そういえば。
五段にもその声は聞こえとったらしく、声の聞こえた方へと視線が向く。

「戻らんとあかん?」

再び、五段が首を縦に振る。
今度はちょっと寂しそうやな、なんて感じたんは、うちの希望的観測やろうか。
じゃあ、と若干の名残惜しさを漂わせて、今度こそ本当に五段の温もりとの距離が開く。
うちがあげたお守りを、大事そうに内ポケットにしまうんが見えた。
まだ耳は赤いまんまやったけど、あれで仕事になるんやろうか。
まあ、そんなうちの心配なんて全く必要ないんやろうけど。

「がんばってな」

そう声をかけると、振り返らんままに手だけが軽くひらりと振られる。
言葉は足りんし、無愛想やし、ほんまは不安になることもたっくさんあるけど。
そんなんどうでもようなるくらい、こういう時に特大ホームラン打ちよるんやから。

かっこよすぎるわ、あほ。

遠くなる背中はちっこいくせにやけに大きゅうて。
あいつが角を曲がって見えんようになるまで見送って、今夜はうちの家に呼んでやろうかななんてことを考えた。

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