まとめ:雅ちゃんがももちの胸を触るセクハラ

137名無し募集中。。。2019/12/07(土) 22:29:35.090

「もう既に、この中の2人には、人狼が取り憑いているらしい。覚醒していなければまだ自覚はないらしいけどね」
と西口は言った。皆は思わず西口の顔を凝視した。

何かの茶番であることは明らかだ。しかし迂闊に口を開けない空気がそこにあった。
西口は話し続けている。
隠しカメラを探す佐紀の視線が、同じようにそっと視線をめぐらす桃子のものとぶつかった。
佐紀が視線で問いかけると、桃子は顔を小さくしかめ首を振った。

「……さっきも言ったが、人狼は夜のうちに一人、人間を襲うらしい。
襲われた者は姿を消してしまう。つまり、今ここにいる……今、ここに何人いる?」
視線を向けられた佐紀が「13人ですね」と答えた。
「つまり、いずれ人狼以外は誰もいなくなってしまうということだ」
いなくなる。とはどういうことだろう。全員が思いを巡らせる。

西口は片手に分厚い革のファイルケースを取り、一同に示した。

「部屋に入ったらこんなものがあった。人狼について書いてある。
嘘だと思うならこのコテージの従業員に聞けと。
1階に降りたら待ち構えていたように支配人らしき男性が一人いた。
人狼は存在するし、今後従業員は我々に対して一切口を聞く事はない、と言われた。
そんなバカなことがあるか。
事の真偽はともかく、僕はすぐに全員で帰れるようバスをチャーターした」

全員がホッと息を吐いたのも束の間、西口は続けた。
「だが、バスがここに来られないらしい。来られないわけがないだろうと思うが
どうしても辿り着けないの一点張りで、そのうち連絡がつかなくなった」
「電話に出ないんですか?」
「最初はそう思ったが、どこにかけても呼び出しはするが繋がらない。
メールも、LINEも既読がつかない」
その言葉には全員が驚いた。一斉にスマホを取り出し、通話やLINEを試みた。
西口は固唾を飲んで皆の様子を伺っていたが
やがて諦めたような苦笑いを漏らし、首を振った。

139名無し募集中。。。2019/12/07(土) 22:31:51.580

「西口さんが仕掛け人なら、ちょっと脅かしすぎだと思いますけど」
佐紀が掛けていた椅子から立ち上がり、皆を庇うようにしながら言った。
「そうならいいが、そうじゃない。申し訳ないが」
「さすがにこんな嘘はつかないと思う。襲うとか、冗談にしてもキツすぎる」
雅が佐紀の手に触れると、佐紀は振り返り、目を細めた。
「西口さんの言う事が本当なら、人狼もホントにいるってことになるんだけど」

「何であっても、このままだったら迎えが来るのは絶対じゃない?」
梨沙子が口を開くと、友理奈が手を打った。
「そうだよ。誰も連絡つかなかったら、誰かが絶対おかしいと思うはず」
「2人の言う通り。こちらから動けないのは歯がゆいが、必ず助けは来るだろう。
脅すような形になって悪かったが、経緯は全部話すのが一番いいと思ってね」
「そうですよね、会社の人でも家族だって、動かないわけないですよね」
梨沙の声は少し震えている。桃子が頷くのを見て、ホッとしたように肩を緩めた。

奈々美が遠慮がちに手を上げ、切り出した。
「迎えを待つより、歩きでも今すぐ全員でここから出るというのは?」
「確かに」と結が身を乗り出してから、周りを窺う。
「もう4時だよ」と知沙希が言った。
「暗くなっちゃうから明日がいいんじゃない?」
「もちろんそれも考えていた。街まで距離があるからどうかとは思ったが
そう言うなら明日朝から動いてもいい」
「ただ待ってるだけより、その方がいいね。小関ちゃんどう?」
千奈美が傍にいた舞に話しかける。
舞は頷き「みんな一緒に早く帰りたいです」と答えた。
「じゃあ、今夜は寝てさ、明日早朝にここを出よう。みんな一緒だし大丈夫だよ」
茉麻のやわらかい声に、空気が少し緩む。
「それでいいか?」
西口からの確認に、それまで黙っていた桃子が口を開いた。
「どうして、こんなことになるんですか」
低く呟くような声は、独り言のように響く。

西口は困ったように顔を歪めた。
「言っておくが、僕も巻き込まれた側だよ」

140名無し募集中。。。2019/12/07(土) 22:33:05.700

「人狼なんているわけないじゃん」
友理奈の言葉に「そうですよね、そんなわけないですよね」と舞が答えた。
2階に客室があり、それぞれに部屋が割り当てられていた。
各々が自室に荷物を置き、誰からともなく、ラウンジに集まっている。
入り口のカウンターにはカードが掛けられ、夕食の時間とメニューが記されていた。

「考えたけどやっぱさあ、どっかにカメラ入ってんじゃない?」
千奈美が天井をぐるりと見渡しながら言う。
「やっぱ思った?ご飯まであとちょっとあるし探す?」
雅も座っていたソファの下を覗き込む。
「だったらカメラ探すよりもっと怖がってみせた方がいいかもね」
茉麻が言うと、梨沙子は「バカみたい」とため息をつき、ソファの背に体を埋めた。

結は一人掛けの椅子で膝を抱え、唇を引き結んだまま動かない。
「大丈夫?」
奈々美が声をかけながら近寄ると、結は首だけを上げた。
その肩に奈々美はそっと手を置く。
「大丈夫だよみんないるんだから」
「うん」
「ほら、現実的に考えて、いるわけないし」
「うん」
その様子を見て、佐紀が立ち上がった。ラウンジの中央を突っ切ると
奥のソファで横になっている桃子の尻を叩く。
「何やってんのよ」
「痛いよぅ佐紀ちゃん」
「あんたんちの子が不安がってんだけど」
桃子は視線を動かすと
「子供じゃないんだからさあ」と言い、お尻を押さえながら起き上がった。
知沙希に目を止めると、行ってこいとばかりに顎をしゃくる。
「もも」
佐紀の呆れたような声にもお構い無しだ。
知沙希は「うふっ」と笑い、結のところへ行くと髪を撫でた。

「あれっ?梨沙ちゃんは?」
舞が言うと、見計らったようにワゴンを押しながら梨沙が現れ
「みなさん、食堂の前にポットがあったんで、紅茶いれてきましたー。よろしければ」
と、どこか得意げな笑みを浮かべる。
「お、気が利くねえ」
近くにいた茉麻が、梨沙の顔を見ながら真っ先にカップを受け取った。
「あたたかいものを飲んだらきっと落ち着きますよ」
奈々美が結に話しかけている。
「ねえ、カメラあったの?」
桃子の問いかけに、千奈美は「ないよ!」と答えた。
「気になってんならももも探したらいいじゃん」
めくっていたカーテンを戻しながら雅が言うと
「いやないと思う。思うけど、念のため聞いた」
と桃子は言い、一同を見渡した。

「いちおう聞くけど、そうは言っても人狼いるんじゃない?って思う人
この中にいる?」
ラウンジ内が静まり返る。返事をする者はいなかった。

141名無し募集中。。。2019/12/07(土) 22:36:18.710

『西口氏は人狼に襲撃されました』
そのカードは入り口のカウンターに掲げてあり、数人が慌てて確認のために西口の部屋へ向かった。
全員が早起きし、帰り仕度を整えた後のことだった。

戻ってきた佐紀は険しい表情で、茉麻に体を預けている。
梨沙も顔面蒼白だったが、ラウンジで待っていた全員が見ているのに気づき
言葉を絞り出した。
「……部屋にはカギがかかってました。中の様子はわかりません。
ただ、ドアノブにペンダントが架けてありました。……何かの、牙みたいな」
梨沙がそこまで言ったところで、佐紀が目を細め、一同を見回した。
「少なくとも、いなくなったのは確か」
「とりあえず、中と外と探してみた方がいいとは思うけど」と茉麻が続けた。

数人ずつに分かれ、コテージ内の開けられる扉は全て開けた。
庭も探した。林の中はわからない。
中庭に張り出した広いデッキの植え込みに、西口の荷物を見つけた。
貴重品なども全てそこにあるようだった。
ラウンジに戻ってきた一同を、再びカードが出迎えた。

ーー
人狼は2匹います。人狼同士は結託しています。
全て退治できたならば、それまで失った者も全て蘇るでしょう。
人間の数が人狼の数と同じかそれ以下になった時は人狼の勝利となり
すべてが人狼の思うままになってしまうでしょう。

狂人が1人います。人間でありながら狼の協力者です。
人狼の勝利が狂人の勝利にもなりますが、人狼と狂人は互いが誰かを知る事はできません。

1日1回、夜のうちに人狼は人間を1人襲撃して噛みます。
1日1回の投票により、人間の皆さんは疑わしい者を吊り、排除することができます。

この中には既に能力者がいるはずです。
占い師が1人います。前の晩に誰かを占い、人間か狼かを知ることができます。
霊能者が1人います。前の晩に失った者が、人間か狼かを知ることができます。
騎士が1人います。1人を指定して、狼の襲撃から護衛することができます。
既にゲームは始まっています。犠牲はやむを得ません。
一同で協力し、話し合いながら、人狼をすべて葬り去ってください。

ちなみに昼食は12時からです。今日のランチはからあげ弁当です。
ーー

カードを手にした奈々美がこれら全てを読み終えると
友理奈がハッとしたように身を乗り出した。
「え?もしかして今日、帰れないってこと?」

162名無し募集中。。。2019/12/08(日) 23:45:14.130


私は狼になった。信じられないけど、狼なんだ。
部屋の鏡を見た時、心臓が止まるかと思った。
大きな耳が頭から生えていて、目の色は赤く光っていた。

どうしてこんなことになったんだろう。
だけど、同時にわかった。これは、みんなを救うため。
狼が勝てば、すべてを思い通りにする力が手に入る。
みんなを噛むことになるけど、でも、そうやって生き残ることができれば
最後にはきっとみんなの願いを叶えられるんだ。
そう。勝ってみせる。

鏡を見ながらそう誓った時、頭の中に、誰かの声が響いた。
ああ、仲間の声だ。
私は、その声に応えた。


「1人行方不明のまま放って帰るって、ないでしょ」
千奈美が言うと、友理奈は「あぁー」と間の抜けた声を出し
「そしたら、どうする?」と、少し真面目な顔になった。
「とりあえずお昼待たない?何も食べないで探し回ってたからお腹ぺこぺこ」
そう言いながら、雅が壁の時計を見上げた。小一時間で昼食になりそうだ。

「午後から話し合い。ってことでしょうか」
梨沙の言葉に、皆が思い思いの表情を見せた。
その様子を見て、佐紀が苦笑する。
「みんなさっきまでと全然空気違うよね。まあ、そうだよね。
この中にはもう、狼と狂人、占い師、霊能者、騎士がいて
それぞれ自分のことわかってるってことだもんね」

164名無し募集中。。。2019/12/08(日) 23:46:53.630

「その人たちは、同時に知ったんでしょうか」
怒ったような顔で、奈々美が呟く。
茉麻は奈々美の方へ顔を向けると、その緊張をほどくように笑った。
「それもお昼のあとね。今はまだなんか、急だし、みんな喋りづらいじゃない?」
奈々美は「あっ、そうですね、すみません」と言い、胸に手を当てた。

「あのさ、自分が狼だーって言う狼なんかいないんだし
話し合ってもわかんないと思うんだけど」
友理奈は頬杖をつき、眉根を寄せていた。
「そのために、人間側に能力者がいるんだよ」
桃子は何か諦めたような顔をしている。友理奈の視線に顔を上げると目を合わせた。
「わかんなくても、探さなきゃだめだってこと」
「話し合いましょう。あ、って言っても、今はまだ、何も考えられないけど」
そう言って、はにかんだ知沙希の横顔を、舞は不安そうに見つめている。

雅が椅子から立ち上がり、伸びするように腰に両手を当てた。
「んー、これさ、早く狼見つけたら帰れるってことだよね。早くみんなで帰ろう。
もうこうなったら、全員でがんばろ?」
そう言うと、若干圧のある微笑みをたたえ、雅は全員を見回した。
「みやの言う通りだね」
佐紀が薄く笑う。

それまで黙っていた梨沙子が口を開いた。
「私はいいよ」
投げやりな響きだった。
「いいよ、って何」
「冗談きつい。私には無理」
その場がシンとする。
誰もが何か責められたような気になり、それぞれに視線を揺らした。
「だって、そんなこと言ったって」
言いかけた佐紀の言葉を遮るように、カタン、と音を立てて椅子から立つ者があった。

165名無し募集中。。。2019/12/08(日) 23:47:52.510

全員が驚いたように、急に立ち上がった結の姿を見つめる。
「私はちゃんと、みんなで話して狼見つけたいです」
結は顔を伏せたまま、両手を握りしめていた。
「あ、あの私も、推理ならちょっぴり得意なんで、少しは皆さんのお役に立てるんじゃないかと」
隣にいた梨沙はそう言うと、結の背中をぽんぽんと叩き、座らせた。
「大丈夫だよ船木ちゃん。人間の数の方が多いし、こっちには能力者がいる」
茉麻にそう言われてもまだ、結は緊張したままのようだ。
「気負いすぎるのも良くないよ結」
梨沙に言われて、結はようやくコクリと頷いた。

これまで何も喋っていない舞に、桃子が優しく声をかけた。
「舞ちゃんはどう思う?」
舞は「えっ」と言い、視線を逸らす。
「あのなんか、帰りたいのはもちろんそうなんですけど
急にみんながその気になってるのが、ちょっと怖いっていうか」
隣の知沙希が舞の顔を覗き込んだ。
「舞ちゃん怖がってたらダメだよ。やるしかないんだよ」
舞はちらっと知沙希の顔を見てから、頭を垂れた。
「うーん……ちぃがそう言うなら」
「舞ちゃん、がんばりましょう」
奈々美が両手でグーを作り、声をかける。
その様子を見て、桃子は苦笑した。

「じゃ、お昼食べてちょっと休んだら、またこのラウンジに全員集合ってことで」
茉麻の言葉に各々立ち上がる。
「私乗りたくないんだけど」
「だめだよ梨沙子。話し合いの時は一緒にいなきゃだめ。この中に間違いなく、人狼がいるんだから」
千奈美はそう言って梨沙子の腕を掴み、強く揺らした。
雅はその様子をちらりと見遣る。

誰もがこのまま、午後が来ないことを祈っていた。

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