まとめ:雅ちゃんがももちの胸を触るセクハラ

53名無し募集中。。。2020/08/23(日) 19:25:13.540

鞄と買い物袋で塞がる両手でなんとか開けた玄関で真っ先に目に入る異物。
よくわからない形をしたそのサンダルに今日来てる事はわかった。
おそらく一ヶ月ぐらいぶりだなという以外なんの感想もわかないまま室内に足を進めた。

「おかえり」

部屋の真ん中に鎮座する三人掛け用の無駄に大きいソファーから声がかかる。
それに平坦な声音でただいまと返した。
心からのただいまや律儀にここ私の家なんだけどと返していたのはもうどれぐらい前になるだろう。
冷蔵庫に買ってきた物を詰めながらそんなどうでもいい事が頭をよぎる。
袋の底に入れていた数本の少し温くなった缶。
それに思考は一掃される。
週末だからと買ってきたこのお酒が今晩飲めるのか。
特売だからと色々買ったせいで入れるのが難しくなった一本を仕方なく野菜室に入れて立ち上がる。
ソファーの横を通っても寝そべりながら雑誌を読んでいる雅は顔を上げることもない。
チラッと見えた爪は綺麗なネイルアートが施されていた。
今夜は飲むだけか抱かれたい気分か。
いずれにせよ今夜は飲めると口角がほんの少し上がる。
手早くシャワーを済まして戻るとローテーブルの上には雅が前に持ち込んだワインとナッツが出ていた。

「ねぇグラスは?」

食器棚の影から雅がひょこっと顔を出す。

「隅に置いてる紙袋の中」

冷房の設定温度を下げ、テレビをつける。

「いつものは?」
「割れた」

ふーんと興味がなさそうな返事。
新しいものを買う気が無かったからタイミングよくというべきかつい先日、引き出物でもらったワイングラス。
たまたま目についたからもなんのこだわりもなく買った安物のワイングラスとは違って少々前衛的なそれはしまいにくく一度見て貰った状態のまま放置していた。

54名無し募集中。。。2020/08/23(日) 19:26:20.970

「なにこれ」
「よかったら持って帰っていいよ」

うーんと悩む雅を尻目に冷蔵庫から買ってきたおつまみと缶を持ってソファーに腰掛けた。
雅を待つ事なく缶を開けて一口。
口に広がるねっとりとした甘み。
失敗したかなと少しの後悔と共に飲み下す。
さっき見た雅の左手には前回とは違い指輪が無かった。
だから横に座った雅に今日はどうしたのなんて野暮な事は聞かない。
仮に予想が違っていても特に興味はないし何が変わるわけでもない。
変わるとしたら寝る内容だけ。
特に何か話すわけでもなくお酒が減っていく。
ニュースが終わり日付けが変わっても雅には何の動きもない。
ワインのボトルの中身は順調に中身を減らしていて今日は飲みたいだけの日かと確信して最後の一本を取りに立ち上がった。

「うわっ」

グッと腕を引っ張られ濃くワインが香る。
確信はいつも呆気なく間違いだと突きつけられる。
深くなる口づけに応えながらテレビを消す。
んっとかふっとか漏れる吐息は相変わらず艶やかでつい熱がこもる。
お互いキスが好き。
未だにこの確信だけは間違いだと突きつけられていない。
なんたってこのよくわからない関係も始まりはキスからだったし、キスだけは欠かす事なく交わすから。
始まりは中学生の頃、興味本位で交わしたキスだった。
一回だけのつもりだったのにそうはならなかった。
最初は軽い触れるだけのものが段々と深いものに変わり気がつけば体の関係まで持っていた。
あの時に関係をはっきりさせておけば今の関係も名前がつけられるものになっていたんだろうかとぼんやり思う。

55名無し募集中。。。2020/08/23(日) 19:27:29.210

グイッと体を押され素直に離れると雅は着ていたシャツをばっと脱ぎ捨て、下着一枚の姿になった。
首に腕を回され、またキスが始まる。
触れる肌が気持ちいい。
キスをしたままゆっくりと雅を押し倒す。
肌に這わしていた指先をピンッと立ち上がった頂きに持っていく。
ピクッと敏感な反応に声を聞きたくて離れるとやはりいつも通り不満そうな目を向けてくる。

最初に体の関係を持った時からそれは変わらない。
興味の向くまま色々調べて実践しようとしても雅がそれを許さなかった。
キスにこだわる姿にもしかして好きなのかとか付き合ってるのかなんてバカな考えを持っていた数年間。
口に出さなかった色んな葛藤は本当に口に出さなくて良かったと今でも思う。
成人して間もなく人伝に聞いた雅の恋人の存在。
その時感じたのは少しの衝撃と大きな安堵感。それと深い納得。
それまでは抱かれるだけだった雅が急に抱きたがるようになった理由はそれだったのかと。
間もなく別れたらしいと聞いたけれど特に心動かされる事はなかった。
ただ職業柄、恋人の存在が世間にバレなかった事にほっとしただけだった。

十代の頃からほとんど代わり映えのない行為。
聞こえてくる声の高さにそろそろかと熱くぬかるんだそこにそっと指を差し入れる。
微かに響く水音。
ややきつい締まりを意外に思いながらも好きなところだけを攻めていく。
くぐもった嬌声と触れる肌の面積の少なさに僅かに不満が残るけれどそんなのは今更で淡々と指を動かす。
程なくしてびくっと大きく体を震わせ、弛緩していく雅の唇に軽くキスをしてヒクヒクと動く中から指を抜こうとすると手首を掴まれ止められた。
何事かとまじまじと見つめるとまだ足りないとかすれた声で囁かれぞくっとする。
どうしたのと問いかけた声はひどく掠れていた。
今日は何故かひどく理性がききづらい。
まるで十代の頃の様にその肢体に魅了されている。
ソファーからベッドに場所を移して言われるまま行為を再開させる。
一度目より声も表情も反応も艶やかで。
首筋から鎖骨に伝う汗にさえ目を奪われる。
直接触れ合う肌も暑いはずなのにひどく心地いい。

56名無し募集中。。。2020/08/23(日) 19:28:23.270


結構飲んだのに大丈夫かな。
最近は一回で終わりだったのに。
余程、欲求不満だったんだろうか。
やっぱり体の相性はいいんだよな。

そんな余計な事を考えて気をそらさないとないといつまでも何回でもしてしまいそう。
こんな衝動は随分久しぶりだった。

今日は何もかも予想外だらけ。

服を着る事なくそのまま横で雅が寝るなんてこれもまた何年ぶりか。
しかもそれは少しだけ心を弾ませる。
そう思う自分がわからなくて雅をベッドに残してシャワーを浴びにいく。
落ち着かない気分のままついでにローテーブルを片付けてベッドに戻る。
すやすやとあどけないとすら思える寝顔に高校生の一番このわからない関係に溺れていた頃の記憶がふと蘇る。
たぶん久しぶりに見る短い茶色い髪にメイクをしていない顔が原因。
もしかしてフェチなのかと嫌な予想が過るのを懐かしさからだと押さえつけ心の安寧を図る。
すっかり冴えてしまった頭はいらないことばかりに思いを馳せてしまう。

なんとなくの人恋しさを解消する関係。
お互い恋人がいてもキスだけは会えば必ずする関係。
少しだけ行き過ぎたスキンシップをとっているだけのセフレと呼ぶには足りなくて友人と言うには少し深いこの関係。
雅は特別な人ではあってもそれは他のメンバーも同じでましてや女性、恋愛感情なんてありえない。
以前と変わらずそう思うのに、以前と同じように心がざわめく。
今日は本当にどうしてしまったのだろう。

引退後はなくなると思っていたこの関係は予想を裏切って未だに続いているのは何故だろう。
恋人ができてもどこかしっくりこないのは。
たった一ヶ月会わなかっただけでどことなく寂しさを覚えたのは。

次々出てくる疑問。
本当は頭の片隅にひっそりとそれらの答えらしきものが転がっているのはわかっている。
それでもその答えは自分の考えとはきっと相容れないもので。
今日もまた思考を放り投げて目を閉じた。

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