まとめ:雅ちゃんがももちの胸を触るセクハラ

369名無し募集中。。。2019/02/26(火) 19:18:04.860

潤んだ瞳が、こっちを見てくる。
ぎゅって自分の体を抱きしめて、縮こまるみやびちゃん。

ゆるくウェーブする、明るい茶色の髪の毛。
すっと細く引かれた眉のラインとか、緊張のせいで固まった表情とか。

あー、懐かしいなあ、なんてことを、ももは考えた。

―――

「本番、がんばろーね」

そう言いながら振り返ると、みやがにやっとしながら頷いた。
4年ぶりのBuono!ライブ。しかも会場は武道館。
そんなのね、テンション上がらない理由がないってもんですよ。
さっきリハ終えたばっかりだけど、まだまだ足んないって気持ちだった。

「もも、明日は?」
「ダンスレッスンとー、夜はテレビの収録かな」
「相変わらず忙しいね」
「まあねえ、ありがたいよホント」

自分の鞄を整えながら、私は答える。
カントリー・ガールズの活動も大分軌道に乗ってきたし、お昼の番組とかにもコンスタントに呼んでもらえてるし。
最近、本当に良い感じ。

「みやも、メンバー決まったんでしょ?」
「そう。もーやっと!って感じ」
「ちょっとホッとした」
「そ? ありがと」

ベリーズ活動停止後、グループで活動したいって言った私とみや。
私はハロプロに残ることを選んだけど、みやはハロプロとは違う感じの活動がしたいって言って。
春くらいに、オーディションの合格者が決まったんだって嬉しそうに話してくれた。
その子達も武道館でゲスト出演するらしいから、みやも気が気じゃないんだろうな。
なんだかんだ、私もそうだしね。

「晩ご飯、どうしよ」
「いいよ? 食べて帰っても」
「ん。じゃ、愛理にも聞いてみる」

そう言いながら、みやの声が鑑の前へと移動する。パイプ椅子が微かに軋む。
早く帰り支度すれば良いのに、って思ってたら、「わっ」てみやが声を上げた。
続いて、かしゃんっ!と金属が床にぶつかったような音がする。

370名無し募集中。。。2019/02/26(火) 19:18:36.700

「みや? 大丈夫?」

呼びかけたのに、返事がない。一言くらい返してくれたって良くない?
不思議に思って振り返って、私は固まった。
床に転がるみやの手鏡。それを拾おうとしてしゃがんだんであろう、みや自身。
変わったことなんて一つもないはずなのに、強い違和感が襲ってきて混乱する。

「え? ……あれ?」

みやがゆっくり顔を上げて、私と目が合う。ぴたって空気が固まった。
私も、みやも、何を言うべきか迷ってる。相手が何か言ってくれないかなって期待してる。

「……もも?」

戸惑いたっぷりなみやの声。
そう、その声は、紛れもなくみやなんだよ? みや……なんだけどさあ。

「あれ、なんで? ももいつの間に着替えたの?」
「え? いやっ……」

みやが、きゅって眉根を寄せる。
もちろん私はまだ着替えてなんていないし、むしろみやびちゃんの格好の方が変わってるわけ。
さっき着てたレッスン着とは違う、シンプルな黒のシャツとジャージ。
コロコロ服を変えるみやにしては気に入ってたのか、何度かそのジャージを見たことはある。
でもそれも数年前の話。
というかさ、そもそもね? そもそもの話ね?
さっきと髪型違うし、なんなら色も明るくなった気がするし、何より顔の雰囲気が違うわけ。
細めの眉とか、薄めのリップとか、見覚えはあるけど懐かしさの方が勝つ。

そう、目の前にいるみやは。
みやだけど、みやじゃない。強いて言うなら、何年か前のみや、って感じ。
嘘でしょ? そんないきなりメイク変わる? 一瞬で?

まあ、そんなわけはないですよね。

371名無し募集中。。。2019/02/26(火) 19:19:15.000

「みや、あのさ……今、何歳だっけ?」
「は? なにそれ」
「いいから答えて」
「なんで?」

警戒心たっぷりなみやの目が、訝しがるように細くなる。わお、懐かしい。
ももが無茶ぶりとかして、みやが真面目に嫌がってる(というか引いてる)時の顔。

「いやいや、年齢言うだけじゃん!」
「だってもも絶対何か企んでる!」
「いやいやいや! そんなんじゃないから」

私が一歩近づいたら、みやは同じだけ後ずさる。
なんだこれ。野生の猫かな?

「お願い、何もしないから」

なんでももが手合わせてお願いしてんのか全く分かんないけど、真剣なんだって気持ちを込める。
そんなももの行動に、ようやくみやは少しだけ肩の力を抜いたみたいだった。

「……17歳、だけど」

え、合ってるよね?って自問しながら、みやの黒目がくるんと斜め上を向く。
合ってる合ってる。たぶん合ってる。でも、そしたら、何年前ってことになる?
私が何も言わないのが気になったのか、「何!」ってみやが悲鳴みたいな声を出した。

「いや、なんでもな、」
「なんでもないわけないじゃんっ!」

何もされないのは、それはそれで心許ないって感じ?
こんな怖がりだったっけ、17歳のみやって。

「ちょっとね、気になっただけで」

その時、私の耳に、廊下に響く足音が届いた。
やばい、愛理か。もしくは他の誰かがやってきたんじゃ。

373名無し募集中。。。2019/02/26(火) 19:19:59.680

とっさに、楽屋の隅のスペースが目に入った。
うん。よし。あそこなら、カーテンも閉められるし、余裕で一人は隠れられる。

「みや、こっち」
「えっ、なっ?!」

まだみやの目は不安げに揺れていたけど、仕方がない。
ぐいっと手首を引っ張って、そのスペースにみやを押し込む。

「いいから。ここでじっとしてて。いいって言うまで絶対に出てこないで」

早口で釘を刺すと、さすがのみやも素直に首を縦に振った。
私がカーテンを閉めきった瞬間、がちゃって部屋のドアが開く音。

「おつかれー」

あいりんがふにゃふにゃした顔のまま部屋に入ってくる。
飲み物買いたいから、って私たちと別行動していたあいりんの手には、ミネラルウォーターのペットボトルが握られていた。

「あれぇ? みやは?」
「なんか急用ができたって。先に帰っちゃった」
「あら残念。ご飯一緒に行きたいなって思ってたのに」

ねー、残念だよねって話を合わせながら、目の端でカーテンを確認する。
よしよし、きっちり閉まってるね。
そう思ってたら、控えめなノックが部屋に響く。
今度は何? 「どうぞ」って言いながら、私は身構えた。

374名無し募集中。。。2019/02/26(火) 19:20:42.580

「失礼しまーす……あの、夏焼さんはいらっしゃいますか?」

少しだけ開かれたドアの隙間から、ひょいっと覗くのは新顔だった。
誰だっけ、えっとね、知ってる。知ってるよ、知ってるんだけど。

「あー! えっと、にへーちゃんだ!」
「えっ、わわっ、はいっ! 二瓶有加ですっ!」

元気に自己紹介してくれたその子は、あいりんに声をかけられた瞬間にぴんって背筋を伸ばした。
そうだそうだ、二瓶有加さん。みやの新グループのメンバーに選ばれた一人だっけ。
あいりん、ありがとう。今日ほどあいりんに感謝したことないかも。

「みや、さっき急用ができたって帰っちゃって」
「そ、そうなんですか……じゃあ、日を改めますね」

まっすぐになった二瓶さんの背筋が、みやの不在を知ってちょっぴり丸くなる。
まだ借りてきた猫っていうか、忠犬っていうか。
失礼しましたって二瓶さんがドアを閉めたタイミングで、私はもう一度カーテンを伺った。ちょっ!
待って待って、見えてるからみやびちゃん。カーテンの隙間からこっち覗いてんの見えちゃってるから。
吹き出すのを堪えた私のこと、褒めて欲しい。本当に。

「あいりん、この後は?」

私が声をかけたのと同時くらいに、あいりんのスマホがピロンて音を立てる。
マネージャーさんだ、なんて言いながら、あいりんがスマホの画面をタップした。

「やばっ、このあと仕事入ってんの忘れてたー!」
「え、大丈夫?」
「だいじょぶだけどギリギリッ! じゃーねっ!」

スマホと鞄を引っつかむと、あいりんが両手をがばっと広げて走り出す。
ばたんってドアが閉まった音の後で、楽屋の中が静まり返る。
やがて控えめにしゅるしゅると音がして、みやが顔を覗かせた。

375名無し募集中。。。2019/02/26(火) 19:21:13.860

「ねえ……なにがどうなってんの」
「どうって」
「今のって、誰?」
「ん? あいりんだけど」

ももが答えたら、みやの口がぽっかり開く。

「待って、ちょっと待って?」
「待つよ?」
「……さっきの愛理って」
「あいりんはあいりんだよ。22歳の、だけど」

これ以上ないくらい、まん丸に見開かれるみやの瞳。
みやは何か言おうとしてるのか、口をぱくぱくさせてるけど何かが発せられそうな雰囲気はない。
こてん、ってみやの首が右に傾いた。あらら、思考回路ショートしてる。

「よく、わかんない」
「わかんないか」

もしも、もしもの話よ?
本当の本当にみやが6年前から来たんだとしたら、あいりんは当時で16歳くらい。
それが今や22歳の大人なおねーさんになっちゃってるんだから、そりゃー驚きもするはずよ。

「ちなみに、ももは今24歳なんだけど」
「はあぁ!?」

ももも大人になったでしょ?って言おうとしたら、「全っ然見えない」ってくっつけられた。
ねーえ! ひどくない?

「ここからは私の推測なんだけど、みやはタイムスリップしちゃったんだと思う」
「たいむすりっぷ?」
「……意味は分かるよね?」

さすがに、って感じでこくこくと頷くみや。それなら話が早い。

376名無し募集中。。。2019/02/26(火) 19:21:43.420

「今ね、ここは2016年の世界なの」
「2016年……?」
「みやがいた世界は?」

難しいことを聞くな、と言わんばかりにみやの表情がほんのり曇る。
そうだった、この子にこういうこと聞いちゃだめなんだった。
自分のスマホで確認しようと思ったのか、みやがポッケをごそごそと漁る。
やがて出てきたスマホのカバーは、なんだか懐かしいカラフルさだった。

「……圏外になってる」
「え? あら、ほんと」

みやが傾けて見せてくれた画面には、1本のアンテナすらも立ってない。
がく、と肩を落としたみやが、自分の頭をぐしゃぐしゃと掻く。

「なにこれ……わけわかんない」

下を向いた唇からこぼれた声が湿っぽく聞こえて、ももはそっとみやの肩に手を置いた。
相変わらず、細い肩。もうこの頃からカリカリしてる。

「何か、覚えてる?」
「うち、Buono!ライブのリハやってて……楽屋戻ってきたばっかで……」

絞り出すように唸りながら、みやが文字通り自分の頭を抱える。

「思い出せたらでいいよ」

ももの言葉に、もう無理って言うようにみやは首を振った。
こりゃ、ちょっと休んだ方が良さそう。

377名無し募集中。。。2019/02/26(火) 19:22:31.210

「とりあえず、ももんち行こっか」
「……はあっ!?」

ももの言葉は、じわじわとみやの中に染みていったみたいだった。
わー、顔真っ赤。何を想像したんだろうね。

「みやんち帰ってもいいけどいろいろ面倒なことになりそうでしょ。一緒に行動した方がいいって」

あんまり煽ったらかわいそうだから、赤いほっぺは見なかったことにしてあげる。

「どうする?」
「……行ってあげても、いい」

ぼそっとそう言って、拗ねたように視線が逸らされた。
もーっ! なんなの!
今ここでみやをぎゅーっってしてもみくちゃにしたい衝動を抑え込んで、私は何とか表情を保つ。

「……何ニヤニヤしてんの、キモい」

あららバレてた。
みやはますます不機嫌そうな顔になっていくけど、こんなのにやけるなって言う方が無理でしょうよ。

「さて、行きますかーっ」

私が差し出した手を、みやは大変不服だって雰囲気を出しながらも取ってくれた。

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