まとめ:雅ちゃんがももちの胸を触るセクハラ

156名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/04/29(土) 02:08:54.10 0

机の上に乱雑に置かれた資料。
大まかには分類されたその中から目当てのものを出そうとずぼらに引っ張ったのが悪かった。
崩れる紙の山。
床にまで散乱したそれに思わずため息が漏れた。
内容を確認しながら紙をまとめていく。
捗らない作業に投げ出したくなる。
耳のすぐ側で低い振動音。
止まらないその音は間違いなく着信で。
いつもは目につくように置いているのにあまりにタイミングが悪い。
紙を適当に避けていく。
見えた紙の隙間から漏れる光に手を伸ばしよく確認もせず通話を押した。

「もしもし」

『…』

「どちら様でしょう?」

画面を確認しても登録していない見知らぬ番号。
再度、声をかけても何も返ってこない。
ただ外からかけてきているのかひどくざわざわしていた。

「いたずらなら切りますよ」

少し慌てたような気配。
微かに聞こえた息を呑むような音に切るのを待った。

『…時間ある?』

聞き漏らしそうなほどに小さい声。
それでも数年ぶりに聞くその声を聞き間違う事などない。
懐かしいフレーズ。
懐かしい声。
意識が一瞬にして華やかな世界に身を置いていたあの頃に持っていかれる。

『ないならいい』

今度ははっきりと聞こえた声にハッとする。

「待って」

今にも切られそうで慌てる。
数年ぶりの連絡。
まさかあの頃と同じ用件な訳はないだろうけれど。
それでもあの頃と同じ言葉につい今から会う事を前提にした言葉を口にしていた。

157名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/04/29(土) 02:10:34.64 0

「今どこにいる?」

返ってきた答えは偶然にも最寄り駅。
どこかに出るよりも来てもらった方が早い。
自宅の住所を送りつけた。
駅から少し距離のあるこの家。
タクシーを使っても確実に十分以上はかかる。
着替えようと部屋を出て固まる。
記憶にあるリビングはもう少し片付いていたのにこの惨状は一体何なのか。
固まっていたのは少しの間。
すぐ手当たり次第に片手に持ったゴミ袋に突っ込んでいく。
あの頃も度々こんなことがあった。
急がないといけないのに記憶に引きずられる。

まだまだ若かった高校時代。
当然のように周囲の興味は恋愛一色。
職業柄それは避けるべきものだった。
それなのに抑えきれないのか認識が甘いのか。
バレたらどうなるか。
そんな事は火を見るより明らかなのに。
だから恋愛にうつつを抜かす周囲の姿を冷めた目で見ていた。
そしてネット上を騒がせたスキャンダル。
それは当然、耳に入ってきた。
真偽はわからないけれど多少のペナルティーを課せられたあたり限りなく黒に近いグレー。
そこからストイックになるなら問題なかった。
その一件から暫く経ってからの事。
話があるからと呼び出された。
端的に言えば性欲の捌け口になってくれという話。
何故、自分に声をかけてきたのか。
素直に聞くと後腐れが無さそうだからと。
拒否するのは簡単だった。
けれどもう一度、スキャンダルが出た時の影響を考えると自分で満たされるならいいかと思えた。
リスクはだいぶ低い。
どちらかといえば仕事の一環。
そんな感覚だった。
特に興味もなかったけれど何もわからないとどうしようもない。
最初の約束の前日、学習感覚でどうするのか調べた。

158名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/04/29(土) 02:11:54.46 0

当日、淡々と作業をこなすように調べた手順を辿っていった。
意外にも冷静に進める自分に対して羞恥からか赤くなる雅。
こんなこと初めてなのにそれでも慣れてない事がわかった。
純粋に驚きだった。
その後も続いた関係。
少しずつ縮まる距離に変わっていく雅の態度。
気付けば囚われていた。
それでも関係を変える気なんて少しもなかった。

時間ある?

誘われる前の決まり文句。
最後の方は滅多に断ることもなくむしろ心待ちにすらしていた。
その関係は活動停止まで続いた。
その後、卒業まで会う事はあっても誘われる事は一度もなかった。
恋愛が自由になったらいらなくなったあたりやはりただの代替え品。
最初から諦めていたせいか少しの喪失感と痛みで済んだ。
自然消滅した関係。
もうこんな虚しい関係は二度と持ちたくないと思った。


インターホンの音。
確認して玄関の扉をあけた。
久しぶりに見る雅は最後に見た時よりも随分と落ち着いた姿になっていた。

「久しぶり」

「久しぶり、まあ入って」

無意識にでも手は動いていたらしく少しスッキリしていたリビングに雅を通した。

「どうしたの?急に連絡してきて」

久しぶりに会う雅に落ち着かない気分になりお茶を入れながら、あっさり本題を振ってしまった。
沈黙にやってしまったと後悔。
卒業以降、連絡を取らなかったせいで近況を全く知らないため推測することもできない。
気まずさを感じながら雅の前にお茶を置く。

159名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/04/29(土) 02:13:11.66 0

「慰めてよ」

耳元で聞こえた予想外の言葉に雅の顔を凝視してしまう。
絡む視線。
首元に回された腕。
キス一つであの時の思いは覆った。
熱い視線に誘われるまま手を伸ばした。

服を脱ぐ動作。
吐息の出し方。
絡みつく熱。
小さな仕種の一つ一つが少しずつ違和感を感じさせる。
記憶との齟齬にちらつく影。
うっすらと明るい室内に浮かぶ全身。
一番の違いに気づいてしまった。
気づきたくなかったその変化の原因はほぼ間違いない。
湧き上がるのは形容し難い感情。
諦めや虚しさや哀しさ。
僅かな怒り。
不思議な事に少しの喜びと羨望。
ぐちゃぐちゃな感情。
それでも手は動きを止めない。
耳に響く雅の嬌声が狂わせる。
あの頃と同じようにそれは雅がやめてというまで続いた。
すっかり日も沈み静かな室内。
向けられた裸の背中に問いかけた。

「なんでか聞いていい?」

「少しの間だけここに住まわせてよ」

よほど聞かれたくないのか問いとは違う返事。

「いいけどなんで?」

「住むとこなくて」

「実家は?」

「今は弟夫婦が住んでるから」

それだけ言うとそれ以上は話す気がないらしくわざとらしい寝息をたてられた。

360名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/04/30(日) 23:28:47.59 0

翌朝、相変わらず悪い寝起き。
起こしても機嫌悪そうに唸られるだけ。
諦めて二人分の食事を作り出す。
匂いにつられたのかようやく起き出した雅。
もはやブランチと言って差し支えのない時間。
ようやく目が覚めたのか椅子に座った雅は時計を目にして不思議そうに尋ねられた。

「そういえばもも仕事は?」

「ほとんど在宅だから。それよりみやは?」

「今は休業中」

会話が途切れる。
黙々と続く食事。
ふと雅の服に目が止まる。
昨日来た時と同じもの。
雅が来た時に持っていたのは小さな鞄一つだけ。

「あのさみやが住むのはいいんだけど着替えとか生活用品は?」

「あーそっか。この近くにどこか買うとこある?」

スーパーやホームセンターは近くても雅が着るような服を売っているような店はない。
仕事の進捗状況的には今日出かけても問題無い。

「今から買いに行く?車出すよ?」

「えっもも運転するの?」

意外そうな不安そうな顔。

「最近移動はほとんど車だから大丈夫だよ」

つい最近更新してゴールドになった免許を見せると逆に一層不安そうな顔に。

「本当はペーパーじゃないの?」

「違います」

わからなくはないけれどあんまりな反応に脱力する。
食事の片付けをしようとすると雅が代わってくれた。
その間に出掛ける用意。

362名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/04/30(日) 23:29:53.07 0

適当な服に着替えたところで視線を感じて振り返る。
いつの間にそこにいたのか雅の非難がましいような懐かしいようなそんな視線。

「相変わらず片付けできないんだね」

寝る以外使わない寝室と少し片付けたリビング以外はごちゃごちゃしている室内。
言い返す言葉もない。
鞄と鍵を探し出し駐車場へ。
不安そうな様子の雅を乗せ一番近くのショッピングモールに向かった。
身の回りの最低限のものだけを買っていく雅。
通りかかった寝具のコーナー。
時期的なものか安売りされている寝具。
泊まるような来客なんてない為に予備の布団なんてものはない。
この際だから買ってしまうかと通り過ぎようとしていた雅の腕を捕まえる。

「ベッドと敷布団どっちがいい?」

折りたたみのベッドと敷布団を指差す。

「もものベッドで一緒に寝るから買わなくていいでしょ」

「えっ?」

当たり前のように言われる信じられない言葉。

「もものベッドダブルだしよくない?それともイヤ?」

嫌なわけがない。

「みやがイヤじゃないならいいけど」

どこか満足そうな雅。
結局、寝具で買ったのは枕だけだった。

363名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/04/30(日) 23:31:04.46 0

始まった雅との同居生活。
僅か数日で数年で人は変わるんだとまざまざと思い知らされた。
些細な喧嘩も衝突する事もなく穏やかな心地の良い生活。
卒業する以前にもし一緒に暮らしていたらこんな穏やかな共同生活にはならなかったと断言できる。
なによりも家事全般がそれなりの水準でできるようになっていて驚かされた。
洗濯は基本的にクリーニングもしくはコインランドリーたまに親だったのは初日に咎められた。
その日からインテリアと化していた洗濯機が本来の役目を果たすようになった。
掃除も埃が目についたらそこだけ何らかのシートでさっと拭くだけで当然、積まれた色んな物はそのまま。
それが掃除機が活躍し、物は棚やケースにしまわれるようになった。
ぐちゃぐちゃだったシンク周りや収納の中もいつの間にかきれいになっていた。
食事も買ってくることが多かったのに朝以外は用意されるようになった。
手慣れた手つき。
以前、食べたことのある手料理とは違う味付け。
上手くなったのはもちろんだけれどもっと根本的に甘さや辛さのバランスが違っていた。
何もしないのは悪いからと家事全般を雅が負担してくれるのはとても助かった。
けれどその以前との違いの理由。
推測でしかないがほぼ確実なそれにチクチクとどこか痛む。
干されている洗濯物や綺麗に片付いた部屋を見る度にいっそできないままの方が良かったのにと思ってしまう。
どこかへ遊びに行く事もなくほとんど一日中家にいる雅。
日常の買い物と大学に行く時に一緒に出るくらい。
その間はどこに行っているかは知らないけれど帰る時間帯には必ず大学の近くの喫茶店で待っている。
四六時中一緒にいるような状態。
雅が来た日には想像もできなかった日常。

364名無し募集中。。。@無断転載は禁止2017/04/30(日) 23:32:35.51 0

同時刻に同じベッドに入る夜。
できない日以外はほぼ毎日、雅からのキスで始まった。
最初のあの日をのぞいて必ず真っ暗な室内。
その理由を考えるとそんな権利もないのに色々と問い詰めたくなる。
努めて何も考えないように雅に集中した。
そうすると余計に感じてしまう以前との違い。
熱くなりきる前に吐息が温度が絡みつく力の強さがすぅと頭を冷やした。
日を重ねるごとにどうしようもないもどかしい気持ちが募っていく。
それでも誘われるままやめられない自分はやはりあの頃のまま雅に囚われていた。
少し遅くなった起床時間。
必ず取るようになった遅めの朝食。
リビングでするようになった仕事。
忙しい日以外は必ず買い物ついでのように一緒に散歩。
日を跨ぐ事のなくなった就寝時間。
気がつけば雅を中心に行動するようになっていた。
少しの間と言われた期間。
人によって違う曖昧な表現。
それでももう一ヶ月が経っていた。
何があったのかは知らないまま。
聞く事もないけれど聞きたいとも思えないし恐らく聞いたところで話してもくれないだろうと思う。
ただただなんでもない日常が穏やかに過ぎていく。
そして未だに全く出ていく気配がない。
個人的にはもうこのまま一緒に住んでしまえばいいのにと思ってしまう。
慣れてしまった体温を手放したくない。
ただ雅がどうしてここに居続けるのかその気持ちがわからない。
そもそも雅に友情以上の感情があるようにも思えない。
甘い恋人のような空気になる事もない。
あの頃と同じ体の関係のあるそれなりに良好な友人関係。
蘇るのは最初に関係を持つ時に言われた後腐れが無さそう。
あの頃と変わらずそれなりに都合の良い存在。
きっとそれがここに雅がいる理由。
全ての疑問に目をつむり小さな痛みは無視して理想が現実になってしまったような日常をそのまま続く限り享受していたい気持ち。
もう既に遅い気もするけれど諦められなくなる前に自分の気持ちが溢れてしまう前にこの虚しい関係を断ち切って元の一人の生活を取り戻したい気持ち。
相反する気持ちのせめぎ合い頭がおかしくなりそう。
知らず増えるため息。
今日も何度目かわからないため息がまた漏れた。

このページへのコメント

切ないですね、胸が苦しいです。(´;ω;`)

0
Posted by スイッチ 2017年08月12日(土) 01:14:52 返信

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